Loading AI tools
ウィキペディアから
交通機関の喫煙規制(こうつうきかんのきつえんきせい)では、交通機関における喫煙規制(禁煙化)について日本と各国の状況を述べる。
日本においては、保安・防災上の理由や、健康増進法により、受動喫煙を防止する努力義務が課せられたこともあり、交通機関の禁煙化が進んでいる。禁煙タクシーも増加している。なお、禁煙箇所で喫煙した場合は、鉄道営業法などの法令違反として強制的に下車させられる場合もあり、特に悪質な場合は現行犯逮捕されるケースもある。また、2010年代後半以降急速に普及している加熱式たばこ・電子タバコについても全面的に禁止したり、駅構内の分煙化のために設置していた喫煙コーナー(ルーム)を撤去し、駅構内全面禁煙となった交通機関が多い。
日本の鉄道においては、過去には車両の一部座席を禁煙として「禁煙席」を設置したり、編成内の特定車両を禁煙として「禁煙車」を設置する列車もあったが、現在はほとんど見られない。一例として、2002年12月のダイヤ改正までは当時常磐線の特急「スーパーひたち」に使用されていた651系の基本編成(1 - 7号車)の4号車グリーン車の一部に「喫煙席」が設定されていた。
日本のタクシー、バスでは、旅客運送中の運転手の喫煙は禁じられており、二種免許の学科試験にも出題される。回送運行中は差し支えないが、後述のように禁煙化が進んでいることもあり、ある種の「引っかけ問題」である。
アメリカ合衆国のアーカンソー州・ルイジアナ州・カリフォルニア州では、自家用車であっても子供の乗る車内での喫煙は禁止されている。
1886年(明治19年)4月、列車ごとに中等車1両は禁煙とするよう定められた[1]。1908年(明治41年)10月1日より、鉄道庁は東海道本線・横須賀線の新橋 - 横浜・国府津・横須賀間の急行列車に喫煙室を設けた[2]。その後喫煙室は廃止され、日本国有鉄道時代は、通勤形車両を使用する列車以外では全車両で喫煙可能であった。
特急や急行はもちろん普通列車でも、関西の快速・新快速を含め中距離電車の車両には灰皿が設置されていた。列車火災防止の観点から夜行列車(特に寝台車の寝台内)や、大都市圏を運行する国電または大都市近郊区間を運行する普通電車・各駅停車では禁煙となっていた。
東京周辺の例では、東海道線は東京 - 平塚間、東北本線(宇都宮線)は上野 - 小山間が禁煙とされていた。横須賀・総武快速線はこの区間に指定されており全面禁煙となっていた。このため同区間を運行する113系1000'番台には灰皿が設置されていない車両があった。
関西地区では東海道本線・山陽本線の西明石 - 京都間(国鉄末期には加古川 - 草津間に拡大)や大阪環状線、阪和線、関西本線(湊町 - 奈良)などが禁煙であった。横須賀・総武快速線と同様に、関西本線の113系にも運用区間が全面禁煙であったため灰皿が設置されていない車両があった。また、新快速に使用されていた117系は両端の先頭車両が区間に関係なく全面禁煙とされていた。
1976年(昭和51年)、新幹線「こだま」の16号車に禁煙車が初導入された。1980年(昭和55年)に国鉄や日本専売公社を相手取り、列車内の禁煙化を求める嫌煙権訴訟が起こされたことを契機として禁煙車設置が本格化した。
1987年(昭和62年)4月の国鉄分割民営化後は旅客サービス向上の動きも相まって、同年7月には山手線の原宿駅・目白駅で終日禁煙が開始された。1990年代以降は、優等列車全車両の半数から70 %が禁煙化された。また普通列車においては1992年(平成4年)、JR西日本岡山・広島支社管内で車内全面禁煙化が行われたのを皮切りに(翌年に全管内で全面禁煙化)、1997年(平成9年)3月にJR東日本、1998年(平成10年)10月にJR東海およびJR四国、1999年(平成11年)3月にJR九州、2006年(平成18年)3月にJR北海道管内において車内全面禁煙化が行われ、一部の夜行列車と一部列車のデッキ部を除いて普通列車内で喫煙はできなくなった。
