『幻想水滸伝ティアクライス』(げんそうすいこでんティアクライス)は、コナミより2008年12月18日に発売されたニンテンドーDS用コンピュータRPG作品。キャッチコピーは「誰と組むか、信じるか。108の出会いと別れ、絆が織りなす物語[2]
。」。
『幻想水滸伝シリーズ』初のDS作品で、オンライン要素も導入された。『幻想水滸伝』から『幻想水滸伝V』の世界観とは異なり、新たな世界観で物語が展開する。これまでのシリーズの外伝ではなく、心機一転の新章となっている[3][4]。
前述のとおり旧作の世界観とは異なるもので、百万世界と呼ばれる世界が舞台。複数の世界が並列して存在しており、それぞれの世界は「トビラ」と「回廊」で繋がっているいわゆる並行世界を基礎としている。複数の世界に同じ名前・姿・性格の人物が存在することもある。
各世界には共通してランブルタンブル族(通称「ランブル族」)と呼ばれ、珍しい商品を扱う行商種族が存在する。一般の人々には知られていないが「トビラ」を御する術を身に付けており、珍しい商品の中には「トビラ」を通って仕入れたものもあるらしい。なお、基本的に誰でも「トビラ」で別世界に行くことが出来るが、生まれ育った世界から他の世界に渡った場合は、出口として利用したトビラから入らなければ他の世界に行くことが出来ない。
本作の百万世界は、『幻想水滸伝』シリーズで出てきた百万世界と同一のものである。無数にある百万世界の中には紋章がない世界も存在しており、本作はその紋章のない世界の1つである[5]。
用語
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順序 | 書 | 出現した地域 | 備考 |
第1の世界 | 秘枢たる線刻の書 | 不明 | スクライブ族がいた世界 |
不明 | 果てなき道程の書 | 不明 | ディアドラがいた世界 |
不明 | 苛烈なる象徴の書 | ライテルシルト連合王国 | - |
不明 | 古き約定の書 | ジャナム魔導帝国 | - |
不明 | 聖なる双刃の書 | アストラシア王国 | - |
不明 | 気高き鋼鉄の書 | ルギエニク | リジッドフォーク族がいた世界 |
不明 | 青き流転の書 | ナイネニス | ポーパス族がいた世界 |
第8の世界 | 輝ける遺志の書 | フレセリアの森 | - |
第9の世界 | 猛き咆哮の書 | マルシナ平原 | フューリーロア族がいた世界 |
第10の世界 | 茫漠たる琥珀の書 | ジャナム砂漠 | - |
第11の世界 | 深き戦慄の書 | ラロヘンガ | - |
第12の世界 | 静かなる終端の書 | サイナスに似た街 | - |
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- 書
- その世界の知識が集約されたもの。知識の塊の意味で「書」と呼ばれるが、人々が本として知覚するとは限らない。本来1つの世界に書は1つずつ存在するが、世界の融合(後述)によって1つの世界に他の世界の書が現れる場合もある。協会では、その世界本来の書を真正なる一書、世界の融合によって現れた書は偽書と呼んでいる。他の世界に現れた書は本来の世界の星を宿す者(後述)の記憶が残されており、書の移った世界での星を宿す者が触れることでその一部を見ることができる。
- 星を宿す者
- その世界の行く末に関わる者。その世界本来の住民、あるいは融合によってその世界の住民となった者に限られ、偽書に触れることで残された記憶を見ることができる者のこと。偽書の記憶によって真正なる一書の支配を完全には受けず、世界の融合についても把握できる。一なる王と戦うことを宿命付けられ、星を宿す者が絶えた時はその世界は一なる王のものとなり、他の世界の一部となってしまう。
- レネゲイド
- トビラを通って他の世界に渡ったモンスターで、特殊な能力を身に付けることがあり、その場合はその世界の者では倒すことができない。類似した存在として無形の夜魔と呼ばれるモンスターが存在し、倒すことが出来るのはごく一部の者だけであり、別の世界の者では倒すことが出来ない。
- 世界の融合
- ある世界の一部が、別の世界に出現すること。融合元の世界は別の世界に出現した範囲以外は消滅し、融合先の世界では新たに現れた部分と重なる範囲が消滅する。融合の時期は基本的に真正なる一書に記されており、人々の記憶は辻褄が合うように改竄される。真正なる一書に他の世界の書で干渉することで人為的に融合を起こすことも可能であるが、その場合も同様。
- 融合の回数はそれぞれの世界の真正なる一書によって異なるのか明言されていないが、主人公のいる世界では一なる王が降臨するまでに12回と明言されている。以下は融合の順序(作中で「第○の世界」と呼ばれる)、その世界の書の名称、融合によって出現した世界などの一覧である。物語冒頭の融合(第8の世界)以降の順序については作中で語られており、最初の融合(第1の世界)でスクライブ族が出現したことも語られているが、間の6つの融合については書名・地域などは分かっているものの順序が明言されていない。
国家・勢力
- 主人公軍
- 主人公をはじめとするシトロ村の自警団の少年達が中核となり、協会の侵攻に対抗するために結束された集団。シトロ村の北方に突如として現れたフレセリアの森の遺跡を居城とする。シトロ村の東の丘の遺跡で発見された書を1つ、発足当初から有している。なお、軍団名はプレイヤーが任意で命名可能。軍団の公式名は「フィルヴェーク(ドイツ語で"たくさんの道")団」、本拠地名は「レーツェルハフト(ドイツ語で"不思議な")城」となっている。
