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平成29年7月九州北部豪雨(へいせい29ねん7がつきゅうしゅうほくぶごうう)は、2017年(平成29年)7月5日から6日にかけて福岡県と大分県を中心とする九州北部で発生した集中豪雨[6]。
被害の規模は気象庁が豪雨について命名する基準(損壊家屋、浸水家屋の数)を下回ってはいたものの[7]、人的被害が大きいことから[8]、同年7月19日付で命名された[6]。
7月4日まで北陸付近にあった梅雨前線が、7月5日から朝鮮半島から西日本付近に南下[9]。5日朝方、島根県西部で発達した雨雲が帯状に連なる線状降水帯が発生し、記録的な降水となった[10]。気象庁は5日5時55分、島根県(西部の浜田市・益田市・邑南町・津和野町)に大雨特別警報を発表した(同日11時15分に解除[11])。
5日午後には、福岡県筑後地方北部で次々と積乱雲が発生し、発達しながら東へと移動して線状降水帯が形成された。このため、同じ場所で長時間猛烈な雨が降り続いた[12][13]。福岡県朝倉市、うきは市、久留米市、東峰村、佐賀県鳥栖市、大分県日田市などで1時間に100mmを超える雨量がレーダー観測から解析された[14]。特に、朝倉市付近では3時間で約400mm、12時間で約900mmの雨量が解析され[15]、気象庁以外が管轄する雨量計では、朝倉市寺内で5日15時20分までの1時間降水量169mm、朝倉市黒川(北小路公民館)の雨量計では5日20時50分までの9時間降水量778mm(1時間平均で約86mm)を観測した。この1時間降水量は自治体観測を含めた日本記録187mm(長崎県長与町・1982年長崎大水害)に迫るものであり、また9時間降水量では12時間降水量の気象庁観測日本記録695.0mm(高知地方気象台・1998年高知豪雨[16])を大きく上回っており、9時間という時間範囲内で見れば、朝倉市の山間部の降水強度は日本の気象観測史上でも最大級のものであった。
5日17時51分、気象庁は「甚大な被害の危険が差し迫っている」として、福岡県の筑後地方と筑豊地方を中心とする地域に大雨特別警報を発表した[17]。さらに19時55分には、大分県のほぼ全域にも大雨特別警報を発表した[18]。7月6日3時10分、気象庁は大雨特別警報の対象範囲として福岡県の5市2町を追加し、これで福岡県の大部分と大分県のほぼ全域が対象となった[19]。
豪雨が発生した当時、九州北部では対馬海峡付近にあった梅雨前線に向かって南海上の熱帯低気圧などから暖かく湿った空気が流入する一方、上空には冷たい空気があり、大気の状態が非常に不安定になっていた。そんな中で、地表付近の暖かい空気と冷たい空気の境界付近で積乱雲が次々と発生。先行して降雨のあった中国・四国地方で冷却された空気が流れ込み、強化された[13]。また、湿った空気が福岡・佐賀県境にある脊振山地の周囲を囲むように二方向から流れ込み、脊振山地の東側で合流したことで降雨が強化されたと考えられる[13][12]。積乱雲が繰り返し発生しては発達しながら東へ移動する、バックビルディング型形成と呼ばれる過程で、線状降水帯が維持された[13]。
豪雨当日朝の天気予報は、筑後地方は曇りで、ところにより午後は激しい雷雨[20]、大分県西部は晴れのち曇り、ところにより午前中から雷雨の予報であった。[21]
時刻 | 降水量(mm) | |
---|---|---|
8 | 0.0 | |
9 | 1.5 | |
10 | 0.5 | |
11 | 4.0 | |
12 | 17.5 | |
13 | 88.5 | |
14 | 46.5 | |
15 | 67.5 | |
16 | 106.0 | |
17 | 22.5 | |
18 | 22.0 | |
19 | 44.0 | |
20 | 59.0 | |
21 | 33.5 | |
22 | 0.5 | |
23 | 2.0 | |
24 | 0.5 |
2018年6月1日現在、消防庁によると、福岡県で37人(朝倉市で34人、東峰村で3人)、大分県日田市で3人の計40人の死亡が確認されている。また福岡県朝倉市で2人が行方不明になっている。住宅被害は、福岡県と大分県の合計で、全壊336棟、半壊1096棟、一部破損44棟、床上浸水180棟、床下浸水1481棟となっている(ただし台風3号による被害も含まれている)[23]。
静岡大学防災総合センター教授の牛山素行の調査によると、死者・行方不明者の被災原因は土砂災害が23人、洪水が18人だった。多数の家屋が洪水で流失しており、洪水の犠牲者が多いにもかかわらず多く(30人)が屋内で被災していることが、この豪雨災害の特徴である[24][25]。
福岡県朝倉市では、蜷城地区で桂川が氾濫し[26]。添田町で彦山川が氾濫した[26]。大分県日田市では大肥川の一部が溢れ、一部地区の孤立が生じた[27]。日田市では花月川も氾濫した[28]。
被災地には大量の流木が見られ、河川に流れ込んだ総量はおよそ20万トン、36万立方メートルにのぼると推定されている[29]。土砂崩れでなぎ倒された杉などの木が川を流れ下り、川の流れをせき止めて氾濫させた。住宅地に押し寄せた流木によって、水流だけの場合よりも破壊力が増し、家屋に大きな被害をもたらした[30]。
流木は直接的な破壊以外にも、間接的に水流の圧が増すことによる被害も生んだ。日田市では花月川を渡るJR久大線の橋が流されたが、流木が橋に引っ掛かり、水がせき止められたことで水量が増し、橋により大きな力がかかったことが原因とみられる[31]。
大分県日田市の小野地区では6日10時半頃、大規模な土砂崩れが起きて土砂が民家に押し寄せ、1人が巻き込まれて死亡した。この土砂崩れで川がせき止められて土砂ダムができた[32]。
真砂土と呼ばれる地質の山地は突然の豪雨に耐え切れず、各地で表層崩壊を起こした。表層崩壊によって杉の流木が川に流れ込み、ため池が決壊した[33][34]。スギなどの木が大量に生えている人工林は間伐して日当たりを改善するなどの手入れをしなければ木が成長せず深い根を張れないため、森林管理が十分でなかったのではとも指摘されている[35]。
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7月6日午前8時30分までに福岡・大分両県を中心にした合計約51万7900人に避難指示や避難勧告が発表された[36]。また、両県の合計29地区の集落が一時孤立状態となった[37]。
朝倉市にある国指定史跡でかんがい施設遺産にも登録されている朝倉三連水車に土砂が流れ込み埋もれてしまったほか、同市普門院の重要文化財である本堂の一部も土砂に埋もれているなど、福岡・大分で国および自治体が指定・登録する文化財が少なくとも20件が被災している[38]。
豪雨により果樹を植えた山が崩落したり、ビニールハウスに土砂が流れ込んだりし、農作物に深刻な被害が出た。また日本3大林業地の一つと呼ばれる大分県日田市では多くの杉が流された[39]。
観光業では、福岡県で宿泊だけで約1万1500人のキャンセルが発生し、風評被害を払拭するため宿泊や観光を組み込んだ旅行商品の割引きを支援する「ふくおか応援割」を8月中旬から始めた[42]。
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豪雨災害発生時点では車両の定期メンテナンスのため運休していた。メンテナンス完了後、8月22日に予定通り運行を再開したが、久大本線を通過しないコースへと変更が行われた[59]。
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