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朝鮮の郷土料理 ウィキペディアから
朝鮮料理(ちょうせんりょうり、朝鮮語: 조선 료리)または韓国料理(かんこくりょうり、朝鮮語: 한국 요리)は、朝鮮半島に伝わる料理のこと[1]。
韓方や陰陽五行の思想にのっとり、五色(赤・黄・白・緑・黒)、五味(酸・甘・渋・辛・塩)、五法(生・煮る・焼く・蒸す・炒める)をバランスよく献立に取り入れることを良しとする[2]。
一食の構成は韓定食の飯床(パンサン)のルール(「韓定食の献立」で後述)にある程度従って、メインメニュー(多くはスープ類)に御飯(白米、赤米や、その他の穀物を炊き合わせた雑穀米など)と、キムチ、ナムル等のおかず(ミッパンチャン)が数種類。食堂では点心(軽食)とみなす粥や麺類等には小膳が組まれ、キムチなどのミッパンチャンは無料で提供される。
ユーラシア大陸東部全域を見渡すと、南方の稲作文化圏と北方の雑穀畑作・牧畜文化圏の境界線の接点に位置する朝鮮半島は、米食中心と考えられることが多いが、伝統的に稲作が行われていた地域は温暖湿潤気候地域の南西部の一部に限られており[3]、半島の北半分は亜寒帯冬季少雨気候に属するため、食文化的には粟や黍・小麦・蕎麦・高粱といった畑作で得られる穀物を主食素材としてきた地域も多い[4]。
仏教の影響を受けた朝鮮半島の一部の人々は寺刹料理・精進料理を食べる。また毎回の食事で多種類のおかずが食卓に並ぶように配慮するのが一般的である。
近隣国の日本料理や中華料理と比べ、白菜・もやし・ワラビ・ゼンマイ・キキョウ(トラジ)といった山菜を使った料理が多い。特に17世紀に日本を経由して18世紀後半の朝鮮王朝時代で一気に普及した中南米原産の唐辛子[注釈 1]は、現在の朝鮮料理に彩りと辛みを添える上で欠かせない食材の一つである。
野菜の消費量は世界的に見ても高く、それらを用いたナムル、発酵食品としてテンジャンやコチュジャン、チョングッチャンといった味噌類、キムチ、マダラの内臓を発酵させたチャンジャ等が冬の保存食として各家庭で常備される。その他に魚の干物・チョッカル・シッケ・乾燥させた山菜や海草類も作られている[5][6][7]
植物からの香辛料や薬念については、韓国式醤油・胡麻油・ニンニク・ネギ・生姜・唐辛子等が多く、また色んな香辛料により合わせ調味料ヤンニョム、つまり「薬念」を用いる。
朝鮮半島のスープ類、つまり「湯(タン・クㇰ)」は発達していて、野菜や香辛料を大量に用いることが最大の特徴である。
又、朝鮮半島にはヌロンイという食用犬種が存在し、韓国では犬肉が食べられている。年間100万頭が食べられており中国、ベトナム[8]に次ぐ消費量である[9]。
朝鮮半島は海に囲まれた地理のため、海藻類や魚介類の消費量も多く、生の魚介類も食されるようになった。韓国の朝鮮時代では一般家庭では肉よりも魚や野菜を主とした食卓が普通であったが、現代の韓国では逆になる。
朝鮮料理の惣菜は専用名詞の「飯饌(パンチャン)」と呼ぶ。一般的な韓国料理屋の場合、ナムルやキムチなどの一部惣菜を注文とは別に提供する事が多い。その惣菜は食べきれない場合、残すことがマナーとされている。一方、多数の店で客の残した惣菜や料理の食べられない部分を盛り直して提供、あるいは他の料理に再利用することがあり、衛生上の問題や客からの苦情が多い。2009年6月の改正食品衛生法で禁止されるものの、依然そのような行為が横行している[11]。
伝統的なご飯膳の組み方を「飯床(パンサン)」という。「床」とは食べ物をのせる膳のことであり、飯床とは朝夕の献立で、主食のご飯と副食で成り立っている(昼食は点心(チョムシム)と呼ばれ、「心に点をつけるように」お粥や麺類で軽く済ませることが多い)[12]。
