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大阪府枚方市にある住宅団地 ウィキペディアから
香里団地(こうりだんち)は、都市再生機構が運営する大阪府枚方市香里ヶ丘にある住宅団地である。日本住宅公団が開発した郊外型大規模住宅団地の先駆けであり、1958年に入居が開始された。完成当初の建築物の老朽化および生活様式の変化に対応するため、1998年から建て替えが実施されている。
土地区画整理法に基づく土地区画整理事業として、日本住宅公団が旧東京第二陸軍造兵廠香里製造所跡に開発した。
賃貸の集合住宅と分譲の戸建住宅が建てられた。完成当時は香里ニュータウンとも称され、常盤平団地(千葉県松戸市、1959年)上野台団地、霞ヶ丘団地(以上埼玉県ふじみ野市、1959年)、松原団地(埼玉県草加市、1963年)、男山団地(京都府八幡市、1972年)、高島平団地(東京都板橋区、1972年)などと共に「東洋一のマンモス団地」と呼ばれた。
完成当時は香里団地の規模の大きさが世界各国で話題となり、日本国内の有識者や日本国外からの視察者もバスで来訪していたこともあった。
日本住宅公団が手掛ける関西で初めての大規模住宅開発に際して、住宅計画の研究で有名であった京都大学工学部の西山夘三研究室に基本計画が委託された。西山研究室が提案した基本計画は、野外劇場や市民劇場などを設ける斬新なものであったが、その一部は実際の設計に生かされているという[1][2]。
当初の集合住宅は1DK(単身者向け)、2K、2DK(新婚夫婦向け)、3DK、4K(家族向け)の間取りが有り、3階建て、5階建ての中層棟が多かった。2DKが主で広くはなかったが、水洗トイレ、ガス風呂、ダイニングキッチンなどが生機能的に配置されていた[3]。
フラット型と呼ばれる一般的な直方体をした棟については階段室型と片廊下型が用意され、片廊下型では1階部分にピロティが設けられた棟も有った。ポイントハウス型と呼ばれる塔状の棟は、3方向に住居を設ける星型棟が用意された。2階建てで庭が用意されたテラスハウスや、商店街には店舗付き住宅が用意され、後にツインコリダー型10階建ての高層棟も建てられた。
多くの棟は広い敷地に余裕を持って配置された[4]。一つの区画に向かい合うように建てられ、棟と棟に挟まれた場所に設けられた広場や児童公園が、住民の地域社会を育てるように考えられた。
公園が計画的に設置され、核となる香里ヶ丘中央公園、自然の雑木林が残された香里ヶ丘南公園、重森三玲設計の日本庭園である以楽苑など、大小様々な公園が設けられている。
市役所の支所、公設市場、診療所、郵便局、駐在所が開設された[4]。中央部に位置する新香里交差点付近には、核店舗としてスーパーマーケット大丸ピーコックの第一号店である香里店を擁する商店街、母子像と泉を中心に据えたロータリー状のバスターミナルが設けられた。
幹線道路には街路樹が植えられた。新香里中央線には270本のケヤキ、中振交野線には160本の公孫樹、枚方新香里線には150本のソメイヨシノ、またトウカエデ、夾竹桃、枝垂柳といった木々が、完成後40年を経て大きく成長している。その景観が認められ、枚方八景「香里団地の並木」、枚方市愛称道路「けやき通り」「いちょう通り」に名を連ねている。
また枚方市における公共下水道発祥の地である[5]。1993年には香里中央雨水幹線を暗渠化し、その上に噴水や水路、遊歩道を設けた香里こもれび水路が整備された。香里こもれび水路は「出合いのプロムナード香里こもれび水路」で、平成5年度手づくり郷土賞(出会いを演出する街角)を受賞している。
その一方で、設計の古さに起因する問題も生じている。
中層棟には当初ダストシュートが設置されていたが、落下地点でゴミが散乱するという衛生上の問題により廃止された。1棟だけ有る高層棟以外はエレベータは設置されていなかったため、中層棟の上階の住民は階段の上り下りを強いられる事になった。
住民の足は主として公共交通によるものと考えられていたため、戸数に対して駐車場が少なかった。そのため完成後の自家用車の普及により駐車場が慢性的に不足した。1980年代には駐車場の空きを待つ待機者が常に十数名以上という事も珍しくなく、待機状態は駐車場を借りていた入居者が転出するまで何年にも渡った。これは商店街においても同様であり、来客用駐車場は殆ど用意されていなかった。 そのため、団地内の道路は日常的に住民と来客の路上駐車が並ぶ事になっていた。 団地内の駐車場は全て道路に面した平面に自動車を並べる構造となっていた。幸い敷地に余裕が有ったため、子供の遊び場などを避ける形で新たに駐車場を増やしていた。1980年代には児童公園も駐車場にされたが、駐車場不足を解消するには至らなかった。この状態は建て替え事業の準備のために、計画的に空家を増やすまで続く事となった。
このような生活様式の変化および当初の建築物の老朽化に対応するため、1998年から建て替えが実施されている。 建て替え事業により対象地域の一部は民間企業に譲渡され、分譲住宅として集合住宅や戸建住宅が販売されている。
