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東日本旅客鉄道の直流一般形電車 ウィキペディアから
E235系電車(E235けいでんしゃ)は、東日本旅客鉄道(JR東日本)の直流一般形電車。2015年(平成27年)11月30日より営業運転を開始した[1]。
JR東日本E235系電車 | |
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基本情報 | |
運用者 | 東日本旅客鉄道 |
製造所 | |
製造年 |
2010年 - 2011年(サハE235形4600番台) 2015年 -(新造車) |
製造数 |
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改造所 |
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運用開始 | 2015年11月30日 |
投入先 | |
主要諸元 | |
編成 |
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軌間 | 1,067 mm |
電気方式 | 直流 1,500 V(架空電車線方式) |
最高運転速度 |
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設計最高速度 | 120 km/h |
起動加速度 |
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減速度 |
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編成定員 |
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編成重量 |
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全長 |
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車体長 |
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全幅 | 2,950 mm |
全高 |
3,620 mm (パンタグラフ折り畳み時:3,950 mm) |
車体 | 軽量ステンレス(sustina〈サハE235形4600番台を除く〉)[注 4] |
台車 | DT80・TR264A・TR264B |
主電動機 | 外扇式全密閉かご形三相誘導電動機 MT79 |
主電動機出力 | 140 kW (1時間定格) |
歯車比 | 1:7.07 |
制御方式 | SiC素子VVVFインバータ制御 |
制動装置 | |
保安装置 | D-ATC[注 5]・ATS-P[注 6]・防護無線・TASC |
備考 |
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本系列は、2006年から首都圏の多くの線区に計3,000両以上を投入されているE233系の後継車種として、旅客サービスの向上、環境性能の向上、さらなる安全性・安定性の向上の3点を念頭に開発された、JR東日本の次世代の主力車種[2]。当初は山手線への投入を目的として製造された[報道 1]。
従来のTIMSに代わる新しい列車情報管理システム「INTEROS」をはじめとする数多くの新機軸を導入し、利用客サービス向上だけでなくエネルギーコストやメンテナンスの低減を実現するなど、さらなる技術開発の成果を盛り込んでいる。総合車両製作所(J-TREC)のオールステンレス鉄道車両ブランドであるsustinaが採用されている。
開発イメージは「人と対話する車両」とし、キーワードを「お客さま、社会とコミュニケーションする車両」とした[3]。外観については、前面の大きな窓や表示装置によって"人と人、人と社会をつなぐ情報の窓"を表現した。また、居住空間が広く感じられるオープンなデザインとしている[4]。
製造メーカーは総合車両製作所横浜事業所[注 1]・新津事業所[注 2]。デザイン監修は工業デザイナーの奥山清行が担当した。
