2022年ロシアのウクライナ侵攻のタイムライン (2023年9月 - 12月)(2022ねんロシアのウクライナしんこうのタイムライン 2023ねん9がつ12がつ)では、2022年2月24日に開始されたロシアのウクライナ侵攻の経過の2023年9月から12月について述べる。
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11月1日
- ウクライナ軍のザルジニー総司令官は、ロシア軍との現在の戦況は「膠着状態にある」と認め、一進一退の消耗戦に移行しているとの認識を示した[746][747]。現状打破に最も必要なのは航空優勢の確保だと強調し、ロシアが敷設した地雷の突破や、電子戦能力の強化なども必要と指摘した[746][747]。戦争の長期化は「あらゆる手段で軍事力を再編成・増強しようとするロシアに有益だ」とし、ウクライナに脅威になると強調した[746][747]。
- ウクライナ空軍は、ロシアが夜間に多数の無人機とミサイルを発射し、軍事施設と主要なインフラを攻撃したと発表した[748]。イラン製ドローン「シャヘド」20機のうち18機を破壊し、ミサイルも撃ち落とした[748]。ウクライナ中部ポルタヴァ州のプロニン州軍行政府長官は、ポルタヴァ州のクレメンチュク製油所で火災が発生したとし、「(火災は)鎮火し状況は管理下にある」と説明した[748]。
- ウクライナのクリメンコ内相は、「敵(ロシア軍)は過去24時間で、10州の118の集落を砲撃した。攻撃を受けた町村の数としては今年(2023年)最多だ」と述べた[746][749][750]。東部ハルキウ州と南部ヘルソン州でそれぞれ1人が死亡した[749]。また、東部ドニプロペトロウシク州のリサク知事は、州内の都市ニーコポリでロシア軍による無人機攻撃があり、女性1人が死亡し、4人が負傷したと明らかにした[749]。
- ウクライナ軍は、ロシアのウクライナ侵攻開始以降、残された地雷や爆発物で民間人260人以上が死亡、少なくとも571人が負傷したと発表した[750][751]。事故の4分の1は農地で発生し、未だに国土の約3分の1の地域に地雷が残っている可能性があるとした[750][751]。
- SBUは、ウクライナ国内の徴兵事務所職員らが徴兵逃れをあっせんする見返りに高額の賄賂を受け取っていたとして、関連組織を一斉に摘発したと発表した[752]。少なくとも100人の国外脱出を手助けする計画だったとみている[752]。
- 米シンクタンク「戦争研究所」は、ロシア軍がウクライナ東部ドネツク州アウディーイウカで歩兵主導の地上攻撃を再び仕掛ける準備をしていると指摘した[746]。受刑者らを中心とする部隊が正面から突撃する可能性があるという[746]。
- 大韓民国国家情報院(NIS)は、北朝鮮がロシアに100万発以上の砲弾を供与し、その見返りとして衛星技術に関する助言を受けていると明らかにした[753]。韓国国会情報委員会の劉相凡議員が、国政監査後にNISの報告内容を伝えた[753]。報告では、北朝鮮からロシアへの武器供与は8月以降少なくとも10回に上り、「計100万発以上の砲弾」が送られたといい、ロシアのウクライナ侵攻でロシア軍が使用する「約2か月分と分析されている」という[753]。また、北朝鮮はその見返りとして、軍事偵察衛星の打ち上げに関する技術的助言をロシアから受けたとみられているとした[753]。
- メローニ伊首相は、アフリカ連合(AU)委員長に成り済ました「ボバンとレクサス」からのいたずら電話に引っ掛かり、ウクライナ情勢について「みんな、とても疲れている。出口が必要だと理解する時が近づいている。国際法を踏みにじらずに(ロシア、ウクライナ)双方が受け入れ可能な解決策が見つかるかが問題だ」と述べた[754][755][756][757]。ウクライナ軍の反転攻勢については「期待したようにいかないだろう。紛争の行方を変えなかった」と懸念を示した[754][755]。また、「解決策を見つけないと(紛争は)何年も続くとみんなが気づいている」とした[755]。イタリア首相府は、この電話が9月18日にあったと認め、「だまされて遺憾だ」との声明を発表した[756][757]。
