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一定の集団が着用することを定められている服装 ウィキペディアから
制服(せいふく)とは、会社、学校あるいは軍隊・警察など、ある一定の集団や組織の所属者が着用することを目的に規定された服のことである。同じ集団内でも、男性と女性、軍隊などの階級によって制服のデザインが異なる場合も多い。また、普段の着用義務がない服は、標準服(ひょうじゅんふく)や奨励服(しょうれいふく)と呼ばれることもある。なお、制服は英語ではuniform(ユニフォーム)であるが、日本語でユニフォームと言う場合、スポーツのチームメンバーの統一された服装を指すことがある。
それに対して規定に定められていない個人的な服装を私服(しふく)と言う。
制服を設けるもっとも重要な目的は、組織内部の人間と組織外部の人間、組織内の序列・職能・所属などを明確に区別できるようにすることである。また、同じ制服を着ている者同士の連帯感を強めたり、自尊心や規律あるいは忠誠心を高めたりする効果が期待される場合もある。格好良い制服やかわいい制服は、あこがれを抱かせ、その制服を着たい、すなわち、その職種に就きたい、その組織に入りたい)という願望をもたせ、人材確保に一役買うこともある。
また戦時体制や独裁国家などにおいては、物資の節約や意識の共有などを目的とした服装の統制が行われることがある。大日本帝国で太平洋戦争中に用いられた国民服、中国や北朝鮮の人民服などがその例である。
制服にはその職務にあった機能性が求められる。特定の作業用に機能性を重視して規定された服は作業服と呼ばれ、制服と区別されることもある。企業によっては作業服を業務において常に着用する服装であるとし、作業服を制服と位置づけることもある。ただし、そのような企業でも営業職など接客を伴う職種・場面ではスーツを着用することが多い。
現在の日本の公務員では自衛官、警察官、消防吏員、海上保安官などは制服の着用が重視される。また民間企業では鉄道員・駅員、警備員などは業務上の観点から制服の着用が重視される。例えば制服を着用した駅員は一般客との区別がつきやすく、これにより乗り換えについての質問や緊急事態発生時の連絡などをスムーズに受けられる。なお警察官や警備員などでも、捜査中で身分の露見を防がねばならない、労働争議中で制服着用が争議関係者を刺激するなどの場合は私服勤務が許される。
軍人軍属や警察官などの制服には階級章、所属章、部隊章、資格章等の記章が付けられており、制式(デザイン、色彩、材質等)も厳格に定められているため、これらの機関等における制服の意味は命令系統の統制や上下関係の明示等の役割を果たしている。階級ごとの制服を廃止し、最高司令官から兵卒までほぼ同じ制服を着用したことがあったが、組織統制上の混乱をもたらしたため階級ごとの制服が復活したかつての中国人民解放軍のような例もある。自衛隊においては、陸上自衛隊と航空自衛隊が幹部(士官)と曹士(下士官兵)の制服に若干の差異を設けているのに対し、海上自衛隊では幹部と曹の制服はほとんど同じであるが、曹と士の制服は完全にデザインが異なる。ただしこれは男性海士に限り、女性海士は海曹とほぼ同様の制服である。
一般社会においては制服がない業種や職種も少なくないが、社会人の場合はある程度あらたまった服装で勤務することが求められることもある。例えば男性の会社員の場合は、背広服(スーツ)、ワイシャツ、ネクタイ姿で勤務する人が多く、この背広服やワイシャツは実質的に制服とされているとの見方もある。
日本の企業ではこれまで、女性社員にのみ制服を採用している企業が多く見られたが、バブル崩壊後の企業業績悪化に伴うコスト削減、女性が多くを占める派遣社員の増加(その一方での制服着用の一般職女性社員の削減)に伴う企業の雇用形態の変化に合わせて、近年女性社員の制服を廃止する企業が増えている。フェミニズムの立場から女性にのみ制服を適用するのは女性差別であるという理由は副次的なものである。一方、地球環境保全や盛夏における快適性(クールビズ)の観点から、男性社員の服装の自由化を求める声も高まり、業種・職種によっては大企業を中心としてカジュアルな服装でも勤務可という職場が多くなっている。公務員においても国策としての地球温暖化対策として、クールビズ、ノーネクタイ(ネクタイ不着用)が標準となりつつある。なお、グループ企業において独自の制服がある場合、子会社が親会社の制服に準じたデザインのものを採用することが多い。
