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アイルランド出身の歌手 ウィキペディアから
エンヤ(アイルランド語: Eithne Pádraigín Ní Bhraonáin、英語: Enya Patricia Brennan、1961年5月17日 - )は、アイルランドの歌手、作曲家、音楽プロデューサー、音楽家。
音楽一家に生まれ、アイルランド語圏のドニゴール県グウィドーで育ち、1980年、エンヤの兄姉ほか家族が結成したケルト音楽グループ「クラナド」に加わり、キーボードおよびコーラスを担当し、音楽家としてのキャリアを歩み始める。1982年、ソロ活動を追求するため、クラナドのマネージャーおよびプロデューサーを務めていたニッキー・ライアンと、後にエンヤの楽曲の作詞を手がけることになるローマ・ライアン夫妻とともにクラナドを脱退。それから4年の歳月をかけて、デジタル・マルチトラック・レコーダーを駆使したボーカルとキーボードの多重録音や、ニューエイジ、ケルト音楽、クラシック音楽、教会音楽、民俗音楽の要素を取り入れた、エンヤ独自のサウンドを作り上げていく。アイルランドの伝統的な文脈の上で、テクノロジーを活かした作曲を行う。レコーディングでは、さまざまな楽器を自身で演奏するマルチプレイヤーでもある。これまでに10の言語で歌っている。なお、何度かコンサート・ツアーの企画は立ち上がったものの行えていない(ライブではスタジオで作り込まれた音響効果の再現が難しいからである)。
エンヤがソロ・アーティストとして最初に取り組んだ企画は、映画『The Frog Prince』(1984年)のサウンドトラック作品と、1987年のBBCのドキュメンタリー・シリーズ『幻の民、ケルト人 (The Celts)』であり、同番組の主題曲「ケルツ」はデビュー・アルバム『ケルツ』(1987年)に収録されリリースされた。ワーナーミュージックUKと契約を交わすと、エンヤは芸術的自由を得て、レーベルからの干渉は最小限にできる状態になった。『ウォーターマーク』(1988年)が商業的に成功し、シングル「オリノコ・フロウ」が各国のヒットチャートでトップ10入りしたことで、エンヤは世界的な名声を得るまでになった。それに続いて、『シェパード・ムーン』(1991年)、『メモリー・オブ・トゥリーズ』(1995年)、『ア・デイ・ウィズアウト・レイン』(2000年)の各アルバムが数百万枚を売り上げた。アルバム『ア・デイ・ウィズアウト・レイン』および、そのリードシングル「オンリー・タイム」の売上高は、2001年にアメリカ同時多発テロ事件のマスコミ報道で同曲が使用されたことを受けて、アメリカ合衆国で急上昇した。『アマランタイン』(2005年)と『雪と氷の旋律』(2008年)の発売後、しばらく音楽活動を休止したが、2012年に復帰し、『ダーク・スカイ・アイランド』(2015年)を発売した。
アメリカ合衆国においてRIAA認定アルバムが2650万枚を売り上げ、全世界で推計7500万枚を売り上げている、アイルランドで最も売れたソロアーティストであり[2]、U2に次いでアイルランドで2番目に売れたアーティストである[3]。全時代を通じて最も売れた音楽アーティストのうちの1人として名を連ねている[4]。『ア・デイ・ウィズアウト・レイン』(2000年)は全世界で推計1600万枚の売り上げを記録し、最も売れたニューエイジ・アルバムであり続けている[5]。ワールド・ミュージック・アワードを7度、グラミー賞の最優秀ニューエイジ・アルバム賞を4度[6]、アイヴァー・ノヴェロ賞を1度受賞している。映画『ロード・オブ・ザ・リング』(2001年)のために書いた「メイ・イット・ビー」は、アカデミー賞とゴールデングローブ賞にノミネートされた。
生まれ故郷であるアイルランドを中心に活動を続けている。
なお「エンヤ (Enya)」 は、基本的には、ケルト音楽に影響を受けて独自の音楽を展開する女性ミュージシャン個人の名であるが、その音楽プロデューサーを務めるニッキー・ライアンおよびその妻で歌詞を手がけるローマ・ライアンとの共同プロジェクトの名でもある。
