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『天使が消えていく』(てんしがきえていく)は、夏樹静子の推理小説。また、それを原作とするテレビドラマ。
天使が消えていく | ||
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著者 | 夏樹静子 | |
発行日 | 1975年6月15日 | |
発行元 | 講談社文庫 | |
ジャンル | 推理小説 | |
国 | 日本 | |
言語 | 日本語 | |
形態 | 文庫本 | |
ページ数 | 300 | |
コード | ISBN 4-06-136026-4 | |
ウィキポータル 文学 | ||
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ある幼子に愛情を注ぐ女性新聞記者と、幼子の母親との対立を描いており、物語は終始2つの視点から交互に描かれ、それが次第に近接、交差、合致する[1]。
第15回江戸川乱歩賞の最終候補に残り、森村誠一の「高層の死角」、大谷羊太郎の「虚妄の残影」とで争われた[1]。結局森村が勝ったが、そのまま埋もれさすのには惜しいという選考委員の意見が一致して異例の刊行となった[1]。その他、日本推理作家協会賞でも最終選考まで残っている。
婦人会機関紙「婦人文化」記者である砂見亜紀子は、「かの女の姿勢」という福岡県下の様々な職場の第一線で活躍する女性を紹介する連載の取材で小児心臓病が専門の女医を訪ね、そこで生後3か月の心室中隔欠損の赤ちゃん・神崎ゆみ子と出会う。彼女の笑顔をまるで天使の微笑のように感じた亜紀子は、ゆみ子のことを記事にすることを決意。記事の効果もあり、謎の男からゆみ子の手術費に使ってほしいという寄付があり、無事に手術を受けられることになる。当日は気が気でなく亜紀子は病院に駆け付けるが、そんな日にすら病院にゆみ子の母親の姿はなかった。気になった亜紀子はゆみ子の自宅を訪れ、母・神崎志保との対面を果たすが、志保は手術ができるようになったきっかけを作った亜紀子に対して礼を言う素振りすら無いばかりか「ゆみ子の手術に興味はない」「帰れ!!」と激昂する始末で、亜紀子は落胆する。
無事に退院したゆみ子は志保と2人きりの生活を始める。退院してからも相変わらずの態度である志保に構わず、亜紀子は自宅までゆみ子の様子を定期的に見に行き続けるが、亜紀子にはひどい母親にしか見えない志保に対してゆみ子は精一杯手を伸ばして慕うようなそぶりを見せ、亜紀子はそれが不憫でならなかった。ある日、いつも通り2人の家の前まで来た亜紀子は部屋の中から志保が男にすがり、ゆみ子に対して「うるさい子だねぇ!」と張り上げる声を聞く。以前、ゆみ子のことを「産みたくて産んだわけじゃない」「男の言う通り産んだのに、血が繋がっていないとわかると捨てられた」と言っていたことから、その男がゆみ子の本当の父親なのではないかと考えたが、すぐ去ってしまったため顔もよく見えず、真相はわからなかった。
それからも、部屋に入ると志保が小さい包丁を持ってゆみ子の前にいたり、志保の元に出入りする保険屋から、志保がゆみ子に生命保険をかけようとしているという情報を聞くなど、やはり志保を信用できないと感じていた亜紀子だったが、ある夜中、志保から突然「ゆみ子が殺される! あんたにもらった人形……消えてしまう……」という電話を受ける。以前ゆみ子にあげたイタリア製でブロンド髪の人形のことだろうか? わけがわからぬままとりあえず駆けつけたところ、亜紀子を迎えたのは密室状態の部屋の中で「ゆみ子をお願いします」という走り書きと共に薬で意識を失った志保であった。ゆみ子は無事で、傍らには人形もいたが、”アン”と書かれていたはずの人形の赤いペンダントはなぜか”メアリー”に変わっていた。結局そのまま志保は帰らぬ人となり、ゆみ子は志保の母の元へ引き取られることになる。
一方、博多署の巽志郎捜査一課警部補は、管内で発生した「ホテル玄海」で泊り客である谷口健策が殺された事件や、そのホテル社長の蟻川国光が変死した事件を追っており、重要参考人となる男についてアリバイ証言をしているのがバー「あざみ」のホステス・後藤ユミ(=神崎志保)であることをつかんでいた。志保の自殺を知った巽は担当刑事の真田実に自殺現場の詳細を聞きに行き、発覚のきっかけとなった亜紀子の名前を初めて聞く。
亜紀子はゆみ子に会えなくなった空虚感と、志保の自殺について悩み続けていたが、やはり死んでからすら志保の人間性を信じきれず、自殺ではなくあの以前見た男に殺されたのではないかと考え、男の素性を調べ始める。
呉服町から少し海寄りの古い貸ビルの一室にある。「婦人文化」はタブロイド版8ページの月刊誌で元々は婦人会の機関紙だったが、10年の歴史がある。女性ばかり7人で取材している。
詩人の郷原宏は「世界に誇る日本の作家・夏樹静子のすべてはこの処女作に凝縮されており、文芸評論家の亀井勝一郎が”作家は処女作に向かって成熟する”とかつて述べたように、夏樹静子はこの作品に向かって成熟し続けている」と評価している[2]。
書評家の藤田香織は、この作品を小学5年生の時に母親の鏡台にあったのを見つけて内緒で読んだ最初の夏樹作品であると明かしているが、当時は自分の子供を嫌う母親が登場するような本を自分の母親が読んでいたことが怖くて最後まで読めなかったという。しかしそのことは決して忘れられない記憶として残っており、自分が当時の母親と同じ年齢になった時に、頭の隅に残っていた“天使”というキーワードで作品を探し出し、再読した。そして、「きちんと読んでみると、重層的で胸に迫る結末が用意されている。」「何よりも、四半世紀近くの歳月を経て今なお色褪せない表現と、揺るぎのない視点に驚かずにはいられない。」と、大人になって改めて気づいた夏樹作品の魅力について言及している。[3]
この節の加筆が望まれています。 |
11月4日に「女弁護士 朝吹里矢子」シリーズ第2弾「天使の証言・女弁護士朝吹里矢子」のタイトルでテレビ朝日系列の「土曜ワイド劇場」にて放映。
9月23日、よみうりテレビ制作、日本テレビ系列の「木曜ゴールデンドラマ」にて放映。
10月30日、朝日放送(ABC)制作、テレビ朝日系列の「土曜ワイド劇場」にて「夏樹静子作家生活40周年記念作」と銘打って放映。
テレビ朝日系 土曜ワイド劇場 | ||
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前番組 | 番組名 | 次番組 |
事件(14)
(2010.10.23) |
夏樹静子作家生活40周年記念作
天使が消えていく (2010.10.30) |
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