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警備員(けいびいん)は、広義では警備に従事する労働者およびそのような職業を指す。日本ではガードマン(※和製英語)と呼ばれることもある。英語としては、security guard, guard などが用いられる[注釈 1]。
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
世界各国に存在する職業であるが、職務内容や典拠となる法令、職業・産業としての位置付けなどは国や時代によって大きく異なる。本項目においては特記なき限り2020年現在の日本の警備業法に基づく日本国内の警備員について記述する。
警備員は、警備業法第2条4号で「警備業者の使用人その他の従業者で警備業務に従事するもの」と定義されている。
警備員は民間企業の従業員たる私人で、公務員たる警察官とは異なり特別な権限を一切有さない。警備業法においても職務質問またはそれに類する行為、検問、現行犯以外の逮捕[注釈 2]、取調べなどの権限は認められていない。
職務の性質上、事件、事故、強盗、火災、交通事故など遭遇機会が多く、緊急事態対処、防犯装備の取扱い、護身術、消火器の使用、避難誘導、負傷者や急病人に対する応急手当、事件・事故の現場保存など、多岐の知識や遂行能力が期待される。
2009年(平成21年)12月末時点で、警備業者は8,998社、警備員数は常勤と非常勤合算で540,554人[1]である。総数に、中央省庁や地方公共団体などの政府機関、ライフライン関係施設、原子力発電所、空港など、重要施設の警備請負業者も含む。
日本では何人も、警備業務[2]について労働者派遣事業を行ってはならないこととなっている。(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第4条)
お願い:個人の体験談、全国的でない地方特有の事例、個々の警備会社で違う対応の例など、出典が明記出来ない記事を書き込まないで下さい。Wikipediaは体験談特集サイトではありません。 |
警備員は下記の欠格事由に該当しなければ法定の講習受講後に就業が可能で、現場で勤務する警備員を正社員ではなく準社員やアルバイトとして採用する会社も存在する。
警備業法第14条により、下記のいずれかに該当する者は警備業務を担えない。採用時は住民票など身分証明書の写しではなく本状の提出で本人確認を要する[要出典]。なお成年被後見人又は被保佐人を欠格条項とする規定については、令和元年6月14日に公布された「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」によって削除され、心身の故障等の状況を個別的、実質的に審査し、必要な能力の有無を判断することとなった。
警備業者は自己の雇用する警備員に対し、警備業務を行うに当たって必要な知識・技能の教育や訓練を行なわなければならない。「新任教育」や「現任教育」などと称される。新任教育は新たに採用された警備員の全員が、基本教育10時間以上、業務別教育10時間以上、合計20時間以上の受講を義務付けられた法定研修で、修了がなければ勤務に就けない。内容は法令、敬礼などの礼式、行進や駆け足、誘導棒による指示など。
他社で「最近3年間内に、通算1年以上の警備員としての実務経験」がある者、または警備業務検定、警備員指導教育責任者などの資格所有者、元警察官は科目単位で免除措置がある。2020年の法改正により、現任教育は年間に1度、基本教育5時間以上、業務別教育5時間以上の計10時間以上の受講が義務だが、新任教育同様に資格所有者は減免措置がある。またこの法改正前は「警備業務検定における特別講習」を受講した場合、当該年度における「現任教育」は免除になっていたが、2020年の法改正により、免除とはならなくなった。
警備業法第2条の条文は下記の業務を「警備業務」としており、警備業界で条文の各番号順に1号業務 - 4号業務と称される。何ら特別に権限を与えられているものでない(同法15条)。
