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日本のテレビドラマ ウィキペディアから
『ザ・カゲスター』は、1976年4月5日から同年11月29日まで全34話がNET系で毎週月曜日19時00分 - 19時30分に放送された、東映制作の特撮テレビドラマ。およびそれに登場するヒーローの名称。
白蝋魔人の一団に誘拐された風村コンツェルンの令嬢・鈴子とその秘書・姿 影夫は、隙を見てアジトから脱出に成功する。だが、逃げる途中で2人は誤って崖から転落、ともに高圧電線に触れてしまった。そのとき、電気ショックによって悪を憎む2人の心が影に宿り、カゲスターとベルスターの2人の超人が誕生した。
影夫と鈴子はカゲスターとベルスターの力で悪と戦うことを決意。私利私欲のために人々を苦しめる犯罪者たちを次々と倒してゆく。やがて彼らの背後に、ドクター・サタン率いる巨大組織「サタン帝国」の存在が浮き彫りとなる。カゲスターとベルスターは、世界征服を目論むサタン帝国の怪人たちに敢然と立ち向かう。
人間の記憶や性格、声をインプットしたロボット変身ヒーロー「宇宙鉄人キョーダイン」に続く東映の異色変身ヒーロー物で、本作品は主人公の影に魂が乗り移り戦うという異色の設定である[1][注釈 1]。「変身」に代わるヒーロー登場の手段として「影よ、行け!」という掛け声と分身ポーズが存在した。
男性と女性のペアの主人公は珍しくないが、普段の人間の姿のときは女性のほうが上位で男性が部下というのは珍しい。シリーズ前半ではサラリーマン喜劇の要素も取り入れられている[2]。
第12話までは、それぞれ独自の組織[注釈 2]を率いるさまざまな犯罪者が登場した。これらの犯罪者は顔や口元が露出しているケースが多く(一部は頭部にマスクを着用)、完全な着ぐるみからの脱却を図っていた。ヒーローが、特定の組織ではなく、毎回違った犯罪者と対決するという構図は『バットマン』などアメコミの強い影響を受けている[3]。
実写である本作品ではさまざまな制約の関係上、中盤からは、影夫や鈴子が直接変身したような描写に変更されるなど試行錯誤が続いた。
マントを効果的に魅せるアクションやベルスターのミニスカートを翻しての立ち回りが話題となった[3][4]。影を用いた独特な演出も特徴となっており[5]、カゲロベェの作画合成など独特な映像表現もファンからは高く評価されている[3]。
「原作・八手三郎」という肩書きの最初の作品である[1][2]。実際の企画は仮面ライダーシリーズなどを手掛けた東映プロデューサーの平山亨と阿部征司、後にスーパー戦隊シリーズの企画協力を担当する企画者104によって制作された[2]。
当初はアニメ作品として企画されていたが[出典 1]、広告代理店の大広側からの意向もあり特撮作品へと変更された[6]。
プロデューサーの平山は、元東映社員でのちに旭通信社のプロデューサーとなり、『マジンガーZ』などをプロデュースした春日東とは仕事上の交流はなかったが、春日は平山を東映本社で見かけると話しかけることがあったという。ある日、春日が「平山さんの作品は敵も味方も着ぐるみだけど、たまにはどちらか着ぐるみじゃないものは出来ないのか」という意見を出したため、本作品では敵を生身の人間とした[7]。しかし、撮影スタッフから「いくら悪人でも生身の人間をヒーローがやっつけるのはイジメのようでやりにくい」という苦情が出たため、サタン帝国が登場する第13話以降は普通の怪人となった。その後の『快傑ズバット』では、敵も生身の人間であると同時に、ヒーローであるズバットも生身の人間が強化服を着用している設定とした[7]。
後に東映で数多の特撮作品を演出する長石多可男が、本作品で公式に監督としてデビューを果たしている[2]。長石は本作品のオープニング・エンディングの演出も担当した。デビュー作となった第13話は「難解」という理由でリテイクを出され、不本意ながら撮り直した。長石は後年のインタビューで「その回のビデオを貰って久々に観たが、やっぱりどこが難解なのか分からなかった」と語った。また、カゲスターについて「最初にあのヒーローを見たときは『何だこれは!?』と思ってびっくりした」と述懐している[8]。
