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L'Arc〜en〜Cielのアルバム ウィキペディアから
『KISS』(キス) は、日本のロックバンド、L'Arc〜en〜Cielの11作目のスタジオ・アルバム。2007年11月21日発売。発売元はKi/oon Records。
『KISS』 | ||||
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L'Arc〜en〜Ciel の スタジオ・アルバム | ||||
リリース | ||||
録音 | 2005年, 2006年 - 2007年 | |||
ジャンル |
ポップス ロック | |||
時間 | ||||
レーベル |
Ki/oon Records (日本盤) Gan-Shin Records (欧州盤) | |||
プロデュース | L'Arc〜en〜Ciel | |||
専門評論家によるレビュー | ||||
Allmusic link | ||||
チャート最高順位 | ||||
ゴールドディスク | ||||
L'Arc〜en〜Ciel アルバム 年表 | ||||
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『KISS』収録のシングル | ||||
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前作『AWAKE』以来約2年5ヶ月ぶりとなる11作目のスタジオ・アルバム。なお、本作は5ヶ月連続リリース(シングル・アルバム・DVD、合計6作品)の一環としてリリースされている。
本作には、アルバムに先行して2007年に発表したシングル「SEVENTH HEAVEN」「MY HEART DRAWS A DREAM」「DAYBREAK'S BELL」「Hurry Xmas」の表題曲や、2005年7月に発表した「Link」の表題曲を含めた12曲が収められている。なお、本作のマスタリングは、前々作『SMILE』及び前作『AWAKE』に引き続き、U2の『ポップ』やニルヴァーナの『ネヴァーマインド』のマスタリングを務めたエンジニアであるハウィー・ウェインバーグ(masterdisk)が担当している。
ちなみに、本作は前作『AWAKE』に続き、アジア圏を含め海外でもリリースされている。また、日本でのリリースから約4ヶ月後の2008年4月18日には、ヨーロッパにおいてアジア圏のアーティストのCD流通を行っているドイツのレコード会社、Gan-Shin Recordsから欧州盤がリリースされている。
2006 | 『FAITH』 (hyde, HYDE名義) |
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『purification』 (yukihiro, acid android名義) |
2005年9月に開催したバンド初のアジアツアー「ASIALIVE 2005」が終了してから約1年の間、L'Arc〜en〜Cielはソロ名義もしくは別バンドでの活動(hyde→ HYDE、ken→ Ken, SONS OF ALL PUSSYS、tetsuya→ tetsu, Creature Creatureサポート、yukihiro→ acid android)を主軸としていた。2006年10月にバンド結成15周年を記念し開催したライヴ「15th L'Anniversary Live」で久々にバンドメンバーが集結し、このライヴが終了してすぐに本作の制作が行われている。また、本作に収録された楽曲のアレンジ作業では、hyde曰く「L'Arc〜en〜Cielは縛りなく様々な音楽ジャンルにアプローチできるバンド」であることを意識していたといい[3]、本作にはこれまで以上に様々な音楽性を内包したポップ・ミュージックが収録されることになった。
前作『AWAKE』の詞世界はhydeの中で<愛と平和>がひとつのコンセプトになっていたが、本作では前作のような内省的なテーマではなく、<温かい愛情の表現[4][5]>をテーマに据えている。本作発売当時に受けたインタビューで、音楽評論家の平山雄一に「『AWAKE』が内面的だったから、『KISS』は正反対に感じる」と印象を告げられた際、hydeは「いや、結構自分の中では繋がってはいるんですけどね。『AWAKE』は世界的な視野で争いのこととかを中心にシリアスな感じっていうかな。その形で2年くらいやってるうちに、だんだん自分の中で熱の入る部分が変わってきた。もう少し自分の隣にいる人だったり、周りにいる人に対して歌いたくなった。もうちょっとミニマムな関係のことを歌うことが、自分の中で熱くなっていった。ただメロディを作ってるときはあんまりそういう世界観のことは意識してなかったですね。むしろ楽しんで作った[3]」と語っている。