11月2日
- プーチン露大統領が、ロシアのCTBT批准を撤回する法案に署名し、成立した[758][759]。
- アメリカ政府は、ロシアのウクライナ侵攻に加担したとして、200を超える個人・団体を制裁対象に指定したと発表した[760][761][762]。米国務省の制裁対象には、北極圏のロシアLNGプロジェクト「アークティックLNG2」の開発、運営、保有に関わる主要事業体やロシア軍がウクライナで使用している自爆ドローンの設計、製造などに関わった約130の個人・団体などを制裁対象に指定した[760][761][762]。ブリンケン米国務長官は、声明で制裁措置は「将来の収益を破壊目的に注ぎ込むことを制限するものだ」と強調した[760]。米商務省は、ドローンを巡りロシア軍を支援したとしてロシアの企業約10社をエンティティリストに加えた[761][762]。米財務省は、軍事転用可能な製品を引き続きロシアに輸出し制裁を回避しているとしてアラブ首長国連邦、トルコ、中国に拠点を置く企業に制裁を科した[761][762]。
- 英国防省は、ロシア軍が先週、ウクライナ軍の攻撃によりウクライナ東部ルハーンシク州などでロシアにとって「軍事戦略上の重要な要素」である長距離地対空ミサイルの発射機を少なくとも4基失ったとの見方を示した[763]。ロシアの防空システムについて、西側諸国の支援を受けたウクライナ軍の使用する「近代的な精密攻撃兵器に手を焼いている」と指摘した[763]。発射機4基を喪失したことで、既存のロシア側の防空システムに一段の負荷がかかることになると予測し、発射機の補充に伴い「他の作戦地域の防空態勢が弱体化する可能性が現実味を帯びている」と説明した[763]。
11月3日
- ウクライナ軍当局は、ロシア軍が未明、首都キーウや南部オデーサ州、ザポリージャ州、西部リヴィウ州など全土でイラン製ドローン「シャヘド」約40機やミサイルなどを用いた攻撃を行ったと明らかにした[764][765]。負傷者は報告されていないが、インフラ施設などに被害が出た[765]。東部ハルキウ州では、大規模な火災が発生し、住宅や教育施設、給油所も被害を受けた[765]。ゼレンスキー大統領は、ドローンを半数以上撃墜したと明らかにし、「冬が近づくにつれ、ロシアのテロリストはさらに被害を与えようとするだろう。我々は反撃する」と述べた[764][765]。
- ウクライナ南東部ヘルソン州のロシアに任命されたヴォロディーミル・サルド「知事」は、ロシアが実効支配するウクライナ中部の集落チャプリンカの年金基金などが入居する建物にウクライナ軍のミサイル攻撃があり、9人が死亡、9人が負傷したと明らかにした[766]。また、アメリカ製ミサイル6発がチャプリンカに撃ち込まれ、防空システムで破壊されなかった2発が命中したと説明した[766]。
- ウクライナ東部ドネツク州アウディーイウカの当局者は、ロシア軍の音声通信の傍受により、ロシア軍にはアウディーイウカ中心部を包囲する狙いがあり、次の目標は中心部に隣接する欧州最大規模のコークス工場の掌握だと明かした[767]。コークス工場は、ウクライナ軍が要塞化しているとみられ、ロシア軍が工場を制圧すれば、中心部への補給路を断つことにつながる[767]。当局者は「地面が乾き、前進が可能になれば、いつでも攻撃は始まる」と述べ、ロシア軍の大規模攻撃が近く始まる可能性を示唆した[767]。米シンクタンク「戦争研究所」も、ロシア軍がアウディーイウカの北側で進軍したのを確認した[767]。
- ゼレンスキー大統領がSNSに投稿した画像に、地雷原を除去するなどの役割を担う戦闘車両「M1150 ABV」が確認された[767]。アメリカ海兵隊やアメリカ陸軍が使用しており、ウクライナ側に供与されたものとみられる[767]。
