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ロシア連邦が保有する軍隊 ウィキペディアから
ロシア連邦軍(ロシアれんぽうぐん、ロシア語: Вооруженные силы Российской Федерации、略称: ВС РФ、英語: Armed Forces of the Russian Federation)は、ロシア連邦の軍隊。
ロシア連邦軍 Вооруженные силы Российской Федерации | |
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ロシア連邦軍の紋章 | |
ロシア連邦軍旗 | |
創設 | 1992年5月7日 |
派生組織 |
陸軍 海軍 航空宇宙軍 戦略ロケット軍 空挺軍 |
本部 | ロシア連邦軍参謀本部 |
指揮官 | |
最高司令官 | ウラジーミル・プーチン 大統領 |
国防大臣 | アンドレイ・ベロウソフ |
参謀総長 | ワレリー・ゲラシモフ 上級大将 |
総人員 | |
兵役適齢 | 18 - 27歳 |
徴兵制度 | あり |
適用年齢 | 18歳 |
現総人員 | 約115万0000人[1](定員115万人[2])(3位位) |
財政 | |
予算 | 864億ドル(2023年度) |
軍費/GDP | 4.1%(2023年度) |
産業 | |
国内供給者 |
|
国外供給者 |
ベラルーシ(MZKT) イタリア(イヴェコ) イラン(HESA) |
関連項目 | |
歴史 |
ロシア軍の歴史 第一次チェチェン紛争 第二次チェチェン紛争 南オセチア紛争 シリア内戦 ウクライナ紛争 (2014年-) |
ロシア軍の階級 |
ロシア連邦軍は、3軍種2独立兵科制をとり、陸軍、航空宇宙軍(諸外国の空軍に相当)、海軍と戦略ロケット部隊、空挺部隊から成る[3]。
ロシア連邦軍は、従来、次の6個軍管区(Военный округ)に分かれていた。
2010年7月14日の大統領令により、以上の6個軍管区は、2010年10月までに4個軍管区へと統合された[4]。各軍管区には域内の陸海空軍部隊を統一的に指揮する「統合戦略コマンド」(OSK)が設置、各軍管区司令官が統合戦略コマンド司令官を兼任する。ただし、戦略兵力である戦略ロケット軍、空挺軍、準軍隊については最高司令部の直轄下に留め置かれ、OSKは指揮権を持たない。
2014年12月1日には北極圏防衛の強化のため、西部軍管区に隷属していた海軍の北方艦隊が新たにOSKの地位が付与、2021年には北方艦隊自体が独立した軍管区に昇格し、コミ共和国、アルハンゲリスク州、ムルマンスク州、ネネツ自治管区も管轄している[5][6][7]。
2024年2月26日、プーチン大統領が発足当時の 西部軍管区の領域をモスクワ軍管区とレニングラード軍管区に分割する大統領令に署名した[8]。また、海軍の各艦隊は海軍総司令官の指揮下とされた[3]。
現在の作戦・戦略司令部 (OSK)一覧
カテゴリー | 陸軍・航空宇宙軍の階級章 | 海軍の階級章 | ||||
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陸軍の肩章 | 階級名 | 航空宇宙軍の肩章 | 肩章 | 階級名 | 袖章 | |
元帥・将官 | ロシア連邦元帥 Ма́ршал Росси́йской Федера́ции | |||||
上級大将 генера́л а́рмии |
上級大将 адмира́л фло́та |
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大将 генера́л-полко́вник |
大将 адмира́л |
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中将 генера́л-лейтена́нт |
中将 ви́це-адмира́л |
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少将 генера́л-майо́р |
少将 ко́нтр-адмира́л |
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佐官 | 大佐 полко́вник |
大佐 капита́н 1-го ра́нга |
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中佐 подполко́вник | 中佐 капита́н 2-го р́анга |
