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指定席券売機(していせきけんばいき)とは、自動券売機のうち、座席指定券の発券機能を有するもの。
本項目では、鉄道情報システムが開発し、JRグループの旅客鉄道各社が設置するものについて取扱うこととする。それ以外の私鉄(民鉄)各社の座席指定券券売機については「自動券売機#私鉄各社」を参照のこと。
JRグループの座席指定券予約発券システム「マルス」に接続され、指定席券を始めとする乗車券類を利用者が直接操作を行い発券可能な機器である。鉄道情報システムの製品名は「顧客操作型端末[1]」であるが、西日本旅客鉄道(JR西日本)以外のJR旅客5社では「指定席券売機[2][3][4][5][6]」、JR西日本では「みどりの券売機[7]」の名称で設置している(付加された機能によって独自呼称が与えられている場合がある。後述)。
有人の指定席券発売窓口であるみどりの窓口と異なり、発売している列車や路線などに制限がある。主に設置駅での発券頻度が高い列車・路線を扱っている。
指定席券売機は様々な乗車券類発行に対応しているが、機能を限定して設置することが可能で、実際に発券可能なものはJR各社・支社・駅・設置場所によりまちまちとなっており、部分的に利用不可の場合もある。また、指定席券売機の初期表示画面も、JR各社・支社・駅・設置場所によりカスタマイズされている。
なお、指定席券売機のユーザインタフェースはみどりの窓口の駅係員用の発券端末をベースとして開発が行われているため、利用者目線では操作性が直感的でない部分があり、加えてJRのきっぷのルールや列車名・路線名など一定の予備知識がなければ操作が難しいことから、不慣れな利用者には利用しづらく、さらに後述の通り窓口で取扱う業務を指定席券売機が代替しきれていない現状もあり、これらのことがみどりの窓口等の駅係員窓口から指定席券売機への利用者の転移が進まない一因となっているとの指摘がある[31][32][33]。
下記の事項は基本的に指定席券売機では対応しておらず、みどりの窓口等の駅係員窓口で申し出る必要がある[30][34][35][36]。なお、後述のアシストマルスではオペレーターを通すことで対応可能となる場合もある。
また、上記の通り駅係員窓口では可能な様々な手続が指定席券売機では代替しきれていない状況にもかかわらず、みどりの窓口等の駅係員窓口を削減して指定席券売機に置き換える施策をJR各社が強行したことにより、これらの手続を求める利用者や、外国人旅行者をはじめとする日本の鉄道を利用し慣れていない利用者が残された窓口に殺到し、繁忙期には駅構内で混乱が生じるなどの問題が発生したため、JR東日本では2024年5月にみどりの窓口削減計画の凍結に追い込まれる状況となっている[注釈 3][35][36][37]。
鉄道情報システムが開発、JRグループ各社が導入したもので、マルスに接続しており、MV10型から始まり、その改良型で発売できる券種を拡充したMV30型、MV30型の一部を改良し、処理を高速化したMV35型、MV35型をインクリボン転写印字から2色印刷対応感熱紙を使用した感熱印字に変更したMV35D型、さらに改良が加えられ、QRコード読取(JR西日本では2017年開始のe5489のコンビニエンスストア・銀行ATM等での現金決済サービス受取コードとして使用)[38]や、従来の英語に加えて中国語・韓国語の画面表示に対応したMV50型、クレジットカード専用MV40型、MV40型にQRコード対応等MV50型に準じた改良を加えたMV60型の7種類があるが、MV10型については、2022年3月現在で既にMV30型以降の機種に置換えられている。なお、MV40・MV60型については、インターネット予約や電話予約の受取専用機として使われる事が多く、JR西日本では「みどりの受取機」の愛称を使用している。また、支社によっては別の愛称があり、福知山支社では「みどりくん」と呼ばれている。
主にJRグループ管内を運行する特急・急行列車と新幹線を取り扱う。ただし寝台列車は各社インターネット予約サービスの受け取りにのみ対応している。
設置駅により取り扱い列車は変わる。ただし、路線や駅名等を指定するとJR他社の特急・急行列車の指定券・自由席券も購入することが可能である。指定席では、購入客自身で座席表から席を自由に選択する事が可能である。これは特急だけで無く、指定席が連結されている快速列車等の在来線列車も対象となる。東海道新幹線区間を含む列車座席位置指定は2014年10月1日から可能となった。