2000年代に入ると、2007年(平成19年)3月のダイヤ改正ではJR各社が大幅禁煙化に踏み切った[3]。2009年(平成21年)6月には航空機・高速バスとの競合が激しい東海エリアや西日本エリアで、新幹線・寝台列車・四国(岡山発着含む)の一部列車を除いて全列車禁煙となった。その後、2011年(平成23年)3月のダイヤ改正で四国(岡山発着含む)の列車も全列車禁煙となった。
JRグループでは2009年に駅構内の禁煙化を強化し、JR東海は3月14日に在来線を全て禁煙とした。JR東日本は首都圏一部駅のホーム上喫煙コーナーを廃止し、東京地区で4月1日以降は所定喫煙ルームを除き駅構内全てを禁煙とした。JR東日本はさらに同年10月1日に首都圏内の禁煙区域を拡大した[4]。JR西日本は同年7月1日に京阪神地区の近郊区間251駅を新幹線ホームを除き禁煙とした。その結果、神奈川県内全駅の新幹線ホーム以外と、東海道本線の東京から神戸まで全駅の在来線ホームが禁煙となった。
JR九州は2012年(平成24年)4月1日に福岡と北九州都市圏在来線駅構内で、博多・小倉両駅の喫煙ルームを除き禁煙[5] とした。JR北海道でも2014年(平成26年)8月30日より、札幌圏(Kitacaエリア)の駅構内を全面禁煙(札幌・南千歳・新千歳空港駅の一部既存設備を除く)とした[6]。
改正健康増進法が施行された2020年(令和2年)4月時点で一部で喫煙できる場所が存在した列車としては、喫煙専用室が設置された東海道新幹線・山陽新幹線・九州新幹線のN700系・N700A・500系・N700SやクルーズトレインのTRAIN SUITE 四季島(E001形)、TWILIGHT EXPRESS 瑞風(87系)と、適用除外となる個室のあるサンライズ出雲・サンライズ瀬戸(285系)があった[7]。
JR東海・JR西日本・JR九州の3社は2024年(令和6年)3月16日に東海道・山陽・九州新幹線車内の喫煙ルームをすべて廃止した[8][9][10]。JR西日本は同時に山陽新幹線各駅の壁、天井等によって区画されていない喫煙コーナーを廃止した[11]。
私鉄の場合は、主に都市部で通勤形電車やそれに準ずる車両を用いる大手私鉄や地下鉄などは禁煙で、JR中距離電車に匹敵する運行距離の列車(近畿日本鉄道大阪上本町 - 鳥羽間快速急行150.4 km)でも、原則禁煙となっている。
2000年代以降はJR同様、専用車両を用いる優等列車でもほぼ全面禁煙となり、2020年代においては唯一近鉄特急が喫煙ルームを設置(客席は2020年2月より全面禁煙)していたが[12]、2024年3月1日に全ての喫煙ルームを廃止する[13]。
地下鉄については火災および煙の充満を防止する観点から、東京メトロは帝都高速度交通営団時代の1988年に、都営地下鉄は1991年にそれぞれ全駅で全面禁煙を実施した。
東京地下鉄を除く関東地方の大手私鉄(東武鉄道・西武鉄道・京成電鉄・京王電鉄・小田急電鉄・東京急行電鉄・京浜急行電鉄・相模鉄道)と新京成電鉄・北総鉄道は、健康増進法が施行された2003年に、喫煙場所を全廃して駅構内を禁煙としている。つくばエクスプレスは2005年開業時当初から駅構内禁煙であった。伊豆急行は、2009年10月1日に、駅構内にある喫煙コーナーを撤去し、全駅で全面禁煙化を行っている[14][15]。
中京地区は名古屋鉄道が2005年1月29日から、九州地区は西日本鉄道が2010年3月27日から、関西地区は2011年から南海電気鉄道[16][17]・山陽電気鉄道・神戸電鉄・北神急行電鉄・大阪府都市開発・ 阪神電気鉄道[18] が駅構内を全て禁煙とし、阪急電鉄・京阪電気鉄道・近畿日本鉄道は喫煙場所以外で駅構内全て禁煙[19][20][21] としている。
第三セクター鉄道では、IGRいわて銀河鉄道が2011年9月から駅構内を全て禁煙[22][23] としている。
路面電車、モノレール、新交通システム、トロリーバス、ガイドウェイバスの軌道やOsaka Metro等、軌道線として特許された路線は軌道運輸規程で車内喫煙が禁じられている。大阪市営地下鉄や神戸市営地下鉄は、駅構内は全面禁煙で、駅長室や駅倉庫などに職員用喫煙所が見られる[24][25]。
