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日本における2009年新型インフルエンザの感染は、2009年5月9日に成田空港での検疫でカナダの交流事業から帰国した高校生ら3人において初めて確認された[3- 1]。 5月16日には国内で初めての感染が確認され[3- 2]、その後兵庫県や大阪府の高校生を中心に急速に感染が拡大した。
当初は感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第6条第7項の「新型インフルエンザ等感染症」に分類され、感染者は強制入院の対象となっていたが、2009年6月19日に厚生労働省がこの方針を変更し、季節性インフルエンザとほぼ同等の扱いとなっている[2- 1]。また、同年7月24日からは感染者数の全数把握を中止し、クラスターサーベイランスに移行した[2- 2] [2- 3] [2- 4]。
2010年1月3日までに、日本では203人が新型インフルエンザにより死亡したと発表されている [3- 3]。 これらの死者は、気管支喘息や糖尿病などの基礎疾患(持病)を持っている者が多かった。しかし、死因が新型インフルエンザと確定しきれない例なども含まれている。
2004年1月の山口県の養鶏場において、日本では79年ぶりにH5N1型の高病原性鳥インフルエンザが流行し、多くの鳥が死んでいる映像が報道され、行政によって大量処分がなされ大々的に注目されるようになり、2005年2月大分県で、続いて京都府で確認された。
また大韓民国・中華人民共和国・東南アジアで、鳥インフルエンザの流行が報道され、翌2006年から2008年でもH5N2型も含め日本の養鶏場から、また2008年4月には、十和田湖とサロマ湖で死んでいた白鳥からも、鳥インフルエンザウイルスが発見され、人間には感染しにくいが、インフルエンザウイルスは変異しやすいため、種を超えて数千万人の死者を出した1918年のスペインかぜのようなインフルエンザのパンデミックを引き起こしかねない、抗体をもつワクチンの製造には、6か月かかるため接種の優先順位を定め、国家レベルで重症化を防ぐために抗ウイルス薬のノイラミニダーゼ阻害薬(タミフルなど)を備蓄すべきだ、日本は対策が遅れていると、そのように世論が煽られていたさなかにあった[2]。
本来、H5N1の鳥インフルエンザの予測と対策で論じられてきた脅威であったが[3]、そのようなさなかに、H1N1亜型の新型インフルエンザ(豚インフルエンザが由来)のパンデミック宣言が2009年6月に世界保健機関からなされ、かつ死者は少ないことを喚起し、ほとんどが軽症で処置がなくても快復するものであり、致命的な症例の急激な拡大の性質がないものであった[4]。
世界で新型インフルエンザの感染が報告されてから1か月、5月25日には、テレビ朝日のゴールデンタイムの報道番組「報道発ドキュメンタリ宣言」では、「緊急特集 感染拡大 WHO女性監視官は見た」[5]として、WHO感染症監視対策チームの中村理子に関西での感染調査を依頼してそれを報道した。番組では、WHO新型インフル対策改訂メンバーの賀来満男は、今回の新型インフルエンザは病原性が低いため外出を控えることはないこと、まずタミフルで重症化を防ぐことが大切とコメントした。
大量に蓄えられた処方箋医薬品は不発に終わった。世界でも、欧州評議会は、国際的な豚インフルエンザ・キャンペーンは製薬会社の影響を受けているとして調査を開始[6]。『BMJ』(英国医師会雑誌)もタミフル・キャンペーンとしてサイトを立ち上げ[7]、備蓄に値するほどの有効性があるのか、調査を開始した。
日本でも同様に不発であり、参議院議員の山谷えり子も、インフルエンザワクチン確保の決定は正しくなかったと述べた。
大臣政務官(藤田一枝君)その意見等を踏まえて、政府の新型インフルエンザ対策本部が二十一年十月一日に新型インフルエンザワクチン接種の基本方針というものを策定をいたしまして、二回接種を前提としたワクチンを、七千七百万人分程度のワクチンを確保する方針を決定したところでございます。
○山谷えり子君 その決定は、だから正しくなかったんですね。結局、弱毒性で、はやりもなかったということでたくさん余っちゃったんですよ、注文したのが。だから、外資の製薬会社に違約金を払わなければならなくなりました。 — 参議院内閣委員会. 第180回国会. Vol. 12. 17 April 2012.
