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枕ばね(まくらばね、英: secondary suspension, secondary spring)は、鉄道車両の台車に設けられるばね装置のひとつで、台車と車体の間に設けられるものを指す。車軸に設けられる軸ばねと相まって、車両の荷重を台車に伝達するとともに、列車の走行にともなって発生する振動を抑制・減衰させ、車両の走行安定性や乗り心地を確保することを目的とする機構である。まくらばねとも記述される。
鉄道車両の台車にしばしば用いられるボギー台車では、右図に示す二種類のばねが設けられる。台車に輪軸(車輪と車軸)を支持する軸ばねと、台車に車体を載せるための枕ばねである[1]。
枕ばねには鉄道車両としての特性から、以下の機能が求められる。枕ばね単体で機能を果たせない場合は、複数の材料を組み合わせたり、他の機構を併用して性能を確保する。
鉄道車両の枕ばねとしては、かつては一般に重ね板ばねやコイルばねが使用されるケースが多く、その他防振ゴムブロックやトーションバーを使用する例も見られたが、現在は空気ばねの使用が一般的となっている[2]。
それぞれの得失は以下の通り。
薄い鋼板の曲げ特性を利用したばねであり、主体となる板ばねに順次数枚の子ばねを重ね合わせてボルトで締め付け拘束したものである。リーフスプリングとも呼ばれ、馬車や自動車などでも用いられている。枕ばねとして用いられる場合は、容量を確保するため複数の重ね板ばねを並列に配置したり、変形量を確保するため上下に重ねるなどして配置される[3]。
重ね板ばねは、それぞれの板ばねの接触面に摩擦(板間摩擦)があることから非線形特性を有しており、振動に対する減衰性能が得られる。また、子ばねの枚数、板厚、長さの変更により、必要に応じ任意の荷重上限を設定できるというメリットがある。その反面、摩擦力の調整が困難で、所定のばね定数に調整することが難しいこと、減衰性能が固体摩擦によるものであって振動数の高い「びびり振動」を吸収できないことが欠点として挙げられる。ばね鋼の品質に自信のあったヨーロッパ、とくにドイツで好んで使用され、枕ばねとしてスパンが2 m前後で厚い板ばねを使用することで適切なたわみ量を確保しつつ、びびり振動の発生を抑制したゲルリッツ(独語版)台車など、このばねの特性を最大限活用した機構も開発された。
ばね鋼と呼ばれる鋼材をコイル状に形成したもので、板ばねに比して固体摩擦が無くばねを柔らかく設計できるメリットがある。また、吸収エネルギー量に対するばねの重量を小さく出来る点でも優れる。但し、固体摩擦を持たずびびり振動が発生しない反面、単体では適切な減衰が得られないため、枕ばねに使用する場合には粘性減衰特性の高いオイルダンパを併用する必要がある[1]。車体の大荷重を支える必要があるため通常圧縮コイルばねにして用いる。
防振ゴムを任意の形状に形成して枕ばねとしたもの。金属ばねと異なり形状変更が自由で、各方向のばね定数を任意の値に設定でき、自己減衰作用が高く、かつ軽量というメリットがある。圧縮されるとばね定数が上がる非線形特性を持つため、空積による特性差が大きく枕ばねには適さないが、かつて国鉄DT18形台車でスペースの制約から枕ばねに通常のばねを使用できなかった際に使用された。
トーションバー・スプリングはねじり棒ばねとも称され、ばね鋼を使用した鋼棒のねじれからの復元力を利用したもの。コイルばねよりさらに吸収エネルギー量に対するばねの重量を小さく出来る点で優れる。このため、軽量化を重視するスイス国鉄向け軽量客車でSIG社によって枕ばねへの応用が図られ、日本でも同社とライセンス契約を結んだ日本車輌製造により何種かこの方式を採用する台車が製造されたが、これも圧縮されるとばね定数が上がる非線形特性を持つため、以後鉄道車両の枕ばねにこのばねを使用する例はほぼ皆無である。
空気の圧縮性を利用したばね機構で、容積を大きくすることでコイルばねを上回る柔らかい特性のばね設計が容易に行える。また、自動高さ調整弁(レベリングバルブ)を使用することで空積にかかわらず床面高さを一定に保て[2]、容積拡大のための補助空気室(通常、台車枠を流用する)とばね本体の間に絞り弁を挿入することで粘性減衰特性を得ることが可能であり、オイルダンパを必要としない。その反面、編成中に元空気溜管を引き通して大容量空気圧縮機を搭載するなどの処置が必要となる。
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