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少佐 майо́р |
少佐 капита́н 3-го р́анга |
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尉官 | 大尉 капита́н |
大尉 капита́н-лейтена́нт |
||||
上級中尉 ста́рший лейтена́нт |
上級中尉 ста́рший лейтена́нт |
|||||
中尉 лейтена́нт |
中尉 лейтена́нт |
|||||
少尉 мла́дший лейтена́нт |
少尉 мла́дший лейтена́нт |
|||||
准士官 | 上級准尉 ста́рший пра́порщик |
兵曹上長 ста́рший ми́чман |
なし | |||
准尉 пра́порщик |
兵曹長 ми́чман | |||||
下士官 | 曹長 старшина́ |
上級艦艇兵曹 гла́вный корабе́льный старшина́ | ||||
上級軍曹 ста́рший сержа́нт |
上級兵曹 гла́вный старшина́ | |||||
軍曹 сержа́нт |
一等兵曹 старшина́ 1-й статьи́ | |||||
伍長 мла́дший сержа́нт |
二等兵曹 старшина́ 2-й статьи́ | |||||
兵卒
水兵 空軍兵 |
兵長 ефре́йтор |
水兵長 ста́рший матро́с | ||||
兵 рядово́й |
水兵 матро́с |
ウラジーミル・プーチン大統領は2020年6月2日、『核抑止力の国家政策指針』に署名した。核兵器の使用は大統領が決定することを定め、ロシアの核戦力は「本質的には防衛的なもの」としつつ「使用の権利を保持する」と規定した。 核兵器を使用する具体的な条件として以下の4つを挙げた[9]。
このほか「核抑止力が必要になり得る軍事的危険」の対象に、宇宙空間やロシア周辺へのミサイル防衛(MD)システムや弾道ミサイル、極超音速ミサイル、核兵器及びその運搬手段の配備を挙げた[10]。
詳細は「国外駐留ロシア連邦軍部隊の一覧」「集団安全保障条約機構(CSTO)」を参照。
ロシアには、ロシア連邦軍の他、各省庁が管轄する準軍事組織が存在する。これらは平時は各省庁が管轄するが、戦時は国防省の統制下に入る。
総兵力は約55万人とされる[3]。
ロシアの経済規模は2000年以降の10年ほどで急成長し[注 1]、これに合わせて軍事支出にも大幅な伸びが見られる。狭義の軍事支出を、各年度予算の第2章「国防」の項目として捉えた場合、1999年には1155億9400万ルーブルであったものが2010年には1兆2747億9400万ルーブルと11倍にも増加した[11]。ロシア連邦保安庁(FSB)やロシア内務省傘下の準軍事機関まで含めれば、その額はさらに大きくなる[12]。
なお、従来は国防予算のうち7割までが人件費や福利厚生費、燃料、食料、光熱費といった維持費に当てられていた。しかし今後、老朽化した装備の更新を進める必要から、今後は国防予算中に占める装備調達費の割合を増やしていく意向である。 ロシア軍を含めた軍事組織向け装備調達は国家国防発注 (GOZ) と呼ばれ、2010年度は新規調達費用が3193億ルーブル、修理・近代化改修費が639億ルーブル、研究開発 (NIOKR) 費が1080億ルーブルで、合計4911億ルーブル程度であったと見られる。 さらに、2011年以降に大規模な装備更新計画「2020年までの国家武器計画 (GPV-2020)」が発動するのにあわせて、2011年度以降のGOZはさらに増額されることが見込まれている[注 2]。積極的に武器輸出もしており、2011年には1兆円を超えるとされている。
ロシアは、装備を年平均9~11%ずつ毎年更新することにより、20(平成32)年までに新型装備の比率を70%にまで引き上げることとして いる。また、約20兆ルーブル(約55兆円)のうち、国防省には約19兆ルーブル(約52兆円)を割り当て、このうち約80%を新型装備の調達に、 約10%を研究・開発に割り当てるとともに、核の3本柱の近代化を優先させることとしている。プーチン首相(当時)は12(同24)年2月に 発表した国防政策に関する選挙綱領的論文の中で、今後10年間で約23兆ルーブル(約63兆円)を費やし、核戦力や航空宇宙防衛、海軍力な ど軍事力を増強していくとした[14]。