車体長は19,570/19,500 mm(先頭車/中間車)、車体幅は2,950 mm、連結面間距離は20,000 mm[注 7]で、片側4箇所の両開き扉をもつ[5]。従来のE233系などと同様のステンレス製軽量構体とし、台枠の一部を除き、ステンレスを用いた構体としているが、雨どいが外側に出ない車体断面を新たに採用。従来車両では、外側に出る雨どい部を車両限界内に収めるため、側外板の腰部から上をわずかに室内寄りに傾けていたが、本系列ではこれを垂直に立ちあげ、雨どいと一体化した。本系列は、総合車両製作所と東京急行電鉄(東急電鉄)が共同開発し、東横線5050系サハ5576にて登場した[6]次世代オールステンレス車両「sustina」初の大都市向け通勤車両の量産モデルとなっている[報道 3]。
屋根構造としては、極力横風の抵抗を小さくするため、抵抗に対して影響の少ない空調装置部を除き歩み板を省略[5]。連結妻面については、骨と外板の一部の接合部や、ほろ枠の部分にレーザー溶接を適用し、水密性を確保している。なお、構体へのレーザー溶接の適用は、JR東日本の車両では一部のE721系で実績があるが、首都圏のステンレス車両では初の試みとなる。
車体前面および側面には三菱電機製フルカラー式LED表示器が取り付けられており、行先や次停車駅を表示する[7]。また、先頭車の前面ガラス破損時の復旧を早めるため、E231系やE233系と異なり前面ガラスが行先表示部と乗務員室内部とに分割できる構造となっており[2]、側面の引き窓は、前面衝突強度を確保できる範囲で、高さ、幅ともにE233系よりも拡大している。先頭車の前面上部に設置された前部標識灯はLEDを採用しており、着雪を防ぐため、その部分の前面ガラスは熱線入りとしている。
E233系と比較してより平面的になった前面デザインは「スマートフォン」や「電子レンジ」などと比喩されることがある[8][9]。
オフセット衝突対策として、隅柱の断面を45度に切り取ったような位置に補強を追加し、衝突時に互いに離反する効果を持たせた。前面衝突対策としては前面のデザインが変わったものの、E233系やE231系近郊タイプと同等の強度を有しており、乗務員室をクラッシャブルゾーンとサバイバルゾーンに区分している。また、側面衝突対策としては、構体を構成する骨組みをリング状に配置している[2]。
パンタグラフは、PS33HとPS36A シングルアームをモハE235形に1基または2基装備する。折りたたみ高さは3,950mmであり、中央本線内の狭小限界トンネルにも対応する[10]。
空調装置は、各車両にAU737形(冷房能力 50,000 kcal/h)を屋根上に1台搭載し[11]、室外送風機数を2台から1台に削減して送風機ファンの翼形状を変更したことにより、性能を確保しつつ低騒音化を実現している[11][12]。また、冷房運転においては、データベースに蓄積された過去の各駅乗車率などから予測した次の駅の乗車率をもとに、必要に応じて次駅到着前に車内を予冷する予測制御を行うことができる[11]。メンテナンス周期の延伸のため、装置内部の清掃性を大きく向上させている[12]。その他にも、空気清浄装置はE233系とは異なりパナソニック製の「nanoe(ナノイー)」デバイスを搭載した空気清浄機を採用し[報道 4]、横流ファン(ラインデリア)付近の天井部に設置している[11]。
腰掛はE233系と同等の座り心地の片持ち式ロングシートであるが、デザインを一新。また、袖仕切りについては居住空間を広く感じられるように半透明の構造とした。つり手棒・袖仕切り・スタンションポールを枕木方向にそれぞれ連続的な曲線で接続しロールバー構造とすることで、側面衝突に対する車体変形量抑制を図った[注 8]。この構造はE231系からの編入であるサハE235形4600番台および二階建て車以外の車両の車端部以外の袖仕切り部に、1両あたり6ヶ所の構成としている。
当初、窓上部および妻上部にデジタルサイネージを配置し、側天井の中吊り広告を廃止すると発表していたが[13][14]、広告会社からの要望や需要もあり方針を転換し、従来からのE231系500番台において、JR東日本系列の広告代理店であるジェイアール東日本企画の広告料金表「ADトレイン」の項で設定されている枕木方向の「中づり」8か所と窓上部の「まど上」のうち[15]、「まど上」については「まど上チャンネル」に、「中づり」のうち、貫通扉上(妻部)の2か所は「サイドチャンネル」に置き換えられ、当初の発表通り廃止されたものの、それ以外の6か所については存続させることになった[16][17][18][19][20][15]。既存車両でも搭載している各扉上部の17インチ液晶ディスプレイ(トレインチャンネル)2画面に加えて、21.5インチの液晶ディスプレイを窓上部に3画面(まど上チャンネル)、妻上部に1画面(サイドチャンネル)新設した[14]。まど上チャンネルは、3画面をつながった一つの画面のようにして使用することもでき、新たなデジタルサイネージならではのコンテンツについて今後検討を行うことにしている。なお、利用客の乗車位置(号車)と区間に合わせた停車駅の情報(乗換路線・ホーム案内図・駅構内図)や電車の混雑状況、車内温度などを確認できる「山手線トレインネット」は従来のE231系500番台と同様に引き続き利用できる。自動放送は日英対応だが、本系列では輸送障害時の情報にも対応している。
