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日本のアニメ映画 ウィキペディアから
『劇場版マクロスΔ』(げきじょうばんマクロスデルタ)は、サテライト制作による日本のアニメーション映画。2016年放送のテレビアニメ『マクロスΔ』の劇場版作品である。
劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ(第1作) 劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!(第2作) | |
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監督 |
河森正治 ヤマトナオミチ(第2作副監督) |
脚本 |
根元歳三 河森正治(第1作) |
原作 |
河森正治 スタジオぬえ |
出演者 |
内田雄馬 鈴木みのり 瀬戸麻沙美 小清水亜美 JUNNA(歌) 安野希世乃 東山奈央 西田望見 |
音楽 |
鈴木さえ子 TOMISIRO 窪田ミナ |
制作会社 | サテライト |
製作会社 |
ビックウエスト 劇場版マクロスデルタ製作委員会 |
配給 | ビックウエスト |
公開 |
2018年2月9日(第1作) 2021年10月8日(第2作) |
上映時間 |
120分(第1作) 110分(第2作)[1] |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
興行収入 | $1,553,444(第2作)[2] |
前作 | マクロスFB7 銀河流魂 オレノウタヲキケ! |
『劇場版マクロスΔ 激情のワルキューレ』(げきじょうばんマクロスデルタ げきじょうのワルキューレ)は、2018年2月9日よりTOHOシネマズ系映画館ほかで公開された[3]。
『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!!』(げきじょうばんマクロスデルタ ぜったいライブ)は、2021年10月8日より公開[4]。同時上映は『劇場短編マクロスF 〜時の迷宮〜』[5]。
2016年10月のテレビアニメ『マクロスΔ』放送終了から約1年半の期間を経て公開された、劇場版作品である。キャッチコピーは「いつか この声が果てる その日まで[6]」。タイトルの「ワルキューレ」とは作中に登場する女性5人組の「戦術音楽ユニット」であり、その歌と声を担当する5人の声優・歌手が現実においても音楽活動を行っている。
「マクロスシリーズ」の前作『マクロスF』では最終話のテレビ放送直後に『劇場版 マクロスF』の製作が発表されたが、『マクロスΔ』の場合は放送終了後に映画化が検討されるものの、なかなか決まらずにいた[7]。音楽担当の福田正夫プロデューサーらは、2017年1月のワルキューレ2ndライブ(横浜アリーナ2DAYS[8])が最後のステージになると思い、様々なゲスト出演者を呼んでオールスター的な構成にした[9]。ワルキューレのメンバーは今後のことを知らないまま、ライブ最終日の本番前の楽屋でスタッフの「続きはやらないみたいですよ」という声を耳にしたが[10]、悔いの残らないようやり尽くすという気持ちでステージに臨んだ[11][12]。河森正治総監督は5人のパフォーマンスと観客の盛り上がりに感激し、打ち上げの挨拶で「ここまでがんばったワルキューレをここで終わらせてはいけない。許されるならデルタを続けたい」と述べ、ワルキューレのメンバーは号泣した[9]。番組プロデューサー陣も河森と同じ思いを抱き、「絶対に劇場版をやる」という方向に進むことになった[7]。なお、このライブ終演後に「マクロスシリーズ テレビアニメ最新作 2018年放送」が発表されたが[13]、『劇場版マクロスΔ』前後編が完結した2021年時点でも実現していない。
2017年8月5日にワルキューレが野外音楽フェスティバル「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」に出演した当日に映画製作がサプライズ発表され[14]、同年10月9日にラゾーナ川崎で行われた発表イベントで河森総監督から正式タイトルと公開日が発表された[15]。
