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ジョージ・オーウェルが執筆した小説 ウィキペディアから
『動物農場』(どうぶつのうじょう、原題: Animal Farm)は、1945年8月17日に刊行されたジョージ・オーウェルの小説。『アニマル・ファーム』(永島啓輔訳版[1]、石ノ森章太郎画版[2][3])、『動物農園』(吉田健一訳版[4])とも。
動物農場 Animal Farm | ||
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著者 | ジョージ・オーウェル | |
訳者 | 平野敬一ほか | |
発行日 | 1945年 | |
発行元 | Secker and Warburg | |
ジャンル | 風刺・寓話 | |
国 | イギリス | |
言語 | 英語 | |
コード | ISBN 4-04-233401-6 | |
ウィキポータル 文学 | ||
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とある農場(「マナー農場」)の動物たちが劣悪な農場主を追い出して理想的な共和国を築こうとするが、指導者の豚が独裁者と化し、恐怖政治へ変貌していく過程を描く。人間を豚や馬などの動物に見立てることにより、民主主義が全体主義や権威主義へと陥る危険性、革命が独裁体制と専制政治によって裏切られ、革命以前よりも悪くなっていく過程を痛烈かつ寓話的に描いた物語であり[5]、ロシア革命とソビエト連邦を理想の国とみなすような「ソビエト神話」への警鐘であった[5][6][7][8][9][10][11][12]。
第二次世界大戦で連合国同士であったイギリスの当時の世論において、ソ連がドイツ軍と戦ったことへの好感と敬意が主流で、ヨシフ・スターリンが「ジョーおじさん」と親しみを込めた愛称でよばれていた風潮への挑戦であったとされる[5][13][6]。
イギリス・ウィリンドン近くにあるマナー農場(マナーは荘園(manor)の意)。農場主のジョーンズ氏はアルコール中毒の怠け者であり、農場の家畜たちの不満が溜まっていた。動物たちから尊敬される老いた雄豚メージャー爺さんは、夜な夜な行われる動物たちの集会において、人間を敵視し、全ての動物の平等と自由を謳った「動物主義」を唱える。農場の動物たちはこれに賛同し、革命歌「イングランドの獣」を歌い、反乱の熱気が高まっていく。間もなくメージャー爺さんが亡くなると2匹の若い雄豚スノーボールとナポレオンが後を引き継ぐ。彼らは動物たちを指揮してジョーンズ氏に反旗を翻し、人間たちを農場から追い出すことに成功する。農場は「動物農場」と改名され、人間を敵視し、「すべての動物は平等」などを定めた7つの掟が宣言される(これは納屋に大きな文字で掲げられる)。農場の食料は豊富であり、革命前に宣伝されていたほどではないにせよ、動物たちはジョーンズ時代よりも恵まれた生活を送れるようになる。
農場の運営方針は動物たちの集会(最高会議)の賛否によって決定されるものの、種族によって知能は様々であり、革命を指揮したスノーボールとナポレオンを代表に、知能が比較的高く数も多い豚たちがリーダーシップを執るようになっていく。スノーボールは他の動物たちに読み書きを教え、羊たちなど知能が低すぎて文字はおろか7つの掟も覚えられない動物たちのためには掟を要約した「4本脚は良い。2本足は悪い。」のスローガンを新たに作り出す。他にもスノーボールは種族ごとの委員会を組織したり、野ネズミや野ウサギなど、野生動物にも動物主義を広めて同志にしようとしたが、これらの大半は失敗する。一方のナポレオンはスノーボールの活動には興味がなく、母犬から取り上げた生まれたばかりの子犬たちに動物主義の原理を教え始める。また、豚たちは自分たちが牧場の運営に必要な存在であることを強調し、他の動物たちよりも良い食料を優先的に食べるようになる。