側引戸装置には、富士電機が新規に開発したラック・アンド・ピニオン方式の電気式戸閉装置を採用した[5][21]。この戸閉装置は従来の電気式戸閉装置とは異なり、戸閉状態においても空気式戸閉装置と同様に、常時お互いの扉が押し付け合う構造である[5]。ロック装置に隙間を設けることで、走り始めるまでは挟まれたものを引き抜きやすいという特徴がある[5]。
車椅子の利用客に限らず、ベビーカーの利用客など、その他必要な利用客も使用できるようにフリースペースを各車両に1ヶ所ずつ設置した。このフリースペースにはより多くの利用客が利用しやすいように、レール方向に2段の手すりを設け、妻面には腰当てとしてクッションを設けた。さらに壁面の標記だけでなく、床敷物に大きく車椅子マークとベビーカーマークを示した。車外においても各車両に車椅子マークとベビーカーマークが掲出されている(E231系など従来型は先頭車2両のみ)。優先席については中間車のフリーペース向かい側にも3席設置し、サハE235形4600番台および二階建てグリーン車を除いた中間車は各車両9席設けている。
非貫通構造で、E231系近郊タイプやE233系(2000番台を除く)のようないわゆる高運転台構造であるが、車掌が後方を確認しやすくするため、機器の高さを身長150cmの目線高さに相当する1,410mmに抑えている。このため、運転台機器の表示装置類の角度を65度から50度に変更し、運転士の機器視認性と両立させた。助士席側の機器はE233系の1,005mmから870mmに高さを低減し、客室からの小児客の視界を確保した。乗務員室内の割付けはE233系と基本的に同じだが、前面ガラスを左右下部に広げることでフラットな前面デザインとの両立を図っている。
制御装置は半導体素子にSiCを適用した2レベル電圧形PWM-VVVFインバータ制御とし、高速域のスイッチングを従来の1パルスから27パルスへ変更し、主電動機の損失を低減させ、省エネルギー性能を向上させている。1台のインバータ装置で主電動機4台を制御する1C4M構成となっている。制御装置は電動車に搭載され2両で1ユニットを構成しているが、E231系500番台での2両1ユニット方式から、1両ごとに制御装置を搭載して自車のモーターを制御する独立M方式としている。そのため、集電装置付きの電動車は「M1」車、集電装置なしの電動車は「M2」車としている。これは、将来の他線区への転出を考慮したもので、電動車を1両単位で組み替えられるようにすることで[注 9]、各線区で最適なMT比とすることができる。SiCモジュールの日本における新製車両への量産採用は福井鉄道F1000形電車に続き2例目であるが[22]、同車は路面電車用として導入されており、高速鉄道線用としては日本初となる。
量産先行車ではトランジスタ部にSiC-MOSFET、ダイオード部にSiC-SBDを搭載したフルSiCモジュール採用の三菱電機製SC104形と、トランジスタ部はSi-IGBT、ダイオード部にSiC-SBDを搭載したハイブリッドSiCモジュール採用の東芝製SC105形の2種類を搭載しており、両者は取付交換が可能とした[23]。なお、量産車はすべて三菱電機製で統一されている[24]。
ブレーキ方式(ブレーキ制御装置)は、回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキを採用している(三菱電機[24]製)。常用ブレーキは、後述するINTEROSによる編成ブレーキ力管理システムにより応荷重制御と電空協調制御を行い、回生ブレーキを優先して使用することで、省エネルギー運転と基礎ブレーキの制輪子の摩耗量の低減が図られている。
運転台のマスコンハンドルによる力行・ブレーキ操作に対して、後述するINTEROSで車両の荷重などを加味した主電動機のトルク演算を行った上、VVVFインバータ装置・ブレーキ装置に指令が送られるシステムとなっている。
主電動機は、東芝が原設計を担当[25]した、JR東日本としては初採用となる全閉式外扇形かご形三相誘導電動機「MT79」が採用され、電動車両1両あたり4基搭載する[26]。回転子を抜き出すことなく軸受けの交換が可能であり、定期的な内部清掃が不要な省メンテナンス構造である[7]。1時間定格出力は140kWに強化されている[26]。