本作品は「宇宙刑事シリーズ」などで怪人デザインを多数手がけた野口竜の東映特撮初参加作品でもある[9]。野口は後年「(カゲスターのデザインは)従来のヒーローとは違った斬新なデザインにしようと随分と凝りました」「仕事のシステムが今(1985年)とは違い、他のスタッフと会うことも少なかった」とコメントしている[10][11]。
影夫・鈴子の「影よ…影よ、ゆけ!」の呼びかけにより分離して現れる、カゲスターとベルスターの2人は、影を自在に操り悪と戦うが、サタン帝国の構成員を除き、ほとんどの相手は殺さず警察に逮捕させている。マントを使った華麗なアクションも得意。
カゲスターとベルスターが活動中は影夫、鈴子は生気を失ってしまうという設定[注釈 4]。ただし全く身動きできなくなるわけではなく、フラフラではあるが歩行などはできる。第10話ではカゲスターが虚脱状態の影夫を見かけ、会話もしている。
また分身であるはずだが、第24話や第28話では鈴子がサタン帝国に洗脳されるとベルスターも洗脳されている。
第10話ではマントを敵に奪われたベルスターが力を発揮できないという描写があったが、第23話でカゲスターが、第25話ではベルスターが、それぞれマントを外したまま通常通り戦っている。また第27話ではカゲスターが、トンボギラーを追跡する際に空中を飛行した。
カゲスターとベルスターが自らの影から出現させる、意思を持つ影。言葉を話すことができ、カゲスターを「親分」、ベルスターを「姐御」と呼ぶ。また、頭の模様を外して投げると5体のカゲロベェが現れ敵を攻撃する五段分身という技や、遠い場所にいるカゲスターを自分の位置まで呼び寄せるカゲ戻しなどが使える。
括弧内は登場話数。悪人・サタン帝国関係のゲストは放送リストを参照。
主題歌シングルは1976年4月25日発売(SCS-294)。挿入歌の初出は1976年8月25日発売の「テレビまんが人気者(アイドル)デラックス 5」(CW-7076)。
全曲とも、作詞は八手三郎、作曲は渡辺岳夫[注釈 9]、編曲は松山祐士による。
参照宇宙船SPECIAL 1998, p. 219
放送日 | 話数 | サブタイトル | 登場怪人 | 脚本 | 監督 |
---|---|---|---|---|---|
4月5日 | 1 | 影法師 レインボー作戦! | 白蝋魔人[出典 2][注釈 11] / 鬼沢(演:中庸介) | 石森史郎 | 加島昭 |
4月12日 | 2 | 黄金魔人 モグラ作戦! | 黄金魔人 / 金斗雲(演:南雲祐介) | ||
4月19日 | 3 | 怪盗紅ヤモリ 追跡作戦! | 紅ヤモリ(演:河村憲一郎) | 村山庄三 | 原田雄一 |
4月26日 | 4 | 恐怖のワクチン 毒グモ作戦! | クモ男 / 三沢博士(演:伊藤久哉) | 土筆勉 | |
5月3日 | 5 | 蛙怪人 ダイヤモンド作戦! | 蛙怪人 / 綾小路八千代(演:たうみあきこ、声:沼波輝枝) 怪人どくろ男[17][注釈 12] / 綾小路貴子(演:星野みどり) 戦闘員リーダー / 執事今井(演:岩城力也) |
石森史郎 | 加島昭 |
5月10日 | 6 | 冷凍怪人 どぶねずみ作戦! | ネズミ怪人[注釈 13] / 神博士(演:山本昌平) モヒガン(演:貝ノ瀬一夫) | ||
5月17日 | 7 | コウモリ男の宝さがし作戦! | コウモリ男 / 村田(演:加地健太郎、声:辻村真人) ゴリラマン(演:団巌) |
土筆勉 | 内田一作 |
5月31日 | 8 | カメレオン男の変装大作戦! | カメレオン男 / 野々宮(演:上野山功一、声:八代駿) | 村山庄三 | |
6月7日 | 9 | 毒アゲハの大魔術作戦! | 怪人毒アゲハ[注釈 14] / 白楽天(演:大木正司) | 土筆勉 | 加島昭 |
6月14日 | 10 | フクロウ怪人 夜行大作戦! | フクロウ怪人 / 岩城(演:高城淳一) | 石森史郎 | |