また、hydeは今回自身が手掛けた歌詞のイメージについて「前回はもうちょっと刺々しい愛の表現だったと思うんだけど、今自分が一番グッとくるのは優しい愛であったり、日常的な雰囲気のほうが素敵だなって思う。だからそういう形になればいいなと思ったんです[5]」と本作発売当時に語っている。
『KISS』の録音作業は、2007年1月の曲出し会、個人プリプロを経て、同年2月頃から本格的に始まり、先行シングル4作品のレコーディングを挟みながら、同年6月から開催したホールツアー「Are you ready? 2007 またハートに火をつけろ!」の直前まで続けられている。そして、この期間中に制作された楽曲に、2005年7月に発表した「Link」を加えアルバムが完成している。余談だが、本作をレコーディングするタイミングで、2008年8月シングル表題曲として発表されることになった「NEXUS 4」も録音作業が行われている。
なお、本作に収録された楽曲は、2005年発表の「Link」を除き、2007年6月から同年8月に開催した前述のホールツアーで先行披露されている[注 2]。このツアーで本作収録曲の先行披露を行ったのは、tetsuyaのアイデアがきっかけとなっている[3]。セットリストにアルバム収録予定曲を組み込んだ経緯について、hydeは「いち早くファンの人に聴かせるのが目的だったと思う[3]」「インディーズの頃は音源がない曲をやるのが当たり前だったじゃないですか。初心に返るっていう意味もあったと思う[3]」と述べている。余談だが、結成15周年を記念し開催したライヴ「15th L'Anniversary Live」で初披露された楽曲「Bye Bye」と、タイアップが決まり前述のホールツアーで披露されていた楽曲「SHINE」の2曲は、本作への収録が見送られており、これらは次作『BUTTERFLY』でアルバム初収録されている。
また、本作には、hyde、ken、tetsuya、yukihiroの4人が単独名義で作詞・作曲を担当した楽曲が収められている。1999年リリースのアルバム『ark』『ray』以降に発表したスタジオ・アルバムには、メンバー4人それぞれが作曲した楽曲が必ず収録されていたが、メンバー4人それぞれに作詞クレジットが付いた楽曲を収めたスタジオ・アルバムは、本作が初となった。さらに、1996年発表の『True』以降、共同プロデューサーとしてL'Arc〜en〜Cielの楽曲制作に携わっていた岡野ハジメ(ex.PINK)が、アルバム全体のプロデュースから外れている。ただ、「SEVENTH HEAVEN」「砂時計」「spiral」「雪の足跡」を除いた8曲の制作には、共同プロデューサーとして岡野が制作に参加している。一方、岡野は共同プロデューサーとして携わった「MY HEART DRAWS A DREAM」「ALONE EN LA VIDA」「Link -KISS Mix-」の制作で編曲作業を担当していない。そのため、本作に収録された楽曲の半数がL'Arc〜en〜Cielのセルフアレンジにより制作されている。
本作の音楽性としては、ゴージャスなアレンジが印象的なポップ・ミュージックや、シンフォニックなロックに寄った楽曲が多く収録されている。ちなみにメンバーは、レコーディングを始めた当初から、ポップでメロディアスな楽曲を集めようと考えていたようで、hydeは「俺は元々ポップなアルバムにしたいなぁと思っていて。だから持って行った曲もそこを意識していて[4][6]」と語っている。また、kenは「L'Arc〜en〜Cielらしさってどの部分なのかはわからないんですけど、でも明確に"L'Arc〜en〜Cielだぞ!"と…聴いていて"L'Arc〜en〜Cielだね"と思える音楽を吐き出しというのは、あったかもしれないねぇ。(中略)何の野望かはわからないんですけど、『True』を作った時もそんな気分があったし、『DUNE』を作ってた時もそんな気分があった。そういうものが、また来た感じですね[7][8][9]」と述べている。なお、L'Arc〜en〜Cielが意識的にポップ志向をもって制作した作品としては、1996年に発表したアルバム『True』があげられる。本作と『True』の違いについて、kenは「『True』を録ってた頃を思い出すと、あの頃は曲のトリートメントに凄く重きを置いていたと思うんですよ。で、今回はそれプラス、メンバーそれぞれの演奏っていうものを上手くそこにハメ込むことができた…トリートメントしたものに、さらにメンバーの演奏力、演奏の個性によって可能になる表現を落とし込むことができた、そしてそれを感じることのできるサウンド、音質で作ることができた…という気がします。