来場者特典として、公開第1週目は実田千聖(CAPCOM)によるワルキューレメンバーの描き下ろしイラストミニ色紙全5種類[16]、第2週目はワルキューレを演じるアーティストの写真を用いた「アーティスト Photo ポストカード」全6種類[17]、第3週目から第5週目はフィルムコマ[18][19][20]がそれぞれランダムで配布された。
映画の内容はテレビ版のシナリオを再構築し、ストーリーの一部変更や新作シーン・再撮影を追加したものである[15](河森は再構成ならぬ「改・構成」と表現する[7])。これまでのシリーズと同様、テレビ版から劇場版になる際に変わる部分が多い[21]。「改・構成」は総カット数2,100 - 2,200のうちバンク(テレビ版からの流用)が約1,000、新作カットが約500、バンクに手を加えた「バンク+α」が約700となる[22]。まず河森がバンクの流用編集メモと大まかなあらすじを作ってからシナリオの打ち合わせに入り、前半のバンクメインパートはシナリオなしで河森が直接絵コンテを作成し、後半の新作メインパート[注 1]は脚本の根元歳三が参加してシナリオを作成した[22]。絵コンテは新作カットの多いシーンから先にあがり、バンクに手を加える部分は絵コンテによる指示から制作管理表が作成され、アニメーターや背景スタッフが入って細部の変更から、ときにはほぼ新作に近いような作業まで実施した[22]。
劇場版のポイントとして、ワルキューレの新曲や戦闘シーンの補強が挙げられる[15]。新曲「チェンジ!!!!!」が流れるワルキューレの新規ライブシーンは、シリーズの本編映像で初めてキャラクターを含めてすべてコンピュータグラフィックス(CG)で描くという試みがなされている[23]。河森は過去のシリーズ作品でも未来的なステージ演出を試みてきたが、本作の制作時点における現実世界ではすでにプロジェクションマッピングなどの技術が普及しており、それを超えるインパクトを表現する必要から重力の制約を外し、ロシアでの取材時に見かけた時計台の幾何学的なオブジェクトを参考にしたライブステージを構成した[23]。キャラクターのCGはリズムゲーム『歌マクロス スマホDeカルチャー』のモデルをベースとして大画面用に再監修したものが制作され、手描きでは難しい実田によるキービジュアルの衣装が用いられている[24]。また河森によるとテレビ版の後半では戦闘シーンが「諸事情」によって少なくなり、三段変形を特徴とする主役メカの可変戦闘機もバトロイド(人型ロボット)形態をあまり出せなかったことから、「そのストレス解消的な」戦闘シーンの追加やバトロイドの出番の補強などを行なっているという[25]。
ワルキューレの2ndライブで受けた印象から、「情熱やテンションの高さ」を劇場版のモチーフにしている[7]。河森は上映時間の関係もあって、本作はこれまでシリーズ作品の伝統的要素だった「三角関係」よりもワルキューレを中心に据えた物語の構成となっており、またタイトルの「激情」は「劇場版」とかけつつ、初見の観客でも楽しめるよう謎解きより感情を重視していることを表明したものだと語っている[26]。
「Filmarks」が発表した2月第2週(10日・11日・12日)の初日満足度ランキングでは第6位[27]。「ニュータイプアニメアワード2017-2018」では、「メカデザイン・プロップデザイン賞」で第7位となった[28]。
『激情のワルキューレ』からおよそ3年8か月を経て公開された完全新作劇場版。キャッチコピーは「歌うことは 生きること[30]」、「逝かせてあげる 堕天使の歌で[31]」、「銀河争奪歌合戦[4]」。
