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板鰓亜綱に属する軟骨魚類のうち、鰓裂が体の下面に開くものの総称 ウィキペディアから
エイ(鱏、鱝、鰩、海鷂魚、英: Ray)は板鰓亜綱に属する軟骨魚類のうち、鰓裂が体の下面に開くものの総称。
鰓裂が側面に開くサメとは区別される。約530種が知られている。世界中の海洋の暖海域から極域まで広く分布し、一部は淡水にも適応している。一般的に上下に扁平な体型で、細長い尾、5-6対の鰓を持ち、多くは卵を胎内で孵化させて子を産む卵胎生である。尾の棘に毒を持つ種類もいる。サメの一部の系統から底生生活に適応して進化した系統のひとつと考えられているが、トビエイ(マンタを含む)のように海底の貝ではなくプランクトンを食べる二次的に遊泳生活に戻ったものもある。
多くのエイは、ごく平らな体をしていて長く伸びた鞭状の尾を持つ。そのため、同じ軟骨魚類のサメ類とは全く異なった見かけをしている。しかし、一部には厚みのある体幹部が細長いものもあり、そのようなものではサメに似たようにも見える。サカタザメのようにサメという名を持つものもある。はっきりとした区別点は、サメでは頭部後方側面に開く鰓裂が、エイでは腹面に開くことである。両眼の後ろに水の取り込み口が開く。
一般的なエイは頭部から胴部と胸びれが一体になって全体が扁平になり、大きく水平に広がった胸びれの縁の薄い部分を波打たせて遊泳する。肛門はその後端に開き、腹びれ、尻びれはその近くにまとまる。それ以降の尾部は急に細くなり、後端は細長くなって終わり、尾びれはないものも多い。背びれが退化するものも多く、アカエイなどではこれが毒針に変化している。 多くのエイで体の外周付近は体盤(たいばん)にあたり、エイの大きさを表す用語として、縦の長さ(吻端から胸鰭の末端までの長さ)は「体盤長(たいばんちょう)」、横幅(両胸鰭間の最大幅)は「体盤幅(たいばんふく)」で表される。
ノコギリエイでは体は厚みがあって細長い。ガンギエイなどはエイらしい姿ではあるが、尾びれははっきりとしている。
雄のエイの尾の脇には、クラスパー(交接器・交尾器)と呼ばれる生殖器がある。このクラスパーは大きく2本あり目立つため、雌雄の判断が付きやすい。交尾の際にはクラスパーをメスの体内に挿入して体内受精を行う[1]。
砂底の貝やエビ、カニなどを食べるため、歯は貝殻や甲羅を破壊しやすいよう臼型となっている[2]。底性の種は砂に潜ることができるものも多い。ウシバナトビエイは、普段は格納しているが頭鰭というヒレで海底を叩き砂を巻き上げて貝などを探す[3]。
トビエイ、オニイトマキエイ(マンタ)などでは、遊泳生活を行い、プランクトンを口内の細長いくし状のエラ鰓板によって濾過摂食する[7]。摂食中は、頭鰭を広げて口に誘導するようにするが[8]、移動中は巻いて邪魔にならないようにする。
サメと同様に尿素を体液の浸透圧調整に用いているため、その組織には尿素が蓄積されており、鮮度が下がるとこれが加水分解してアンモニアを生じる。そのため、一般の魚と同じような料理には向かないともされる。しかし、地域によっては非常に好まれ、朝鮮料理のホンオフェのように発酵させることによりアンモニア臭を強調した加工食品も存在する。アンモニアを生じていないエイの肉は淡白な味わいで、肝は脂肪が多く、こくがある。また、ガンギエイのヒレを乾物にしたものは「エイヒレ」と呼ばれ、酒の肴とされる。
世界的に食べられる食材で、フランス料理でもエイは珍重される。ベネズエラではパステル・デ・チューチョというパイ包みが知られる。イギリスでもフィッシュ・アンド・チップスなどの形で食される。エジプト料理などにも見られる。インドネシアやマレーシアではイカン・パリ(Ikan Pari )と呼ばれ、一般的に食べられる。その他、インド沖、タイ湾、ジャワ海などで食用に水揚げされる[9][10]。