そこが違うかもしれませんね[7][10]」と語っている。また、kenは自身の思うポップ・ミュージック像について「何がポップで何がポップじゃないかっていうのは、本当に人の感覚だと思うんですよね。売れているものがポップであるという話なのか、ポップに作り込んだ音楽がポップであるという話なのか、そのどちらによるかで話は変わってくると思うんですよ。(中略)凄く難しいことなんですけど、その時代を背負ってなきゃいけないくせに、その時代と一緒になったらダメなんですよね。と、思ってるんですよ。そこの隙間を見つけた時だと思う[11][12][13]」「僕はポップというのは、難しいことの積み重ねの上でポップになるという部分があると思うんです。音楽理論を凄く把握した上で―― "ここはこうしておかないと不協(和音)になる"とか、"こういう流れがよい"とかね、そういう知識と技術を投入する部分があると思う。(中略)衝動でやっているところもあるだろうけど[14]」「でも、結果としては鍛錬に聴こえちゃいけないんですよ[14]」と本作発売年に受けたインタビューで語っている。さらに今回、多彩なポップ・アルバムを作ることを明確に意識した背景のひとつとして、メンバー各々がソロ活動を通じ、嗜好する音楽性を昇華できたことがあげられる。hydeは本作発売当時のインタビューで、ポップ志向に至った意識の変化ついて「今までは、ラルクに対してこだわりがあった。"もっとロック・バンドでありたい"みたいな。だけど自分のソロでそれが昇華されたところがあって。逆に音楽的にもっと挑戦するのがラルク アン シエルじゃないのかなって気がしたんですね。そこでちょっと肩の荷が下りた[3]」「ソロでは"ハード・ロック"っていうしばりの中で作ってたんですけど、今回はせっかくラルクでやるんだからしばりのない、なんでもできるバンドだったよなってことを改めて再確認して。じゃ、こういう曲ああいう曲もって、極端に振り幅をつけて曲を作っていった感じですね[3]」と語っている。こういった経緯から、本作には、1980年代のユーロビートの要素を採り入れた楽曲や[注 3]、2000年代のポストパンク・リバイバルに影響を受けた楽曲[注 4]、1960年代のオールディーズや1970年代の歌謡曲の雰囲気を内包した楽曲[注 5]、ジャズテイストに仕上げたクリスマスソング[注 6]など、様々な音楽ジャンルにアプローチした楽曲が収録されることになった。
なお、ken曰く、今回の曲作りでは「自分が驚ける楽曲」を制作したいという欲求が強かったといい[7][15][10]、自身の楽曲制作の姿勢について「今回ほど人に向けてない時も珍しい[15][16]」と述べている。また、kenは本作発売当時に受けたインタビューで、レコーディングを振り返り「曲を作る段階ではトキメく感じ、自分が驚ける感じを凄く大事にしてたと思うんですね。で、実際の録る段階では、デモよりも絶対に何倍もカッコよく録りたい!という気持ちで臨んで。あとはゴージャスな気分で…もしもこの音が入れたいと思ったら、遠慮せずに入れるということをやりました。ピアノもそうだしストリングスもそうだし、ギターでそういうアンプが要るなら用意してそのアンプで弾く、マイキング(録音マイクの配置や録音方法のこと)も何種類か試して一番好きな音のものを選ぶ…手間がかかると言っても、それをやる。本当に自分が気分が豊かになる音を録るための努力をしましたね。たとえそこでキリキリしたとしても、その努力は最終的には自分が気持よくなるためなので、絶対にそこは譲らないようにしたんです[7][15][10]」「より自分が気持ちよくなるポイント―― 人はこうだったら気持ちいいはずでしょう?っていう方向ではなくて、"いや、人はいいと思うかもしれないけど俺は気持ちよくないでしょう"っていう時は、自分が凄く気持ちよくなれるところを探すということをしましたね。それは作曲の時よりも録る時―― まぁ作曲の時も"驚き"を大事にしたという点ではそうだったと思うんですが―― のほうが自分はこうなって欲しいという想いを強く出しました。というのは、言ってみれば作曲はひとりでするからどこへでも行けるんですけど、録る時はいろんな人が関わってくるから。そこでいろんな人の意見も取り入れながら、でも自分が思っている部分はブレないまま録れないとダメだと思って[15][16]」と語っている。こういったスタンスでレコーディングに臨んだ経緯について、kenは「自分の行きたい方向、L'Arc〜en〜Cielはこうしたらカッコいいなと思う方向を自分が感じていたら、そうじゃなく流れそうになったら自分で言うしかないし、それを言った時にわかってくれる関係性だという安心感があったのかもしれないですね。"何言ってんの?"とは言われない。