2018年9月23日、『激情のワルキューレ』の映像ソフト購入者限定イベント「ワルキューレ『扇情のプレミアムライブイベント』at 豊洲PIT」で完全新作劇場版の製作が発表された[32]。2019年6月1日・2日開催のイベント「SANKYO presents MACROSS CROSSOVER LIVE 2019 at 幕張メッセ」で『絶対LIVE!!!!!!』のタイトルが発表され[33]、2020年10月3日には2021年公開予定とされた[30]。2021年2月6日にライブ配信された「#エアマクロス F(フロンティア)ライブ2021」で、『劇場短編マクロスF 〜時の迷宮〜』との同時上映となることが発表された[34]。2021年7月4日には公開時期が「2021年秋」とされ[5]、2021年9月18日、公開日が2021年10月8日に決定したことと、新音楽ユニット「Yami_Q_ray(ヤミキューレ)」を描いたキービジュアルと本予告が発表された[4]。本予告では、第1作『超時空要塞マクロス』をはじめとするシリーズ作品における天才パイロットで、『Δ』のキャラクターのひとりミラージュ・ファリーナ・ジーナスの祖父であるマクシミリアン・ジーナス(マックス)が登場することも明かされた[4][35]。
公開前日の10月7日22時からは、YouTubeとSHOWROOMで『マクロスがとまらない』の特別番組『劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!! 10.8全国ロードショー 劇場版マクロスΔ冒頭5分29秒を一緒に観よう!!!!!! 〜マクロスは絶対とまらない〜』がライブ配信され、『絶対LIVE!!!!!!』の冒頭5分29秒が流された[36]。また2021年10月10日まで、東京メトロ新宿駅のメトロプロムナードに大型ポスターが掲出された[37]。
公開日からの入場者特典として、2022年4月9日・10日に幕張メッセで開催される「ワルキューレ LIVE 2022 〜Walküre Reborn!〜」のチケット先行申し込み用シリアルコードが記された原画アートカードが配布された[38]。絵柄は5週目まで1週間ごとに異なる3種類からランダムで配布され、6週目と7週目はシリアルコードのつかない原画カードが各週2種類配布された[39]。
前作に引き続き監督を務める河森は、『激情のワルキューレ』の続編制作を期待する話を以前からしていたところ、「『マクロスF』と同時上映という形式ならいけるんじゃないかという声が出てきた」という経緯があって実現したことを語っている[40]。本作と『時の迷宮』は、ほぼ並行制作であったという[41]。
『激情のワルキューレ』がワルキューレを中心に据えた物語であったことから、『絶対LIVE!!!!!!』では物語の本来の主人公であるハヤテ・インメルマンとその相手役となるワルキューレメンバーのフレイア・ヴィオン、そしてハヤテが所属するΔ小隊の活躍と成長を描くことが決まっていた[42]。ハヤテとフレイアの関係を中心に描くにあたり、河森は「三角関係」を本作では「やらない」と明言したといい、その意思表示も兼ねて序盤でハヤテがフレイアに告白するシーンを入れている[42]。そのぶん、『Δ』においてハヤテをめぐる三角関係の一角を担った[43]ミラージュも、別のかたちでの活躍が描かれている[42]。本作でフレイアが迎えることになる結末については、議論のすえに全員が覚悟を決める瞬間があり、脚本を手掛けた根元も「自分達が、それを避けているから、そこを避けている限りまとまらない、という事に気づいた」と語った[42]。
制作にあたっては6つから7つのパートに分け、各パートごとに演出と作画監督を起用する方法がとられた[42]。メカアクションのシーンは河森がみずから絵コンテを切っており、上がってきたCGのカットもすべてチェックして仕上げている[42]。冒頭、フレイアの故郷ウィンダミア王国で開催される停戦記念ライブのシーンは新曲「唇の凍傷」が用いられ、前作と同じくフルCGで表現されているが、差別化のために会場を街全体に展開し、雪に覆われたウィンダミアのイメージからスケートや雪の結晶などをモチーフとしてワルキューレが空中でスケートを行なうライブとなった[44]。
アフレコが行なわれたのは公開の1年前であった[45]。この際スタッフの配慮により、フレイア役を演じる鈴木みのりのために河森と話す機会が作られたといい、鈴木は「この様な結末にいくまでの経緯。フレイアを通し、作品を通し、何を伝えたいか?という話を、河森監督から聞いた。頑張ろうと思った。」と明かしている[45]。本作はエンドロール後にラストシーンが入るが、これは出演者にも知らされておらず、アフレコ終了後、ハヤテ役の内田雄馬とフレイア役の鈴木だけが居残りとなり、サプライズとして河森がふたりにラストシーンを書いた紙を渡した[46][注 2]。