厚生労働省は、重症化や死亡した例などを除いて、新型インフルエンザかどうかを調べるPCR(遺伝子)検査を当分の間行わなくてよいとしたため、現在の国内の正確な感染者数は不明である。国立感染症研究所が発表した、全国約5000カ所の定点医療機関での2009年11月18日現在の都道府県ごとに簡易検査でインフルエンザA型と診断された人数と、これら1医療機関あたりの人数を下の表に掲げる。また、この表には、2009年11月21日までの新型インフルエンザによる死者数(疑い含む)も含ませてある。
もちろん、全国の感染者数はずっと多く、2009年11月9日~11月15日に全国でインフルエンザに新たに感染した患者が推計で164万人、累計の患者数も902万人に上ることが2009年11月20日に国立感染症研究所から発表された [3- 4]。
しかし、この新型インフルエンザは誰もが感染する可能性があり、予期せぬ重症化や死亡も小児を中心に多数報告されている。また、ウイルスの変異による強毒化などの可能性もあるため、引き続き警戒が必要である。
※1 新型か季節性かは不明だが、ほとんどは新型と考えてよい[2- 5]。
都道府県 | 感染(※1) | 1医療機関あたり | 死亡(疑い含む) |
---|---|---|---|
合計(全体) | 169095+ | 35.15+ | 68[8] |
愛知県 | 11447+ | 58.70+ | 7[8] |
大分県 | 3111+ | 53.64+ | |
石川県 | 2389+ | 49.77+ | |
山口県 | 3456+ | 48.68+ | |
新潟県 | 4557+ | 46.98+ | |
福岡県 | 9208+ | 46.51+ | 3[8] |
秋田県 | 2554+ | 46.44+ | |
滋賀県 | 2409+ | 46.33+ | 1[8] |
佐賀県 | 1729+ | 44.33+ | |
香川県 | 1950+ | 41.49+ | |
長野県 | 3625+ | 41.19+ | 1[8] |
鹿児島県 | 3721+ | 40.45+ | 1[8] |
宮崎県 | 2375+ | 40.25+ | |
高知県 | 1863+ | 38.81+ | 1[8] |
青森県 | 2517+ | 38.72+ | 1[8] |
三重県 | 2713+ | 37.68+ | 1[8] |
宮城県 | 3543+ | 37.29+ | 3[8] |
埼玉県 | 9197+ | 37.08+ | 3[8] |
山形県 | 1774+ | 36.96+ | |
岡山県 | 2954+ | 35.17+ | |
千葉県 | 7309+ | 35.14+ | |
長崎県 | 2442+ | 34.89+ | |
群馬県 | 3446+ | 34.46+ | |
岩手県 | 2191+ | 34.23+ | 1[8] |
広島県 | 3820+ | 33.22+ | 1[8] |
愛媛県 | 2002+ | 32.82+ | |
福島県 | 2616+ | 32.70+ | |
神奈川県 | 10509+ | 32.44+ | 8[8] |
沖縄県 | 1872+ | 32.28+ | 2[8] |
福井県 | 1029+ | 32.16+ | 1[8] |
兵庫県 | 6354+ | 31.93+ | 8[8] |
茨城県 | 3809+ | 31.74+ | 1[8] |
岐阜県 | 2742+ | 31.52+ | |
山梨県 | 1259+ | 31.48+ | |
栃木県 | 2365+ | 31.12+ | 2[8] |
京都府 | 3787+ | 30.54+ | 4[8] |
北海道 | 6767+ | 29.68+ | 3[8] |
富山県 | 1424+ | 29.67+ | |
徳島県 | 1135+ | 29.10+ | |
熊本県 | 2183+ | 27.29+ | 1[8] |
大阪府 | 8293+ | 27.19+ | 7[8] |
奈良県 | 1480+ | 26.91+ | 1[8] |
静岡県 | 3414+ | 25.67+ | |
和歌山県 | 1282+ | 25.64+ | |
東京都 | 7076+ | 24.57+ | 6[8] |
島根県 | 896+ | 23.58+ | |
鳥取県 | 501+ | 17.28+ |
2009年4月27日-6月18日:発熱相談センターへ相談の後、発熱外来を受診・検査