むしろ倍返しをしてくれる関係性だということもあって[9]」「細かい話もしてはいるんですが、もっと感覚的な話を割とわかってくれるというか。技術論的なことじゃなくて、感覚でこういうふうにしたい…本当だったら、"こういうふうにして、こういうふうにしたら、こういう感覚になるんだよ"ってことを伝えなきゃいけないのかもしれないけど、そうじゃなくて、"こういう感覚になりたいな"みたいな話が上手く伝わっていた気がしますね。それはお互い、みんなね[15][17][18]」と述べている。なお、他のメンバー曰く、今回のアルバムレコーディングのトータルな部分で、kenの考えが強く反映されているという。今回のレコーディングにおけるkenのアレンジワークについて、hydeは「昔からkenは"音楽の先生"みたいなところがあって(笑)。自分達よりも少し上にいるところから音楽を見ている感じがするんで。今回はそういう部分が以前よりも長けていたような気がするかな。自分達にはわからないレベルの音楽的な部分は、彼に一任しているので。そういう部分は今回さらに深まっていると思うし、彼が作ってくるデモの時点でかなり完成されてるんで。そういう意味で、彼の曲じゃない曲をやる時にも頼りになるっていう感じです。常に上にいる人って感じかな[7]」と本作発売当時に語っている。
また、今回のレコーディングからtetsuyaは、メインとして使うベースを4弦ベースから5弦ベースに移行している[19]。低音域を広げた5弦ベースを本格的に導入した理由について、tetsuyaは「1stアルバムの『DUNE』や2ndアルバムの『Tierra』くらいから5弦ベースを使ってなくはなかったんですけど、本格的に、というか完全に5弦に切り替えたのは、2006年の4月くらいにCreature CreatureっていうMORRIE(DEAD END)さんのソロ・プロジェクトにベーシストとして参加してから。そのときに、ギタリストのMinoru(ex.THE MAD CAPSULE MARKET'S、ex.DIE IN CRIES)君が7弦ギターで曲を書いてきたり、プレイしたりするんで、それに合わせて自然に5弦を使うようになったんです。Creature Creatureのアルバム『Light & Lust』のなかで、僕は11曲中10曲のベースを弾いてるんですけど、そのレコーディングは5弦で通して弾いて。そこから戻れなくなっちゃったという[19]」と語っている。ちなみにtetsuyaは、2007年初めから開始したアルバムレコーディングにおいて、5弦ベースの「ZON LEGACY ELITE 519」をメインで使用している[20]。これまでtetsuyaは様々なベースを録音作業に持ち込んでおり、過去には9本ものベースをアルバム制作で使ったこともあったが[21]、今回は2007年からのアルバムレコーディングより前にベース録りが終わっていた「Link」と「海辺」以外の全曲を、この1本で弾ききっている[20]。tetsuyaは、本作のベース録りについて「今回は5弦ベースに関しては、ほとんどZONのLEGACY ELITE 519を使ったんですけど、1枚のアルバムを1本のサオで通すのは、実は初めてだと思うんですよ。(中略)音作りに関してはアンプ・ヘッドをいろいろ変えることで作っていきましたけど[19]」と述懐している。
さらに、本作に収録された楽曲では、yukihiroのドラムの音作りにも変化を感じることができる。今回のドラム録りについて、yukihiroは「今回は、主観というよりは客観でやった感じがあるんですよ。なので、例えばドラムの音色とかにしても、俺っぽくないなって思うものが多いですね、意外と。でもそれは俺じゃない全員が納得してればOKっていうことにしてました[15][22]」と述べている。また、yukihiroは今回の音作りについて「(これまでは)アンビはほんとにヤだったんで、ドラムは必ずデッドで、っていうことがまず先にあったから。やっぱそこっていうのは、ある程度曲に対しての制限にもなってくるものだからっていうのもあるし。まあそういうところを1回こう、なくしてみて。みんなが曲を作った時に思い描いてた音像とかがそこに明確にあるんであれば、そういう音にしたほうがその曲が活きるんだろうなっていう風に思って、今回はそれでやってみたって感じですね[22]」と語っており、L'Arc〜en〜Cielとしてドラムを演奏するうえで心境の変化があったことを示唆している。さらに、yukihiroは今回のレコーディングで、個人プリプロの段階で各メンバーからあがってきていたデモを一度試しに叩いてみるという試みを行っている[23]。yukihiroは個人プリプロを振り返り、「いつもよりはリラックスしてたのかな。準備できる時間がちゃんとあったんですよ、曲が決まってから。本番のレコーディングの前に"全曲一度、試しに録ってみる"っていう日を作って、その中でいろいろ試せたので[23]」と述べている。また、これまでyukihiroは1曲のドラム録りで100回以上叩くこともあったが、仮のドラム録りを行ったことで、結果的に円滑にレコーディングを進められたとも述べている[24]。
