こうやは、南海電気鉄道が高野線の難波駅 - 極楽橋駅間で運行する特急列車である。本項では難波駅 - 橋本駅間で運行する特急りんかんについても記述する。
こうや
難波駅 - 極楽橋駅間で日中時間帯に平日4往復、土休日8往復(冬季を除く、後述)が、全車両座席指定の4両編成で運行される。下り列車の橋本駅 - 極楽橋駅間の無停車運転中には、高野山の観光案内放送が流れる(ケーブルカーのものとは内容が若干異なる)。
英語表記は「Ltd. Exp. KŌYA」だが、以前は「SUPER EXPRESS KŌYA」であった(「SUPER EXPRESS」は超特急の対訳であり、新幹線の種別呼称などに用いられている)。
土休日ダイヤでは、極楽橋駅まで乗り入れ可能な特急車(30000系・31000系)3編成全てが稼働するため、冬季閑散期の車両定期検査期間中の土休日には、橋本駅 - 極楽橋駅間を運休し「りんかん」として運転される列車、および全区間運休となる列車がある。
りんかん
朝および夕夜間に、難波駅 - 橋本駅間で運行される。「こうや」と同様、全車両座席指定で、4両編成の列車と8両編成の列車がある。8両編成の列車は平日のみ朝に1往復運行されている。2000年12月22日までは全列車が4両編成であった。英語表記は「Ltd. Exp. RINKAN」。
大半の列車が橋本駅で極楽橋駅・高野下駅発着の列車との接続に考慮されている。そのため下り列車は急行と同様、列車名の前に「高野山・極楽橋連絡」や「高野下連絡」を冠して案内されることが多い。これにより運行区間内輸送のみならず、「こうや」・快速急行・急行を補完しつつ、橋本駅での接続により高野山へのアクセスも担っている。
前述「こうや」の項にもあるように、特に橋本駅で各駅停車との接続が良好な便においては難波駅 - 極楽橋駅間を「こうや」並みの1時間25 - 30分前後で利用できる便も多い。また河内長野駅で、朝ラッシュ時の上り列車は難波駅行きの急行、夕方ラッシュ時以降の下り列車(一部列車を除く)は林間田園都市駅行きとの接続が考慮されている。
前述の通り、車両定期検査を行う期間の土曜日・休日には「こうや」に代わって運行する列車がある。また、人身事故など列車の運行障害が発生した場合、特急「泉北ライナー」を含む泉北線直通列車同様、優先的に運休となる。
こうや・りんかん
2000年12月23日から2015年12月4日まで運行されていた「こうや」と「りんかん」の併結列車。列車案内などでは「こうや・りんかん」(英語表記は「Ltd. Exp. KŌYA & RINKAN」)表記で、難波駅 - 橋本駅間は難波側4両が「りんかん」となる8両編成で運転、橋本駅で増解結し、橋本駅 - 極楽橋駅間は「こうや」単独の4両編成で運転された。列車番号は共通であったが、「りんかん」の号数は「こうや」の号数に80を加えたものであった。
当初は平日1往復のみであったが、2005年10月16日より土休日の下りにも1本運行されるようになった。しかし、2013年10月26日より平日・土休日共に下りのみ1本となり、さらに2015年12月5日のダイヤ変更で廃止された。
停車駅
各列車とも共通(前述の通り、「りんかん」は難波駅 - 橋本駅間の運行)
特急料金
各列車とも共通。大人料金(小児半額・10円未満切り上げ)。
- (難波・新今宮・天下茶屋・堺東)- 極楽橋間:790円
- それ以外の区間(難波 - 橋本、金剛 - 極楽橋の区間内): 520円
なお、
車両・設備
- 30000系
- 31000系
- 高野線山岳区間の運転が可能なズームカーであり、いずれも「こうや」・「りんかん」と共通運用。車両数が非常に少なく(30000系は2本、31000系は1本のみ)、予備車は存在しないため、検査時には11000系の「りんかん」運用で補っている。過去には多客時のみ一般車両の2000系も使用されていた(故障や検査などの緊急時に代走することもある[2])。この場合、列車愛称を設定せず、特急料金は不要である。