- ひとつの道の協会
- 未来を全て見通し、人々の悩むことのない世界を目指す一種の宗教。中心都市はサイナスで、指導者はベルフレイド。全ての人々にその理想の恩恵を与えるべく、周辺国の武力併合も辞さない。サイナスの中心地にはしるべの塔が建てられており、内部には世界最大級の図書館が設けられている。この世界の融合が発生する時期が記された「真正なる一書」を有しており、他の世界の書も複数所有している。また、「司書」と呼ばれる書の収集を行なう人々が存在する。
- ジャナム魔道帝国
- 大陸東方に存在する国家。「苛烈なる象徴の書」、「古き約定の書」の二つの書を有しており(前者は元々ライテルシルトの物)、書を研究して得られた魔道の力を有する。皇都はエル・カーラル、現皇帝はダナシュ8世。反協会勢力の筆頭で、反協会同盟の盟主である。第10の世界の出現で消滅。皇都跡とサルサビルのみ残して消滅し、広大なジャナム砂漠と化した。
- サルサビル王国
- ジャナム地方南部の小国家。物語当初はジャナム魔道帝国に併合され、港町サルサビルとして貿易拠点となっていた。第10の世界の出現でジャナム魔道帝国が消滅すると、シャムスを国王とするサルサビル王国となっている。
- アストラシア王国
- 大陸西方に存在する国家。第1王女クロデキルドが率いる精強なアストラシア王室騎士団が存在していたが、2年前の協会の侵攻で王国が占領され、それ以来祖国解放を目指してジャナム魔道帝国に協力する独立剣士団「冥夜の剣士団」として活動している。属する書は剣の姿をした「聖なる双刃の書」で、代々アストラシア王家に家宝として受け継がれてきた。2つで一つという特異な書であり、また武器としての性能も極めて優れている。
- ライテルシルト連合王国
- ジャナム魔道帝国から海を隔てた東方に存在する国家で、6つの大公国による連合国家。かつて「苛烈なる象徴の書」を有していたが、ジャナム魔道帝国との抗争のさなかに奪われ、停戦してなお奪還されていない。書を研究して得られた銃の技術を持ち、銃を使う者(「猟兵」と呼ばれる)のみで構成された「ヴェルファー機関」と呼ばれる特務機関が存在する。
- ロノマクア首長国
- 大陸南西の海上を治める国家。複数の部族による連合国家で、部族議会によって運営される。現首長はカーネ・ミロハイ。その弟のカーネ・ヘキリ・アウマクアは部族議会長を務めている。
- 北辰皇国
- 大陸北方に存在する国家。他国との国交をほとんど持たず、協会に対する態度も不明。戦を神事と考える向きがあり、将軍である皇国七天将に1人ずつ、戦を神に捧げる「戦巫女」と呼ばれる女性の聖職者が付けられている。
種族・民族
- ランブルタンブル
- トビラを操る術を持ち、そのほとんどがそれを利用して世界間の交易商業を生業としている種族。少々小柄な体格で眼鏡をかけているのが特徴。常に各地を転々としており一か所の土地に留まる事は無い。それが幸いしてか、過去に世界の融合にて故郷が消滅した際にも絶滅は免れた。
- リジッドフォーク
- 北方スヴァトゴル山の都市ルギエニクに住み、非常に大きな体躯で巨人や鬼とも形容される種族。頭には1本の角が生えている。性格的にも非常に頑固で、男も女も武人のような性格揃いである。「世界はあるがままであるべき」という思想を持ち、協会の思想と共通する部分も多いことから一族を挙げて教会に属しているが、一部はそれを嫌ってルギエニクを離れ、スヴァトゴル山中に隠れ住んでいる。一族が道を誤ったとき始祖神オルドヴィークがお告げを下すとの思想がある。「気高き鋼鉄の書」を有していたが、かつて協会によってグレイリッジに移されており、それ以降オルドヴィークのお告げは起きていない。
- ポーパス
- 大きな貝殻のような街ナイネニスに住む、小柄で愛らしい容姿の種族。「青き流転の書」を有しており、巫女が継承している数百個の連珠の1つとして存在している。本来他種族にも温和な性格で争いも好まない種族なのだが、協会によって巫女の連珠が奪われて脅迫を受けているため、物語当初は人間に対して強硬的な態度を取っていた。その後主人公達によって連珠が取り戻されたことにより和解、協会との戦いに協力する。
- フューリーロア
- 第9の世界とともに現れた種族。シリーズ作品のコボルト以上に幅広い野生的な姿(狼・猫・熊など)をしており、ダイアルフ王をはじめ明るく気さくで、かつ信仰深い狩猟種族である。「猛き咆哮の書」を有しており、集落クラグバークの王の館の「精霊の御柱」に納められている。一見すると書であるとは分かりにくい、骨細工のような見た目をしている。
- スクライブ
- ノスロウの樹海の奥地に隠れ住む種族。後に協会の中心都市サイナスとなる地域とともにこの世界に現れた。外見は人間と似ているが、やや高身長かつ痩身で、肌は少し青白い。洞察力と記憶力に優れる。成人すると身体に過去の記憶を印した青い紋様を彫る伝統がある。重大な罪を犯した罪人は赤の紋様を施された上で、集落から追放される。「秘枢たる線刻の書」を有しており、長が代々独特の紋様として継承している。登場する書の中で唯一「物」の姿を取っていない書であり、他の偽書の能力発動を抑えるなど特異な点が目立つ。
辺境のシトロ村の自警団に所属する主人公は、幼馴染のマリカ・ジェイル・リウ、兄貴と慕うディルクとともに、東の丘にもさもさ退治に出かける。東の丘で主人公は、谷が突然森に変わり、見覚えのない遺跡が現れるという不思議な光景を目にする。戸惑う主人公だったが、仲間たちはさも当たり前のように振舞う。もさもさ退治を続ける主人公たちは遺跡に踏み入り、強敵に追われて最上階に追いやられるが、主人公は一冊の古びた本を発見する。