感染可能性[5- 1] | 発熱、せき、鼻水、のどの痛み等の症状がある (症状がおさまった場合も含む)[5- 2] |
症状がない | |
---|---|---|---|
感染が報告されている地域への渡航歴・滞在歴 (国内外) |
日本における流行前線情報DB |
発熱相談センターへ電話の後、症状等から新型インフルエンザに感染していると医師が疑う場合[5- 3]、発熱センターの指定日時に、指定された交通機関で、指定された入り口から、指定医療機関を受診し、PCR(遺伝子検査)等を行う。病院には高齢者・人工透析・心臓疾患・糖尿病・呼吸器疾患・妊婦・乳幼児など重症化/死亡する可能性のある人々が多数集まっているので、感染拡大・・感染者の重症化・死亡を防ぐため、発熱センターへ事前に連絡しないまま通院してはいけない。 | 発症前に診断することは困難[5- 4] |
感染者または疑似症患者との接触歴 (2メートル以内に接近) | |||
周囲にインフルエンザ症状を呈する者が3名以上 (職場、学校、家族など) | |||
周囲に他の疾患が流行していない |
医師・看護師・救急関係者・保健所など関係者の献身的な努力により、日本は世界でもまれな著しい死亡率の低さを記録[6- 1]。
案内 (予防と受診) |
急な発熱からタミフルなど投薬までの目標時間 | 重症 (呼吸困難・ 異常に早い呼吸・ けいれん・ 意識障害など) |
軽症 (急な38度以上の熱・ せき・ のどの痛みなど 通常の風邪と同程度[6- 2]) |
症状がない | |
---|---|---|---|---|---|
妊娠中の女性 | 日本産科婦人科学会 | 5歳以下: 24時間以内[6- 3] 5歳以上: 48時間以内 |
小児: すぐに、小児救急電話相談(8000番)へ電話するか、救急車を呼ぶ。119番の際は、必ずインフルエンザの症状があると伝える。 大人: すぐに、救急車を呼ぶ(119番)。必ずインフルエンザの症状があると伝える。 |
■かかりつけ医がある場合 必ず、受診前にかかりつけ医に電話し、持病の病名を告げ、指示を確認。あらかじめ医師が許可した場合は、かかりつけ医への電話で抗インフルエンザ治療薬と慢性疾患治療薬のファックス処方が可能(右欄参照[6- 4][6- 5][6- 6]) ■近くの一般病院受診を指示された場合 必ず受診前に、通院予定の近くの一般病院(相談窓口)に電話し、通院時間・通院場所など確認し、指示に従って受診[6- 2]。総合病院や救急病院は避ける ■かかりつけ医がない場合 「近くの一般病院受診を指示された場合」と同じ ■家庭での投薬 重症化に備え、なるべく早期の通院を推奨、風邪薬・消炎鎮痛薬(処方薬・市販薬)などは、インフルエンザが重症化した際に治療薬の効果を阻害したり脳症が発生しやすいため、必ず、服用前に医師・薬局などへ確認。大人用の薬は子供に服用させてはならない(15歳以下は服用してはならない薬参照) |
■相談 感染時・感染拡大時の対応をあらかじめかかりつけ医と相談(感染時に受診する医療機関の確認、感染時に必要な薬など確認、感染・感染拡大に備えた常備薬の備蓄、感染時にインフルエンザ治療薬と同時に服用してはならない薬の確認など) ■ファックス処方が可能 定期受診患者と発熱時に発熱外来を受診した患者は、あらかじめファックス処方を申し込むと、以降本人は医療機関へ出かけることなく電話問診のみで、希望する薬局で家族が慢性疾患や抗インフルエンザなど必要な薬を受け取ることができる[6- 4][6- 5][6- 6] ■かかりつけ医がない場合 ぜんそくなど持病がある場合は、発症時対応可能な医療機関を探し、夜間・土日祝日の連絡先を確保 |
5歳以下の子供[6- 3] | 日本小児科学会 厚労省 | ||||
慢性呼吸器疾患 | 日本呼吸器学会 厚労省 | ||||
代謝性疾患 (糖尿病など) |
糖尿病情報センター | ||||
腎機能障害 | 透析医会、厚労省 | ||||
免疫機能不全(癌など) | 日本癌学会 日本呼吸器学会 | ||||
慢性心疾患 | 日本呼吸器学会 | ||||
65歳以上の人 | |||||
かかりつけ医がある人 (発熱外来受診暦も) | |||||
その他全ての人 | 発症前に抗インフルエンザ薬を投与すべきでない。予防投与による薬剤耐性ウイルス出現が懸念されている。発症前の診断は困難 |
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