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ガンダムシリーズの登場兵器 ウィキペディアから
サザビー (SAZABI) は、「ガンダムシリーズ」に登場する架空の兵器。有人操縦式の人型機動兵器「モビルスーツ (MS)」のひとつ。初出は、1988年に公開されたアニメーション映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』。
作中の敵側勢力である新生ネオ・ジオン軍の総帥シャア・アズナブルの専用機。特殊な人間であるニュータイプ用に開発された高性能機で、歴代のガンダム作品に登場するジオン系MSの集大成とされる[1][2]。作中のMSのなかでも大柄な体躯と、シャアのパーソナルカラーである赤い機体色が特徴。背部上段に装備された2基のコンテナには、「ファンネル」と呼ばれる遠隔誘導ビーム砲台を合計6基搭載している。劇中終盤において、主人公アムロ・レイが搭乗するνガンダムと死闘を繰り広げる。
本記事では、小説『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』でのサザビー的位置づけにある機体「ナイチンゲール」、映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』にサザビーのポジションで登場する予定だった機体「ナイチンゲール(永野護版)」、漫画『機動戦士ムーンガンダム』に登場する原型機「バルギル」とその改修機「ムーンガンダム」についても記述する。
メカニックデザインは出渕裕が担当。永野護の降板で急遽メイン・メカニックデザイナーに就任したことで、限られた期間でデザインすることになった[3]。
シャアがそれまでに乗ってきた機体の集大成として考えられたデザインで、西洋甲冑のイメージを取り入れてまとめられている[4]。頭部や角の形は『機動戦士ガンダム』でシャアがかぶっていたヘルメットのイメージで、フェイス部分は百式の顔、そして重MSということでジ・Oの雰囲気も取り入れている[4]。胸部にコックピットがあるつもりでデザインしたが、監督の富野由悠季は頭部をコックピットにするつもりであることが絵コンテの段階で判明する[5]。その後、頭部コックピットは納得できるデザインにできたが、そのサイズから逆算すると[5]相当巨大なMSとなるにもかかわらず機体設定には反映されず、劇中でもνガンダムと同程度のサイズに描写されている[4]。爆雷型のファンネルから羽根が開くというギミックは、アニメで動いた時により面白く演出できるようにと出渕が考えたもの[4]。
企画段階の名称は「ザ・ナック」だったが、同名のテレビゲームソフトが存在したため、取りやめられた[6]。
新生ネオ・ジオン総帥シャア・アズナブルの搭乗機。基礎設計はハマーン・カーン時代の旧ネオ・ジオン軍ニュータイプ研究機関が担当しているが、製造と実験用の施設が不足していたことから、旧ジオン公国と縁の深いグラナダ工場を有するアナハイム・エレクトロニクスに製造が委託される[8][2]。また、開発には数々の戦乱の中でシャアの乗機を造り上げてきたニュータイプのエンジニアであるアルレット・アルマージュも携わっている[9]。
当初はギラ・ドーガをベースとしたヤクト・ドーガの開発が進められていたが、基礎骨格であるムーバブル・フレームのサイズがサイコミュ機器を内装するのに不足していたため、試行錯誤の末に要求に適合したサイズをもつサザビーが新規に開発される。当初はMAサイズの機体となる案も存在したが、のちにその案はα・アジールに引き継がれる[2]。
内部構造の一部にはヤクト・ドーガにも採用されたサイコ・フレームを配置し、高い追従性を獲得[10]。サイコ・フレームは機体の軽量化とにも寄与し、軽量かつ高強度の新ガンダリウム系装甲の採用と相まって、各部に推進器を増設可能なほどのスペースの余裕も生まれている[1]。バックパックのスラスターは3基で初期型のリック・ドム1機分に相当する推進力を発生し、下段左右に接続された2基のプロペラント・タンクによって最大戦闘出力時間が90秒以上延長されている[2]。