- プーチン露大統領は、ロシアのウクライナ侵攻により「われわれは自らの道徳的価値観や歴史、文化を守っている」と述べ、国の独立を懸けた歴史的な戦いと位置付けて侵攻を正当化した[768]。2014年のウクライナで尊厳の革命により親露派のヴィクトル・ヤヌコーヴィチ政権が崩壊しなければ、ロシアが一方的に行ったウクライナ南部クリミア半島併合も「なかっただろう」と指摘した[768]。その後に起きたウクライナ東部のロシア系住民とウクライナ政府軍の交戦を念頭に、ウクライナ侵攻開始以前にロシアは「攻撃されていた」と主張した[768]。また、ウクライナでの汚職は「事実上制度化されている」と述べ、欧米が供与した兵器が中東やアフガニスタンに横流しされていると述べた[768]。
- ロシア政府は、兵役登録の規定を、これまでは対象外としていたロシア国内で服役中の受刑者を、今後は受刑者が入隊事務所への出頭や健康診断などを受けずに「特別軍人」として兵役に登録できるように改定した[769]。
- アメリカ政府は、ウクライナに対し無人機迎撃のためのレーザー誘導兵器のほか、高性能地対空ミサイルシステム「NASAMS」と高機動ロケット砲システム「HIMARS」の弾薬などが含む最大4億2500万ドルの追加軍事支援を発表した[770][771]。
- フォンデアライエン欧州委員長は、ロシアのウクライナ侵攻開始後6度目となるウクライナの首都キーウ訪問を行った[772][773]。ゼレンスキー大統領と、ウクライナのEU加盟やウクライナ復興のための財政支援、侵攻の代償をどのようにしてロシアに支払わせるかなどについて会談した[772][773]。
- 米NBSニュースは、欧米諸国がウクライナに対し、ロシアとの和平交渉の可能性に関する協議を持ち掛けたと報じた[774][775]。戦況が膠着状態に陥りウクライナ軍の兵士不足が懸念されていることや、イスラエルとイスラム組織ハマースによる軍事衝突を背景に、欧米の支援余力が低下していることが背景にある[774][775]。10月のウクライナ支援国の会合で協議され、2023年末から2024年初めまでの和平交渉開始を視野に、ウクライナが何を譲歩するのかなどを幅広く話し合った[774]。見返りとして、NATOがウクライナの安全を保障し、ロシアによる再侵攻を抑止する案も出ているという[774][775]。
11月4日
- ゼレンスキー大統領は「時間がたち、人々は疲弊しているが、これは膠着ではない」と述べ、反攻が行き詰まったとの見方を否定した[776][777][778]。欧米諸国でウクライナに停戦を促す動きが出ていることに関しても「ロシアと話したり、何かを差し出したりするようわれわれに強要するパートナー国はない」と停戦圧力を否定した[776]。
- ウクライナ空軍は、南部クリミア半島のケルチの造船所へのミサイル攻撃に成功し、高精度巡航ミサイル「カリブル」を搭載できる最新鋭艦が停泊していたと発表した[779]。5日、ロシア国防省は、「ウクライナ軍が、ケルチの造船所に巡航ミサイル15発を発射し、防空システムで13発を撃ち落とした」と発表した[776]。ミサイルが命中した船1隻が損壊したとされるが、死傷者はいないとした[776]。
- ロシア軍は、東部ドニプロペトロウシク州や中部ポルタワ州などを短距離弾道ミサイル「イスカンデル」などで攻撃した[779]。
- SBUは、ロシアによるウクライナ侵攻を正当化し助長したとして、ロシア正教会の最高位キリル総主教に関する捜査に着手したと表明した[780]。キリル総主教が、ロシアの軍事・政治の最高指導部に非常に近い存在だと指摘し、プロパガンダのためにロシア正教会やウクライナ正教会の組織を利用して、信者に対しウクライナと戦うために団結するよう呼びかけたとした[780]。
11月5日
- ウクライナ軍は、ロシア軍が南部オデーサ州のインフラ施設をミサイル攻撃を行い、職員3人が負傷し、建物が損壊するなど周囲の家屋に被害が出たと明らかにした[781]。
- ロシア軍が24時間で、ウクライナ南部ヘルソン州に50発以上の爆弾で9回空爆し、教育機関が被害を受けた[781]。
- ゼレンスキー大統領は、西側諸国に対し「ウクライナを皆殺しにすれば、ロシアはNATO諸国を攻撃する。代償はさらに大きくなる」と述べ、制空権を握るロシアに対抗するため、防空システムの供与を加速するよう訴えた[782][783]。攻撃用無人機の供与も求めた[782]。防空システムをアメリカと共同生産する案を検討していることも説明した[782]。戦況については「膠着状態とは思わない」と述べた[782]。「長期戦で人々は疲弊している」としながら「われわれはロシアより気力で勝っている」と強調した。領土を奪還しない限り、ロシアとは交渉しない考えを示した[782]。