タイトルの「LIVE」は歌の「LIVE」と生きることの「LIVE」をかけている[48]。感嘆符を6つ並べた「!!!!!!」はワルキューレの5人と、上述のラストシーンに登場するキャラクターを表している[49]。
興行通信社が発表した10月9日・10日の全国映画動員ランキングでは初登場第6位[50][51]、翌週の10月16・17日は第8位[52]、第3週の10月23日・24日は第11位[53]。「Box Office Mojo」の調べによると興行収入は1,553,444米ドル[2]。
「Filmarks」が発表した初日満足度ランキングでは第2位を記録した[54]。「アニメイトタイムズ」が発表した「アニメ映画ソング神曲ランキング2021」では、挿入歌の「唇の凍傷」が第3位、「ワルキューレはあきらめない」 が第11位、「ALIVE〜祈りの唄〜」が第18位にランクインした[55]。「ニュータイプアニメアワード2021-2022」では、「プロップ・メカデザイン賞」で第3位、「作品賞(映画)」で第9位となった[56]。
2022年9月16日からはMX4D版が上映され、同月17日には監督の河森とフレイア役の鈴木が舞台挨拶を行なった[57][41]。
21世紀、異星人ゼントラーディと戦争を経て和平を結び「新統合政府」を樹立した地球人類は、種の存続を目的に、「フォールド」と呼ばれる超時空航行・通信技術を用いて宇宙移民を開始し、半世紀あまりのあいだにさまざまな異星の人類種と出会いながら、その版図を銀河系全域へと拡大しつつあった。しかしあるとき、突如自我を失い暴徒と化す病「ヴァールシンドローム」が人類種のあいだで蔓延しはじめる。星間複合企業体「ケイオス」はこれに対抗すべく、ヴァールを沈静化する「生体フォールド波」を発する歌声をもつ戦術音楽ユニット「ワルキューレ」を結成し、可変戦闘機VF-31 ジークフリードを駆る「Δ(デルタ)小隊」がその護衛を務める。
西暦2067年、銀河系辺境域の「ブリージンガル球状星団」。ワルキューレとΔ小隊は惑星イオニデスで発生したヴァールの鎮圧中、所属不明の可変戦闘機部隊(アンノウン)と遭遇する。戦いのなか、ワルキューレ以外の生体フォールド波を探知したΔ小隊の新人パイロット、ハヤテ・インメルマンは、同僚のミラージュ・ファリーナ・ジーナスの制止も聞かず、発信源の貨物船へと潜入する。ハヤテはそこで、自分の歌によってヴァールを沈静化する少女、フレイア・ヴィオンと出会う。
ワルキューレに入るために故郷を飛び出してきたフレイアはその素質を認められ、本拠地の惑星ラグナで訓練に励むものの、本来の実力を発揮できずにいた。ハヤテは元気づけるためにフレイアを自分の機体に乗せて飛び、ワルキューレメンバーもフレイアのために歓迎会を開いて、ワルキューレ結成以来の苦労を語る。
そして、ワルキューレは惑星アル・シャハルでフレイアのデビューライブを開催する。しかしその途中、例のアンノウンが襲来し、さらに謎の歌声が響くとともにヴァール化した新統合軍と駐留ゼントラーディの部隊が市街地で暴れはじめる。命がけの状況下でフレイアの歌の力がついに覚醒し、ワルキューレとΔ小隊の活躍によりヴァールは沈静化するが、アンノウンはその正体がフレイアの故郷「ウィンダミア王国」の精鋭部隊「空中騎士団」であることを明かし、王国の実権を握る宰相ロイド・ブレームが新統合政府に対して宣戦を布告する。自分たちウィンダミア人こそが、かつて銀河を支配し人類種を創造した星間文明種族「プロトカルチャー」の正統な後継者だと信じるロイドは、新統合政府による搾取からの解放を大義に掲げつつ、国王ハインツ・ネーリッヒ・ウィンダミアが歌う「風の歌」によってヴァールを操り、球状星団内の各惑星に眠るプロトカルチャー遺跡を復活させてフォールド波増幅発信フィールドを完成させようとしていた。
