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日本の漫才師 ウィキペディアから
夢路 いとし(ゆめじ いとし、1925年〈大正14年〉3月27日 - 2003年〈平成15年〉9月25日)は、日本の漫才師。実弟である相方・喜味こいしとの漫才コンビ「夢路いとし・喜味こいし」で上方演芸界にその名で知られる[1]。本名は篠原 博信(しのはら ひろのぶ)。
神奈川県横浜市[1]鶴見区出身。上方漫才界を代表する人物であるのに横浜出身とされているのは、一家が旅回りの芸人一家であったため、たまたま横浜で生を受けたという事情によるものである。横浜以外にも、全国津々浦々の地を少年時代からまわっていた。
1937年に上方漫才の荒川芳丸に入門[1]。1940年に吉本興業からデビュー、当時のコンビ名は「荒川芳博・芳坊[1]」(「夢路いとし・喜味こいし」に改名する前に一時父親の姓「山田」を使い「山田博・勲」を名乗っていた。“篠原”は母親の姓)。それからは全国各地にあった吉本が運営する寄席(ミナミの南陽館など)で稽古を積む。
戦後、秋田實が主宰する宝塚新芸座に参加[1]。1948年に「夢路いとし・喜味こいし」(当初は「夢路いと志・喜味こい志」)に改名[1]。その後は上方演芸から東宝芸能関西(のち、大宝芸能から大宝企画に改称)に所属。道頓堀角座、梅田トップホットシアター、演芸の浪花座に定期的に出演していた。
上方漫才の第一人者として50年余の長きに渡り第一線で活躍。二人の漫才は後輩芸人たちにとっても色々な意味で鑑であり、「老境に入れば、『いと・こい先生』のような漫才をやりたい」と述べる者も少なくない。
芸名を改名するに当たって、この「いとし・こいし」という芸名を芳博が考え、じゃんけんでどちらの芸名を取るか決めた。そして芳博がいとしの芸名を付けることにしたが、「屋号=苗字がいるだろう」ということで、芳博=いとしは「月丘夢路(女優)のファンだから」ということで「夢路いとし」という芸名にしたという経緯がある。「がっちり買いまショウ」の司会でも有名で、「10万円7万円5万円、運命の分かれ道」などの早口芸や顔芸などもやっていた。
「ぼくたちは常にナンバー2」がモットー。時代・世相を柔軟に取り入れることができ、特にいとしについては、年齢にふさわしい自然なボケを展開していた。肩の力の抜けた「ボケ」味は年輪を重ねるごとにその面白みを増し、(本当に老人性のボケか?と思わせておいてきれいに切り返してしまう、というネタも晩年にはよく披露していた)また口を小刻みに動かすという特技があり、それを漫才の中に取り入れる事もあり、観客の年齢層関係なく笑いの渦に巻き込んでいた。決してダイラケのような奇想天外なネタではなかったが、ひょうひょうとした味わいは何物にも代えがたく、おかしみを誘うものであった。よく弟のこいしの嫁に対して普通に聞けばトンでもない暴言のボケを連発しており、弟こいしのツッコミのやり取りで爆笑させていた。
関西の芸界の象徴的存在として、こいしと共に「いとこい先生」と呼ばれ、中田カウス・ボタン、オール阪神・巨人など後輩・同業者から多くの尊敬を集めていた。
また、関東の芸人からも多くの尊敬を集めている。
1995年に紫綬褒章、1998年秋には勲四等旭日小綬章をそれぞれ受章[2]。1999年11月には大阪市指定無形文化財に指定[1]。
2003年9月25日0時35分、自然気胸と肺炎を併発し、兵庫県内の病院で永眠[1]。78歳没[1]。5日後の30日にフジテレビ系で放送された『爆笑そっくりものまね紅白歌合戦スペシャル』では、中川家によるいとしこいしのまねと、松居直美による杉田かおるの歌まね(『鳥の詩』を歌いその後に本人が登場)との対決が放映される予定だったが、いとしの逝去に伴い、中川家のまねはもとより対戦相手の松居の歌まねもお蔵入りとなった(松居のものまねと杉田の登場シーンは、約2年後の2005年7月11日に『HEY!HEY!HEY! MUSIC CHAMP』の中で、杉田かおる秘蔵映像として放送された)。
例外を除いて殆ど弟子を取っていない、唯一の弟子は吉本新喜劇の役者である桑原和男で、原アチ朗・コチ朗という漫才コンビを組んでいた。娘は宝塚歌劇団の麻泉沙里。
毒舌家として知られる上岡龍太郎は、「楽屋でいとこい先生が怒ってはったら、理由を聞かんでも怒られている方が悪い」と語っている。
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