本作に収録された楽曲にのせられた歌詞は、前述のようにhydeの思う<温かい愛情の表現>をテーマにしたものが多い。歌詞を書いていたときの心境について、hydeは前作『AWAKE』の頃と比較し、「今の気分として、前回の手法はもう終わってたんですよね。歌詞もなるべく視線を落とした状態にして、親しみやすい、日常に近いニュアンスを出しながら、ポップな印象のアルバムにしたいなと思って[6]」と本作発売当時に語っている。ちなみに、hydeはこの作品あたりから、現実から逃避したような"幻想"を描いたリリック以外に、"ありふれた日常"を綴ったような歌詞を多く手掛けるようになっている。hydeは2012年に発表した自叙伝において、この当時の心境の変化について「普段の生活の中で、ふと愛に満たされた時、"このまま、死んでもいいや"って思った瞬間に宇宙と繋がった気がした事があったんだよ。なんか、死を迎え入れられた瞬間に"あ、なんだ、宇宙ってこんな物だったのか"って。ちなみに、俺、薬はやってないよ(笑)。そして、宇宙の摂理というか、なんか全てがスッと理解出来た気がして。それが大きかったのかもしれない。その時に、多分、生への執着がなくなったんだろうな。それからというもの、周りのいつもの風景がとても愛おしく感じられるようになってきた。その感覚は、L'Arc〜en〜Cielの「ALONE EN LA VIDA」の歌詞に書いたり、HYDEソロの「I CAN FEEL」とか、その頃の作詞の核になってるんだけど。(中略)"いつ死んでもかまわない"と共に、"いつ死んでもいいように生きよう"って思う自分が加わった感じかな[25]」と綴っている。
本作の出来栄えについて、hydeはアルバム発売時のインタビューで「11枚目のアルバムでも、全然"底"が見えない感じがしますね。"もうやる曲ねえな"って感じが全然ない。今回もアルバムを作って、いい作品ができたと思ってるし。今年で16年目なんですけど、ギア入れたかどうかはわからないけど、そういう雰囲気はあるし。このバンドってまだまだ失速してないというか。まだまだ元気だなって(中略)。続いて行くというより、まだ続けられるんだなというニュアンスの方が近いかな。…きっと、それぞれの想いが消えてない、何かしら憧れを持ってバンドに接してるんじゃないかなと思う[7][26]」と述べている。また、kenは、多彩な楽曲が収められた本作について「僕らはバンドだから、hydeがバンドの顔として言葉を綴ってまとめ上げていることによって、僕の音楽に対する節操のなさがバリエーションとして響いているんだろうし、さらにtetsuのプレイやyukihiroのプレイによっても、アルバムがちゃんと筋が通ったものになって行っているんだろうなと思う[15][17]」と印象を語っている。
アルバムタイトルは従来通り、収録曲の作詞を一番多く手掛けたhydeが名付けている。hydeは本作発売当時のインタビューで、アルバムタイトルを決めた経緯について「ポップなタイトルにしたい、人との絆とか繋がりを意識したい、あとはタイトルは短いほうがいいと思ったんですよ。その3つを合わせたら、『KISS』という言葉が出てきたんです[3]」「キスするようにみんな繋がって行けばいいなぁという意味を込めて、つけました[26]」と語っており、アルバムのひとつのコンセプトとなった<温かい愛情の表現>を表すタイトルが付けられている。
また、タイトルの『KISS』のイメージについて、hydeは「キスっていうのはね、本当に愛情表現。血が流れるような行為だと思うんですよ。もちろん、その向こうにセックスを目的とするキスもあると思うんですけど、愛おしいもの、抱きしめたりするかのように…キスっていうのはもっと血が流れるような感じがするんです。凄く素敵なことだと思う。(中略)性的に思われたらちょっと…もちろんそういうのも好きですけど(笑)、でもそれだけじゃないんだよっていうことを、みんなに知ってもらいたい[7][26][27]」と述べている。
