アベイ・ド・ロンシャン賞: Prix de l'Abbaye de Longchamp)は、フランスギャロ凱旋門賞ウィークエンドの2日目にフランスパリロンシャン競馬場直線1000メートルで施行する競馬平地重賞競走である。モーリス・ド・ゲスト賞と並ぶフランス短距離路線の最高峰競走としてグループ1(G1)に指定されている。

概要 アベイ・ド・ロンシャン賞 Prix de l'Abbaye de Longchamp, 開催国 ...
アベイ・ド・ロンシャン賞
Prix de l'Abbaye de Longchamp
開催国 フランスの旗フランス
主催者 フランスギャロ
競馬場 パリロンシャン競馬場
創設 1957年10月6日
2014年の情報
距離 芝直線1000m
格付け G1
賞金 賞金総額35万ユーロ[1]
出走条件 サラブレッド2歳以上
負担重量 2歳54kg、3歳以上62kg
牝馬1.5kg減
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概要

1957年にパリロンシャン競馬場の100周年を祝いムーラン・ド・ロンシャン賞とともに創設。競走名のアベイとは修道院のことであり、かつて競馬場の北端に建っていた女子修道院[注 1]にちなみ名付けられた。創設時から現在と同じパリロンシャン競馬場の直線芝1000メートルで凱旋門賞と同日に施行されている。

本競走は創設時から2歳から出走が可能であり、最初の10年間は第1回からテクサナが優勝[注 2]するなど2歳馬が6勝と古馬と互角に渡り合っていた。しかし、1967年に地元の2歳馬ゼダーンが英国生産のドイツ調教馬ペンタスロンの2着に敗れた後、2歳馬の優勝は1978年のシジーによる1回だけである[注 3]1968年以降は英国をはじめとする外国からの遠征馬が優勢となっており地元のフランス調教馬も勝てていない[注 4]1997年にはジュライカップとモーリス・ド・ゲスト賞を含む6連勝中のフランス調教馬アナバーがクビ差の2着に敗れた。だが、彼に勝ったのは同厩馬のキステナ[注 5]でありシジー以来18年ぶりとなるフランス調教馬の勝利は果たされている。

日本では1999年エルコンドルパサー凱旋門賞挑戦に注目が集まる中、一足早く武豊が騎乗する日本調教馬アグネスワールドが優勝したことで一躍有名な競走となった。武豊は2001年にも地元のジョン・ハモンド厩舎所属のインペリアルビューティ[注 6]で優勝している。なお、同年からせん馬にも開放され今までで最多となる19頭立てで行われた。2007年には前年スプリンターズステークス5着で当年も出走を予定していたベンバウンが優勝している[注 7]

欧州での競馬シーズンの終盤に開催され、欧州中からトップスプリンターが集まる事実上のフランス短距離最高峰競走であり、英国のジュライカップと並ぶ欧州短距離路線の最重要タイトルとされる。

歴史

  • 1957年
    • パリロンシャン競馬場で行われる芝1000mの重賞競走、アベイ・ド・ロンシャン賞として創設。
    • フランソワ・デュプレの所有馬である2歳牝馬テクサナ(Texana)が優勝[注 2]
  • 1958年 - 史上最少の4頭立てのレースとなる。
  • 1961年 - エティエンヌ・ポレ厩舎が、毎年違う馬での3連覇を達成。
  • 1964年
    • テクサナの全妹テクサニタ(Texanita)が史上初の連覇。
    • フランソワ・デュプレが馬主として史上初の3連覇。
  • 1966年 - フランソワ・マテ厩舎が5連覇を達成。
  • 1967年 - ドイツ調教馬ペンタスロン(Pentathlon)が外国調教馬として初めて優勝。
  • 1971年 - グループ制の導入に伴い、G2に格付け。
  • 1976年
    • G1に昇格。
    • メンディップマン(Mendip Man)とジョンティオンブル(Gentilhombre)が同着優勝。
  • 1977年 - ジョンティオンブルが史上2頭目の連覇。
  • 1982年 - 一昨年・前年と続けて2着だったシャーポ(Sharpo)が優勝。
  • 1985年 - コミッティド(Committed)が3頭目の連覇。
  • 1986年 - ダブルシュワルツ(Double Schwartz)が優勝、父・ダブルフォーム(Double Form)との史上初の父仔制覇。
  • 1988年 - 1位入線のカドージェネルー(Cadeaux Genereux)が最下位に降着。
  • 1993年 - 史上最大の6馬身差でロックソング(Lochsong)が優勝。
  • 1994年 - 5馬身差でロックソングが史上4頭目の連覇。
  • 1999年 - 日本調教馬のアグネスワールドが優勝、同厩舎のドージマムテキは13着。
  • 2001年 - 出走条件を緩和し騸馬にも開放。
  • 2005年 - 2003年優勝馬パタヴェリアン(Patavellian)の半弟エイヴォンブリッジ(Avonbridge)が優勝。
  • 2008年 - ハンガリー調教馬のウーヴェルドーズ(Overdose)が1位入線(0.54.5)するも、ゲートの故障によりフリーティングスピリット(Fleeting Spirit)がスタートできておらずレース不成立。再レースとなったがほとんどの馬はゴールまで走り切っており、ウーヴェルドーズを含む3頭が疲労により出走を取り消した。
  • 2009年
  • 2010年 - 史上最多の21頭立てのレースとなる。
  • 2011年 - ブリーダーズカップ・チャレンジシリーズから除外[注 8]
  • 2012年 - 賞金総額が30万ユーロから35万ユーロに増額。
  • 2016年2017年 - シャンティイ競馬場で代替開催。
  • 2022年 - ザプラチナムクイーン(The Platinum Queen)が2歳馬として44年ぶりの優勝。