間もなく、ジョーンズ氏は隣接する他の農場主と共に農場を奪還しようとするが、スノーボールと雄馬ボクサーの勇猛果敢な活躍によって失敗する(後に「牛舎の戦い」と呼ばれる)。これによってますます動物たちの支持を高めるスノーボールは、さらに豊かになるために風車の建設計画(近代化の比喩)を発表する。この頃、スノーボールとナポレオンは農場の運営方針を巡って常に対立しており、集会では演説の上手いスノーボールが支持される一方、ナポレオンは会議の合間に自分の支持者を増やすことに長けていた。スノーボールは風車計画について建設中の1年間は大変なものになるが、完成後は週3日の労働で済むようになると言い、ナポレオンは今は食糧増産が必要で風車を建設しようとすれば餓死者が出ると批判する。また、この頃からスノーボールが集会で演説しようとすると、羊たちが「4本脚は良い。2本足は悪い。」と連呼し、妨害するようになる。そして、ついに風車の建設計画を決める日、いつものように雄弁に語るスノーボールを動物たちは支持する。しかし、そこに9匹の犬が襲いかかり、スノーボールは追い立てられて農場の外へ逃亡する。犬の正体はナポレオンが動物主義を教え込んだという仔犬たちであった。
スノーボールがいなくなると、ナポレオンはより「動物主義」を達成するためとして農場運営の方針を決める最高会議を全員、自分を支持する豚たちに変更する。これに反対しようとした動物たち(一部の豚も含む)もいたが、抗議は犬や羊たちに妨害されてしまう。事実上のリーダーとなったナポレオン体制下では、豚たちは家屋に住み始め、ベッドに寝たり酒を飲み始めたりする。これは7つの掟で明白に禁じられていたことのため、一部の動物たちが抗議するが、掟は密かに文言が足されて書き換えられており[注釈 1]、それを元に若い雄豚スクィーラーが先頭だって説明や反論を行い、動物たちを納得させる。
さらにナポレオンは、自らが批判していたはずの風車建設計画を実行に移すことを宣言し、さらに、その資金を得るためとして禁止されていた人間との取引の開始も始める。当然、抗議の声が挙がるも、そもそも風車計画はナポレオンが計画していたものをスノーボールが盗んだなどとして、やはりスクィーラーに丸め込まれる。新しい風車計画は、傍目には粗雑だが、スノーボールのものより良いと喧伝され、動物たちはそれを信じて懸命に働く。しかし、猛烈な嵐の後に建設途中の風車は崩壊する。ナポレオンとスクィーラーは、これはスノーボールの仕業だと主張し、彼は革命を破綻させようとしていると言う。「牛舎の戦い」を知る動物たちはそんなはずはないと反論するが、いつの間にか勇敢に戦ったのはナポレオンということにされ、しかもスノーボールはジョーンズ氏に協力していた裏切り者だったということになる。ナポレオンの名を挙げる時は「我らの指導者である同志ナポレオン」と尊称することが当たり前となり、革命歌「イングランドの獣」は禁止され、ナポレオンを称える歌が推奨されるようになる。成功や幸運な出来事はすべてナポレオンのおかげであり、悪いことはスノーボールの陰謀ということになる。それでも多くの動物たちはジョーンズ氏に飼われていた時代よりはマシだと信じている。
壊れた風車を立て直すためとして食料は前より減り、労働はより過酷となる。それでも風車が完成すれば生活は豊かになると信じ、動物たちは必死に働く。その一方で豚たちは変わらず満足な食事を受け、肉体労働は行わない。その中で、隣の農場主フレデリック氏が農場を攻撃し、風車が爆破される。老いた馬ボクサーなど革命初期からの功労者が大怪我を追うなどの損害を受けるも、なんとかフレデリック氏の撃退に成功する。負傷中でもボクサーは働こうとするが、無理がたたってもはや働けないほどに身体を壊してしまう。すると、すぐにボクサーはトラックで農場外へと運ばれてしまう。トラックには食肉工場とあり、動物たちは豚たちに抗議するが、スクィーラーは動物病院に送られると説明し、口達者な彼に丸め込まれてしまう。後日、スクィーラーはボクサーは病院で息を引き取ったと説明する。しかし、実際には当初の動物たちの懸念通り、食肉工場へと送られ、さらにその代金は、ナポレオンとその側近たちがウィスキーを買う資金に充てられていた。