故郷が戦争をはじめたことで動揺を隠せずにいるフレイアを励ますため、ワルキューレらケイオスの面々は誕生日を祝うサプライズパーティーを開く。短命種族であるウィンダミア人にとって人生の折り返しとなる日をこのようなかたちで迎えられたことにフレイアは感涙し、さらにハヤテから故郷を思い起こさせる人工雪をプレゼントされ、大きく思いを深める。そのかたわらで、Δ小隊のエース、メッサー・イーレフェルトは、ワルキューレのリーダー、カナメ・バッカニアに、かつて自身がヴァール化しかけた際、その歌声によって救われていたことを明かし、小隊から去ることを告げる。メッサーは以前よりヴァール化とそこからの回復を繰り返しており、その肉体はすでに限界を迎えていた。
ウィンダミアの狙いを探るため、ケイオスはウイルスを仕込んだワルキューレの映像を銀河ネットワークに配信して通信障害を引き起こし、その隙にワルキューレとΔ小隊が前回の戦闘で強力な生体フォールド波が観測されたアル・シャハルの遺跡へと突入する。ワルキューレが歌で遺跡に干渉しようとしていることを察知したロイドがハインツに「風の歌」を歌わせると、両者の歌が激しく干渉しあい、各惑星の遺跡上にプロトカルチャーの巨大システムが出現する。その干渉の影響で、ハインツはウィンダミア人の老化現象である皮膚の結晶化が急激に進行し、フレイアの手にも結晶化が生じる。歌が止んだことでワルキューレとΔ小隊は空中騎士団の猛攻を受け、絶体絶命の危機におちいる。そこへメッサーが駆けつけ、カナメの歌声とともに、これまでの戦いで自身と互角に渡りあった空中騎士団のエース、キース・エアロ・ウィンダミアと激闘を交わす。その果てに勝利するものの肉体の限界を超えたメッサーは、カナメの腕に抱かれながら最期を迎える。ウィンダミア側のさらなる攻撃によりハヤテとミラージュは撃墜されて行方不明となり、ワルキューレは捕虜にされる。
ロイドはワルキューレのエース、美雲・ギンヌメールの正体が、新統合軍によって盗み出されたウィンダミアにおける伝説の存在「星の歌い手」の細胞から造られたクローンであることをワルキューレメンバーに告げ、さらにみずからが流したプロパガンダ映像を信じてワルキューレを非難する人々の姿を見せ、ウィンダミアへの協力を促す。これに対しフレイアたちは、自分たちの歌を必要とする者がいる限り、命をかけて歌いつづけると言い切る。
ケイオスはワルキューレを奪還すべく、ウィンダミア主力艦隊への奇襲作戦「オペレーション・ラグナロク」を始動する。一方、敵艦に潜入していたハヤテとミラージュも、それぞれ鹵獲(ろかく)されていたメッサーの機体と、待機中の機体に搭乗して出撃するが、ウィンダミア艦隊はラグナに出現した、異常なフォールド波を発する巨大神殿のもとへ向けてフォールドを行う。ロイドに操られた美雲の「星の歌」によってプロトカルチャーシステムが起動し、全銀河の人類種の意識をひとつに統合させ、銀河そのものともいうべき巨大なネットワークを形成する。自我が薄れゆくなか、ハヤテを思うフレイアの「命の歌」をきっかけに、ハヤテたちやワルキューレメンバーは意識を取り戻し、美雲も仲間たちの歌声に応じて呪縛を打ち破る。しかし、逆上するロイドの感情に呼応して、プロトカルチャーシステムが暴走をはじめる。フレイアたちは空へと飛び出して意識を奪われかけたハヤテたちに歌を届け、ワルキューレとΔ小隊の命をかけた姿に心を動かされたキースは、空中騎士団を率いてその援護に回る。ハヤテとミラージュは巨大神殿内部に突入し、美雲の救出と中枢部の破壊に成功する。そしてキースは盟友であったロイドを討ち、最期の瞬間に心を通わせながら、ともに爆炎のなかに姿を消す。ウィンダミアは新統合政府に和平交渉の申し出を行い、戦争終結への道筋が立てられる。
その後、ケイオスの面々は「クラゲ送り」と呼ばれるラグナの風習に従ってメッサーの魂を海へと還し、ワルキューレは夜明け空に浮かび上がってゆくクラゲの群れのもとで「命の歌」を捧げる。
2068年[58]、ウィンダミアと新統合政府の和平交渉が進められるなか、ワルキューレはウィンダミアの王都ダーウェントで停戦記念ライブを開催する。そしてフレイアはワルキューレメンバーやΔ小隊、空中騎士団とともに故郷レイブングラス村に帰り、村人たちに暖かく迎え入れられ楽しいひとときを過ごす。しかしそこへ、異星人の排斥を叫ぶ村人の一団が現れて場を荒らしだす。空中騎士団のボーグ・コンファールトは彼らと同じく地球人に対するわだかまりを抱えながらも、ハインツの意思に従ってワルキューレの護衛に回り、神官のヨハン・ウインリーが仲裁に入ることで、ひとまず争いは避けられる。その夜、フレイアは祖母や両親たちから受け継がれてきた大切なリンゴ畑をハヤテに案内し、ハヤテもパイロットだった亡き父ライトとの思い出を語る。ウィンダミアに伝わる伝説の歌を歌うフレイアに、ハヤテは自分の思いを告白し、フレイアは自分を10日しか咲かないリンゴの花にたとえて躊躇しつつも、ハヤテの思いに応えようとする。