飯床では、ご飯、スープまたはチゲ、キムチはすべての場合についてくる。その他におかずの数によって、三楪飯床(サンチョプパンサン)、五楪飯床(オーチョプパンサン)、七楪飯床(チㇽチョプパンサン)、九楪飯床(クーチョプパンサン)、十二楪飯床(シビチョプパンサン)とおかずの数が増える(楪(チョプ)とは蓋付きの器の意)。一般家庭では三楪か五楪の膳が組まれ、七楪、九楪となるとかなり豪華な膳である。十二楪はかつての宮廷だけの献立であった。飯床は、日本の本膳の立て方とも共通点が多い。
飯床を基に食堂のメニューとして発達したのが韓定食(ハンジョンシク)であるが、韓定食の名は古い文献には出てこない。各地の両班の御膳が商品化されたという説が有力。
食事には、金属製の箸(チョッカラッ)と匙(スッカラッ)を用いる。
かつて王族や両班は銀や真鍮の食器や食具を使用していた。これは、権力争いによる毒殺から身を守るためで、銀は砒素に触れると変色することから、銀が使用されるようになったが、現在の韓国では、白いプラスティック製やステンレス製の食器が一般的である。匙と箸は、日本と同じく横向きに置いていたが、現在では食卓の右側に縦向きに並べる。匙と箸を併せてスジョ(匙箸)といい、匙と箸を置く日本の箸置きのようなものはスジョパッチム(수저받침)という。箸を器の上に置くのは日本と同様にマナー違反であるが、食事中、匙を器の中に入れておいたり、器の端にかけておいたりすることもある。
米飯が盛られたステンレス容器を「공깃밥(コンギパッ)」といい大韓民国朴正煕政権下で増え続ける米の消費量に対して米の消費を抑えるために1976年からステンレス製の小盛りの米飯を飲食店に義務付けた名残とされる[13][14]。正確に直径10.5cm、高さ6cmであったが現在はこの規制は存在しない。
食事中、茶碗・平鉢・鍾子・蒸し器・皿などの食器を手で持ち上げるのはマナー違反である。そもそも金属製の器は熱伝導が良いため、熱い料理を盛られた器を持ち続けることは器自体の重さも相まって困難である。
韓国料理での食器は持ち上げずに卓上に置いたまま、ご飯や汁物は匙で、汁のないおかずは箸を使って口に運ぶ。ただし、スンニュン(お焦げに湯を加えてお茶のようにしたもの)を飲む時や、冷麺を食べる時、汁物を食べ終わって最後に飲み干す時などは、器を持ち上げても構わないとする見解もある。ご飯(パプ)を汁物(クㇰ)に浸し、混ぜて食べる(クㇰパプ=クッパ)のはマナー違反ではない。床に座って食事をする場合、片膝立座で座るのが朝鮮の正式座法である。
儒教の影響で、目上の人より先に箸を付けず、目上の人と酒を酌み交わす際には左手をひじや胸に添える。また目上の人の前で飲酒をする場合、目下の者は目上の人から顔を背け、手で口元を隠して飲まなければならない[15]。また女性は、酌をしてはいけない。食事中の喫煙は目上の人の前では許されず、たとえ街角の屋台であっても、年長者に先立って煙を吹かすのは不快感を与える場合があり、言付け程度の許可は必要である。ただし現在は、完食して「ごちそうさまでした」でも問題ない。[要出典]
太陰暦によって行事を行い、四季毎に家庭で食材を仕込む習慣がある朝鮮半島では、行事に合わせてチョルシク(節食)と呼ばれる特別料理を食べる伝統もまだ生きている[16]。中国や日本の習慣とも関連がある。
韓国には、人は生まれ育った土地のものを食べていれば健康が保てるという意味の「身土不二(シンドブリ)」という言葉が日本から渡り、好まれて使われている。ここでは、朝鮮半島およびその他の朝鮮民族居住地域の地方料理を紹介する[17]。
庶民の生活に定着しているものに屋台がある。屋台にはノジョム(露店)とポジャンマチャ(「布張馬車」=幌馬車)がある。ノジョムはトッポッキ、キムパプ(韓国式海苔巻き)、トースト(ホットサンドのこと)などの軽食や、ホットク、プンオパン(たい焼きに似た「フナ焼き」)などのおやつ類を販売し、立ち食いが主となる。いっぽう、ポジャンマチャは可動式の飲み屋で、椅子を置き、周囲をビニール幕などで覆うことが多い。リヤカーを改造した程度の小規模なものが主流だが、周辺にテーブルセットをいくつか配して大型の店舗形態を成すものもある。厳寒の冬季にはストーブを入れて営業する。メニューは酒の肴となるモツや魚介の炒め物、スンデなどから、スープや麺類まで幅広い。