数年後、寿命の短い動物たちは死んで代替わりし、豚たちを除けば革命前の生活を知っている者は少なくなっていた。風車は再建され、さらに別の風車も建設されるなど、農場は十分な収入を得られているが、かつてスノーボールが約束した高度な設備(電気照明や暖房、流水の水飲み場など)は忘れ去られている。農場は豊かなのに、自分たちの生活は豊かにならないことに動物たちは不満を示すが、ナポレオンは贅沢な生活は動物主義の精神に反すると言い、懸命に労働し、質素な生活を送ることが幸福だと言う。裕福なのは豚たちと犬たちで、傍目には働いていないように見えるが、スクィーラーは我々は「ファイル」や「報告書」の作成といった重要な仕事をしていると言う。しかし、作成された書類は夜のうちにはかまどで燃やされ、動物たちはどうしてそれが重要な仕事なのかはわからない。いずれにしても豚たちと犬たちの労働は食料の生産には何ら寄与せず、それでいて彼らの食欲は旺盛である。
ある日のこと、豚たちは2本足で歩き初めそれを見た動物たちは驚愕する。スクィーラーに誘導された羊たちは「4本脚は良いが、2本足はさらに良い」と連呼する。いつのまにか7つの掟は、ただ1つ「すべての動物は平等だが、一部の動物はさらに平等」に書き換えられている。ナポレオンは空いた前足で鞭を持ち、さらに豚たちは服を着始めた。農場の名前はマナー農場に戻った。
ナポレオンは近隣の牧場主(人間)たちを夕食会に招き、トランプに興じる。ナポレオンと人間たちは互いの経営手腕を称えるが、そのうちにトランプでいかさまをしたと互いを非難し合う。その様子を動物たちは、建物の外から見るが、窓から漏れるナポレオンの影はしだいに人の影と見分けがつかなくなる。
種族としては人間は支配階級(ブルジョワジー)や守旧派、豚は共産主義の指導層、犬は秘密警察、他の動物たちは労働者(プロレタリアート)に比喩される。
出版された当時の評価は必ずしも良いものばかりではなかった。アメリカのニューリパブリック誌での書評においてジョージ・ソウルは失望を表明し、「困惑し、悲しんだ。全体的に冴えない印象を持つ。寓話は直接的によく言われていることを不器用に言うための古びた装置に過ぎない」と述べた。ソウルは動物たちが現実世界の事柄と十分にリンクできていないと考え、「この本の失敗は(商業的にはすでに大きく成功している)、風刺の中身が作者が経験したことではなく、むしろあまりよく知らないであろう国に対する固定観念に依るものだからだ」と指摘する[14]。
1945年8月24日のガーディアン紙では「少数による多数支配に関する愉快でユーモラスで苛烈な風刺」と評した[15]。同じ日のトリュビューン紙に掲載されたトスコ・ファイベルの書評では「ある国と、私達の背後にあるかもしれない時代の幻想についての穏やかな風刺」と評された。ジュリアン・シモンズは、9月7日に「少なくもトリュビューン紙は、特定の国家、つまりソビエト連邦に対してまったく優しくない風刺だと認識するべきではないか? 評論家はナポレオンをスターリンに、スノーボールをトロツキーに同一視し、政治的根拠に基づいて著者に好意的あるいは批判的な意見を表明する勇気を持つべきだ。100年後には動物農場は単なるおとぎ話になっているかもしれないが、今日においては政治的な風刺であり、かなりのポテンシャルがある」と述べた。
これら初期のもの以来、動物農場は何十年もの間、多くの論評の対象となってきた[16]。
1952年から1957年までCIAは「Aedinosaur作戦」として、小説のコピーを積んだ何百万もの風船をポーランド、ハンガリー、チェコスロバキアに送ったが、空軍はこれらを撃墜するよう命じられ、発見された書籍はすべて破棄された[17][18]。