- 米シンクタンク「戦争研究所」は、過去2週間で900人超のロシア兵が戦死したと分析した[781]。
11月6日
- ウクライナ軍は、ロシア軍がミサイルや無人機でウクライナ南部を5日夜-6日未明に攻撃し、世界遺産に登録されている「オデーサ歴史地区」の120年以上の歴史がある美術館文化施設や高層住宅が被害を受けたと発表した[784][785]。住民5人が負傷し、穀物を積んだトラックが燃えたとした[784]。
- ウクライナ軍は、ロシア軍が先週ウクライナ東部および南部で前線突破を試み、過去1週間で400件の武力衝突が発生たものの、ロシアの「失敗に終わった」と発表した[786]。ウクライナ軍のアンドリー・コワリョウ報道官は、「敵は複数の方面に同時攻撃を行っている」が、ウクライナも、ドネツク州バフムート南方で独自の攻撃作戦を実施していると述べた。また、ロシア軍はウクライナが今年に入り支配権を回復した南部ザポリージャ州ロボティネ付近でも陣地回復を試みたが、成功していないという。
11月7日
- ウクライナ東部ドネツク州の一部を占領する自称「ドネツク人民共和国」のデニス・プシーリン「首長」は、州都ドネツクの中心部などにウクライナ側がアメリカ供与の高機動ロケット砲システム「HIMARS」から数発撃ち込み、住居や医療施設などが狙われ、市民6人が死亡、少なくとも11人が負傷したと明らかにした[787]。
- ロシア外務省は、ヨーロッパ通常戦力条約の破棄手続きが完了したと発表した[788][789]。
- 英国防省は、ウクライナ軍による南部クリミア半島のザリフ造船所に対する4日の攻撃で、2021年に進水したコルベット艦「アスコルド」が損傷を受けたのは確実との見方を発表した[787]。ロシアは造船インフラを前線から離れた場所に移転する必要に迫られ、新造艦の戦線への配備が遅れる可能性があると分析した[787]。
- 米シンクタンク「戦争研究所」は、ウクライナ軍が南部ヘルソン州で、ロシア軍支配地域のドニエプル川東岸に装甲車両を投入することに成功したと分析した[790]。10月中旬以降、ドニエプル川東岸においてウクライナ軍が数百人規模の部隊で戦闘を継続しているとの見方を示し、「ロシア側がウクライナ軍の兵たんを阻止できていない状況を示唆している」と指摘した[790]。
- オランダは、ウクライナ人操縦士の訓練に使用する5機のF16戦闘機をルーマニアのF16操縦士訓練センターに初めて送った[791][792]。オランダは計12-18機のF16を操縦士訓練センターに送る予定で、今回が第1陣となる[791]。
11月8日
- ウクライナ軍は、南部オデーサ州の港で、ロシア軍が民間船をミサイルで攻撃し、1人が死亡、フィリピン国籍の乗組員3人や港湾職員が負傷した[793][794][795][796]。船はリベリア国旗を掲げて中国に鉄鉱石を輸送中だったが、入港する際に船の上部にミサイルが命中した[793][794]。
- ゼレンスキー大統領は、ウクライナ軍の反転攻勢について「2023年内に戦果を示したい」と述べ、消耗戦で損失が増えており「(結果を出すのは)非常に重要だ」と強調した[797][798][799]。反転攻勢が遅れ、戦況が膠着状態に陥っているとの指摘に対しては「ゆっくりとではあるが南部で前進しており、東部でも同様だ」と反論し、「容易ではないが、成功を確信している」と述べた[797]。
- ウクライナ軍参謀本部は、東部ドネツク州アウディイウカ周辺で「陣地を維持し、敵に大きな損害を与えている」と主張し、ロシア軍が包囲進めているものの徹底抗戦の構えを強調した[790]。
- ウクライナ最高議会は、15日に期限切れとなる戒厳令と総動員令を2024年2月14日までの90日間延長を承認した[798]。
