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『ドラッグオンドラグーン3』(DRAG-ON DRAGOON 3)は、2013年12月19日にスクウェア・エニックスから発売されたPlayStation 3用ゲームソフト。
『ドラッグオンドラグーン』(以下『DOD』)シリーズの三作目となるアクションRPG。2005年にリリースされた前作『ドラッグオンドラグーン2 封印の紅、背徳の黒』から約8年半ぶりの新作であり、シリーズ10周年の記念作品にもなっている。それを記念して通常版の他に「DRAG-ON DRAGOON 10周年記念BOX」という限定版も発売されており、こちらにはゲームソフトのほかに、過去作の設定資料を再録した書籍『ドラッグオンドラグーン ワールドインサイド』やDLCコードなどが収められている[1]。
2013年3月14日に年内発売を目標に開発中であることがスクウェア・エニックスから発表され[2]、同年6月27日に詳細な発売日は2013年10月31日であると報じられていたが[1]、2013年8月22日になって「クオリティアップを図るため」として発売の延期が発表され[3]、約二ヶ月後の2013年12月19日に発売されることとなった。
なお開発は前作までを担当したキャビアではなくアクセスゲームズへと変更されているが、ヨコオタロウ(『DOD1』ディレクター)や柴貴正(『DOD1』『DOD2』プロデューサー)、藤坂公彦(『DOD1』『DOD2』キャラクターデザイン)といったメインスタッフは続投している。
シリーズの特徴とも言える陰鬱で凄惨なシナリオは受け継ぎながらも、これまでとは違ってコミカルでギャグの要素が強い展開や演出が多く見られる。
主人公ゼロを操作し、ステージ上に配置された敵を殲滅していくことで物語を進めていく。地上戦では使徒を最大2人までNPCとして同行させて戦うことができるほか、地上決戦と上空戦ではドラゴンに騎乗して戦うことができる。
『DOD1』同様にワールドマップと呼ばれるものは無く、「ブックセレクタ」から任意の「ストーリーミッション」もしくは「アコールの依頼」と呼ばれるミッションを選択して進めるというステージクリア制が取られている。なおステージの内容は広大なマップに出現する敵を撃破していくという所謂「無双系アクション」だった『DOD1』『DOD2』とは違い、一本道となっている。ステージはいくつかのブロックに分けられており、現在居るブロックの敵を殲滅すると次のブロックへ進める、というような流れとなっている。
戦闘は地上戦、地上決戦、上空戦の3種類に大きく分けられる。地上戦はフィールド上に設置された敵とのリアルタイムバトル、地上決戦はドラゴンに騎乗した状態での地上戦、上空戦はドラゴンに騎乗して行う奥スクロールシューティングとなっている。
なお『DOD1』では低空戦(本作における地上決戦)におけるドラゴンへの騎乗は任意で行うことができたが、本作では地上戦と地上決戦は明確にステージが分けられており、任意での乗り降りはできない。
遠い昔、世界は暴虐な領主たちによって圧政が敷かれ、多くの人々が苦しめられていた。だがある時、「ウタウタイ」と呼ばれる五人の女性が現れる。彼女たちは「ウタ」を歌うことで様々な魔力を行使できる特殊な力の持ち主だった。五人のウタウタイたちはその力で各地の領主を次々討伐し、やがて世界に平和をもたらした。彼女たちは人々から女神「ウタヒメ」として崇められ、領主に代わり各国を統治することとなる。
だがそれからしばらく経ったある日、ウタヒメたちの姉であるゼロが突如白いドラゴンと共に姿を現す。彼女は自分の妹たちを全員抹殺しようと目論んでおり、そのためにウタヒメの筆頭であるワンが治めている教会都市を襲撃する。しかしワンを始めとする妹たちのウタによってドラゴンの攻撃は防がれ、ワンが従える黒いドラゴン、ガブリエルによって白いドラゴンは致命傷を負い、ゼロも重傷を負ってどこかへと姿を消した。
教会都市の襲撃から約一年後。白いドラゴンの転生体ミハイルと共に海の国に潜伏していたゼロは、再び妹たちを殲滅する戦へと臨もうとしていた。
最初の標的は同国を統治していた末妹ファイブ。ミハイルと協力して彼女を撃破したゼロは、彼女の使徒ディトを仲間として引き入れ、次なる標的フォウの元へと向かう。
フォウを探して山の国を訪れたゼロ一行は、同国にある要塞を襲撃する。しかしそこにフォウの姿はなく、彼女が既に飛空艇で脱出していたことを知る。ゼロはミハイルを駆って後を追い、フォウを撃破。彼女の使徒デカートを仲間として引き入れる。
次なる目標はスリイ。彼女が治める森の国へと入ったゼロ一行は、そこでスリイの使徒オクタと出会う。彼はスリイから離反し、ゼロの側に付くという。オクタを引き入れたゼロは、彼に案内されてスリイの元へとたどり着く。そうしてスリイを撃破するゼロだったが、突如としてミハイルが暴走。動揺しているゼロたちの前にトウの使徒セントが現れ、ミハイルを連れ去ってしまう。