警備員は民間企業の従業員たる民間人で、契約者などの施設管理者が本来有する施設管理権に基づき、施設管理行為の治安維持を代行する者で、法律により特別な権限は付与されていない。警備業法第15条は以下に規定し、警備員は業務遂行にあたりなんら特別な権限を有さない。
実務で以下の制限がある。
警備員は制服の着用義務はなく、私服でも勤務可能[注釈 6]である。実際は万引きの保安警戒[注釈 7]や身辺警護などの他は、警備員が制服を着用することで警備警戒の示威による犯罪抑止や、制服で所属を示す身分証明機能、関係者と識別、などの理由がある。
警備員が警備業務にあたり制服を着用する場合は、色彩・形式・標章(ワッペン)などにより警察官および海上保安官と明確に識別できるものでなくてはならない[4][注釈 8]とされている。警備員と警察官や海上保安官の誤認、民間企業従業員の警備員による警備業務と、警察官などの行政警察活動の誤認、警備員の特別権限錯誤、などを防ぐ目的がある。
警備員の制服は多くの場合、肩章付きで両胸にポケットがあるシャツ(主に夏服)または肩章付きの両胸・両脇にポケットのあるシングルジャケット(主に冬服)で、左胸と左上腕部に所属会社のワッペンを付け、右肩からは警笛を繋いだモールまたは鎖を吊り、装備品を下げた帯革(ベルト)をジャケットの上から締めるというスタイル(日本の警察官の旧型制服、または一般的な軍服のスタイルに似た形式)である。警察官や海上保安官と混同されない限りスタイルは自由であるが、多くの警備会社がこのスタイルの制服を使用している(もちろん、ダブルのブレザー型やブルゾン型、ワッペンの位置が警察官と同様の右上腕部、さらにはアメリカンポリス風など、全く独自のデザインの制服を用いている警備会社も存在する)。警察や軍隊の階級を模倣した階級制度を制定している警備会社もあり、制服に階級章を着用していることもある。
これには以下のような理由が考えられる。
護身用具は警戒棒[注釈 9]を携帯している程度である。なお、国家公安委員会の定めた基準に基づく都道府県公安委員会規則では(たとえ第三者の護衛であれども)催涙スプレー、スタンガンなどの携帯は認められていない。また、護身用具の携帯は「禁止の例外」であって「特別に許可されている」ものではないことに注意が必要である[注釈 10]。さらには、護身用具の携帯自体も都道府県公安委員会規則により警備業務の種類や時間帯などによっては禁止や制限がされている場合がある[5]。
ただし、強盗などによる警備員の死傷事故も現実に複数発生していることから、治安情勢に鑑み、最近においては警備員の携帯できる護身用具の基準が条件付きながらも従来より緩和された[注釈 11]。具体的には、従来の警戒棒に加えて、対刃物用の「鍔付警戒棒」、「警戒杖」[注釈 12]、「さすまた」[6]、および非金属製(実際はほとんどポリカーボネート製)の盾(ライオットシールド)の携帯が認められるようになった[注釈 13]。
これ以外にもボディアーマー、防刃ベスト、ヘルメットなどの「防具」を着用している例も多い。これら防具の着用に関しては法律や関連規則などに明文規定がないが、「攻撃的用具ではないので、実質上問題ない」とみなされているようであり、特に3号業務や機械警備の緊急対処を行う警備員によく見られるスタイルである。
警察の逮捕術教範を元にした護身術教範[注釈 14]があり、指導教育がなされているが、これを活用できるのは正当防衛に該当する場合だけである。この護身術教範では一応のところ攻撃・制圧技も制定されてはいるが、重点は防御・離脱技に置かれている。この教範は警備業界全般で広く使用されているが、綜合警備保障の綜警護身術のように自社で独自に護身術体系を考案し、教育訓練を行っている警備会社も存在する。また、最近では全国警備業協会も前述の警察の逮捕術教範を元にした護身術とは全く別系統の、防御・離脱技を最重視した独自の護身術や合気道を基にした護身術を考案し、普及を計っている[9][10]。