- ウクライナは、ウクライナ東部ルハーンシク州の一部を占領する自称「ルガンスク人民共和国」の軍トップを務め、2014年以降はルハンスク州で親ロ的な分離独立運動に携わってきたとされるミハイル・フィリポネンコを自動車爆弾で暗殺したことを明らかにした[800][801]。ウクライナ軍の諜報機関は即座に犯行声明を出し、他にも「テロリストのロシア」に協力する人物は同様の「報い」を受けると警告した[800]。ロシア連邦捜査委員会は、今回の爆発を巡って犯罪捜査を立ち上げたと明らかにした[800]。GURは、フィリポネンコが、ルハーンシク州のロシア側占領地域での組織的な拷問に関わってきた人物とし、戦争捕虜や民間人の人質に非人道的な拷問が加えられ、「フィリポネンコ氏自身、人々を残虐に拷問していた」とした[800]。
- ロシアのロストフ・ナ・ドヌ軍事裁判所は、ウクライナ東部ドネツク州マリウポリで巡回に当たっていた際、ロシアからの潜入者と疑われた民間人2人を呼び止め、うち1人を殺害した罪で起訴されたウクライナ海軍の歩兵アントン・チェレドニクに対し、懲役19年を言い渡した[802]。
- 国連のグテーレス事務総長は、黒海穀物イニシアティブについて「われわれは努力を続けている。しかし、(復活は)難しいだろう」と述べた[803]。
- 欧州委員会は、EU加盟候補国のウクライナについて、汚職対策の強化など、ウクライナによる国内改革の完了が交渉入りの条件に、加盟交渉入りを認めるよう加盟国に勧告する報告書を公表した[804][805][806][807]。ゼレンスキー大統領は、EU加盟の道を開く「歴史的な一歩だ」と歓迎した[804]。
- イギリス政府は、ロシアが外貨獲得に使う石油や金などの産業に関わる29の個人・団体に、新たな制裁を科したと発表した[808]。G7・EU及びオーストラリアが導入した原油上限価格の影響を逃れるためロシアが利用したとされるエネルギー関連企業も対象とした[808]。クレバリー英外相は、声明で「ロシアのプーチン大統領を支援してきた者たちに打撃を与えるだろう」と述べた[808]。
- 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルは、ウクライナ侵攻の長期化に伴う兵器不足を補うため、ロシアがエジプト、パキスタン、ブラジル、ベラルーシに対して、これまでに売却した軍事兵器や部品の返還を求めたと報じた[809]。エジプトは12月にも、軍用ヘリコプター「Mi8」と「Mi17]」のエンジン約150個のロシアへの引き渡しを始める[809]。引き換えとして、ロシア側はエジプトの支払いの遅れを免除するほか、穀物を支援する[809]。ベラルーシも応じた一方でブラジルは断ったという[809]。
- 岸田文雄首相は、ゼレンスキー大統領と電話会談を行い、日本が官民一体で復旧・復興を支援する「日ウクライナ経済復興推進会議」を2024年2月19日に東京で開催することで合意した[810]。岸田首相は「ウクライナと共にあるという日本の立場は決して揺るがない」と伝え、ゼレンスキー大統領は謝意を示した[810]。同日開かれたG7外相会合について触れ、厳しい対露制裁と強力なウクライナ支援の継続が確認されたと説明した[810]。越冬支援などエネルギー分野の協力を続ける考えも示した。両首脳は、国際社会の連携を維持・強化するため引き続き緊密に連携することを申し合わせた[810]。
11月9日
- ウクライナのゼレンスキー大統領が、戒厳令と総動員令を2023年2月14日まで90日間延長する法令に署名[811]。
- ロシア国防省は、ウクライナ南部クリミア半島沿岸の黒海上空で、ウクライナの巡航ミサイル「ネプチューン」を防空システムで撃墜したと発表した[812]。
- 英国防省は、ウクライナ南部クリミア半島などに配備していたロシア軍の防空システム「トリウームフ」を数基損失し、再配備を余儀なくされているとの分析を発表した[812]。ロシア国内の重要拠点にあるトリウームフを移送する可能性があり、防空システムの弱体化はほぼ確実だと指摘した[812]。
11月10日
- GURは、ウクライナ南部クリミア半島西部のウズカヤ湾で海上ドローン攻撃を行い、ロシア海軍の小型揚陸艇2隻を撃沈したと発表した[813][814]。2隻が黒海海域でロシア軍の防空を担っていたと指摘し、今回の喪失により、ロシア軍の防空力がさらに低下するとした[813][814]。