- 11000系
- ズームカーではないため「りんかん」専用となっている。「泉北ライナー」の運用が開始された2015年から2022年までは、ズームカーが検査の際に「りんかん」の運用に使用された。その場合「泉北ライナー」は12000系が代走した。
- 12000系
- 2022年に発生した30000系の脱線事故と、2023年の31000系の定期検査による運用離脱に伴う高野線特急編成不足のため、2023年1月9日夜から約1ヶ月間「りんかん」の一部で代走が行われた[3]。
- 1951年(昭和26年)7月7日:「こうや号」運転開始。当初は夏季臨時列車として運転し、列車種別は設けられなかった。また、ノンストップで運行していた[4][5]。
- 1952年(昭和27年)4月1日:「こうや号」が「特急」として運行される[4][5]。
- この時に「貴賓車」と称された「クハ1900形車両」を連結した専用列車となる。
- 1955年(昭和30年):停車駅に堺東駅と橋本駅が追加される[5]。
- 1961年(昭和36年)7月5日:「デラックスズームカー」と称された20000系電車に使用車両を変更。
- しかし、1本のみしかなかったため、多客期であっても2往復の運用に留まり、臨時列車については21000系電車(扉間クロスシート車)により運行された。また、閑散期にあたる冬季には運休し、車両定期検査を行っていた。
- 1966年(昭和41年)12月1日:新今宮駅の開業に伴い、同駅への停車を開始。
- 1983年(昭和58年)6月26日
- 30000系電車に交代。河内長野駅への停車を開始[7]。
- この車両は2本製作されたことから、通年毎日運行が可能となる。これにより、閑散期2往復、多客期4往復に増発される。また、特急券を購入すれば定期券でも乗車が可能になる。
- 難波駅 - 橋本駅間に座席指定特急の運行が開始される[7]。
- この列車は「H特急」の通称が付いていた。なお、前面方向幕表示は「特急 難波 - 橋本」と上下2段表示で記されていた。
- 1990年(平成2年)7月1日:「H特急」のみ、林間田園都市駅への停車を開始。
- 1992年(平成4年)11月10日:「りんかん」用車両として11000系電車を使用開始[1]。
- これにより難波駅 - 橋本駅運転の特急(H特急)を「りんかん」と命名し、金剛駅への停車を開始[1]。同時に「こうや号」は「こうや」に名称を変更し、林間田園都市駅、金剛駅への停車を開始。
- 1999年(平成11年)3月1日:「こうや」・「りんかん」増発用車両として31000系電車の使用を開始。車内販売を廃止。
- 2000年(平成12年)12月23日:「こうや」・「りんかん」が天下茶屋駅に停車。平日ラッシュ時のみ「りんかん」の8両編成での運行、および難波駅 - 橋本駅間において「こうや」と「りんかん」の併結列車の運行を開始。平日の6時台上りと23時台下りに「りんかん」を増発[8]。
- 2001年(平成13年)7月7日:「こうや」運転開始50周年記念イベントを開催。
- 2003年(平成15年)5月31日:「こうや」・「りんかん」の禁煙車を従来より増設。
- 2005年(平成17年)10月16日:「こうや」の発車時刻および編成両数が一部変更に。土休日朝の一部列車が8両編成となる。土休日の昼間時間帯と夕方に「りんかん」増発。
- 2008年(平成20年)11月1日:「こうや」・「りんかん」を増発。
- これにより、平日には7時台に下り「りんかん」、3月 - 10月の月・火・金曜日限定で運行する列車をそれぞれ増発。土休日には増発の他に、「りんかん」の一部を「こうや」に変更。
- 2011年(平成23年)9月1日:「こうや」・「りんかん」全列車・全席禁煙を実施[9]。
