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中世に存在した日本の行商人 ウィキペディアから
材木売(ざいもくうり)は、中世(12世紀 - 16世紀)期に存在した日本の行商人[1]。平安時代(9世紀 - 12世紀)以降、材木を仕入れて販売した行商・店舗、およびその業者等を総称して、材木商人(ざいもくしょうにん)、材木商(ざいもくしょう)、材木屋(ざいもくや)と呼び[2]、本項ではこれについても扱う。
9世紀後半、879年(元慶三年)の京都・祇園社(現在の八坂神社)の記録に、堀川十二町(現在の堀川今出川から堀川御池の範囲)の「材木商人」について記されている[2][3]。堀川十二町の寄進によって、同地は祇園社の領地となり、「材木商人」たちは同社を本所とした「神人」の地位を得た[2]。『京都嵯峨材木史』によれば、堀川の地に「材木商人」が居を構えて生業を始めたのは、794年(延暦13年)の平安京の造営に際して、輸送された木材が同地で引き上げられて使用されたことによる[3]。現在はほぼ暗渠であるが、当時の堀川は、川幅が4丈(約12.1メートル)あり、貯木場として成立しえたという[3]。堀川十二町の「材木商人」は「堀川材木神人」(ほりかわざいもくじにん)と呼ばれた[4]。
現在も地名に残る神奈川県鎌倉市材木座は、鎌倉時代(12世紀 - 14世紀)に、相模国鎌倉郡和賀江津に設置された座「材木座」に由来する[5]。同地に現存する人工島、和賀江島は、1232年(貞永元年)に築かれた港湾施設である[5]。興福寺の塔頭・一乗院(現存せず)が支配した山城国相楽郡木津(現在の京都府木津川市木津)にも、鎌倉と同時期の12世紀に「材木座」が置かれたとされる[6]。
室町時代に入り、1459年(長禄3年)には、堀川十二町の「堀川材木神人」たちは「材木座」を結成、堀川の貯木場を独占、大鋸挽たちの製材した「大鋸板」(おがいた)の販売権を独占した[3]。この時代には、丹波国(現在の京都府中部ほか)、近江国(現在の滋賀県)、美濃国(現在の岐阜県南部)、安芸国(現在の広島県西部)、あるいは四国からの木材が、堀川の材木座に集約されるようになっていた[5]。材木座は、京都堀川や木津、鎌倉和賀江津のほか、大和国奈良、和泉国大鳥郡堺(現在の大阪府堺市)に存在したことが知られている[5]。この時代、木津で水揚げした材木は、京都・奈良で振売の販売を行っていた[7]。
15世紀末の1494年(明応3年)に編纂された『三十二番職人歌合』の冒頭には、「いやしき身なる者」として、「竹売」とともに「材木売」として紹介され、袴を穿き、板材を束ねる姿が描かれている[1]。同歌合は京都の都市部に見られる「職人」(商工業者、芸能者)をピックアップしており、図においてこの「材木売」が小刀を帯刀しているのは、身分が「神人」であるからであり、「堀川材木神人」であることを示している。この歌合に載せられた歌は、
中世の時期、「問丸」(といまる)と呼ばれる商人が現れ、海岸や河川の港で、貨物の保管・輸送・販売を行った[9]。16世紀には「仲買」が現れ、やがて「問丸」が江戸時代(17世紀 - 19世紀)に入り、卸売商人である「問屋」へと発展し、流通のシステムが変革されていく[9][10]。江戸における「材木問屋」は、その当初は「仲買」と「小売」を兼ねていたが、のちに分化していく[6]。「材木屋」と呼ばれた小売商店は、製材を行う職人である「大鋸引」(木挽)、ならびに筏師(川並鳶)を配下に抱えていた[6]。江戸・八丁堀で材木商を営み、寛永寺本堂造営への材木提供で財をなした人物が、紀伊國屋文左衛門である[11]。
「材木売」「材木商人」らのおもな関連用語の一覧である。
著名な「材木売」「材木商人」らのおもな一覧である。
元禄年間(1688年 - 1704年)に「材木屋風」(ざいもくやふう)という男性の髪型が流行する[12]。これは、後頭部で髷を細く結ったスタイルであった[12]。江戸時代の風俗を記録したことで知られる加藤曳尾庵の随筆『我衣』(1825年)には、「元祿頃、材木屋風なり、つつこみと云中ぞり有」とあり、突込頭(つっこみあたま)と同じものであり、頭頂部を剃る「中剃り」のある、元禄年間に流行った髪型であるとしている[13]。「突込頭」とは、やはり材木屋らの髪型であり、頭頂部を大きく剃り(中剃り)、元結を1寸(約3.03センチメートル)程度に巻き上げて結んだもので、突込髷(つっこみわげ)とも呼ばれた[14][15]。巻き上げる髪の量が多く、髪油で汚れないようにするのが床屋の技術であったという[15]。林不忘の小説『釘抜藤吉捕物覚書』の主人公・藤吉が、この髪型(材木屋風)であった[16]。
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