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江戸時代の日本の浮世絵師 ウィキペディアから
喜多川 歌麿(きたがわ うたまろ、1753年(宝暦3年) - 1806年10月31日(文化3年9月20日)は、江戸時代の日本で活躍した浮世絵師。
姓は北川、後に喜多川。幼名は市太郎、のちに勇助(または勇記)と改める。名は信美。初めの号は豊章といい、天明初年頃から歌麻呂、哥麿と号す。生前は「うたまる」と呼ばれていたが、直接本人を知るものが居なくなった19世紀過ぎから「うたまろ」と呼ばれるようになったようだ[1]。なお、天明2年(1782年)刊行の歳旦帖『松の旦』に「鳥山豊章」「鳥豊章」の落款例がある。俳諧では石要、木燕、燕岱斎[要出典]、狂歌名は
生年、出生地、出身地などは不明。生年に関しては、没年(数え54歳)からの逆算で1753年(宝暦3年)とされることが多い[注釈 1]。出身に関しては、川越説(野口米次郎、関根只誠)と江戸市中の2説が有力だが、他にも京、大坂、近江国、下野国などの説もある[要出典]。
鳥山石燕のもとで学び、初作は1770年(明和7年)、北川豊章名義の、絵入俳書『ちよのはる』の挿絵1点[注釈 2]。歌麿名義では、1783年(天明3年)の「青楼仁和嘉女芸者部」「青楼尓和嘉鹿嶋踊 続」が最初期と言われる[5]。1788年(天明8年)から寛政年間初期(1789-)にかけて、蔦屋重三郎を版元として、当時流行していた狂歌に、花鳥画を合わせた狂歌絵本『百千鳥』、『画本虫撰(えほんむしゑらみ)』、『汐干のつと』などを版行した。
1790 - 91年(寛政2 - 3年)から描き始めた「婦女人相十品」「婦人相学十躰」といった「美人大首絵」で人気を博した。「青楼仁和嘉女芸者部」のような、全身像で精緻な大判のシリーズもあったが、「当時全盛美人揃」「娘日時計」「歌撰恋之部」「北国五色墨」など大首美人画の優作を刊行した。一方、最も卑近で官能的な写実性をも描き出そうとした。「北国五色墨」の「川岸」「てっぽう」や「教訓親の目鑑(めがね)」の「ばくれん」、あるいは秘画に見られる肉感は、決して美しさだけではなく、生々しさや、汚濁もある実存世界へと歌麿の眼が届いていることも知らされる。蔦重との連携の下「無線摺」「朱線」「ごますき[要出典]」といった彫摺法を用いて、肌や衣裳の質感や量感を工夫した。やがて「正銘歌麿」という落款をするほどまでに、美人画の歌麿時代を現出した。また、絵本や肉筆浮世絵の例も数多くみられる。
歌麿は背景を省略して白雲母を散りばめ、更にそれまで全身を描かれていた美人画の体を省き顔を中心とする構図を考案した[要出典]。これにより、美人画の人物の表情だけでなく内面や艶も詳細に描くことが可能になった。歌麿は遊女、花魁、さらに茶屋の娘(三河の出のたかが有名で歌麿の死に水をとったとされる[要出典])などを対象としたが、歌麿が取り上げることによって、モデルの名はたちまち江戸中に広まった。これに対して江戸幕府は世を乱すものとして、度々制限を加えたが、歌麿は判じ絵などで対抗し、美人画を描き続けた。
1804年(文化元年)5月、豊臣秀吉の醍醐の花見を題材にした「太閤五妻洛東遊観之図」(大判三枚続)[6]を描いたことがきっかけで、幕府に捕縛され、手鎖50日の処分を受ける。織豊時代以降の人物を扱うことが禁じられていたからである。これ以降、歌麿は病気になったとされる。版元たちは回復の見込みがないと知ると、依頼が殺到したという[7]。
ボストン美術館のスポルディング・コレクションは、歌麿の浮世絵383点を所蔵。公開を長く禁止したため非常に保存状態が良く、すぐに退色するツユクサの紫色もよく残っている[10]。
作品名 | 技法 | 形状・員数 | 寸法(縦x横cm) | 所有者 | 制作年 | 落款 | 印章 | 備考 |
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雨中湯帰り図 | 絹本著色 | 額1面(元は1幅) | 個人蔵(アメリカ) | 天明中期 | 「哥丸舎豊章画」 | 「魚水有清言」朱文方印[11] | ||
品川の月図 | 紙本著色 | 額1面(元は1幅) | 147.0x319.0 | フリーア美術館 | 天明末期 | 無 | 無 | 吉原の花、深川の雪との連作。 |
遊女と禿図 | 絹本著色 | 1幅 | ボストン美術館 | 寛政初期 | 「哥麿画」 | 「岸識之印(?)」朱文方印・「字子華白(?)」朱文方印 | ||
かくれんぼ図 | 絹本著色 | 1幅 | 鎌倉国宝館 | 寛政初期 | 「哥麿画」 | 「岸識之印(?)」朱文方印・「字子華白(?)」朱文方印 | 特殊な落款・印章が一致することから、上記の遊女と禿図と双幅か、3幅対のうちの2点だと推測される。 | |
吉原の花図 | 紙本著色 | 額1面 | 186.7x256.9 | ワズワース・アシニアム美術館(米国) | 寛政3-4年頃 | 無 | 無 | 品川の月、深川の雪との連作。 |
遊女と禿図 | 絹本着色 | 1幅 | 城西大学水田美術館 | 寛政3-5年頃 | 「歌麿画」 | 「歌麿」朱文円印 | ||
女達磨図 | 紙本着色 | 1幅 | 栃木市 | 寛政3-5年頃 | 「歌麿画」 | 「歌麿」朱文円印 | 中国から輸入された竹紙が使われている。 | |
文殊菩薩図 | 絹本着色 | 1幅 | 寛政3-5年頃 | 「本朝画師歌麿源豊章筆」 | 「歌麿」朱文円印 | |||