日本の居酒屋的存在といえるのがHOF(ホープ)である。一見した限りではバーのような外観のところも多いが、多人数で気軽に飲食できるので若年層に人気がある。学生街や繁華街などに多い店舗形態である。多くのHOFでは客が長居をするほど果物などをサービスで提供する。これはサービス品の単価よりも客回転を下げてでも飲み物(酒類)による利益が高いためである。
その他の庶民料理としてプンシク(粉食)があり、代表としてラミョン(ラーメン)がある。インスタントラーメンを入れる鍋料理「プデチゲ(部隊チゲ)」があるほどポピュラーなラーメンだが、日本のような専門店は一般的ではなく、プンシク店でもインスタントが主流である。このほかマンドゥやキムパブ、トッポッキなどをプンシク店では安価に供する。一方、ラーメンと同様に中国にルーツを持ちつつ、韓国風にアレンジされたチャジャンミョン(炸醤麺)等が中華料理店などの主力メニューになっている。
近年、宮廷料理や家庭料理等を取り入れたコース料理の韓定食が多くの韓国料理店で出されている。クジョルパン(九節板/九折坂)と呼ばれる陰陽五行説に基づいた色とりどりの食材を小麦粉と卵を用いて作られた皮に包んで食べる料理等が有名である。
また、出前文化も発達しており、ピザやフライドチキンなどはもちろんのこと、上記のプンシクやチャジャンミョン、その他さまざまな出前が利用されており、家庭や職場などでも出前を頼むことが可能である。
基本的に具が少なく一人ずつ供されるスープを指すのだが、実際には煮込み料理や鍋料理の様相となるものも多い。スープ(クク)に飯(パプ)を入れて食べるとクッパとなる。
チゲ類の方がスープ類より汁が少なく、具沢山とされるが、区別は曖昧である。チョンゴル(煎骨)は数人で1つの鍋をつつくスタイル。
チムには蒸し物と蒸し煮という意味があり、両者の代表的なものを挙げる。
韓国の伝統菓子を総称して韓菓という。韓国では、甘さ控えめの味付けが好まれる傾向がある。
1945年以前の日本統治時代に移住してきた在日韓国・朝鮮人たちが、故国の料理を各家庭で作り、食べていたが、次第に各地で飲食店を開店する者が現れ、客に朝鮮料理を提供するようになった。そこで提供されてきた料理は、朝鮮料理をベースにしつつ、日本で独自に発展していったものもある。現在も、日本各地に「焼肉」「韓国料理」の名称で営業している飲食店が存在し、韓国式の流れをくむ店舗も少なくはない[22]。
朝鮮料理のプルコギは、日本語で「火で炙って食べる肉」という意味であり、プルコギが在日韓国・朝鮮人の手によって、日本式の「焼肉」に変わり、日本食文化のジャンルとして日本人の口に定着することになる。 また「焼肉」といえば、コリアンタウン、ホルモン焼き、キムチ、冷麺などが連想され、このいわゆる「焼肉」食文化は在日韓国・朝鮮人が創始し、戦後の日本の食文化に定着させた[23]。
在日韓国・朝鮮人の出身地はさまざまなことから、その料理には彼らの出身地の料理の影響が大きい。たとえば、済州島出身者の韓国料理店では、ほかの地方では見られないスズメダイのフェを提供するところがある[24]。日本で定着しているものの中には、チヂミやチョレギ、チャンジャのように、ソウル標準語では使われない料理の名称がある。
現在、日本において韓国料理は身近なものになっており、たとえばキムチは、今ではコンビニやスーパーでも普通に手に入る食品になっている[25]。1990年代以降には韓国ブームの高まりに伴い各地に韓国料理店が増加した。ビビンバ・チゲなどの料理も一般的なレストラン・居酒屋[26]で提供されるようになっている[27]。
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