警備業務および警備員の資質向上のために以下のような国家資格が定められている。詳細については各項目を参照のこと。
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連邦国家という国の構成から、警備業務に関する規定は各州(ほぼ独立した特別自治体)の各関連法によって定められており、州によって非常に差がある。
一般的にはセキュリティ(Security)、ガード(Guard)、バウンサーなどと地域や個人によって様々な呼ばれ方をするが、その呼称によって権利・資格が違うことはない。
クロース・プロテクション(身辺警護)、クラブ・バウンサー(酒場の警備員)など、業務内容によって特別な呼称で呼ばれる場合もあるが、これらも同様にセキュリティ業務の従事者であり、呼び名の違いは慣習的なものでしかない。
なお、日本で呼ばれる万引きGメンの「G」は「ガード・マン」のGで、本来のGメンの「G」は「連邦政府特別司法警察官」を指す、ガバメント(政府)のGであるから、民間警備員をGメンと呼ぶのは誤用もしくは和製英語である。英語では万引き対策など小売店内の保安警備はロスプリベンション(LP)と呼ばれる。
各州法により、私有地内では警察と同等の権利を有する州もあり逆に警備業務を州が一切管理していない州もある。なお、刑法や道交法同様に連邦全体に共通する、連邦警備業務法のような規定は存在しない。
平均的な州では、専門の局により警備業務の免許・登録などを認定・管理しており、カリフォルニア州の場合だと消費者庁傘下の警備・探偵局が警備業務免許・警備員資格登録・警備指導員(専門学校・トレーニングセンター)などの免許の交付や管理をしている。基本的には
の3種に分けられ、カリフォルニアの例では警備会社は警備員を正社員(警備・探偵局の定義では、給与から税金の源泉徴収を行う雇用形態。勤務日数や勤務時間は不問)として雇用することが義務付けられており、日雇いやフリーランスなど税金を自己申告する雇用形態は、個々の警備員が『業務免許なしで警備業務(請け負い)を行っている』と認識されて違法行為に当たる。
警備員有資格者は、警備会社に正社員として雇用されるか、非警備業務の私企業で警備業務担当者として正社員で雇用されること(後述)が認められている。
企業内警備員(Proprietary Security officer:PSO)は、大手の病院やホテル・工場などの企業内警備部社員としてよく見かけられる。企業内警備専従部は、同一企業内の警備を行うことが条件であり、同一経営者でも警備部を別法人グループ会社として独立させると『第三者の依頼で他社・他者の警備業務を行う』とみなされ、警備業務免許の取得義務が生じる。PSO(企業内警備社員)は、複数の企業の専従警備員として雇用されることは認められていない(複数の企業の専従警備員として雇用されると、警備業務の『請け負い:要業務免許』とみなされる)。
なお、現金輸送業務や葬儀車列の交通規制(制服の有資格者が警告灯付きオートバイで併走し、公道や各交差点などにおいて車列の優先走行を保つために信号や一時停止などを規制する)は、警備業務法の範囲外(警備業務とは別項目の規定と管理)となっているが、特に現金輸送業務などは企業が警備業務免許も有する場合が多い。
武器携帯の許可も各州の規定で大きな差があり、Un-armed GuardとArmed Guardで免許そのものが違う州もあり、カリフォルニア州のように警備員資格(基本免許40時間講習+毎年8時間再講習)に銃器免許(16時間講習+毎年4回の実技)、警棒免許(8時間講習更新不要)、化学薬品武器(ペッパースプレー4時間講習更新不要)などと、基本免許に付随資格を足していく形態もある。
銃器の携帯許可は、州によって『リボルバーのみ』『9mmのみ』『認定を受ければどの口径でも可』などと州による違いは大きい。カリフォルニア州では各口径ごとに認定を受け、携帯許可証に明記される。
