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広島市と長崎市の原爆投下攻撃による被害を受けた人 ウィキペディアから
被爆者(ひばくしゃ)(英語: Hibakusha)とは、空襲や爆撃による被害を受けた人のことを指す。ここでは主に核爆弾によるものを解説する。
2024年7月1日、厚生労働省が明らかにしたところによれば、2024年3月末で被爆者健康手帳を持つ人、被爆者は10万6825人(対前年比6824人減)、平均年齢は85.58歳で、前年から0.57歳上がった。都道府県別では、広島県 5万1275人、長崎県 2万5966人、福岡県 4311人、東京都 3557人など[1][2]。
よく似た言葉に「被曝」があるが、こちらは放射能(放射線)にさらされた場合を指す(詳しくは『被曝』の項目を参照のこと)。厳密にいえば、核爆発による直接の被害を受けた者は「被爆者」、直接の被害は受けず、例えば核爆発被災地に救援などのために立ち入り、そこにある核爆発に伴う残留放射能(放射線)を浴びた者は「被曝者」であるが、今日では便宜上最初の事例を「一次被爆者」、後の事例を「二次被爆者」と呼ぶことが多い。また胎児の時に被爆した者を「胎内被爆者」、被爆者の子孫は「被爆○世」[3]と呼ばれる。また人間だけでなく、被爆した物は以下のように呼ばれている。「被爆建物」、「被爆電車」、「被爆樹木」、「被爆ピアノ」など。
核兵器により人間が被爆した場合、火傷などの直接的な外傷とは別に、頭髪の脱毛、皮下出血、歯茎からの出血、鼻血、下痢や嘔吐などの急性放射線症候群や、白血病やがん、骨髄異形成症候群などを発症する可能性が高くなる晩発性の放射線障害が発生する。これらの放射線障害は原爆症と総称される。原爆症の認定審査は厚生労働省の原子爆弾被爆者医療分科会が行っている。日本の法律上の被爆者の定義は、原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(被爆者援護法)に規定される被爆者健康手帳を交付された者をいう。
加齢促進効果は見られないが、被ばく量の過多で白内障およびアテローム性動脈硬化の有病率、免疫に関連した血液中の炎症性蛋白質レベルの変化に差が見られる[4]。
胎内被爆者については、高放射線量を浴びた16週から25週の胎児については知的障害児の誕生頻度が上昇する。それ以外の胎児については有意な変化は見られないとされている。
被爆二世とは、両親またはどちらかが被爆者で1946年6月1日(広島被爆)か1946年6月4日(長崎被爆)以降に生まれた人のことをいう[5][注釈 1]。
被爆二世については遺伝的影響はないとの意見が定説となっている。原爆傷害調査委員会(ABCC)による被爆2世に対する調査では、新生児の障害、染色体異常、血中タンパク質の異常などの発生率に差はないと結論された[7]。放射線影響研究所は2007年に、被爆二世への遺伝的な影響は、死産や奇形、染色体異常の頻度、生活習慣病を含め認められないと発表している[8][9]。厚生労働省健康局総務課はこれらの研究から国会答弁において被爆二世の健康への影響はないと考えられるとしている[7]。
2020年には広島市と長崎市の放射線影響研究所が、被爆者と被爆2世の約900組を対象にゲノム解析を行う準備をしていることを発表した。研究所では、ゲノム解析により深刻な遺伝子変異が見つかる可能性は低いと見ており、差別や偏見に苦しむ被爆者や被爆2世の心的負担を軽減することにもつながる調査であることを示唆している[10]。
一方で被爆二世の健康への影響を疑う意見も存在している。1988年に結成された全国被爆二世団体連絡協議会は、2004年に坂口厚生労働大臣に対して被曝2世、3世に健康に関する不安があり、なんらかの対応を求める請願書を提出した。同会の2006年の総会決議では原爆症と同じ症状で死去した2世が存在すると指摘している[7]。2012年6月3日に長崎原爆資料館で開催された第53回原子爆弾後障害研究会で発表された広島大学の鎌田七男名誉教授らによる広島大学原爆放射線医科学研究所研究グループの長期調査結果報告である「広島原爆被爆者の子どもにおける白血病発生について」においては、被爆二世の白血病発症率は特に両親ともに被爆者の場合に高くなる遺伝的影響があるとされた。鎌田は「これでようやく端緒についた。」と語っている[11]。
2006年、NHKが被ばく体験者1300人に対して行った調査によると3割を超える人々にPTSDが疑われるようなトラウマが強く残っており[12]、政府の調査ではPTSDなどの精神疾患と合併症も確認されたことから支援が行われている[13]。
被爆者と二世に関して、一般大衆の無知から結婚や仕事で深刻な差別を受けるケースがある[14]。一部の人間は、伝染性・遺伝病などの危惧から避ける様子が見られる(上記の項目にあるように医学的にそのような疾患は見られない。)[15][16]。
また、暴力的・精神的ないじめの証言もたびたび見られ、被爆者であることを隠すケースもみられる[17][18][19][20][21]。さらに、このような偏見・差別は、不快な記憶を彷彿させやすい[12]。
上記の法律を一本化したのが、平成6年(1994年)12月の原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律(被爆者援護法)である[22]。
被爆体験者精神影響等調査研究事業は、平成14年(2002年)から被爆体験を原因とする精神疾患(PTSD等)及びその合併症に対して、支援を行っている[23][13]。
以前は原爆症として実際に症状がある者が認定されていたが[24]、平成6年(1994年)に定め、施行された厚生労働省の被爆者手帳の交付要件及び原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律にて、原爆での被爆は、大きく分けて直接被爆、間接被爆、被爆者の救護、死体処理を行い放射能の影響を受けること前3項の該当者の胎児の4種類が定められ、原爆によって死亡した者から14日後に爆心地より2km以内に1歩でも踏み入れた者及びその胎児まで幅広く被爆者と認められるようになった。原爆により発生した健康被害については原爆症として別途定めている。
直接被爆は、原子爆弾が爆発した当時に爆心地付近にいて、原子爆弾による被害を受けた場合に使われる。建物の影などにいて直接光線や熱線を浴びていなくても、放射線は建造物を通過するので、この場合も直接被爆という。一次被爆ともいう。
間接被爆は、原子爆弾の爆発後、救護などのために爆心地付近に出入りしたために、放射能を帯びた付近の土壌や、放射性降下物(黒い雨や死の灰など)によって間接的に原子爆弾の被害を受けることをいう。間接被爆は直接、爆弾による攻撃を受けたわけではないが、この場合も被爆という。二次被爆ともいう。 入市被爆は原子爆弾が投下されてから2週間以内に、救援活動、医療活動、親族探し等のために、広島市内または長崎市内(爆心地から約2kmの区域内)に立ち入った者に認定される[25]。
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