三福神の相撲図 | 紙本墨画淡彩 | 1幅 | 栃木市 | 寛政3-5年頃 | 「歌麿画」 | 「歌麿」朱文円印 | ||
鍾馗図 | 紙本墨画 | 1幅 | 栃木市 | 寛政3-5年頃 | 「喜多川歌麿源豊章画」 | 方印未読 | ||
万才図額 | 絹本著色 | 4面(二曲一隻) | 鎌倉国宝館 | 寛政3-5年頃 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | 元は引き手襖。 | |
福禄寿三星図 | 絹本著色 | 1幅 | 日本浮世絵博物館 | 寛政3-5年頃 | 「歌麿源豊章図」 | 「歌麿」朱文円印 | ||
西王母図 | 絹本着色 | 1幅 | 84.3x35.7 | ウェストン・コレクション | 寛政3-5年頃 | 歌麿画 | 「歌麿」朱文円印[12] | |
遊女と禿図 | 紙本墨画 | 1幅 | 117.6x46.3 | 個人 | 寛政3-5年頃 | 「喜多川歌麿源豊章画」 | 「歌麿」朱文円印 | 山東京伝賛[13] |
雨宿り図 | 紙本墨画淡彩 | 1幅 | 39.0x56.5 | 個人 | 寛政3-5年頃 | 「喜多川歌麿源豊章画」 | 「歌麿」朱文円印[14] | |
納涼立美人図 | 絹本著色 | 1幅 | 105.4x32.3 | 個人 | 寛政6-8年頃 | 「歌麿画」 | 「歌麿」朱文円印 | 重要美術品 |
花魁道中図 | 紙本墨画淡彩 | 1幅 | ミシガン大学付属美術館(米国) | 寛政6-8年頃 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | 山東京伝賛 | |
遊女と禿図 | 絹本墨画淡彩 | 1幅 | 千葉市美術館 | 寛政6-8年頃 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | ||
美人夏姿図 | 絹本着色 | 1幅 | 101.5x31.9 | 遠山記念館 | 寛政6-8年頃 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | 重要美術品[15] |
立姿美人図 | 絹本著色 | 1幅 | 87.6x32.2 | 個人蔵(国内) | 寛政6-8年頃 | 「歌麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | 重要美術品 |
納涼美人図 | 絹本著色 | 1幅 | 39.5x65.6 | 千葉市美術館 | 寛政6-8年頃 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | 重要美術品 |
美人読玉章図(びじん たまずさをよむず) | 絹本著色 | 1幅 | 84.3x29.3 | 浮世絵太田記念美術館 | 寛政6-8年頃 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | |
美人と子供 | 紙本墨画 | 1幅 | 個人 | 寛政6-8年頃 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印[16] | ||
入浴美人図(寒泉浴図) | 絹本著色 | 1幅 | MOA美術館 | 寛政後期頃 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | 鶯谷吏隠(垣)(大田南畝)賛「蘭湯灧々昭儀坐其中 若三尺寒泉浸明玉 録飛燕別集語」。一般的には両者の関係から寛政後期の作とされるが、南畝が「鶯谷吏隠(垣)」の号を用いるのは文化元年2月に小石川金剛寺坂(現在の文京区春日2丁目)に転居した後とされるので[17]、歌麿最晩年の可能性がある[18]。 | |
桟橋二美人図 | 絹紙本著色 | 1幅 | MOA美術館 | 寛政後期頃 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | ||
遊女と禿図 | 絹本着色 | 1幅 | 旧ハラリー・コレクション | 寛政後期頃 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | 禿は団扇をもつ | |
三美人図 | 絹本著色 | 1幅 | 岡田美術館 | 寛政後期頃 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | ||
雪兎図 | 絹本著色 | 1幅 | 個人 | 寛政後期頃 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | ||
遊女と二人の禿図 | 絹本著色 | 1幅 | キヨッソーネ東洋美術館 | 寛政後期頃 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | ||
三美人図 | 絹本著色 | 1幅 | 海の見える杜美術館 | 寛政後期頃 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | 麻生工芸美術館旧蔵。歌麿の寛政後期の基準作 | |
杭打ち図 | 紙本墨画淡彩 | 1幅 | 寛政後期頃 | 「行年四十三才 哥麿筆」 | 「歌」「麿」朱文方形連印 | |||