豚のスノーボール、ナポレオン、スクィーラーは、メージャー爺さんのアイデアを「完璧な思想」に昇華させる。これは共産主義の寓意として動物主義と命名される。作中でナポレオンとスクィーラーは、自分たちが権力を握ると早々に人間が行う活動(飲酒、ベッドで寝る、取引)を始めたが、これらは「7つの掟(七戒、Seven Commandments)」において明示的に禁止されていた。この7つの掟を変更する者としてスクィーラーが登場している。これはソビエト政府が自分自身と社会をについての認識をコントロールするために歴史を修正していたことを比喩している[19]。
元の掟は以下の通りであった。
1. 2本足はすべて敵である。 2. 4本脚と翼を持つ者はすべて友人である。 3. 動物は服を着てはならない。 4. 動物はベッドで寝てはならない。 5. 動物はアルコールを飲んではならない。 6. 動物は他の動物を殺してはならない。 7. すべての動物は平等である。
これら7つの掟は、作中でスノーボールにより「4本脚は良い。2本足は悪い」というスローガンに集約される。これは主に羊たちが使用し、動物間の議論などで混乱をもたらすことがよくある。
後にナポレオンとその一派の豚は、違反しているという告発から自分たちが免れるために、いくつかの掟を密かに改訂していく。作中で明らかにされる変更された掟は以下の通りである。
4. 動物はシーツのあるベッドで寝てはならない。 5. 動物はアルコールを過剰に飲んではならない。 6. 動物は理由なく他の動物を殺してはならない。
最終的には7つの掟は「すべての動物は平等だが、一部の動物はさらに平等」の1つに書き換えられてしまい、集約されたスローガンも「4本脚は良い。2本足はさらに良い」に置き換えられる。本来、7つの掟は動物を人間に対して団結させ、また人間の邪悪な慣習に従うのを防ぐことで動物農場内の秩序を守ることにあったが、これを豚たちが破り、人間に近づいていくことを皮肉っている。
この掟の改訂を通して、オーウェルは政治的な教義がいかに順応性のある宣伝になるかを示している[20]。
タイトル | 出版年 | 出版社 | 文庫名 | 訳者 | ISBNコード | 備考 |
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アニマル・ファーム | 1949年 | 大阪教育図書 | 永島啓輔 | 著者の日本語表記は、ジョーヂ・オーウェル。 | ||
動物農場 | 1956年 | 研究社出版 | 英文学ハンドブック 「作家と作品」シリーズ | 平野敬一 | ||
動物農場 | 1957年 | 国際文化研究所 | エンゼル・ブックス | 牧野力 | ||
動物農場 | 1957年 | 南雲堂 | おとぎばなし(現代作家シリーズ) | 佐山栄太郎[注釈 2] | 電子書籍(グーテンベルク21)で再刊 | |
動物農園 | 1966年 | 中央公論社 | 世界の文学 (53 イギリス名作集・アメリカ名作集) | 吉田健一 | 改訂新版『動物農園』ヒグチユウコ・画、中央公論新社、2022年 | |
動物農場 | 1969年 | 筑摩書房 | 世界文学全集 | 工藤昭雄 | ||
動物農場 | 1972年 | 角川書店 | 角川文庫 | 高畠文夫 | 改版1991年、電子書籍で再刊 | |
動物農場 | 1989年 | 旺史社教科書部 | 関口正和 | |||
動物農場 : おとぎばなし | 2009年 | 岩波書店 | 岩波文庫 | 川端康雄 | ISBN 978-4003226247 | 電子書籍で再刊 |
動物農場 | 2013年 | 筑摩書房 | ちくま文庫 | 開高健 | ISBN 978-4480431035 | 元版は『今日は昨日の明日 ジョージ・オーウェルをめぐって』筑摩書房 1984年 |
動物農場:新訳版 | 2017年 | 早川書房 | ハヤカワepi文庫 | 山形浩生 | ISBN 978-4151200878 | 電子書籍で再刊 |
絵物語 動物農場 新訳版 | 2023年 | パイインターナショナル | 金原瑞人 | ISBN 978-4756255600 | カンタン・グレバン画 |
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