補機用電源として、IGBT素子を使用した3レベル電圧形PWMインバータによる静止形インバータ(SIV)を搭載[27]。待機2重系としており、仮に片方の系統が故障しても動作が可能[26]。量産先行車では東洋電機製造製SC106形と東芝製SC107形の2種類を搭載しているが[23]、出力電圧は三相交流440V、定格容量260kVAで統一されており、相互の取付交換が可能[27]。
空気圧縮機はSIVから出力される三相交流440Vを電源とする、クノールブレムゼ製のオイルフリーレシプロタイプ「MH3130-C1600F」を採用[28][7]。吐出し量は1,600L/min[26]。
台車には軸はり式軸箱支持機構を備えるボルスタレス台車であるDT80(電動台車)・TR264・TR264A・TR264B(付随台車)を採用[7]。枕ばねには空気ばねを用いるが、前後方向を柔支持、左右方向を剛支持とした異方性空気ばねを採用することで曲線通過性能を向上させている[7]。電動台車の歯車装置は、歯車箱を分割構造としており、メンテナンス性を向上させている[7]。軸箱と台車枠の側梁との間に取り付けられる軸ダンパは準備工事、ヨーダンパは未装備[7]。1000番代の横須賀・総武快速線には普通車、グリーン車共にヨーダンパを設置している[報道 5]。
基礎ブレーキは、電動台車が踏面ユニットブレーキ、付随台車が踏面ユニットブレーキと車軸に装備されたディスクブレーキを併用[7]。先頭車前位(運転台側)に装備されたTR264にはパーキングブレーキが取り付けられており、先頭車後位(連結面側)とサハE235形にはTR264Bを、サハE234形にはTR264Aを装備する[7]。ディスクブレーキは国際鉄道連合(UIC)規格に適合したものをJR東日本グループで製造・採用し、ライニング制輪子は脱着性の向上が図られている[7]。
E231系500番台から改造・編入されたサハE235形4600番台[注 4]は、種車が装着していたTR255Aを使用している。
E231系等に搭載された列車情報管理装置TIMSは従来のモニタ装置を進化させたものであったが、本系列ではさらに大きく機能拡張した「INTEROS」(三菱電機製)が導入されている[29]。INTEROSでは、TIMSが各車にある各中央・端末演算ユニットによって演算・制御を行う分散制御方式であったのに対し、各種演算機能を中央ユニットに集約した集約制御方式を採用している。このため、TIMSでは各車に配置されていた端末装置は、INTEROSではデータ伝送機能に特化した伝送ユニットとなっている。
主な特徴として以下のことが挙げられる。
なお、車両から大容量データをリアルタイムに地上システムに送信できることから、これを車両および機器の劣化状態の推測に活用することを検討している。例えば、INTEROSが搭載機器の異常を検知した場合には、地上システムにその異常内容を伝送することにより、異常の原因究明や修繕手配、車両交換などの対応をいち早く行ない輸送影響を最小限にできると考えられている。また、機器の動作回数や動作時間、電圧・電流値、通電時間などを記録・管理することで、機器の劣化状態の推測も可能になると考えられている。
量産先行車には、試験的に線路と電力設備の状態監視装置を搭載している。これは車両から地上設備を監視することにより、安全性と安定性の向上の実現に向けた技術開発を進める予定で搭載されたもの。
4号車となるサハE235-1の床下には「軌道材料モニタリング装置」と「軌道変位検測装置」で構成された線路設備モニタリング装置が搭載される[30]。軌道材料モニタリング装置は、モノクロ256階調が高さ情報が撮影可能なプロファイルカメラと二次元濃淡画像が撮影可能なラインセンサカメラを組み合わせて使用し、地上処理装置がレール締結装置および継目装置の脱落判定を行う[31]。軌道変位検測装置は、台車に搭載されたレーザ変位計と反射鏡・駆動用モータを組み合わせた二軸レール変位検出装置で構成され、軌道変位を計測する[31]。3号車のモハE235-3には架線状態監視装置が搭載される[31]。パンタグラフ舟体に取り付けられた加速度計が不具合を検出するほか、離線によるアークを検出する紫外線センサ、架線の状態やパンタグラフの動きを記録するビデオカメラ、トロリ線の高さや変位、残存直径を測定する回転式レーザ装置・赤外線LED光装置を搭載する[31]。
山手線のホームドアが設置された駅ホームにおいて、停止線に正確に停車してからホームドアを車両側から可動させるために、TASC(定位置停止装置)の支援装置とホームドア車上装置(1号車にそのトランスポンダ車上子を設置)の他、移動禁止システム、前方カメラを搭載している。
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