ジャケットのアートワークは、グラフィックデザイナーの関本明子(Draft)が手掛けている。本作のブックレットは蛇腹状になっており、一枚一枚に描かれた横顔のシルエットがキスし合うような、アルバムタイトルを表現したデザインとなっている[28][29][30]。また、ブックレットのあるページにはメンバー4人が写っているが、この写真でメンバーはヘッドフォンをかけており、ヘッドフォンを通じバンドが音と音で繋がり、そしてそのコードはさらに無限に伸びていくというイメージを彷彿とさせるデザインになっている[30]。アートワークの印象について、hydeは「今回ジャケットがよく出来ているんです。ブックレット開くと"あ、俺が言いたかったのこれ!"みたいな[3]」「ただ今までのよりかなりかわいらしいジャケットなんで、そういう意味では賛否両論だと思う[3]」と語っている。また、tetsuyaは「ブックレットのアイデアが良かったので、それが決め手[31]」「何人かのデザイナーさんに何パターンか出してもらったんですけど。他のアイディアやメンバーからイメージを伝えた上でできたものもあったんですけど、そういうところでは全然ないところから飛び込んできたものがこれで。"あ、最初に思っていたものとは違うけど、このアイディアは凄くいいな!"と思ったんです。だからアイディア勝ちですね、これは[30]」「オシャレですよね。『デトロイト・メタル・シティ』で言うところの相川由利ちゃんが好きそうなジャケットかなぁと(笑)。(中略)カヒミ・カリィみたいでしょ?[30]」とジャケットの選定と印象について述懐している。
本作のプロモーションとして、2007年11月20日から同年12月25日までの約1ヶ月の間、東京・渋谷にある商業施設、SHIBUYA109のメンズブランド「109MEN'S」(現:MAGNET by SHIBUYA109)とコラボレーションした巨大広告が展示された[32]。この広告ではアルバムタイトルにちなみ、"メンバー同士がキスをしているように見える写真"が使われている[32]。なお、これはこの広告のため撮り下ろしされたものである[32]。また、この広告でメンバーは「109MEN'S」を取り入れたコーディネートで登場している[32]。さらに、同期間には「109MEN'S×L'Arc〜en〜Ciel」のコラボレーションCMがフォーラムヴィジョンにて放映されている[32]。ちなみに、「109MEN'S」がロック・アーティストとコラボレーションするのは、これが初の試みとなった[32]。
L'Arc〜en〜Cielは本作のレコーディングをひと段落させた2007年6月8日から、同年8月30日にかけてライヴツアー「Are you ready? 2007 またハートに火をつけろ!」を開催。このツアーでは、完成を迎えたばかりの本作の収録曲が先行披露されている。このツアータイトルは、1998年に開催したライヴツアー「Tour '98 ハートに火をつけろ!」をセルフオマージュしており、1998年のツアーと同様に、ホール規模の会場を中心にツアーをまわっている。なお、ひとつのツアーで組み込まれた公演数は、1998年のツアーに次ぐ計37公演となった。ちなみに、このツアーの追加公演として同年8月25日・26日に開催された富士急ハイランド コニファーフォレストでのライヴは、1999年以来約8年ぶりの単独野外公演となっている。余談だが、本作発売から約4ヶ月後に発表された楽曲「DRINK IT DOWN」の歌詞は、hyde曰く、ライヴのため訪れた富士急ハイランドにあったお化け屋敷に入った際のエピソードが、着想のひとつになったという[33]。
また、上記ツアーの合間の2007年7月28日に、L'Arc〜en〜Cielは韓国・仁川広域市で開催された韓国最大規模の野外ロック・フェスティバル「2007 INCHEON PENTAPORT ROCK FESTIVAL」に出演している。このフェスでは当時音源化されていなかった「MY HEART DRAWS A DREAM」も披露されている。ちなみにL'Arc〜en〜Cielは、このフェスに日本人アーティストとして初のヘッドライナーで出演している。なお、前日の27日公演はケミカル・ブラザーズ、翌日の29日公演はミューズがヘッドライナーを務めている。ちなみに、L'Arc〜en〜Cielが所属事務所主催のライヴイベントやアニメ関連以外のフェスに参加するのは、2004年7月以来約3年ぶりのこととなった。
L'Arc〜en〜Cielは本作発売の後、2007年12月22日から2008年2月17日にかけてライヴツアー「TOUR 2007-2008 THEATER OF KISS」を開催している。このツアーは、hyde曰く「(これまでの公演と比べて)一番コンセプチュアルなツアー[34]」であり、ステージセットや演出に児童小説・アニメ『不思議の国のアリス(Alice's Adventures in Wonderland)』の要素をふんだんに盛り込んだものとなった[35]。そのため公演中に、同小説のキャラクターである白ウサギ(CV:たてかべ和也、肝付兼太)や帽子屋、さらに主人公のアリスと思われる人物が登場している。余談だが、音楽雑誌『MUSICA』の2008年4月号には、このライヴツアーに関するメンバーインタビューとドキュメント記事が掲載されている[36]。