火災予防観点から長大なトンネルを含む地下鉄道構内は全て禁煙であった。それ以外の鉄道駅構内では「禁煙タイム」をラッシュアワー中心から全営業時間帯へ広げ、喫煙場所を限定して分煙を図っていたが、2000年代以降は上述のとおり、喫煙場所を廃止して終日全面禁煙とする鉄道事業者が増えている。
喫煙場所設置がない禁煙駅構内の煙草販売は、従来からの経過措置で許可されている。
ただし罰金及び科料の額等を物価変動に対応させる事を目的とした罰金等臨時措置法第2条第3項[26] に「科料で特にその額の定めのあるものについては、その定めがないものとする」とあることから現在の刑法第17条[27] が適用され千円以上1万円未満の科料となる。
この条項は軌道法からの直接の委任がないため、遅くとも1947年12月31日を以て失効とされているが、条文は削除されていない。
神奈川県条例では以下の交通関係施設を第1種禁煙施設に指定している。第1種禁煙施設では喫煙所以外での喫煙を禁じている。
兵庫県条例では以下の交通関係施設を受動喫煙防止区域に指定している。受動喫煙防止区域では喫煙所以外での喫煙を禁じている。
同条例の施行により、兵庫県内の鉄道駅(新幹線含む)はプラットフォームを含め完全禁煙となる(喫煙室を除く)。
以前は、座席のリクライニング禁止と同じく事故防止を理由に離着陸時のみ禁煙で、巡航中は喫煙可であった。しかし分煙化が出来ない航空機は非喫煙乗客からの苦情が絶えず、1980年頃から喫煙席は徐々に減少していった。1999年に国際民間航空機関勧告に則り、全日空と日本航空が全面禁煙を開始した(当初からトイレ内は防火上の理由で禁煙であるが、常識を弁えない乗客の煙草を消させる目的で、灰皿自体は設置されている)。2000年に北海道国際航空(エア・ドゥ、ADO)が喫煙席を導入する試みを行なったが短期間で廃止されている。また国際線でも2001年のエールフランス(パブリックスペースのみ喫煙可だった)を最後に日本発着路線はすべて禁煙化された。
喫煙席があった時代でも、葉巻やパイプタバコはその強烈な香りのため全面禁止だった[要出典]。
2004年1月15日より改正航空法が施行され、航空機のトイレ内での喫煙に対し、機長が中止を命じる事ができるようになり、中止に従わない場合は50万円以下の罰金に処せられる事になった。
ドイツでは2006年に全席が喫煙席(ただしファーストクラス)という内容で、デュッセルドルフ - 成田間の運航が計画されていた。ロンドンに本社を置く「スモーカーズ国際航空」が運航主体となる予定で、社長がヘビースモーカーとのこと。日本の健康増進法に抵触する可能性があり、結論は出ていなかった。結局この計画は頓挫した模様で、会社のウェブサイトも閉鎖されている。
この節の加筆が望まれています。 |
かつては鉄道車両同様に「ロングシート車は禁煙」、「クロスシート車は喫煙可」であったが、1975年頃より近距離路線バスが禁煙となり、長距離路線も禁煙化が早く浸透した。九州の高速バスでは1980年代から禁煙席が設けられたが、分煙化ができないという問題があり、のちに全席が禁煙化された。
現在は、日本国内の定期路線バスは長距離路線も含めて禁煙である。また、観光バス仕様車でも灰皿を設置していない車両もある。禁煙表示されたバスの車内で喫煙すると、道路運送法28条違反(旅客自動車運送事業運輸規則53条6号違反)となり、同法104条3号により20万円以下の罰金に処せられる。
桟敷(2等)席は防災上の観点から、禁煙としている船舶が多い。個室については各船会社で対応が分かれている。また船内に喫煙室を設けている船も多い。船内レストランは分煙、禁煙で対応が分かれる。禁煙に指定されている場所での喫煙は30万円以下の罰金に処せられる。
神奈川県内を発地または着地とする客船は、神奈川県条例が適用され禁煙とされる(喫煙室の設置は可能)。神奈川県条例に違反した場合は、2万円以下の過料となる。
タクシー車内の禁煙化は認可制であったのが届出制に変わり、その地域における禁煙車の割合が90%以上であれば屋外表示灯での表示義務がなくなったことから[47] 都道府県単位での実施が増加、2011年7月1日付で全都道府県で実施となった。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.