1961年5月17日、アイルランド北西部のドニゴール県グウィドーで[7]、ローマカトリック教徒の音楽家一家の9人兄弟の三女(5番目の子)として生まれた[8]。グウィドーはアイルランド語を第一言語とするゲールタハト地域にある。出生名である Eithne Pádraigín Ní Bhraonáin は英国風に書くと Enya Patricia Brennan となり[9]、エンヤの母語であるアイルランド語アルスター方言における Eithne の発音を表音式綴り字で表すと Enya となる。"Ní Bhraonáin" は「ブレナン家の娘」と翻訳される[10]。父のレオ・ブレナンはアイルランドのショウバンド「スリーヴ・フォイ・バンド」のリーダーで、メナレックで居酒屋「Tábhairne Leo」を経営していた。遠縁にスペイン系の親類がおり、トーリー島に入植した先祖をもつ[11]、母のバーバ・ブレナン(旧姓ドゥガン)はレオのバンドで演奏したアマチュア音楽家で[12][13]、地元の学校で音楽を教えていた[14]。エンヤの母方の祖父のエーは地元の小学校の校長を務め、祖母はそこの教師だった。祖父・エーはグウィドー劇場の劇団の創設者でもあった[15]。
エンヤは自身の幼少期の家庭環境について、「とても平穏で幸せ」だったと述べている[16]。3歳のとき、毎年開かれていたフェシ・キョール音楽祭で歌のコンテストに初めて出場した[15]。グウィドー劇場でパントマイムを演じたり、デリーベグの聖メアリー教会で兄弟と一緒に母の聖歌隊に参加して歌ったりもしている。小学校で英語を習い、4歳のときにピアノを習い始めた。「学校の勉強をした後、隣町にピアノのレッスンを受けに行って、その後また学校の勉強をしなくてはいけませんでした。…兄弟姉妹が外で遊んでいたのを憶えています…そして私は中にいてピアノを弾いていました。この1冊の大きな音階の本を何回も何回も練習しました[10][17]」。11歳のとき、祖父が教育費を支払ってくれたおかげで、ミルフォードにある[12]ロレット女子修道会が運営する[11]厳格な修道院の寄宿制学校で学び[15][18]、そこでクラシック音楽、美術、ラテン語、水彩画が趣味になっていった[11]。「あれほどの大家族から引き離されたことに衝撃を受けましたが、私の音楽にとっては良いことでした。[10]」17歳のときに学校を退学し、「ピアノの先生のような人」になるために[19]、カレッジで1年間クラシック音楽を学んだ[10]。それでも「まさか自分が作曲をしたりステージに立ったりするとは思っていませんでした」という[19]。
大学在学中(18歳のとき)、彼女の姉や兄ら兄弟3人と叔父2人が1970年代に結成したクラナド(Clannad)[注 1]に2年ほどの間加わり、ツアーの他、2枚のアルバム製作にも参加した。担当のパートはコーラス、ウーリッツァーのエレクトリックピアノやプロフェット5等の電子鍵盤楽器[注 2]。高校の卒業とともにカレッジでさらにクラシック音楽を学ぼうとしていた彼女を、当時クラナドのマネージャーでアルバム『フアム』からはプロデューサーを務めたニッキー・ライアン(Nicky Ryan)が、バンドにとって初めてのピアノとキーボードを入れるために誘ったのがきっかけ。
クラナドから脱退した彼女は、ニッキー・ライアンと彼の妻 ローマ・ライアン(Roma Ryan)らと共に曲作りを始める。まだ進むべき方向性を決めることができなかったエンヤに対し、彼らは自宅をスタジオとして提供。そこで製作された曲を聴いたローマ・ライアンは「音楽から様々な情景が見えるから、映画音楽をやってみては?」とアドバイスした。そこで、実際に映画監督デイビット・パットナムに7、8曲の楽曲を送ったところ気に入られ、それがきっかけで映画『The Frog Prince』(1985年)への楽曲提供が決まった。この楽曲提供に関し、後にエンヤは「まだ方向が決まっていなかったから、オーケストラ編曲にしてしまった。」と語っている。
この頃、エンヤは144チャンネルもの音声トラックを高品質に同時録音/再生できるデジタル・マルチトラック・レコーダー(どういった製品かは不明だが、144チャンネルは、デジタル録音黎明期の当時としては異常なほどに多いチャンネル数である。しかしながら、当時のプロ用の機材である、SONY PCM-3324や後継機のPCM-3348はSMPTE同期機能を有しているため、1台というわけにはいかないが、シリーズで結合することで十分可能である。また、PCM-3324であれば、8chのミキサーでミキシングしながらであれば、192chの同期録音が可能なため、あながち嘘とは言えない。)の存在と多重録音コーラスによる楽曲制作のアイデアをニッキー・ライアンから伝えられる。このレコーダーは、後に彼女の音楽の特徴となる、彼女自身の声を多重録音した重厚なコーラスを実現する上で不可欠な道具となった。以後の音楽製作では2台の144チャンネルデジタル・マルチトラック・レコーダーを常に使っており、その重要性は、エンヤ自身が「知らなかったら、その辺でピアノの教師でもしてたでしょうね。」と語るほどである。以降、多重コーラスを1トラックずつエンヤが歌って収録しているため、1つの作品の制作に数年掛かっている。