ミハイルの奪還とトウの殺害を目指し、ゼロ一行は砂の国へと向かう。そこで無事にミハイルを救出した一行は、トウとセントを追って砂の神殿へ入る。神殿の奥で出会ったトウは精神を病んでおり、セントの力で無理やり戦うも、あえなくゼロに撃破される。トウを失ったセントはゼロ一行に加わる。
こうして四人の妹を撃破したゼロは、最後の標的ワンが治める教会都市へと向かう。
過去作同様に本作もマルチエンディング方式を採用しており、物語は複数の分岐と結末を見せる。
「ウタヒメ」とも呼ばれる特殊能力者たち。ゼロを含めた6姉妹だとされている。ゼロの右目に咲く「花」の力によって生まれた彼女のコピーだが、外見や有している性格・記憶などは各自で異なる。「花」の力の代償として性欲が人一倍強いことに加え、身体の一部が異常発達しているという特徴がある。かつては圧政を強いる領主を討伐せんと世界各地を旅していたが、それが終わった現在はそれぞれが海・山・森・砂漠の国と教会都市を治めている。
ウタウタイに従う戦士たち。全員男性で総じて常人より高い戦闘力を有しており、さらにウタの力を借りることで天使(魔獣)を召喚することもできる。その正体はウタの力を与えられたことで人の形を得た白い鳥。 自分の主君たるウタウタイの護衛のほか、(フォウとデカートのような特殊な関係を除き)彼女らの欲望のはけ口になるという役割も持っている。また自由意思はあるもののウタウタイの意志・命令に逆らうことはできない。ただしゼロは例外であり、どの分岐においてもその気になれば簡単に離反できる。
本作のみならず、『DOD』シリーズは全て「西暦856年にイベリア半島で起きた『大災厄』によって分岐した多数の世界のうちの一つ」だとされており、暦には西暦が用いられている。また作中で使用されている地図はヨーロッパを回転させたものとなっており、現実と共通する地名こそ出てこないものの、同地域が舞台だとされている[注釈 2]。
本作では西暦997から西暦1000年あたりまでの出来事が描かれているが、これは『DOD』シリーズとしては最も古い時代の出来事となっており[注釈 3]、後の作品へと繋がる設定などがいくつか生まれている。
なおプレイヤーが生きているこの世界も多元世界の一つであり、他の世界と同様にアコールから観測されている可能性が示唆しされている[5]。ここではプレイヤーたちの世界を現実、現実の時代を現代と呼称して扱う。
本作の音楽は関連作『ニーア ゲシュタルト/レプリカント』にサウンドディレクター・コンポーザーとして参加していた岡部啓一と彼率いるMONACAが担当。同作の楽曲は高い評価を得ており、その反響を受けての指名であった[9]。
ウタウタイが相手となるボス戦ではロック調のボーカル曲が劇伴として使われる。なお、それらの曲のボーカルを担当するのは『YoRHa』名義の女性アーティストである。
評価 | ||||||||||||||||||||||||||
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日本では発売初週に114,024本で4位の売り上げだった[19]。2014年5月時点で150,866本売り上げた[20]。電撃オンラインで62位にランクインした[20]。ファミ通クロスレビューでは9、9、8、8の34点[13]。Metacriticでは「average」と判定された[10]。Anime News Networkのトッド・シオレクは本作を2014年のGame of the Yearに選んだ[21]。
ストーリーは複数のレビューを受けた。ファミ通は一般的に世界観とキャラクターのかけあいを賞賛した[22]。Destructoidのクリス・カーターはストーリーを彼に「把握することを」強制したと言ったが、キャラクター同士のかけあいが面白いとした[11]。Game Informerのキンバリー・ウォレスは興味深い画面がいくつかあったが「ストーリーやキャラクターは多くの誤解を招く」と言い、それほど熱心ではなかった[14]。IGNのメーガン・サリバンは主人公について「うまく表現できていない」と言い、ストーリーのテンポが遅く、過去作のように使命に依存していると批判した[17]。GameSpotのハイジ・ケンプスは一般的のそのジャンルで楽しめたことを賞賛、プレイヤーの多くが遭遇したストーリー分岐に焦点を当て、GamesRadarのベッキー・カニンガムはストーリーについて「プレイする主な理由で、特にお堅くなくダークコメディで中世のファンタジーのようだ」と言った[16][15]。Eurogamerのクリス・シリングはゼロの特性を賞賛、本作は「ジェットブラックコメディ」のようでニーアよりも冴えているとした[12]。