そのとき、謎の歌声とともに改造マクロス級「バトル・アストレア」が出現し、同艦に搭載された無人可変戦闘機(ゴースト)部隊が襲撃を開始する。爆撃により村とリンゴ畑が火の海と化すなか、ワルキューレは歌で敵の生体フォールド波に対抗し、Δ小隊と空中騎士団、旗艦を発進させたハインツが迎撃にあたるが、美雲に似た「闇の歌い手」の歌で強化された敵の猛攻に追いつめられてゆく。そこへ、ミラージュの祖父マクシミリアン・ジーナス(マックス)が艦長を務めるケイオス・リスタニア支部所属「マクロス・ギガシオン」が駆けつけ、ワルキューレとΔ小隊、ボーグたちを収容してウィンダミアから撤退する。
ギガシオンの医務室でハヤテたちは、村人を守るために遺跡のバリアを起動し、感覚器官「ルン」を激しく輝かせて全身が結晶化したヨハンの最期に立ち会う。ヨハンは、特務諜報員だったライトが「星の歌い手」の細胞をウィンダミアのために奪還しようと尽力したことをハヤテに語り、ルンを輝かせて歌うことの代償にみずからの命を削っていたフレイアには「なんのために生き、なんのために歌うのか」を考えるように告げる。
ウィンダミアとラグナを制圧した組織「ヘイムダル」の指導者イアン・クロムウェルは、新統合政府に多大な影響を及ぼしケイオスに指示を与える存在「レディM」がプロトカルチャーの進んだテクノロジーを制限・独占することで人類を裏から支配してきたと主張し、これを排除して人類を解放すると宣言する。もうひとりの「星の歌い手」の細胞を組み込んだ量子AIシステム「セイレーンデルタシステム」から生まれたヴァーチャロイド「闇の歌い手」を利用し、球状星団の遺跡すべての制圧をもくろむヘイムダルに対抗すべく、マックスはレディMからのオーダーを皆に伝える。
ギガシオンは反攻拠点である元ゼントラーディの工場衛星にたどりつく。Δ小隊は新たにボーグを隊員に加え、ワルキューレの歌に共鳴して性能を向上させるフォールドクォーツを増設した機体、VF-31AX カイロスプラスの訓練に入るが、天才パイロットであるマックスとの模擬戦で惨敗を喫する。ハヤテとボーグのいがみ合いを制止しつつも自身の才能に劣等感を抱くミラージュに対し、マックスは「エースの才能はない」と断じる。ハヤテは、燃える畑で拾っていたリンゴの実をフレイアに届け、種から畑をよみがえらせようと励ますが、寿命の異なる種族としての違いに直面することになり、ミラージュやワルキューレのメンバーは、悩むふたりを後押しする。
ギガシオンのブリッジに戻ったマックスとΔ小隊の隊長アラド・メルダースは、潜入していたヘイムダルのロボット兵器に襲われる。なんとかこれを破壊するもののアラドは重傷を負い、ギガシオンの居場所と亜空間に存在するレディMこと「レディ・メガロード-01」の座標を敵に把握される。ほどなくして敵ゴーストの編隊が襲来し、セイレーンデルタシステムがワルキューレを学習することで、「闇の歌い手」は5人のヴァーチャロイド・ユニット「Yami_Q_ray(ヤミキューレ)」となる。その歌により球状星団の各惑星にプロトカルチャーシステムが出現し、全銀河につながるスーパーフォールドゲートが形成される。侵入した敵を迎撃するハヤテの危機に際して、極限まで高まったフレイアの生体フォールド波が共鳴し、ハヤテは感覚拡張を起こして意識を暴走させながらも善戦する。しかし、そのために激しくルンを輝かせたフレイアは結晶化が全身に広がり、立つこともままならなくなるほどに衰弱する。
爆発する工場衛星から離脱し、他の艦隊と合流したギガシオンは、惑星アルヴヘイムの遺跡に開かれるゲートを利用してウィンダミアへと攻め込む作戦に臨む。作戦開始直前、フレイアは治療室を抜け出しワルキューレとして歌おうとしながらも、ハヤテに死への恐怖を吐露して葛藤に苦しむ。それを聞いたハヤテは、自分と一緒に生きてほしいと願ってフレイアを抱きしめる。