歴代優勝馬

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回数施行日調教国・優勝馬日本語読み性齢タイム優勝騎手管理調教師馬主
第1回1957年10月6日フランスの旗Texanaテクサナ牝2F.マテF.デュプレ(en)
第2回1958年10月5日フランスの旗Edellicエデリック牡30:58.4M.ガルシアF.マテL.ヴォルテッラ夫人
第3回1959年10月4日フランスの旗Sly Polaスライポーラ牝2E.ポレ
第4回1960年10月9日フランスの旗High Bulkハイバルク牝21:01.5J.マサールE.ポレP.モット
第5回1961年10月8日フランスの旗L'Epinayレピネイ牡31:01.2R.ポワンスレE.ポレJ.Pierari
第6回1962年10月7日フランスの旗Fortinoフォルティノ牡30:59.1Y.サンマルタンF.マテF.デュプレ
第7回1963年10月6日フランスの旗Texanitaテクサニタ牝2Y.サンマルタンF.マテF.デュプレ
第8回1964年10月4日フランスの旗Texanitaテクサニタ牝30:59.6T.グレノン(en)F.マテF.デュプレ
第9回1965年10月3日フランスの旗Silver Sharkシルバーシャーク牡20:59.7Y.サンマルタンF.マテアーガー・ハーン4世
第10回1966年10月9日フランスの旗Farhanaファラナ牝21:00.5Y.サンマルタンF.マテアーガー・ハーン4世
第11回1967年10月8日ドイツの旗Pentathlonペンタスロン牡30:59.5F.ヘッドH.ダナーF.オスターマン
第12回1968年10月6日イギリスの旗Be Friendlyビーフレンドリー牡41:00.2G.ルイス(en)C.ミッチェルP.オサリバン
第13回1969年10月5日イギリスの旗Tower Walkタワーウォーク牡30:59.0L.ピゴットG.BarlingV.ハーディ
第14回1970年10月4日イギリスの旗Balidarバリダー牡40:58.4L.ピゴットJ.ウィンターD.Prenn
第15回1971年10月3日イギリスの旗Sweet Revengeスウィートリヴェンジ牡41:02.0G.ルイスT.コーベットアッテンボロー夫人
第16回1972年10月8日イギリスの旗Deep Diverディープダイバー牡30:57.0W.ウィリアムソン(en)P.デイビーD.ロビンソン
第17回1973年10月7日イギリスの旗Sandford Ladサンフォードラッド牡30:59.2A.マーレイH.プライスC.Olley
第18回1974年10月6日フランスの旗Moubarizモバリッズ牡30:59.7H.サマニF.マテアーガー・ハーン4世
第19回1975年10月5日フランスの旗Liangaリャーンガ牝40:59.2Y.サンマルタンA.ペンナ(en)D.ウィルデンシュタイン
第20回1976年10月3日イギリスの旗Gentilhombreジョンティオンブル牡31:00.3T.マキューンN.アダムJ.デービス夫人
フランスの旗Mendip Manメンディップマン牡4A.ジベールA.Paus
第21回1977年10月2日イギリスの旗Gentilhombreジョンティオンブル牡40:56.0P.クックN.アダムJ.マレル
第22回1978年10月1日フランスの旗Sigyシジー牝20:59.1F.ヘッドC.ヘッドA.ヘッド夫人
第23回1979年10月7日イギリスの旗Double Formダブルフォーム牡40:56.7J.リード(en)R.ジョンソン・ホートンH.ティッセン男爵夫人
第24回1980年10月5日イギリスの旗Moorestyleムーアスタイル牡30:56.3L.ピゴットR.アームストロングMoores International Furnishings
第25回1981年10月4日イギリスの旗Marwellマーウェル牝30:59.7W.スウィンバーンM.スタウトE.ローダー
第26回1982年10月3日イギリスの旗Sharpoシャーポ(en)牡51:01.2P.エデリーJ.ツリー(en)M.Scheriffe
第27回1983年10月2日イギリスの旗Habibtiハビブティ(en)牝30:54.3W.カーソンJ.ダンロップM.ムタワ
第28回1984年10月7日アイルランドの旗Committedコミッティド牝40:59.8S.コーゼンD.ウェルド(en)R.サングスター(en)
第29回1985年10月6日アイルランドの旗Committedコミッティド牝50:55.2M.キネーンD.ウェルドA.ポールソン(en)
第30回1986年10月5日イギリスの旗Double Schwartzダブルシュワルツ牡50:56.8P.エデリーC.ネルソンR.サングスター
第31回1987年10月4日アイルランドの旗Poloniaポローニア牝30:56.7C.ロシェ(en)J.ボルジャー(en)H.クフャトコフスキ
第32回1988年10月2日イギリスの旗Handsome Sailorハンサムセーラー牡50:57.0M.ヒルズ(en)B.ヒルズR.サングスター
第33回1989年10月8日イギリスの旗Silver Flingシルヴァーフリング牝40:59.9J.マティアスI.ボールディング(en)G.ストローブリッジ(en)
第34回1990年10月7日イギリスの旗Dayjurデイジュール牡30:58.7W.カーソンW.ハーン(en)シェイク・ハムダン
第35回1991年10月6日イギリスの旗Keen Hunterキーンハンター牡40:59.4S.コーゼンJ.ゴスデン(en)シェイク・モハメド
第36回1992年10月4日イギリスの旗Mr Brooksミスターブルックス(en)牡51:02.3L.ピゴットR.ハノン(en)P.グリーン