JR北海道・JR東日本・JR四国・JR九州に設置されている指定席券売機では、普通列車のみの利用時でも、他駅発の乗車券を購入することが可能である。ただし、JR東日本では初乗り区間の購入に制限がかけられている[注釈 4]。
Suica、TOICA、ICOCAエリア内に設置されている駅では、各エリアに対応したIC定期券を購入する事が可能である(ただし、通学定期は同一年度における継続のみ。夏休み、冬休みは、使用開始日が選べる)。また、近距離の乗車券類購入でも領収書の発行が可能である。
クレジットカードは、JRグループ各社が自社ブランドで発行するクレジットカードやJRグループ6社共同提携のJRカードを始め、VISA・MasterCard・AMERICAN EXPRESS・DinersClub International・Discoverの国際ブランドが付いたクレジットカードが利用可能である。その他、JRグループ各社ごとにクレジットカード会社と直接加盟契約を行い、国際ブランド扱いとならない決済もあるが、一部の国際ブランドが付いていないハウスカード[注釈 5]を除いて、通常は利用者が意識する必要は無い。なお、決済には暗証番号が必要となるため、暗証番号が設定されていない一部法人用クレジットカードは乗車券類の発券が出来ないが、予約分の乗車券受取は可能である。
JR東日本が2000年度より研究開発し、2005年(平成17年)3月25日[39]より導入した「係員遠隔操作型指定券発行システム[40]」のこと。オペレーターと通話しながら座席指定券や定期乗車券などを購入するシステムで、JR東日本では「もしもし券売機 Kaeruくん」の名称で導入された[39]。有人のみどりの窓口を閉鎖し、その代替として設置されたため、営業案内や市販の時刻表ではみどりの窓口として扱われた[注釈 6]。
2005年(平成17年)3月25日、青梅線の西立川駅・東中神駅・中神駅・福生駅・羽村駅・小作駅・東青梅駅に導入され、その後2006年(平成18年)春には八王子支社・高崎支社・水戸支社・千葉支社・秋田支社の一部の駅に導入された。
指定席券売機と同じ筐体の右側に書画台(画像では機械の右にある読取台)を備えており、学生割引など各種割引申込に対応し、みどりの窓口とほぼ同様の商品購入が可能であった。使用済みの申込書・証明書類は読取台の端にある回収口(写真)に投入する。
なお、鹿島神宮駅を除く東京近郊区間内の設置駅ではSuica定期券も発売し、読み取り台の下にSuica定期券の発券口が設置された。
人員配置効率化を図りつつ、通常の指定席券売機よりも多種の乗車券類の発券が出来、証明書が必要な割引乗車券類の発行や乗車券類の払戻や変更に対応しているメリットがある一方、みどりの窓口の代替として設置されたものにもかかわらず、みどりの窓口で扱う全てのものが取扱われていなかったり、利用が集中した場合にはオペレーターに繋がるまで時間が掛かるなどの問題もあった。
地元自治体からは、駅の合理化が、地域の地盤沈下につながると懸念する意見があった。
2012年に入り、老朽化を理由に秋田支社[42]と高崎支社[43]で「Kaeruくん」を廃止し、(オペレーターとの対話機能の無い)指定席券売機を設置する旨が発表され、その後公式ウェブサイトでも、各駅情報の「みどりの窓口」の欄に「Kaeruくん」の営業終了日が記載されるようになった。2012年3月22日の青堀駅設置分の廃止をもって、端末は全廃され、導入から僅か6年で廃止されることとなった。JR東日本以外での導入は無かった。
鉄道情報システムが開発し、2010年より提供している音声・映像情報入出力装置付指定席券売機[44][45]。指定席券売機に小型カメラとオペレーターとの通話機能を追加したもの。各社で以下の名称を用いている(基本的な機能に差異はない)。
リモートマルスと同様にオペレーターによる対応が可能となったことで、検索にかからない複雑な経路の乗車券や学割乗車券など、みどりの券売機では取り扱えなかった乗車券の購入、通学定期券の新規購入と年度跨ぎの継続購入、各種乗車券の払い戻しなどが可能となっている。払い戻し時のきっぷ類や証明書の提示は、カメラ読み取り部に乗車券や証明書などを置き、オペレーターとの対話によって処理を行う。