2011年度以降2016年度(執行額)までは対前年度比で二桁の伸び率が継続し、対GDP比で4.4%に達したが、2017年度は前年比20%減の2兆8,360億ルーブルとなった[15]。1998年以来の減少であり、軍事費ランキングでは世界第3位から第4位に転落した。背景としてクリミア危機による西側諸国の制裁と世界原油価格の下落による経済状況の悪化、プーチン大統領による医療・教育などの社会インフラの支出額を増加させる方針がある[16]。その後はおおむね対GDP比3%前後増の水準で推移した[15]
2022年2月24日ウクライナ侵攻により、2022年度は対前年比9.2%増の836億ドルとなり、軍事費ランキングで世界第3位となった [17]。
ロシアは過去3世紀(ロシア帝国とソビエト連邦時代を含む)にわたり徴兵制度を採用。かつて徴兵年齢は18-27歳であったが、2024年1月からは30歳に引き上げられた[18])。男性は1年間の兵役に就くことが求められており、徴募に応じる義務がある。なお大学生は兵役を遅らせることが許可されているほか、ロシアの大学には軍事教練が存在し、これが徴兵制度を補っている。
2002年6月28日、ロシア下院は、代替奉仕に関する法案(代替文民勤務法)を採択し、良心的兵役拒否が実質的・制度的に明文化された。ソ連崩壊後の1993年に制定されたロシア連邦憲法は、宗教や他の信条を理由に兵役拒否する人に対し、代替奉仕の可能性を保障している。しかし、代替奉仕に関する具体的取り決めを定めた法律は、それまで存在しておらず、軍隊からの脱走の多発や、兵役拒否するための賄賂等、汚職原因となっていた。2002年に可決された法案によると、兵役の代わりに、民間施設で3年半、又は軍事施設で3年間の代替奉仕を選択することができる。また、大卒の場合、奉仕期間は半分ですむ。ただし、徴兵委員会が代替奉仕者の任地を決めるため、自宅や家族の近くで働ける可能性は低い。この法律は2004年1月1日から発効した。
ロシア軍では、軍内でのいじめ、殺人などの犯罪行為が後を絶たず、ロシアの徴兵制はロシア国民の間で非常に評判が悪く、若者の間では兵役逃れが蔓延している[注 3]。2004年には徴兵忌避率が90%以上[注 4]に達したとイワノフ国防相が発言した[19]など、ロシアの徴兵制は形骸化が進み、もはや破綻寸前であるという評価もある[20][21]。
徴兵制度の機能不全や少子化のため、2014年度は100万人の定数に対して約77万人(充足率77%)まで落ちていたが、2019年には約90万人となっている。また志願制度主体への移行を進めており、2015年には下士官・兵卒が対象の契約軍人の数が徴兵の数を上回った[22]。この士官を除く職業軍人数は38万4千人で下士官は100%が志願制となった[3]。この他予備役は2017年時点で約200万人が動員可能とされる[3]。
ロシア連邦軍の前身であるソ連軍は兵力約522.7万人[23][24]を持ちアメリカ合衆国軍と並ぶ世界最強の軍隊と言われてきたが、ソ連末期には装備の老朽化と軍規の乱れなどで脆弱となった。それらの問題はソ連軍から発足時に約282万人の兵力を引き継いだロシア連邦軍にも持ち越され、1994年のチェチェン紛争においてその弱体ぶりが国内外に露呈することになった。その後も、主に財政難から大幅な減員を余儀なくされ、兵器の調達も激減した。5個あった軍種も空軍と防空軍(PVO)の1998年の合併や戦略ロケット軍が2001年に独立兵科になったことに伴い一般的な3軍種となっている。また連邦鉄道部隊局が管轄していた鉄道部隊も国防省の管轄とされた。1997年7月16日にエリツィン政権は大統領令にて1999年1月1日から兵力定数を120万人にまで削減することを定めた[25]。
2000年に発足したプーチン政権はロシア軍の再建に乗り出し、軍需産業を振興する一方、士官候補生養成の寄宿制の学校を各地に設立し「強固な愛国心によってロシアを守る人材」の育成に乗り出した。プーチン政権では全ての兵力を「強固な愛国心のある志願兵」から構成することを目標に掲げている[26]。2001年にプーチン政権は「2005年までの軍建設計画」を承認し、同年3月24日の大統領令で兵力定数を100万人に定めた[27]が、これは実施されなかった。
2003年には、当時のイワノフ国防相が改革プラン[注 5]を発表した。同文書では、戦略的抑止力の維持、常時即応部隊の増加と統合部隊の設立、作戦訓練の改善、軍の一部を徴兵制から契約軍人に転換、装備の近代化、兵站及び技術支援の改善、教育・研究活動の発展が改革のための施策として挙げられたが、多くは実現しなかった[28]。