そして上記ツアーを終えた後、L'Arc〜en〜Cielは2008年4月19日から同年6月8日にかけて世界7都市(上海、台北、パリ、ソウル、香港、東京、大阪)を巡るライヴツアー「TOUR 2008 L'7 〜Trans ASIA via PARIS〜」を敢行している。なお、パリ公演の模様は、ライヴ当日の2008年5月10日の日本時間深夜3時に、東京・大阪・福岡・広島・新潟の日本5都市のシネマコンプレックスで生中継された[37]。ちなみにこれは、世界初の海外コンサートの同時中継企画となった[37]。バンドの所属事務所の代表を務める大石征裕曰く「映像収録もしたが、当時はPALと規格が違うエリアでは電圧も違い、カメラや機材の調整や日本までの伝送について各方面への根回しが大変だった[38]」という。さらにこのツアーの裏側の模様は、2009年5月29日にNHK総合で放送された特別番組『L'Arc〜en〜Ciel LIVE IN PARIS』にて放映されている。
フィジカルは、通常盤(CD)の1形態で発売されており、初回限定仕様は、スペシャルパッケージ、23面ワイドブックレット仕様となっている。
また、フィジカル発売に合わせ、レコード会社直営フルなどの各種着うたフル配信サイトにてダウンロード配信されている。2007年12月4日には、iTunes USAでの配信が開始されたが、日本国内でのリリースはされていなかった。ただ、2012年11月7日にソニー・ミュージックエンタテインメントがiTunes Storeに参入したことに伴い、日本においても配信が開始され[39]、ほぼ全ての音楽配信サイトにてダウンロード販売が解禁された。
2014年10月22日には、本作を含めたアルバム全12タイトルのハイレゾリューションオーディオ音源が各種音楽サイトで配信された。このハイレゾバージョンでは、内田孝弘(FLAIR)によるリマスタリングが行われている。また、2019年12月11日には、Spotify、Apple Musicをはじめとした各種サブスクリプションサービス(定額制音楽配信)にて、この日までに発表したL'Arc〜en〜Cielの全楽曲のストリーミング配信を全世界で一斉解禁している[40]。
2022年5月18日には、本作を含めた過去に発表したアルバム作品を、メンバー監修の下でオリジナルマスターテープを使いリマスタリングしたボックス・セット『L'Album Complete Box -Remastered Edition-』が発表されている。この作品に収録されたリマスタリングアルバム『KISS(Remastered 2022)』では、ランディ・メリル(Sterling Sound)によるリマスタリングが行われている。ちなみにこのリマスタリングアルバムは、フィジカル発売と同日にダウンロード配信(ハイレゾリューションオーディオ音源含む)およびストリーミング配信が開始されている。
リリース | タイトル | 規格 | マスタリング・エンジニア | 備考 |
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2007年11月21日 | KISS | (masterdisk) |
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2014年10月22日 | 内田孝弘(FLAIR) | - | ||
2019年12月11日 | (masterdisk) |
- | ||
2022年5月18日 | KISS (Remastered 2022) |
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(Sterling Sound) |
フィジカルはボックス・セット『L'Album Complete Box -Remastered Edition-』に収録 |
# | タイトル | 作詞 | 作曲 | 編曲 | 時間 |
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1. | 「SEVENTH HEAVEN」 | hyde | hyde | L'Arc〜en〜Ciel | |
2. | 「Pretty girl」 | ken | ken | L'Arc〜en〜Ciel, Hajime Okano | |
3. | 「MY HEART DRAWS A DREAM」 | hyde | ken | L'Arc〜en〜Ciel | |
4. | 「砂時計」 | tetsu | tetsu | L'Arc〜en〜Ciel, Akira Nishihira | |
5. | 「spiral」 | yukihiro | yukihiro | L'Arc〜en〜Ciel | |