リモートマルスでは全操作においてオペレーターとのやり取りが必要であったが、アシストマルスではオペレーターを通さずに従来のタッチパネルのみで乗車券類の購入も可能で、これがリモートマルスと大きく違う点である。従来の指定席券売機の機能で買えない券種(寝台券や周辺無人駅相互間の普通回数券等)は画面右下の「呼び出し」(当初は「きっぷの購入に関するお問合せ」)を押してオペレーターを呼び出して購入する。
ただし、みどりの窓口で扱う全ての内容が取扱える訳では無く、「レール&レンタカー」など一部のトクトクきっぷ、多くのイベント券や団体乗車券等は指定席券売機と同様に取扱は出来ない。また、一葉化券の部分払戻(特急券と乗車券が1枚で発行されたきっぷの乗車券または特急券のいずれかのみを払戻す等)や、マルス以外で発行されたきっぷの変更・払戻等、一部ケースでは変更や払戻等も取扱が出来ないことがある。取扱が出来ない対応については、近隣のみどりの窓口設置駅までの無料乗車票(乗車時は有人改札利用・設置駅が無人駅の場合はそのまま乗車)が発券され、利用者が乗車票で指定された駅まで移動した上で改めて窓口で処理や発行を依頼しなければならない場合がある。
なお、オペレーターの呼び出しに時間が掛かることもある点は従来のリモートマルスと同様であり、予約したきっぷの受取が出来ないまま列車が発車してしまうことや、多客期には画面上に表示される想定の待ち時間よりも相当に長時間待たなければならないこと、長時間待った後にオペレーターから当券売機では取り扱いが出来ない処理であることを告げられて、結局利用者が別のみどりの窓口設置駅に出向かなければならない場合があるなど、従前に比べて迅速性や利便性が大幅に低下しているという問題も浮上している[54]。
交通新聞社やJTBが発行している時刻表において、アシストマルスを設置している駅は『みどりの窓口設置駅』として扱われている[注釈 7]。JR西日本では、出札・改札業務の集約化の一環として、改札業務の遠隔システムである「改札口コールシステム」と合わせて、「みどりの券売機プラス」の導入を積極的に進める方針を示しており、京阪神地区では有人窓口(みどりの窓口)を2018年度当初時点での180駅から2030年度頃には拠点駅・新幹線駅など約30駅程度にまで規模縮小した上で、2018年度当初時点で約50駅となっている「みどりの券売機プラス」設置駅数を、これまで有人のみどりの窓口が1つしかなかったような小さな駅を中心に100駅程度(2030年度頃)にまで拡大し、それ以外の駅のほぼ全ての有人駅にはICカードの購入やクレジットカードを利用した定期券購入が可能な高機能型券売機を導入する方針を示している[55][51]。一方で、アシストマルス設置駅所在地とは離れた遠隔地に設置されたコールセンターに勤務するオペレーターが設置駅周辺地域や沿線の地理に明るくない場合もあり、利用者への応対が不十分となる弊害も発生している[54]。
同様に、JR東日本でも年間25億円程度の人件費削減効果を見込み、2021年に管内440駅にあった窓口を2025年度までに140駅程度に縮小・集約し「指定席券売機」や「話せる指定席券売機」に置き換える方針を進めていたが、前述の通り、みどりの窓口の代替として設置されたものにもかかわらず、みどりの窓口で扱う全てのものが取扱われていなかったり、利用が集中した場合にはオペレーターに繋がるまで時間が掛かるなどの問題が発生し、繁忙期には残存しているみどりの窓口に長時間の待ち行列ができるなど混乱が生じたため、209駅まで窓口を削減した2024年5月の時点で事実上の方針撤回となった[56]。
なお、JR北海道札幌駅・南千歳駅・新千歳空港駅にて2021年1月21日より利用を開始した「きっぷ精算機」は、通常のきっぷ精算(乗車券を挿入して不足額を精算する機能)の他、トマム駅で発券された「QRコード乗車駅証明書」を用いて、アシストマルスと同様の操作方法で運賃・料金の精算を行う機能を有している[12]。
導入駅は各社Webサイトに掲載されている。
特徴的な設置場所として、日本旅行新大阪支店にもMV10型が設置されていた。JR西日本直営の旅行センター「Tis」が2001年に日本旅行へ譲渡されたためで、しばらくの間旅行会社管理の唯一のMV端末として存在したが、JR西日本直営時代と異なりクレジットカードが使用できなくなり、2010年頃に撤去された。
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