銃器を含む武器の携帯は『勤務中もしくは勤務の延長』に限られ、休憩時間や通勤時は『勤務の延長』に定義されるが、通勤途中に私用でコンビニやレストランなどに立ち寄る場合の規定が明記されていない州と、『住居から直接職場へ向う場合のみ(私用の立ち寄り不可)』と明記されている州がある。(休憩時の食事などは勤務中とみなされる)
現在のところほぼ全ての州においてスタンガンやテイザー銃に対しての携帯規制はない(許可申請・携帯免許なく携帯できる)。しかし他の全ての武器同様に、使用者には過剰防衛・傷害とそれに伴う訴訟リスクが伴う。
州法や市条例などで地元警察と全く違う色・デザインを義務付ける場合や、特に規定のない州もあり州による差が大きい。
カリフォルニアの規定では、武器携帯時のみ制服着用の義務があり、武器を携帯していない場合は制服の着用義務はない。バッジ(襟章ではなく胸に付けるバッジ)やパッチ(制服の上腕に縫い付ける布製のワッペン)も州警備・探偵局が個々の企業に認定許可を出したデザインのみが着用許可される。
多くの州では、刑法に警察官詐称罪があっても警備員詐称罪はない。ただし、警備員資格を持たない者が理由なく警備員の制服を着用しバッジを付けた場合、その目的から警察官詐称罪で摘発されることがあり実際に摘発されたケースもいくつかある。これはアメリカの場合、デザイン上の文字が「POLICE」「SHERIFF」であるか「SECURITY」「GUARD」「PROTECT」などであるかの差程度しかないため。
カリフォルニア州の有資格警備員は法的権利上において一般市民と何ら違いはない(ただし、警備員資格を持っていれば武器携帯の免許も申請できる。一般人の武器携帯は不可)。
他州も同様であるが、一般市民としての銃器携帯免許を所持していても警備業務中に銃器を携帯する場合は担当局交付の『警備員銃器携帯免許』を所持することが義務付けられている。
警察官の誤認逮捕の免責は刑法によって保護されているが、警備員が誤認逮捕した場合は、民事・刑事(不法逮捕監禁罪)への免責はなく、誤認逮捕した相手から訴追される可能性がある。
また、警察官の逮捕に対して抵抗すると刑法上の逮捕抵抗罪という罪が加算されるが、警備員の逮捕に対して抵抗しても何ら罪にはならない。逃走した者を追跡する場合や武器使用にも大きな制限がある。
なお、州によっては私有地内では警察官と同等の権利を持つ州もあり、警備員と警察の中間の権利を有する資格を定める警備法を持つ州もある。(詳細はアメリカ合衆国の警察#特別な法執行機関を参照)
カリフォルニアにおいては、州立大学や教育委員会・交通局などは独自の警察を有するが、あくまで警備会社であるので私学・私企業がPoliceの名を使うことは許可されない(例:州大のUCLAはキャンパス内に各市警などと同等の警察権を持つ州警察のUCLA Policeがあり、私学のUSCの警備部はあくまで企業内警備部としての権限しか持たず、Policeの名称を使うことも禁止されている。ロス市教委の高校はSchool Policeが巡回し、私学の高校や中学は独自の警備部か外部契約の民間警備会社)。
公共機関や警察が自身の建物や駐車場・受付業務などを警備会社に委託するケースも多いが、依託主が警察や司法局(裁判所)であっても、あくまでも警備会社・警備員としての資格・権利しか有さない。
警備員が許可証を取れば、護身用として銃の携行ができるが、それは身辺警護などを行うものに限られており、実際に所持しているのは全体の5%前後である(普通の警備員は武器の使用許可は厳しい)。
現代の傭兵集団といわれる海外の民間軍事会社(PMC)は名目通り、治安が不安定な地域で、鉱山などの重要施設、軍などの後方施設、人員の警備などを行う。しかし、雇主の意向次第ではクーデターなどの騒乱を起こしたり、正規軍のような積極的な戦闘に加わったりすることも稀ではない。2009年8月にはイラクで中央情報局(CIA)と契約、中央情報局が活動として行うべき秘密任務を業務として請けていたことが発覚した[12]。
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