四肢の完成度も高く、徒手空拳での格闘戦も想定されている。ネオ・ジオン総帥がみずから搭乗する機体であることから、脚部は余分な機能を排した耐久性重視の構造となっている[2]。コクピットは頭部に内蔵されており、脱出用の分離機能と推進用アポジモーターによって、被撃墜時の早急な戦線離脱が可能[10]。メインカメラにはモノアイが採用されているが、これはグリプス戦役時代の機体に採用されていたものに改良を加えたものである[8]。
ジェネレーターは内蔵型メガ粒子砲の稼働に対応した高出力型を採用しており、分類上は高火力型の第4世代MSに相当する[10][11]。機体色は当初よりシャアの搭乗を想定していたために赤を基調とした赤系統で塗装されている[12][注 1]。機動力や運動性を重視したνガンダムと比較した場合、サザビーは攻撃力を重視した対照的な機体である[11]。
物語冒頭から最終盤までシャアの愛機として活躍。序盤ではアムロ・レイが乗るリ・ガズィを圧倒し、ロンド・ベルがアクシズを破壊するために放った核ミサイルを全弾撃墜する。
サイコフレーム技術の横流しによってほぼ互角の性能となったνガンダムとの一騎討ちでは、双方が武器を失って格闘戦となった果てにサザビーは背部からのνガンダムの攻撃に遭い、アクシズの表面に激突する。この際に脱出装置が作動し、射出されたコックピット・ブロックはトリモチランチャーを用いたνガンダムに捕らえられ、地球へ降下していくアクシズの表面に押し付けられる。そして、サザビーのコックピットとνガンダムのサイコ・フレームが共振現象を引き起こし、奇跡を起こすこととなる。
配信アニメ『機動戦士ガンダム Twilight AXIS』では、アクシズの表面に擱座した姿で登場。本作では成り行きからアクシズを訪れたアルレット・アルマージュが本機から引き出したシャアのIDを用い、モビルアーマー (MA) のアハヴァ・アジールを起動させることとなる。
宇宙世紀とは異なる世界観のゲーム『バトルロボット烈伝』では、最終ボスとして2機が登場。転写された「ブランチ戦士」であるシャアのほか、ゲルスター帝国軍のエレノア=バラージュが搭乗する。両機とも敗北したあと、エレノアがみずからの命を捧げることでシャア機が強力な「H・サザビー」として復活する。ユニットのグラフィックはひと回り大きくなっており、ハイパー化が示唆されている。
小説『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア 前編』で登場。作中では、単に「サザビー」としか呼称されない。
ラー・ザイムから出撃したアムロのジェダを発見したことをライルから聞かされたシャアは、ナナイ・ミゲルを同乗させて出撃する。サザビーはテスト中の状態だったため、正式なコックピット・コアを装備しておらず、従来のMSのコックピットの位置と同様、腹部に複座のコックピット・コアを取り付けている。サザビーの仮設コックピットに使われている360度モニターは、ギラ・ドーガの流用だが、性能は悪くなかった[19]。
戦場でアムロ機と遭遇したシャアのサザビーは背後を取りつつ「性能は圧倒的にこちらが上だ」と警告をおこない、それを聞いたアムロはサザビーの火力も出力も圧倒的と見てジェダでは簡単に敗北すると理解して、交戦はおこなわれない[20]。シャアはアムロへ宣戦布告すると、サザビーに急速加速をかけて、星々の光の間に消えていった。今の夢のような再会が本当のものかと疑うアムロの脇で、カニンガムの搭乗したジェダが追撃しようと数本のミサイルを発射するが、静止しようとしたアムロの言葉が言い終わらないうちにミサイルは前方の空域で全弾狙撃される[21]。
模型誌『B-CLUB』30号にて、『B-CLUB』28号に掲載された出渕裕によるサザビーの初期デザインが、上記小説版のテスト中のサザビーに相当する「MSN-04X サザビー・プロトタイプ(試作型)」として立体化された。出渕による初期デザインでは、右腕に大型ハンド式メガ粒子砲が装備されているほか、腹部アーマー(後方)にキュベレイ式の試作型ファンネル・コンテナを装備している。背面にはプロペラント・タンクを搭載。小林とおるによれば、頭部はシャアのヘルメットをイメージして、フェイスマスクは百式を取り入れるつもりだったと考察している[22](決定稿ではフェイスデザインは変更されている)。また、模型作例では小説の設定と同様に、コックピットは腹部に複座型のものを仮設しているとされている。