前作と違い、ゲームプレイは賞賛された。ファミ通は同ジャンルのゲームと違った特徴が多くはないが肯定的だった[22]。IGNのサリバンはグランドアスペクト、特にウタウタイモードを賞賛したがぎこちないコントロールレイアウトによってドラゴンのゲームプレイが悪化したと批判した[17]。GamesRadarのカニンガムは戦闘におけるキャラクターと敵のバランスや武器の切り替えを賞賛、ドラゴンのゲームプレイについては混在しており、「プレイヤーたちを先頭でキープさせる」と言った[16]。Destructoidのカーターは真・三國無双より早くて滑らかなバージョンがアクションゲームプレイとして「好きな点」と言い、GameSpotのケンプスはドラゴンのセクションを斬新だがシンプルで全般的の満足していて「必ずいい設計とは限らないが歓迎する」と述べた[15][11]。Game Informerのウォレスは多くのシステム面で肯定的だったがレベル設計及び予測可能な敵の動きによってそれがうまくいかないのと述べた[14]。Eurogamerのシリングはディーエムシー デビルメイクライと真・三國無双シリーズと合わせて比較して簡単な地上ベースのゲームプレイを楽しんだが、ドラゴンのゲームプレイはもっと楽しいと言い[12]、ゼロと仲間の貧弱なAIを批判した[16][15][14][17]。
グラフィックとレベルデザインは一般的に批判された。カニンガムはストーリーと比べて環境は「非常に柔軟」と言ったが、ウォレスは一般的にレベルとキャラクターデザインを批判しが、ムービーのカットシーンは改善されたとしている[16][14]。カーターはキャラクターデザインを賞賛、他のビジュアルも「間違いなく美しい」と言った[11]。サリバンは彼女の批判する点としてレベル設計やカラーパレットをPlayStation 2時代のゲームと比較して一般的に否定的だった[17]。シリングはよくあるゲームのルールを風刺するための開発者は試みたテクスチャ、グラフィック、キャラクターデザインを批判した[12]。しばし起こるフレームレートの低下、不安定なカメラ、スクリーンティアリングといった技術的問題がよく挙げられた[12][16][15][11][14][17]。
電撃PlayStationでは100、90、85、95の370点[18]。レビュアーは武器ごとのコンボや武器の切替がスムーズな今までの不親切だったものとは違う爽快なアクション、難易度調整ができないならがコンティニューすると主人公が少し強くなるシステム、音楽を賞賛、シナリオについては狂気をはらんだブラックコメディや性的なネタについては賛否がわかれるかもしれないため本作は万人向けかとすると疑問符がつくが慣れが解決するとした他、ステージ間のロード時間が長めだがいずれ慣れるとしたことや、カメラワークの問題を指摘した[18]。
原作 - 映島巡 / 作画 - IsII / 監修 - ヨコオタロウ / 出版 - スクウェア・エニックス / 全3巻
『月刊ビッグガンガン』にて2013年Vol.05から2015年Vol.01まで連載された。全16話。『ドラッグオンドラグーン3』の前日譚となる物語であり、ワンたちが世界各地の領主を討伐する旅をしていた頃の様子が描かれている。一見して萌えやコメディを前面に押し出しているが、その実本編を髣髴とさせる陰惨で過激な描写が見られる。
脚本 - 映島巡 / 漫画 - ZET / 監修 - ヨコオタロウ / 出版 - スクウェア・エニックス / 全3巻
『ヤングガンガン』にて2013年6号から2014年16号まで連載された。全21話。『ドラッグオンドラグーン3』のA分岐の後日談であり、『ドラッグオンドラグーン1.3』へと続く物語となっている。なお単行本では各話の間にヨコオらスタッフによる対談が記載されており、そこで過去作の設定などが明かされている。
執筆 - 映島巡 / 原案 - ヨコオタロウ / 監修 - ヨコオタロウ、名取佐和子
『ドラッグオンドラグーン3』公式サイト、または『ドラッグオンドラグーン ノベルプレリュード』に掲載された小説郡。全14編。作品集としての名称は無いため、ここでは仮称として「公式小説」と呼ぶ。
「ワン 鏡よ、鏡」を除く全ての作品が『DOD3』本編の前日譚となっており[注釈 7]、本編では深く描かれなかったウタヒメたちと使徒の関係や、彼らの性格を垣間見ることができる。
KADOKAWA/アスキー・メディアワークスより出版された書籍『ドラッグオンドラグーン3 設定資料集+ザ・コンプリートガイド』に掲載されている小説。全7編。「『ドラッグオンドラグーン3』のA分岐から繋がった場合の『DOD1』」が描かれており、「天使の教会」は存在するものの、「契約」という概念が存在していない。
著 - 映島巡 / 監修 - ヨコオタロウ / 出版 - スクウェア・エニックス
本作の小説版。基本的な展開は本編のD分岐と近しいが、A分岐にあったワン(弟)によるゼロの殺害や「天使の教会」の設立がなされたり、B分岐で生まれた契約の概念も合わせて登場するなど、ほぼ全ての分岐の内容を包括したような物語となっている。また、これらの要素に加えて「封印の女神制度」や「大いなる時間」の話題が出ることから、『DOD3』で描かれた結末の中では最も矛盾なく『DOD1』へと繋がる物語となっている。
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