- ウクライナ軍のザルジニー総司令官は、東部ドネツク州アブデーフカの防衛戦を巡り、1か月でロシア軍に約1万人の人的損害を与えたほか、ロシア軍の戦車や装甲車計350両、攻撃機「スホイ25」7機を撃破したと明らかにした[813]。
- ウクライナ南部ヘルソン州の検察は、州都ヘルソンにロシア軍の砲撃があり、1人が死亡、2人が負傷したと発表した[815]。直撃した民家で火災が発生し、集合住宅も被害を受けた[815]。
- ゼレンスキー大統領は、ヘルソン奪還1年に合わせて「敵の力に屈しなかった人々は世界を鼓舞した。ロシアの支配が永遠に続くことはない」と訴えた[815]。
- ペスコフ露大統領府報道官は、受刑者がウクライナの戦場に送られ、恩赦を与えられている問題について、受刑者は「血で罪をあがなっている」として動員を正当化した[816]。
- IMFは、3月に承認されたウクライナへの総額156億ドルの融資枠のうち約9億ドルの金融支援に関し、ウクライナ当局と事務レベルで合意したと発表した[817]。改革の進展などが背景で、正式合意にはIMF理事会の承認が必要となる[817]。
11月11日
- ウクライナの首都キーウに9月以来のミサイル攻撃が行われた[815]。キーウ市当局は「52日間の停止を経て、敵が攻撃を再開した」と述べ、弾道ミサイル「イスカンデル」が使われたと指摘した[815]。キーウでは警報発令前に爆発音が響いた。ウクライナ空軍のイグナット報道官は、弾道ミサイルは速度が速くレーダーでの覚知が難しい場合があると説明した[815]。
- 米シンクタンク「戦争研究所」は、ロシアの首都モスクワ南東にあるリャザン州で貨物列車が爆発して脱線した事故について、ウクライナの情報総局が関与したと指摘した[818]。
- ロシア国営通信社RIAノーボスチは、戦争捕虜を含むウクライナ軍の元要員がロシアのために前線で戦うことを志願したと報じた[819]。戦争捕虜をロシア軍に強制従軍させる措置は、ロシアを含む全ての国連加盟国が採択している1949年のジュネーブ条約に違反するとみられる[819]。RIAノーボスチが今週公開した動画には、「志願兵」とされるウクライナの戦闘服を着た男性十数人がライフル銃を手に、式典でロシアへの誓いの言葉を述べる様子が映っている[819]。男性らの所属部隊について「ウクライナ軍の元兵士で構成された最初の大隊で、志願大隊の名称は(ウクライナ・コサックを率いた17世紀の軍事指導者である)ボグダン・フメリニツキーにちなむ」と報じた[819]。この大隊は10月にロシア軍の作戦戦闘戦術組織「カスケード」に組み込まれたという[819]。米シンクタンク「戦争研究所」は、ロシアが10月後半、複数の流刑地からウクライナの捕虜70人を「採用」したと指摘し、「ロシア当局はウクライナの戦争捕虜を脅し、ウクライナで戦う『志願』部隊への加入を強制した可能性が高い。これは戦争捕虜について定めたジュネーブ条約の違反に当たるとみられる」と分析した[819]。
11月12日
- ゼレンスキー大統領は、「11月も半ばを過ぎようとしており、インフラ施設に対する敵のドローンやミサイルによる攻撃増加に備えなくてはならない」と指摘し、「ロシアは冬に向けて(攻撃強化を)準備している。われわれは防衛に全ての注意を傾けるべきだ」と訴えた[820][821]。氷点下の冬を前にロシア軍がエネルギー供給網を標的に攻撃を強化する可能性があるとして、ウクライナ国民に警戒を呼び掛けた[820]。
- ウクライナ軍参謀本部は、東部や南部の前線で過去1日間にロシア軍との戦闘が80回起き、1,100人の人的損害を与えたほか、戦車7両や装甲車32台を撃破し、いずれも撃退したと発表した[822]。うち計40回の戦闘が東部ドネツク州の州都ドネツク市近郊の小都市アブデーフカとマリインカ周辺で起きたほか、ドネツク州バフムト方面でも10回の戦闘が起きたという[822]。
- ロシア国防省は、ウクライナ東部ドネツク州ドネツク市近郊で1日間の戦闘でウクライナ軍に250人の人的損害を与え、装甲車3台を破壊したと主張した[822]。