香里製造所当時の建築物として、収函室(香里ヶ丘診療所)、第三汽缶場煙突(妙見山配水場)が現存している。化成・混和・填実室(旧枚方市役所香里ヶ丘支所)は建替え事業により2007年に、仕上室(こもれび生活館)は新しいスーパーマーケットへの建替えにより2012年2月頃にそれぞれ取り壊された。
香里製造所の敷地外縁部にあたる、観音山公園、桜公園、桑ヶ谷公園、香里ケ丘東公園には陸軍用地の標柱が一部残されている。
ダイニングキッチンに代表される公団住宅の生活は若い子育て世代の人気を呼び、枚方市が軍需工場の町からベッドタウンとして発展する契機となった。ここに入居した多田道太郎を始めとする知識人を中心として香里ヶ丘文化会議が発足した。また子育て世代の大量入居に伴い幼児保育が大きな問題として注目された事を契機として、住民が主体的に生活環境を向上させる機運に繋がった。これが後に全国初の零歳時保育を実施する香里団地保育所の設立や、全国初の医療機関併設型病児保育室となる枚方病児保育室の設立に寄与する事となった[6]。
集合住宅はA地区からE地区の5地区で構成され、それぞれで地区自治会が組織された。各自治会ごとに集会所が用意され、自治会や住民に利用された。
夏季には自治会主催で夏祭りが実施された。B地区の夏祭りでは1970年代まで大丸ピーコック香里店から香里ヶ丘公設市場(現こもれび生活館)まで夜店がひしめき合い、大丸ピーコック前の広場(現ピーコックストア香里ヶ丘店敷地)では盆踊りや子供向けの映画上映で賑わっていた。
なお初代大丸ピーコック前の広場には、かつて花壇や幼児用プール(夏季)が設置されていた。プールは噴水に作り変えられた後、花壇跡に設置された駐車場が拡大する形で姿を消した。
テレビアンテナは当初各戸で設置されていたが、1980年頃に共同アンテナ化。VHF6局(NHK総合、毎日放送、朝日放送、関西テレビ、読売テレビ、NHK教育)、UHF2局(KBS京都、テレビ大阪)に加えて、サンテレビも視聴できるようになった。
枚方市南部の香里丘陵に位置し、香里ヶ丘8丁目付近の標高81.8mを頂点に西から東へ低くなるように平均50m前後の緩やかな起伏が連なる[7][8]。戦時中はこの地形が爆風を防ぐ自然の土塁として機能する事を期待され、火薬工場である香里製造所が置かれた[9]。丘陵は氷河期と間氷期に堆積した大阪層群と呼ばれる地層から成り、香里ヶ丘南公園でも見ることができる。東洋象の化石が発見されたのも香里団地の北に隣接する宮之下町からである[8]。
香里丘陵に端を発する
香里ヶ丘南公園には香里丘陵の自然が比較的残されている。香里ヶ丘南公園の他、桑ヶ谷公園、香里ヶ丘東公園にも見られるコナラ群落には、コナラ、アカマツを始め、アベマキ、アラカシ、ナマザクラ、エノキなどが見られる[8]。
かつては三井住友銀行香里ヶ丘支店が香里ヶ丘バス停近く(寝屋川市末広町)にあったが、2020年11月2日に香里支店(香里園駅前)に移転し(支店内支店化)ATMのみの店舗になっている。
「香里ピーコック通り」を建て替える形で開業したショッピングセンター。主要テナントは以下の通り。
()内は建て替え前の比較的古い地図での表記。
団地内の幹線道路として、東西に新香里北線、新香里中央線(けやき通り)、南北に山之上高田線・新香里高田線、枚方新香里線、中振交野線(いちょう通り)が通る。戦時中、片町線星田駅から香里製造所へ引込み線が敷設され、火薬や砲弾が鉄道輸送された。団地内の幹線道路はその鉄道網跡が整備されたものである。
引込み線跡には京阪バス枚方営業所香里団地支所(2002年に交野営業所香里団地支所に改組)が設置された。団地内の幹線道路を経由し、京阪電車枚方市駅、枚方公園駅、光善寺駅、香里園駅とバスで10分から20分(平常時)の時間で結ばれている。かつては枚方市駅行きの直通便、阪急高槻市駅行きやダイエー香里店行きの便も設けられていた(ただし阪急高槻行きは高槻営業所管轄であった)。なお、香里団地営業所は2022年3月31日に廃止され、管轄路線は交野営業所に移管されている。
団地内のバス停は、桑ヶ谷、香里橋、藤田川、香里ヶ丘三丁目、新香里、香里ヶ丘九丁目、香里ヶ丘十丁目、香里小学校前、香里ヶ丘、開成小学校前、五本松、香里ヶ丘七丁目、公孫樹通、香里ヶ丘五丁目、香里ヶ丘六丁目、香里ヶ丘八丁目、八丁目北、淀見公園。香里ヶ丘八丁目を経由する経路以外は全て大型バスが運行している。枚方市駅や枚方公園駅へは途中で国道1号線の高架と交差しており、香里園駅へは駅周辺の道路が狭い事も起因し、ラッシュ時には顕著な渋滞で所要時間が大幅に超過する問題が有る。
また、京阪バス以外に当団地各地と地区内の商業施設・医療機関・郵便局を結ぶ「おり姫ひこ星送迎サービス」も運行されている。利用対象は、事前登録を行った65歳以上の者としており、デマンド式で乗車・降車停留所間を最短ルートで結ぶタイプとなっている。車両は電動の自転車タクシーを使用し、運賃は無料である。
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