6月21日 | 11 | 魔のオオカミ男 追跡作戦! | 狼怪人[注釈 15] / オオカミマン / 武見助手(演:芹川洋) | 田口勝彦 | |
6月28日 | 12 | 豹女の東京ジャングル作戦! | 豹女 / 礼子(演:八代順子) | 土筆勉 | |
7月5日 | 13 | ドクターサタンの世界征服作戦!! | キバイノシシ[注釈 16](声:辻村真人) | 石森史郎 | 長石多可男 |
7月12日 | 14 | カマキラーの人形作戦! | カマキラー[注釈 17](人間態:高杉哲平、声:八代駿) | 村山庄三 | |
7月19日 | 15 | 少年サタン隊 ザリガニアン作戦! | ザリガニアン(人間態:斉藤真、声:山下啓介) | 石森史郎 | 内田一作 |
7月26日 | 16 | 怪人ムカデリヤ 東京砂地獄作戦! | ムカデリヤ(人間体:内村不二人、声:峰恵研) | 土筆勉 | |
8月2日 | 17 | 恐怖の殺人鬼 ハエドブラ作戦! | ハエドブラー[注釈 18](人間体:黒部進、声:辻村真人[注釈 19]) | 田口勝彦 | |
8月9日 | 18 | アリジゴク 東京壊滅作戦! | アリジゴク[注釈 20](声:市川治[注釈 21]) | 村山庄三 | |
8月16日 | 19 | 怪人サンゴラスの化石大作戦! | サンゴラス(声:峰恵研) | 山田稔 | |
8月23日 | 20 | 極悪怪人ベアーコング・コピー作戦! | ベアーコング(人間体:石川敏、声:細井重之) | 石森史郎 | |
8月30日 | 21 | ゴリラ怪人 大あばれ作戦! | ゴリオリバー(人間体:ミスター珍、声:八代駿) | ||
9月6日 | 22 | 毒魔人キノコンガ 誘拐作戦! | キノコンガ(人間体:井上三千男、声:二見忠男) カニガブラー(人間態:大浜詩郎、声:辻村真人[注釈 22]) |
内田一作 | |
9月13日 | 23 | 怪人カニガブラー 首狩り作戦! | |||
9月20日 | 24 | 怪人バラキュラーの皆殺し作戦! | バラキュラー(声:沼波輝枝) | 土筆勉 | 山田稔 |
9月27日 | 25 | ドクガルダー 人喰い作戦! | ドクガルダー(声:梶哲也[注釈 23]) | 鷺山京子 | 内田一作 |
10月4日 | 26 | 怪人ヤマアラシスの殺人光線作戦! | ヤマアラシス(声:山下啓介) | 村山庄三 | 山田稔 |
10月11日 | 27 | 恐怖のトンボギラー 金しばり作戦! | トンボギラー[注釈 24](声:槐柳二) | 石森史郎 | 内田一作 |
10月18日 | 28 | 怪人ナメクジーガーの人間あやつり作戦! | ナメクジーガー(声:八代駿) | 鷺山京子 | |
10月25日 | 29 | カラスガー 死の四次元作戦! | カラスガー(人間態:梅津栄、声:梶哲也) | 石森史郎 | |
11月1日 | 30 | 猛牛怪人のカゲスター毒殺作戦! | バッファローギュー[注釈 25](声:辻村真人) | 長石多可男 | |
11月8日 | 31 | 怪人カミキーラーの炎地獄作戦! | カミキーラー[14][15][注釈 26](声:槐柳二) | ||
11月15日 | 32 | 吸血カズラの子供さらい作戦! | カズラゴン(声:峰恵研) | 村山庄三 | |
11月22日 | 33 | オウム怪人の毒薬作戦! | オウムラーダ(声:八代駿) | 土筆勉 | 折田至 |
11月29日 | 34 | 死闘!! 激闘!! サタン帝国最後の日! | トドギラス(声:池水通洋) 怪人軍団[注釈 27] |
石森史郎 |
この節の加筆が望まれています。 |
2013年2月25日から6月23日まで、YouTubeの「東映特撮 YouTube Official」にて全34話が配信されたほか、2015年12月23日から2016年4月20日まで再配信が行われた。
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