- GURは、11日にウクライナ南部ザポリージャ州メリトポリで行われたロシア軍の会合でレジスタンス運動のメンバーらが爆発を行い、少なくとも3人の将校が死亡したと明らかにした[818]。
11月13日
- ウクライナ軍のザルジニー総司令官は、米軍制服組トップのチャールズ・ブラウン・ジュニア統合参謀本部議長と電話会談し、ロシアの侵攻に対する冬季の反転攻勢計画などを協議した[823]。両者は、ウクライナ東部ドネツク州や北東部ハルキウ州の戦況を分析し、ザルジニー総司令官は「複雑化しているが、コントロールされている」との認識を示した上で、差し迫って防空兵器が必要だと訴えた[823]。
- ウクライナのイエルマーク大統領府長官は、米シンクタンク「ハドソン研究所」で講演し、ロシアのウクライナ侵攻について「2024年は決定的な年になる」と述べ、転換期を迎えると指摘した[824]。ウクライナ軍がドニエプル川の東岸に拠点を築くなどと「一歩ずつ、クリミアの非武装化に向けて進んでいる。我々の反転攻勢は進展している」と強調し、西側諸国に対ロシア制裁強化とウクライナへの武器供与を求めた[824][825]。
- ウクライナへのF16戦闘機供与に向け、欧米12か国が支援する「欧州F16訓練センター」が、ルーマニア南東部フェテシュティ空軍基地で発足した[826]。当面は訓練にあたる教官らを再訓練し、2024年前半中にもウクライナ軍操縦士が現地入りする[826]。F16の製造会社であるロッキード・マーティン社の技術者も常駐し、地上要員のメンテナンス指導も行う予定[826]。
11月15日
- ウクライナ南東部ヘルソン州のロシアに任命されたサルド「知事」は、南部ヘルソン州でロシア軍が支配するドニエプル川東岸の集落クルインキ方面に「1個半中隊程度のウクライナ軍がいる」と指摘し、ウクライナ軍のドニエプル川東岸上陸を認めた[827][828][829]。ただ、「渡河作戦中や東岸進出後にウクライナ軍は露軍の攻撃を受け、1個半か2個の大隊を喪失した」とも主張し、東岸近くのクリンキー村で前進を阻まれ、士気も低く、毎日複数のウクライナ兵が「ロシア軍に投降している」と述べた[827][828]。過去2-3日のウクライナ軍の死傷者は、100人に上るとも主張した[827]。
- ゼレンスキー大統領は、ウクライナ東部ドネツク州や南部ザポリージャ州でロシア軍によるミサイル攻撃があったと指摘し、「大変な一日だった。ロシアはまだ悪事を働くことができる」と述べた[827]。
- ロシア外務省のザハロワ報道官は、ウクライナのNATO加盟は「部分的であれ、いかなる形であれ、ロシアにとって容認できない」と述べた[830]。
11月16日
- ゼレンスキー大統領は、ウクライナの攻撃によってロシア軍艦船が黒海の東側に移動し、西側の安全を確保したとして「黒海で主導権を奪い返した」と主張した[831]。黒海穀物イニシアティブから離脱したロシアの妨害を受けながらも、黒海経由での船舶によるウクライナ産穀物輸出が行われていると強調した[832]。ロシアについて「世界の食料市場を崩壊させ、世界各地で混乱を引き起こすため、我が国の港を封鎖した」と批判し、「ロシアは黒海を利用して世界の他の地域を不安定化させることはできていない」と述べた[832]。ウクライナ軍が無人艇で編成する艦隊を黒海に展開させていることも明らかにした[832]。
- ロシアのモスクワ軍事裁判所は、反プーチン政権の武装集団「ロシア義勇軍団」を率いるデニス・ニキーチンに対し、2023年ベルゴロド州への攻撃で住民2人を死亡させたとして、テロなどの罪で本人不在のまま終身刑を言い渡した[833]。
- ロシア西部レニングラード州にあるサンクトペテルブルク裁判所は、スーパーマーケットの値札を反戦スローガンに置き換えたとして、芸術家のサーシャ・スコチレンコに懲役7年の判決を下した[834]。