6. | 「ALONE EN LA VIDA」 | hyde | ken | L'Arc〜en〜Ciel | |
7. | 「DAYBREAK'S BELL」 | hyde | ken | L'Arc〜en〜Ciel | |
8. | 「海辺」 | hyde | tetsu | L'Arc〜en〜Ciel, Hajime Okano | |
9. | 「THE BLACK ROSE」 | hyde | hyde | L'Arc〜en〜Ciel, Hajime Okano | |
10. | 「Link -KISS Mix-」 | hyde | tetsu | L'Arc〜en〜Ciel, Akira Nishihira | |
11. | 「雪の足跡」 | hyde | ken | L'Arc〜en〜Ciel | |
12. | 「Hurry Xmas」 | hyde | hyde | L'Arc〜en〜Ciel, Hajime Okano, Daisaku Kume | |
合計時間: |
# | タイトル | 作詞 | 作曲 | 編曲 | 時間 |
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1. | 「SEVENTH HEAVEN - Remastered 2022」 | hyde | hyde | L'Arc〜en〜Ciel | |
2. | 「Pretty girl - Remastered 2022」 | ken | ken | L'Arc〜en〜Ciel, Hajime Okano | |
3. | 「MY HEART DRAWS A DREAM - Remastered 2022」 | hyde | ken | L'Arc〜en〜Ciel | |
4. | 「砂時計 - Remastered 2022」 | tetsuya | tetsuya | L'Arc〜en〜Ciel, Akira Nishihira | |
5. | 「spiral - Remastered 2022」 | yukihiro | yukihiro | L'Arc〜en〜Ciel | |
6. | 「ALONE EN LA VIDA - Remastered 2022」 | hyde | ken | L'Arc〜en〜Ciel | |
7. | 「DAYBREAK'S BELL - Remastered 2022」 | hyde | ken | L'Arc〜en〜Ciel | |
8. | 「海辺 - Remastered 2022」 | hyde | tetsuya | L'Arc〜en〜Ciel, Hajime Okano | |
9. | 「THE BLACK ROSE - Remastered 2022」 | hyde | hyde | L'Arc〜en〜Ciel, Hajime Okano | |
10. | 「Link -KISS Mix-/- Remastered 2022」 | hyde | tetsuya | L'Arc〜en〜Ciel, Akira Nishihira | |
11. | 「雪の足跡 - Remastered 2022」 | hyde | ken | L'Arc〜en〜Ciel | |
12. | 「Hurry Xmas - Remastered 2022」 | hyde | hyde | L'Arc〜en〜Ciel, Hajime Okano, Daisaku Kume | |
合計時間: |
フィジカルアルバムに付属するブックレットより転載。日本語表記が確認出来ない部分に関しては原文ママとする。
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[Artwork etc]
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年 | 楽曲 | タイアップ | 出典 |
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2005年 | Link | エクシング「ポケメロJOYSOUND」CMソング | - |
松竹配給映画『劇場版 鋼の錬金術師 シャンバラを征く者』オープニングテーマ | [131] | ||
2007年 | SEVENTH HEAVEN | 日本テレビ系番組『スポーツうるぐす』テーマソング | [132] |
MY HEART DRAWS A DREAM | 富士重工業「スバル・レガシィ」CMソング | [133] | |
江崎グリコ「Mousa」CMソング(中国) | [134] | ||
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