第37回1993年10月3日イギリスの旗Lochsongロックソング(en)牝50:59.7L.デットーリI.ボールディングJ.C.スミス
第38回1994年10月2日イギリスの旗Lochsongロックソング牝60:57.2L.デットーリI.ボールディングJ.スミス
第39回1995年10月1日イギリスの旗Hever Golf Roseヒーヴァーゴルフローズ(en)牝40:57.7J.ウィーバー(en)T.ノートンM.ハンソン
第40回1996年10月6日フランスの旗Kistenaキステナ牝30:59.3O.ドゥルーズC.ヘッドヴェルトハイマー兄弟
第41回1997年10月5日イギリスの旗Carmine Lakeカーマインレイク牝30:56.9J.リードP.チャップルハイアムR.サングスター
第42回1998年10月4日イギリスの旗My Best Valentineマイベストバレンタイン牡80:58.9R.コクレーンV.ソーンThe Valentines
第43回1999年10月3日日本の旗Agnes Worldアグネスワールド牡41:01.4武豊森秀行渡辺孝男
第44回2000年10月1日アイルランドの旗Namidナミド牡40:55.1J.ムルタJ.オックス(en)Lady Clague
第45回2001年10月7日フランスの旗Imperial Beautyインペリアルビューティ牝51:00.3武豊J.ハモンドJ.マグナー夫人&M.テイバー
第46回2002年10月6日イギリスの旗Continentコンティネント(en)騸50:57.2D.ホランドD.ニコルズLucayan Stud
第47回2003年10月5日イギリスの旗Patavellianパタヴェリアン騸50:59.3S.ドローン(en)R.チャールトン(en)D.ディア
第48回2004年10月3日イギリスの旗Varヴァール牡50:55.0L.デットーリC.ブリテンM.ラーシド
第49回2005年10月2日イギリスの旗Avonbridgeエイヴォンブリッジ(en)牡50:56.9S.ドローンR.チャールトンD.ディア
第50回2006年10月1日イギリスの旗Desert Lordデザートロード騸60:54.8J.スペンサーK.ライアンBull & Bell Partnership
第51回2007年10月7日イギリスの旗Benbaunベンバウン騸60:56.7P.スマレンM.ウォレスランズレー、バークス&ヒレン
第52回2008年10月5日フランスの旗Marchand D'orマルシャンドール騸50:54.4D.ボニヤF.ヘッドJ.ジラール夫人
第53回2009年10月4日イギリスの旗Total Galleryトータルギャラリー牡30:55.1J.ムルタJ.ムーアColeman Bloodstock Ltd
第54回2010年10月3日イギリスの旗Gilt Edge Girlギルトエッジガール牝40:57.0L.モリスC.コックスWood Street Syndicate V & C.Harper
第55回2011年10月2日イギリスの旗Tangerine Treesタンジェリンツリーズ騸60:55.53T.イーヴスB.スマートTangerine Trees Partnership
第56回2012年10月7日フランスの旗Wizz Kidウィズキッド牝41:01.17G.モッセR.コレ(en)M.マホニー夫人
第57回2013年10月6日イギリスの旗Maarekマーレク騸60:57.50D.マクドノーB.ララーLisbunny Syndicate
第58回2014年10月5日イギリスの旗Move In Timeムーブインタイム騸60:56.42D.タドホープD.オメーラA.Turton, J.Blackburn, R.Bond
第59回2015年10月4日イギリスの旗Goldreamゴールドリーム騸60:54.79M.ハーレーR.コウェルJ.Sargeant & Mrs J.Morley
第60回2016年10月2日イギリスの旗Marshaマーシャ牝30:57.27L.モリスM.プレスコットElite Racing Club
第61回2017年10月1日アイルランドの旗Battaashバターシュ騸30:57.59J.クロウリーチャールズ・ヒルズシェイク・ハムダン
第62回2018年10月7日イギリスの旗Mabs Crossマブズクロス牝40:57.11G.モッセM.ドッズDavid W. Armstrong
第63回2019年10月6日イギリスの旗Glass Slippersグラススリッパーズ牝30:58.04T.イーヴスK.ライアンBearstone Stud
第64回2020年10月4日フランスの旗Woodedウッディド牡30:58.52P-C.ブドーF-H.グラファールAl Shaqab Racing
第65回2021年10月3日アイルランドの旗A Case Of Youアケースオブユー牡30:58.02R.ウィーランA.マクギネスGary Devlin
第66回2022年10月2日イギリスの旗The Platinum Queenザプラチナムクイーン牝20:58.65H.ドイルR.フェイヒーMiddleham Park Racing XV
第67回2023年10月1日イギリスの旗Highfield Princessハイフィールドプリンセス牝60:55.07J.ハートJ.クインTrainers House Enterprises Ltd
第68回2024年10月6日イギリスの旗Makarovaマカロヴァ牝50:56.33T.マーカンドE.ウウォーカーBrightwalton Bloodstock Ltd
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日本調教馬の成績