- 9月5日 - 10月3日:台風12号による大雨の影響で橋本駅 - 紀伊清水駅間の紀ノ川橋梁において、線路に異常が認められたため、この期間「こうや」は橋本駅止まりになる。(列車の愛称は「こうや」のままである)
- 2013年(平成25年)10月26日:平日夜間に「りんかん」増発。8両編成の列車の一部が4両編成となる[10]。併結列車「こうや・りんかん」が下りのみの運行となる。
- 2015年(平成27年)3月1日 - 2016年2月:「高野山開創1200年記念大法会」が執り行われるのに伴い、概ね以下の施策を行う[12]。
- 3月1日から30000系30001編成を「赤こうや」、3月4日から31000系を「黒こうや」、3月23日から30000系30003編成を「紫こうや」としてそれぞれ運行開始(編成ごとに運行期間が異なる)。
- これを記念して3月1日から、上記の「赤こうや」をデザインした「特急こうや 高野山開創1200年特別仕様 マフラータオル」を難波駅サービスセンター(2階中央改札口)ほかで発売開始。
- 3月1日から12月23日まで、南海電鉄の列車(一部を除く)に「高野山開創1200年ステッカー」を掲出。
- 12月5日:「りんかん」用車両11000系電車を同日新設の「泉北ライナー」に充当、「りんかん」は朝の1往復を除き4両編成となる。併結列車「こうや・りんかん」を廃止。
- 2017年(平成29年)8月26日:「泉北ライナー」増発に伴い、11000系電車に泉北12000系電車に準じたラッピングを実施のうえ投入。
- 10月22日:台風21号の影響により上古沢駅構内で道床流出が発生したため、「こうや」は橋本駅 - 極楽橋駅間で運転を見合わせ、全列車を「りんかん」として運行。
- 2018年(平成30年)3月31日:高野線全線復旧により「こうや」の運転を再開。
- 2019年(令和元年)3月1日:高野山ケーブルの新製車両運行開始と諸設備更新工事完了に伴い、「こうや」の運転を再開。
- 2022年(令和4年)
- 5月27日:未明に小原田車庫内にて入換中の30000系30001編成が脱線事故を起こしたため[14]、同日より30日まで「こうや」「りんかん」は全列車を運休し、自由席特急を同ダイヤにて運行[2]。特急券は払い戻し措置となった[15]。その後、31日より一部の「こうや」「りんかん」の運転を再開したが、両数を減らして運転したり、一部の列車は引き続き自由席特急で運転することとなった[16][17][18][19]。
- 11月3日 - 「泉北ライナー」に50000系を投入し、捻出した11000系を充当することで「りんかん」は全列車が運行を再開、あわせて自由席特急は運行を終了[20]。ただし、「こうや」は一部便の運休が続く[21]。
- 2023年(令和5年)4月29日 - 上述の事故で損傷した30000系の修理が完了したため、この日より「こうや」の運行本数を通常に戻す[22][23][24]。11000系の「りんかん」、50000系の「泉北ライナー」での運用は継続[25]。
- 2024年(令和6年)1月20日 - 4 - 11月のみ、土休日の朝に「こうや」下り1本を増発し[26]、上り「りんかん」1本を延長し「こうや」とする。
“南海高野線11月10日ダイヤ改正 橋本まで大型車乗り入れ”. 交通新聞 (交通新聞社): p. 2. (1992年10月13日)
南海電気鉄道『南海電気鉄道百年史』1985年、678頁。
「南海個性派列車列伝」『鉄道ピクトリアル』2008年8月臨時増刊号、電気車研究会、2008年、142-143頁。
南海電気鉄道『南海電気鉄道百年史』1985年、679頁。
「南海個性派列車列伝」『鉄道ピクトリアル』2008年8月臨時増刊号、電気車研究会、2008年、144-145頁。
『関西の鉄道』第41号、関西鉄道研究会、2001年6月、94-95頁。