琴を弾く遊女 | 紙本着色 | 扇1面 | ウェーバー・コレクション | 寛政後期頃 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印(別印) | ||
美人と若衆図 | 絹本着色 | 1幅 | ニューオータニ美術館 | 1802年(享和2年)頃か | 「哥麿筆」 | 「きた川歌麿」朱・白文方印 | 重要美術品(1938年(昭和13年)認定)。印章は中央に白文で「歌麿」とあり、その左右に朱文のくずし字で「きた・川」という他に類例がない珍しい印である[19]。 | |
二美人図 | 絹本著色 | 1幅 | メトロポリタン美術館 | 享和期頃 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | ||
朝粧美人図 | 絹本著色 | 1幅 | 大英博物館 | 享和期頃 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | ||
男と娘(つぼみ)図 | 絹本著色 | 1幅 | 個人 | 享和期頃 | 「哥麿筆」 | 「歌」「麿」朱文方形連印 | 春画。 | |
娘と子ども図 | 絹本着色 | 1幅 | 出光美術館 | 享和期頃 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | ||
花魁道中図 | 絹本着色 | 1幅 | 享和期頃 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | |||
芸妓図 | 絹本着色 | 1幅 | 岡田美術館 | 享和期頃 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | ||
ほととぎす図 | 絹本着色 | 1幅 | 享和期頃 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | |||
浴後、犬を見る美人 | 紙本着色 | 1幅 | 享和期頃 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | |||
男女遊愛図 | 絹本著色 | 1幅 | 個人 | 享和-文化初期 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | 春画。歌麿の肉筆春画は、上記の「男と娘図」と本作の2点しか確認されていない。 | |
更衣美人図 | 絹本着色 | 1幅 | 117.0x53.3 | 出光美術館 | 文化年間初期(1804年 - 1805年) | 「歌麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | 重要文化財 |
三味線を弾く美人図 | 絹本著色 | 1幅 | 41.5x83 | ボストン美術館 | 享和-文化初期 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | 紺屋安染・三八市成・山吹多丸・根事良白音・通用亭賛 |
遊女と禿図 | 絹本着色 | 1幅 | 享和-文化初期 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | 禿は鞠をもつ | ||
花魁道中図 | 紙本墨画淡彩 | 扇1面 | 東京国立博物館 | 享和-文化初期 | 「哥麿筆」 | 「歌」「麿」朱文方形連印 | ||
月見の母と娘図 | 絹本著色 | 1幅 | 香雪美術館 | 享和-文化初期 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | ||
更衣美人図 | 絹本着色 | 1幅 | 享和-文化初期 | 「哥麿画」 | 「歌麿」朱文円印 | 着賛 | ||
芥川図 | 絹本著色 | 1幅 | ロシア国立東洋美術館 | 享和-文化初期 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | ||
三美人図 | 紙本着色 | 1幅 | 享和-文化初期 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | |||
三番叟図 | 紙本着色 | 1幅 | 享和-文化初期 | 「哥麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | |||
三味線を弾く遊女図 | 絹本著色 | 1幅 | フリーア美術館 | 享和-文化初期 | 「歌麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | ||
文読む遊女図 | 紙本著色 | 1幅 | 125.6x53.5 | 大英博物館 | 文化2-3年頃 | 「歌麿筆」 | 「歌麿」朱文円印 | 中国の画仙紙を用いている[20]。 |
深川の雪図 | 紙本著色 | 1幅 | 198.8x341.1 | 岡田美術館hue | 享和-文化初期 | 無 | 無 | 品川の月、吉原の花との連作。 |
歌麿の門人には2代目歌麿、千代女、行麿、道麿、月麿、藤麿、秀麿、磯麿、あし磨、峰麿、此麿、年麿、竹麿、花麿などがいたが、師に比すべき絵師は現れず、当事の絵師、また後世の絵師たちに与えた影響は計り知れないものがある。
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