ソ連崩壊後、ロシアでは常に軍改革が議論されてきたが、2008年にアナトーリー・セルジュコフ国防相の主導で本格的な改革が始まるまで、実質的にはほとんど進展が見られなかった。マイナーな変化はあったものの、組織や運用ドクトリンは依然として冷戦期の大規模戦争思想に影響を受けており、冷戦後に増加した小規模紛争に機動的に対処できる体制になかった[29][30]。
たとえばロシア陸軍では、兵力が大幅に減少したにもかかわらず、大規模戦争に備えて多数の師団が維持されていた。この結果、ほとんどの師団は司令部要員と装備しか持たない「スケルトン師団」になってしまい、時間をかけて大量の予備役を動員しなければ戦闘態勢を整えることができなかった。一方、ただちに戦闘態勢に移行できる常時即応部隊は、全ロシア陸軍中の17%程度、空軍では155個の航空連隊中5個でしかなかった(2008年の数字)[31]。
また装備の旧式化も深刻で[3]、特に精密誘導兵器やC4ISRシステムの普及率は西側諸国に比べて非常に低かった。この結果、2008年8月の南オセチア紛争では、アメリカ合衆国やイスラエルから積極的にハイテク装備を導入していたグルジア軍に対し、ロシア軍は苦戦を強いられることとなった。
これに対してセルジュコフ国防相は、2008年秋、包括的な軍改革プランを公表し、ロシア軍の体制を根本的に変革する意向を示した。その後も段階的に様々な改革プランが追加的に公表されているが、現時点までに明らかになっている主な内容は次の通りである[32]。
上述のセルジュコフ改革は軍・軍需産業から強い反発を受けた。人員削減等で軍人達からの反感を買ったほか、外国製兵器の導入でシェアを奪われることを懸念した軍需産業からも反発を呼んだ。2011年11月にセルジュコフは辞任を表明し、後任はセルゲイ・ショイグが務めた。
改革中に発生したウクライナ侵攻では、ウクライナ軍に対し圧倒的な兵力差がありながら多くの問題を露呈したことで、ヨーロッパではロシア軍の評価が変化している[33]。
ロシアの軍事予算は対GDP比率こそ3%前後と現在の主要先進国の中では高い方ではあるが、西側の軍隊に比べて規模に対し著しく少ないとされる。2007年の軍事予算は354億米ドルであり、世界7位でありながら米国の20分の1であった。このため、軍事予算の70%も占めていた人件費ですら絶対額は少なく、当時は将軍クラスですら500米ドル/月、一般の徴兵された兵士は3-5米ドル/月となっていた[注 8]。めざましい経済成長を遂げてきた現代ロシアにあって、このような待遇では高い職業意識を維持することは困難となっている。このため2012年には給与を3倍とし各種手当廃止とあわせ手取りで約6割増しにする改正が行われている[27]。また、徴兵制度を志願兵による契約制度にするには、給与と住宅の改善等にさらに国防予算が必要になり、このことが契約制度への移行を大きく制限している。
2022年からのウクライナ侵攻では苦戦を余儀なくされ、翌2023年1月、定員を115万人から150万人へ増やすことを決定した[2]。それ以前は、下記のように、より少ない人員での精兵化が議論されたこともあった。
ロシアでは、祖国戦争[注 9]や大祖国戦争[注 10]でフランス軍やドイツ軍に国内西域に侵攻されたものの、戦闘経験や兵器の技術で優位な敵に対し、それを上回る多数の兵力を動員し、これらを打ち破った経験から、広大で起伏に乏しい国土を防衛するには敵の侵攻を防ぎ得る厚い防衛線を早期に構築できる多数の動員可能な兵力規模が必須であるとする観念が今でも根強い。しかし、ロシアの人口はソ連崩壊後の1992年より減少傾向にあり、出生率は近年1.75程度と回復傾向にはあるものの他の先進国同様少子高齢化にも悩まされている。また、現代においては総力戦の可能性が低い事や前述の徴兵の不調もあり、その点からも100万人の定数でさえ常時維持する必要があるかロシア国内でも疑問の声がある。ロシア科学アカデミーの世界経済国際関係研究所安全保障センター長のアレクセイ・アルバートフ前下院議員は、100万人規模にはこだわる必要はなく、まず80万人規模に減らした後、科学技術の知識を備え高度な訓練を受けた、55-60万人の精鋭の契約将兵で構成されるべきであるとしていた。
現状である人口1億4600万人のロシアの兵力100万人を近隣国と比較した場合、日本との比較では人口に対する兵力比は約4倍、一方で韓国との比較では人口に対する兵力比はこれを下回る。トルコとの比較では人口に対する兵力比は概ね同等となる。