経済学者のロバート・H・フランクは「制服着用の義務化は、生徒たちが自分自身を表現する能力を制限することになるが、着る服を競い合うという金銭的・感情的な負担を減らすことができる」と指摘している[7]。
制服が職業・職務を表すという機能を悪用し、警察官などを装った犯罪は後を絶たない(警察手帳を貸与され携行しているにもかかわらず、提示を要求されても「制服が身分証明だ」と強弁し拒否する警察官もいる為。1968年に三億円事件、1978年に制服警官女子大生殺人事件、1988年には警察官ネコババ事件が発生)。このため、2002年には階級章一体で個人コードが刻まれた名札「識別章」が導入された。
制服以外の身分証明を求めたり、電話で確認したりすることで防げる事もあるが、通常はそこまで確認は困難である。宅配便業者では訪問先・地域ごとに専従の担当者を置く対策法を取るところもある(別の人間が配達に訪れる事は代理の際に限られる)。消防吏員・消防団員を装った消火器販売(灰色の作業服姿で来る)や電力会社・ガス会社の集金・点検を装った詐欺事件、宅配便業者を装い鍵を開けさせる強盗事件なども起きている(このため電力・ガス・水道各社では使用量通知書に「本票を使って集金する事はありません」と注意書きをしている)。
ノルウェー連続テロ事件のウトヤ島銃乱射では、犯人は警察官の制服を着用してテロ対象者を安心させた上で犯行に及んでおり、被害者はテロリストを警察官と信じて整列した。その影響で69人が死亡した。
ハーグ陸戦条約では交戦相手国の軍服を着用し偽装して武力行使する事は禁止されている。1944年のバルジの戦いの際には、オットー・スコルツェニー率いるSS特殊部隊がアメリカ軍兵士が遺棄して行った軍服を着用し連合軍勢力圏に潜入、通信網や交通網に混乱を与えたこともあったが、もし連合軍兵士によって素性が明かされたら銃殺は免れなかった(実際に数名が、発見されたその場で銃殺されている)。逆に、自軍の軍服の上に敵軍の軍服を着込み、戦闘時には敵軍の軍服をパッと脱ぎ捨てるという方法も両軍の一部特殊部隊では行われており、この戦法を採ったおかげで処刑を免れた兵士も多かったという。
制服はそれ自体が身分・職業を示す意味が大きく、盗難や模造・偽造により悪用されると、上記のように犯罪を容易にする虞がある。司法官権職員や治安・保安・防災関係機関、ライフライン関係機関の職員は特に厳正に制服が管理される必要性および傾向がある。一例として、JR東日本商事は、鉄道会社向け制服を一着ごとに個別管理するシステムを開発した[8]。
またイベント「コミックマーケット」においては、警官・消防官・警備員の制服に見えるコスプレ時は、移動する際には上着で隠す、本職になりすましたような言動の禁止といった規制が科されている[9]。
また、制服を着用するだけで無条件に信頼するのでは無く、身分証明書自体も制服の装備品の一つとして考えられ、当然通常は着用(携帯)しなくてはならない(例えば、警察官の警察手帳は、“勤務中は勤務先本部長から認められた場合を除き常に携帯し、公務執行で市民から求められた場合は身分証を提示すること”と法律で定められている。これを逆手に取り、演劇用小道具をどこからか入手し、特殊詐欺で「警察です」と見せる受け子の事例が続発している)。
警備会社は社員である警備員に制服を貸与しているが、制服を紛失した場合は速やかに管轄の警察署に届け出る事になっている。これは、制服を悪用されないためであり、制服の着用による社会的立場を悪用した犯罪を防止する観点から必要な措置なのである。
犯罪に悪用されないまでも制服自体に興味を持つ愛好家も多数おり、盗難などにより紛失する可能性は極めて高い。制服を管理する上で留意する事は、洗濯し制服を干す場合は外に干さない(特に低階層住宅)事や、制服を運搬する場合には、中身を秘匿するなどが考えられる。
警察博物館では警察官の制服、徽章の展示がされているが、このコーナーはコピーを防止するために常に職員が写真撮影されないように見張っている。
使用者により労働者が就業中は着用することを指示された制服がある場合、その指示が明示的か黙示的[注 2]かは問わず、日本では就業時間前後の更衣のためにかかる時間は使用者の指揮命令下に労働者が置かれていると解され労働時間に含まれる[10](最高裁判例[11])。
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