日本においても伝統的な食材であり、煮もの、刺身、汁物、あえ物、焼き物、煎り物などとして食される[11]。ただし、その調理法は地方によって異なる傾向にあり、全く食さない地方もある[11]。一部地域では、「エエ正月を迎える」などの意で、エイが大晦日や正月、祭りなどの特別な日に好んで食される[11]。
秋田県や山形県では、ヒレの軟骨部分の干したものを「かすべ」(秋田)[11]や「からかい」(山形)[12]と呼び、甘辛く長時間煮付けたものを郷土料理として振舞われる地域もある[11]。魚類としては腐りにくい特性を持つことから、山間部においても食すことが可能な魚であった[11]。
北海道ではほとんどが下処理済みで生の状態で販売され、通称「カスベ」とも呼ばれる[11]が、「カスベはエイのひれ」という事を知らない人も多くいる。種類は水カスベ・真カスベ。同様に、ヒレの軟骨部分を長時間煮て甘辛く煮付けたものを「カスベの煮付け」と呼び、一般的に食す。また、から揚げや天ぷらは特に好まれる。
青森県では北海道と同様、生の状態で販売されるが、濁音の「カスベ」以外に半濁音の「カスペ」でも呼ばれることもある[13]。
エイの皮革は、日本刀の柄や革製品に利用される。珍しいところでは、エイの棘を矢につける鏃にしたものが縄文時代や古墳時代の遺跡から見つかっている[15]。
アカエイなどいくつかの種では背びれが毒針に変化している刺毒魚である。毒はタンパク質系の毒素で、10分程度で刺すような痛みが始まり、30‐90分ほどで痛みのピークとなり最大48時間継続する。そのほか、筋肉の痙攣・筋線維束性攣縮・頭痛・発汗・めまい・嘔吐・下痢・失神・呼吸困難・不整脈などや、感染症を引き起こす場合がある。処置として、毒が熱に弱いことから刺された直後に患部を温水に入れて毒を分解して痛みを和らげ、抗生物質を投与することが行われる。棘による外傷で致命傷となる場合は止血、棘の除去やデブリードマンを必要とする場合がある[16][17][18]。
2006年9月4日には、オーストラリアで環境保全主義者のスティーブ・アーウィンが、グレートバリアリーフで撮影中にアカエイに胸を刺されて死亡した。また浜辺で死んでいるエイにも、毒は残っているので注意が必要である。
シビレエイ目は強力な電気を発するため、これも扱いには注意が必要である。
ナルトビエイが瀬戸内海や有明海などで大量発生し、アサリをはじめとする貝類の漁業被害が深刻な問題となっている。
対策として、背びれが毒針に変化した種を捕獲する際は、まず毒針のある尾をタモの中に巻きつけて固定してから引き揚げると良いとされる。また、ダイバーなどが誤って踏みつけて刺されることが多いため、着地する際は何かで振動を与えるなどでエイを逃がすか存在を確認してから砂地に降りるなどが推奨される[17][18]。
Nelson (2006) の分類[19]によれば、エイ類はシビレエイ目、ノコギリエイ目、ガンギエイ目、トビエイ目の4つの目に分類される。以前のNelson (1994) の分類ではエイ類はエイ目にまとめられ、これら4つは下位分類で亜目とされていたが、現在ではサメ類の9つの目とエイ類の4つの目が並列される傾向にある。現生エイ類は全てエイ亜区 Batoidea に含まれる。板鰓亜綱における、化石種も含めた分類の全体的な概観を以下に示す。
次に下位分類を示す。
以下のような系統樹が得られている[21]
Batoidei |
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