映画音楽の次に決まった仕事がイギリスのBBCのプロデューサーであるトニー・マッコーリーの依頼であり、1986年に放映されたテレビ・ドキュメンタリー番組『The Celts』(日本ではNHKで『幻の民、ケルト』として放送)のためのサウンドトラックである。この番組は当初アイルランド出身の複数のアーティストの楽曲が使われる予定であったが、番組スタッフが提供された「March of the Celts」等の楽曲を非常に気に入り、番組中すべてのトラック製作をエンヤに依頼することに決定した。
曲調は曲の断片を少し聞いただけでも彼女のものと判るほど特徴がある。クラシックと教会音楽を基礎に、故国アイルランドの音楽など、さまざまな要素を含有しており、ワルツ調の3拍子やその他変拍子の曲も見受けられる。メインボーカルやバックコーラスを彼女自身の声で幾度も(多いときはミステイク分も含めて一曲あたり200回ほど)多重録音し、重ねることでダイナミックかつ荘厳なサウンドを生み出すのが一番の特徴。そのエンヤ自身の声のコーラスと彼女自身が好む深いエコーが、終始一貫して広がりのある音を生む。表現内容はアコースティック感を強く志向しているが、意外にもソロデビュー当時のエンヤはデジタル活用の最先端に位置した音楽家である。
エンヤにおいては、デジタルMTRによるボーカルの多重録音が音楽性の根幹を成している。初期の作品はアナログ/デジタル双方のシンセサイザーを駆使し、1980年代としては最高峰となる144chのトラック数を誇るデジタルMTRも2台用いて、神話の世界をモチーフにした歌詞と共に、他の何とも似ていない力強く重厚な世界観を特徴としていた。しかし、アルバム「メモリー・オブ・トゥリーズ」を発表したあたりから、神話の世界にとらわれることなく作曲をするようになり、曲自体もシンセサイザーを使いながらも主役はアコースティック楽器(またはそれに近い音声)やピアノとなり、明るく柔らかな曲調のものが増えてきた。その上で、アルバムに収録される曲の中には、必ず落ち着いた曲調のピアノ独奏曲が入る。また、彼女の曲は「ビジブル」(情景が良く思い浮かぶ)と言われる。
歌詞は基本的に英語であるが、曲により、ゲール語、ラテン語で書かれている場合がある。5thアルバム『アマランタイン』では、さらに日本語、ローマ・ライアンとともに作った架空の言語、“Loxian”で書かれた曲が収録されている。
彼女のアルバム・リリース間隔は、4 - 6年である。独特の製作手法から1曲に費やす手間が多く(録音に3か月程度)、エンヤ自身が完璧主義者であるがゆえに、アルバム1枚を完成させるのに時間がかかる上、全精力を使ってアルバムをリリースした後は1年ほど休暇をとるためでもある。また、コンサートやライブなどのスタジオ外部での活動の構想は、ファースト・アルバムを発表した初期の頃からあるにもかかわらず、独自の制作方法がその実現を難しくしてしまっている。このように活動内容は外部から見る限りそれほど活発とは思えないが、耳なじみの良い音に加え、過去のナンバーがTVCMやドラマ、映画のテーマとして使用されるために、リスナーの印象が薄れにくく、癒やし系音楽の定番としてロングセラー的な人気を維持している。
規則正しい生活を最重要視しており、平日は毎日10時から17時まで、必要がなくてもスタジオで何らかの作業を行う。そして平日の作業時間外や休日はスタジオのことを考えない時間としている。休日は家族や友達と過ごし、誘われればディナーパーティーにも行くなど、仕事以外も一般の人々と同じように過ごしている[22]。
日本でもCMや番組のエンディングなど多くに彼女の曲がタイアップされた。日本で爆発的に売れたのは、1992年にトム・クルーズが主演した映画『遥かなる大地へ』のサウンドトラックとして使われた「Book Of Days」からである。日本では、1997年に「ペイント・ザ・スカイ〜ザ・ベスト・オブ・エンヤ」が大ヒットし、 〜the most relaxing〜 feel などにも収録されるなど、癒し系音楽ブームの火付け役の1人となっており、 Orinoco Flow や Only time などは定番の楽曲となっている。
また、日本の着物が好きで、来日すると必ず着付けを行い、買ってしまうという。収集の結果として、既に25着も所有している。
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