銀河各地にゲートが開き戦乱が勃発するなか、「オペレーション・ヨルムンガンド」を始動したギガシオン率いる艦隊はゲートを突破し、ウィンダミアへとたどり着く。亜空間へつながるゲートを開いてメガロード-01を出現させ、主砲ハイパーマクロスキャノンでこれを消し去ろうとするアストレアに対して、アラドの任命によりミラージュが隊長を務めるΔ小隊がフォールドジャミングで歌の効果を封じ、ギガシオン率いる艦隊がマクロスキャノンを一斉に発射するが、ジャミングに対応したセイレーンデルタシステムに強化された次元バリアに防がれる。ウィンダミアの地表もろともメガロード-01を葬ろうとする主砲の発射を阻止するには、ワルキューレの歌でカイロスプラスの出力を上げて次元バリアを突破し、アストレア内部のシステムを破壊するしかない。いつかあらゆる戦いを終わらせて皆で一緒に生きるというハヤテの言葉に呼応して、フレイアはリンゴの種を入れたペンダントを身につけ、ワルキューレメンバーと合流する。自分にとって生きるとはワルキューレとして歌うことだというフレイアは、皆と一緒に「絶対生きたい」と叫ぶ。ワルキューレの5人は思いをひとつにして熱唱し、ハヤテも歌に支えられながらワルキューレを守って飛ぶ。激戦のなか、ミラージュはリーダーとしての才能を開花させ、それを見たマックスはブリッジで指揮を執るアラドに艦長の座を譲り、パイロットとして出撃する。そしてハヤテはマックスとΔ小隊に背後を任せ、アストレアへと突撃する。次元バリアに阻まれたハヤテに向けて、フレイアたちはウィンダミアに伝わる伝説の歌を歌う。その歌を感じ取ったウィンダミア人たちも合わせて歌い、それぞれのルンがまるで花のように輝きだす。セイレーンデルタシステムの内部でも大きな変化が生じてYami_Q_rayの闇フレイアも同じ歌を歌いだし、ハヤテはついにバリアを突破してアストレアのブリッジに突入する。艦にひとり残ったクロムウェルの手により主砲が放たれる寸前、ギガシオン率いる艦隊の砲撃が命中して照準は外れ、発射時の誘爆によりアストレアは爆沈する。ハヤテは、「星の歌い手」の細胞から生まれた新たな命を宿したセイレーンデルタシステムの中枢部を保護して生還する。
ウィンダミアの大地に降りてゆくギガシオンのステージで目を覚ましたフレイアに、ハヤテはセイレーンデルタシステムから取り上げた、頭にルンをもつ赤子の姿を見せる。そしてハヤテに抱きかかえられたフレイアの眼前には、歌いつづけるウィンダミア人たちの「ルンの花」がリンゴの花のように美しく輝く光景が広がる。それからしばらく語りあったのち、フレイアはハヤテと口づけを交わし、安らかな眠りにつく。
時は流れ、白い花を咲かせたリンゴ畑で、ハヤテとルンをもつ子供が仲睦まじく過ごしているところで物語は終わる。
当記事では各人物の基本設定、およびテレビ版『マクロスΔ』との相違点について記す。
劇場版の変更点を中心に記す。
曲名に※がついているものは本作のための新曲。
エンディングクレジットの表示順に記す。
エンディングクレジットの表示順に記す。
発売日 | タイトル | 規格品番 | 備考 |
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2018年2月14日 | ワルキューレは裏切らない | VTCL-35269 | ワルキューレ3rdシングル 『激情のワルキューレ』新曲 |
2020年5月27日 | 未来はオンナのためにある | VTCL-35315 | ワルキューレ4thシングル 『絶対LIVE!!!!!!』イメージソング |
2021年10月13日 | Walküre Reborn! | VTCL-60549 | ワルキューレ3rdアルバム 『絶対LIVE!!!!!!』の楽曲を収録 |
2021年10月20日 | 劇場版マクロスΔ 絶対LIVE!!!!!! オリジナルサウンドトラック | VTCL-60550 | 『絶対LIVE!!!!!!』サウンドトラック |
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