- 米国務省の関連団体「紛争監視団」は、ウクライナの子供連れ去りにロシアの同盟国ベラルーシが関与していたとの報告書を公表した[835][836][837]。プーチン、ルカシェンコの両大統領が最終的に意思決定し、治安機関が進めていたとした[835][836]ref name="11/16_US3"/>。ロシアのウクライナ侵攻を始めた2022年2月から2023年10月までに、6-17歳の少なくとも2442人がウクライナから連れ去られ、ベラルーシの13か所以上の施設に移された[835][836]ref name="11/16_US3"/>。障害のある子や貧しい家の子、孤児ら社会的弱者が標的とされ、ロシア連邦捜査委員会と、ロシアが一方的に併合を宣言したウクライナ東部ドネツク州、ルガンスク州の教育省が選定し、ロシアを経由して鉄道でベラルーシに運ばれた[835][836]ref name="11/16_US3"/>。
- 英国防省は、ロシア軍がウクライナ東部ドネツク州アウディーイウカで、ウクライナ軍の守備拠点がある欧州最大級のコークス工場に迫っているとの分析を発表した[838]。工場は、何重にも塹壕を掘るなどして要塞化しているため、ロシア軍が攻め落とすのは容易ではないが、制圧されれば、ウクライナ軍のアウディーイウカへの補給線が断たれることになる[838]。
- デーヴィッド・キャメロン英外相は、ウクライナの首都キーウを訪問し、ゼレンスキー大統領と会談した[839][840][841]。キャメロン外相は、「道徳、外交、経済、軍事上の支援をどれほど時間がかかっても続ける」と述べ、ウクライナへ多方面の支援を継続することを約束した[839]。ウクライナ支援に熱心だったボリス・ジョンソン元英首相に触れ「彼とは一致しない面もあるが、ウクライナ支援は素晴らしかった」と述べ、ウクライナを支えていく考えを強調した[839]。ゼレンスキー大統領は、イスラエルとイスラム組織ハマースの衝突を念頭に「世界の関心が分割されるのは助けにならない」とし、欧米で広がる「ウクライナ支援疲れ」に懸念を表明し、そうした中での訪問を「とても重要」と歓迎した[839]。
- フィンランド政府は、ロシアからの不法越境者が増加しているため、ロシアとの国境にある検問所のうち南部4か所について18日から2024年2月まで閉鎖すると発表した[842]。フィンランドがNATOに加盟したことに対するロシアによる対抗措置との見方が出ており、フィンランド政府は14日に「ロシア当局は適切な書類を持たない人がフィンランドへ越境することを許可している」と非難していた[842]。
11月17日
- ウクライナ海兵隊は、南部ヘルソン州のドニエプル川東岸への渡河作戦で、東岸に複数の拠点を確保したと明らかにし、ロシア側に大きな打撃を与えたと主張した[831]。ウクライナは水陸両用車で東岸に装甲車を運び込むなどして、川から約2キロ離れたクリンキなどに部隊を展開した[831]。渡河作戦が始まって以降、ロシア軍の兵士1,200人以上を殺害し、多くの兵器を破壊したと主張した[831]。
11月26日
- ロシア国防省は首都周辺のモスクワ州やトゥーラ州・カルーガ州・スモレンスク州・ブリャンスク州に飛来してきた、少なくとも24機のウクライナ軍の無人機を撃墜したことを明らかにしたと共に、アゾフ海上空で、地上を攻撃するために改造したウクライナ所有の2発の「S200」の地対空ミサイルを撃墜したことも明らかにしている[843]。また、トゥーラ州のアレクセイ・ジュミン知事は、トゥーラ州の迎撃したドローンが集合住宅に当たり、1人が負傷したことを明らかにした[843]。モスクワ市のソビャニン市長は「夜間に大規模無人機攻撃が試みられた」と述べて、モスクワ州の複数の地域において、ウクライナ軍所有の無人機が撃墜されたことを明らかにした[843]。ロシアの新聞・コメルサントの報道では、「ドローン攻撃が原因でモスクワの主要空港で航空便が遅延したり欠航した」と伝えている[843]。
注釈
衆議院議長である細田博之は、7日に体調不良を訴え、入院しているため副議長が代理出席した[129]。
ドローン33機が飛来し、26機を撃墜したとの出典もある[166]。
ドネツク州、ルハーンシク州、ザポリージャ州、ヘルソン州
原子力の安全、食料安全保障、エネルギー安全保障、捕虜と送還者の解放、ウクライナの領土回復、ロシア軍の撤退、ロシアの戦争犯罪の訴追、環境保全、紛争拡大の防止、安全保障体制の構築、戦争終結の確認