日本人騎手の成績

日本調教馬以外での騎乗成績

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回数施行日騎乗馬名性齢騎手名管理調教師頭数着順
第45回2001年10月7日フランスの旗Imperial Beauty(インペリアルビューティ)牝5武豊J.ハモンド19頭1着
第46回2002年10月6日フランスの旗Maybe Forever(メイビーフォーエヴァー)牝4武豊C.ラフォン=パリアス20頭18着
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優勝馬の日本への輸入

フランスでカロなどの産駒を輩出していたフォルティノが1969年に輸入され、1973年にシルバーシャークとディープダイバー、1974年にサンフォードラッド、1975年にモバリッズ[注 9]が続いた。中でもフォルティノは重賞馬を数頭産出し、代表産駒シービークロスは1979年に重賞3勝や天皇賞(春)で3着と活躍した。そうした結果もあり、フォルティノの孫で本競走を連覇したジョンティオンブルも1980年に輸入される。ジョンティオンブルは初年度に重賞2勝のキタヤマザクラと重賞3着を2頭出すに止まり、これ以降は本競走優勝馬は輸入されていない。

彼らの中で最も成功した直系にシービークロスの仔タマモクロスがいるが、日本ではむしろ母の父としての影響が強い。フォルティノは日本ダービー馬サクラシヨウリ、シルバーシャークはJRA顕彰馬オグリキャップ桜花賞オグリローマンの兄妹、モバリッズは2年連続JRA賞最優秀スプリンターバンブーメモリーと直仔にはいなかった一線級の馬が産出されている。ジョンティオンブルも彼らほどではないが2頭の重賞馬がおり、2代母の父としても秋華賞ティコティコタックを産出した。

記録

  • レースレコード - 0:54.30(1983年優勝馬ハビブティ)
  • 最多優勝騎手(5勝) - イヴ・サンマルタン(1962年、1963年、1965年、1966年、1975年)
  • 最多勝調教師(7勝) - フランソワ・マテ(1957年、1958年、1962年〜1966年、1974年)
  • 最多勝馬主(4勝)
    • フランソワ・デュプレ(1957年、1962年〜1964年)
    • ロバート・サングスター(1984年、1986年、1988年、1997年)

脚注

関連項目

外部リンク

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