隊内で新兵に対するいじめ(デドフシナ、ДеДoвщина)が激しく、脱走の大きな原因となっている。公式には2002年前半期だけで2,265名の脱走者が出たとされるが、ロシア兵士の母の会ではその10倍としている。2005年の公式な数字ではいじめによる死者は16人とされ、自殺者が276人、事故死者が同じく276人とされたが、この数字にロシア国内で疑問の声が出た[36]。2004年前半期のロシア兵の死者数は500人以上に達していた[19]。
上記のようにソ連崩壊後の税収不足による国防予算の切り詰めで、給与が低水準のロシア軍では高級幹部から末端の兵に至るまで、その低収入を補うため何らかの犯罪・汚職に手を染めるケースが多く、風紀の乱れが深刻な問題となっている。兵士を労働力として民間に貸し出して将校らが私的な利益を得る例はまだマシな方であり、兵器や食料の横流し、新兵から物品を脅し取るなどの行為が日常的に行なわれているとされる[36]。1993年に起きたロシア太平洋艦隊で栄養失調で新兵4人が死亡した事件から久しいが、根本的な改善は行なわれていない。2004年前半期だけで5億ルーブルが国防費から犯罪によって不正使用されているといわれる[注 11]。
ソ連崩壊後のエリツィン大統領時代には、国家予算が破綻寸前もしくは破綻していたため、議会が承認した国防費は支出など行なえる状況には無かったが、公式の数値上は米国に次ぐ世界第2位の軍事大国であった。この時期には、国防費の名目上の支出と実際の支払いに大きな差異があって当然となり、予算を管理・執行する立場の軍人や官僚にとっては、不正に関与する土壌となり、いまでもその「習慣」が続いていると2008年9月の大統領府による調査報告書は指摘している[19]。エリツィン政権で外務大臣を務めたアンドレイ・コズイレフは、「ロシア政府は過去20年間を費やして軍の近代化に努めてきた」「その予算の多くは盗まれてキプロスの豪華ヨットなどに使われた。しかし軍事顧問らはこうしたことを大統領に報告できず、ウソをついてきた。偽りの軍隊だ」と証言している[33]。
ソ連崩壊後の混乱で熟練工の流出や若手への技術継承が思うように進まず、技術者の高齢化などによって予算を組んでも計画どおりに生産できない傾向にある。また、簡単なミスによる故障が増加している。今後は予算約20兆ルーブルの2020年までの国家装備計画に置いて武器を大量に発注して近代化を進める予定であったが、予算状況により即応部隊を優先することとなり、最新装備の配備率は即応部隊に限れば58%超となった[3]。ただし航空宇宙軍では66%なのに対し海軍では47%と軍種によって格差が発生している[3]。
2011年6月2日、ロシア中西部のウドムルト共和国にある軍弾薬庫で火災に続いて大規模な爆発があり、住民2人が死亡し、消防士を含む57人が負傷した。これにより、周辺の住民約2万8000人が避難した。弾薬庫には約15万トンの砲弾などが保管されており、地元当局は失火の可能性が高いとみている[37]。
2024年5月3日、ロシア軍の墓地が足りなくなったため、ロシア国防省がモスクワ州の森に軍用墓地を増設中とノーヴァヤ・ガゼータが報じた。近隣住民は墓地の増設が森林破壊につながるとして、ロシア兵の遺体を土葬ではなく火葬にしてスペースを節約すべきだと不満を述べた[38]。
2024年5月25日、モスクワの路上で健康上の問題で兵役免除されていた徴兵対象者を健康状態にかかわらず連行してロシア軍に入隊させる強制徴兵が2週間前から頻発しているため、徴集兵の親族や友人が徴兵事務所前で抗議活動を開始したと複数のロシア独立系メディアが報じた[39]。
国際非政府組織(NGO)の世界拷問防止機構(OMCT)などは、ウクライナのロシア支配地域で、ロシア軍による組織的な身柄拘束や拷問、性暴力があったとする報告書を公表した。ウクライナ侵攻が始まった2022年2月から10月までの間に、拷問等禁止条約が禁じた「拷問」に当たる38件を確認した。22年11月~23年8月に被害者や目撃者から聞き取り、計63件の事案を記録。拷問38件のうち22件は東部ハリコフ州、9件は南部ヘルソン州であったほか、南部ザポロジエ州や東部ドネツク州でも確認された。性器の切りつけやレイプなど性暴力も含まれる。残りの25件は拷問とまでは言えなくとも、非人間的な扱いだったと批判した[40]。
戦場でのロシア兵によるレイプ被害も深刻である。ウクライナの人権団体弁護士ユリア・アノソワによると、2022年のウクライナ侵攻では多くが被害者が家やその近くにいるときに起き、ロシア兵は集団でやってきて、複数の兵士が順番に暴行することもあれば、レイプにおよぶ1人以外はただ見ているだけのこともあった。酷いケースでは数日間にわたって監禁されて暴行された後、殺された。未成年の女の子がレイプされるケースもあったとのこと[41]。
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