スマートフォンゲームアプリ『機動戦士ガンダム U.C. ENGAGE』のイベント「アムロシャアモード」にも登場。型式番号は不明だが、名称は「サザビータンデム型」とも呼ばれる[23]。胸部中央下部が膨らんでおり、腹部メガ粒子砲は装備されていないが、それ以外は完成機と変わらない。ナナイが同乗し、シャアとアムロのやりとりも小説版を踏襲するが、アムロはリック・ディジェに搭乗しており若干の交戦もあり、またミサイルを発射するのはベースジャバーとなっている。
漫画『機動戦士ムーンガンダム』に登場。地球寒冷化作戦を前提にテストされていたサザビーの仕様のひとつ[24]。
のちの完成型とは異なり、ギラ・ドーガ用のコックピットを複座化したうえで腹部に仮設しており、頭部もヤクト・ドーガの発展型を採用している。当初はヤクト・ドーガと同出力の一世代前のジェネレーターを搭載していたが、シャアの要求水準を満たさなかったために特注の大型ジェネレーターに交換される。このジェネレーターを搭載するために巨大なスペースを要したため、胸部コックピットは脱出ポッドシステムを伴って頭部に移設され、ここで完成型の仕様となる[24]。
武装の大半は完成型と同じだが、手持ち火器は長射程で単発の威力が高いロング・ライフルが設定されている[24]。
近藤和久によりアレンジを加えられたデザイン。近藤の漫画作品に登場。名称はムック『ホビージャパン8月号別冊 機動戦士ガンダム「新世代へ捧ぐ」』による。
サザビーを通常指揮官用として試験的に生産した機体。ファンネル・ポッドを廃してウェイト・バランスを調整し、地上での運動性が高められている。さらに全身の装甲を大型化、火力も強化されている。89機が生産され、北米大陸やアジア・アフリカ方面と広く配備されている。武装はスペックに記されていないものの原型機と同様のシールドの携行が確認されており、外観から腹部メガ粒子砲も残されている(使用例は確認できない)。塗装はオレンジやオリーブドラブを基調とするものや迷彩塗装など4種類が確認されている[27]。
ららぽーと福岡の開業に合わせ製作された実物大νガンダム立像の先行PVに登場(型式番号:MSN-04FF[28])。名称はリアルグレード (RG) やBB戦士といったプラモデルの商品名における表記であり、『ガンダムブレイカーモバイル』や『機動戦士ガンダム U.C. ENGAGE』などのゲームでは「サザビー [THE LIFE-SIZED ν Gundam STATUE]」と表記される。
本体は通常のサザビーと変わらないが、ネオ・ジオン技術陣とAEグラナダ支社が開発した2基1対の大型ビット[29]「ダブル・ホーン・ファンネル」を装備する[28]。ロングレンジ・ライフルと同様に、地球寒冷化作戦の長期化を想定して建造された兵装のひとつであり、νガンダム (RX-93ff) のロングレンジ・フィン・ファンネルに対抗するための兵装でもある[30]。マザー・ファンネルのサイコ・ウェーブ・ハブ技術とハイパー・ビーム・サーベル、ハイパー・メガ粒子砲をコンパクトにまとめたもので[30]、遠隔誘導により2基を平行に連結させて後部装甲を展開したハイパー・メガ粒子砲モードや、グリップとジョイントを展開して両腕に装着するハイパー・ビーム・サーベル・モードとなる[31]。また、本体のファンネル・コンテナの左右に接続した状態でも高火力キャノンとして運用可能[32]。のちにAEグラナダ支社のデータがサイドFで復元され、MSN-04FFの型式番号で登録されるとともに、シャアの反乱時における機体のポテンシャルがさまざまな角度から計測されている[30]。
RGの商品PVでは、ダブル・ホーン・ファンネルがファンネル・コンテナに装着されて出撃する様子も見られる[33]。
新生ネオ・ジオンが開発したニュータイプ専用MS。総帥であるシャア・アズナブル専用機として全身が赤系統で塗装されている。小説『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』、及び『CCA-MSV』に登場する。オリジナルデザインは出渕裕[34][注 4]。
機体設定が2種類存在するが、デザインはどちらの設定も共通している。初出は、富野由悠季による1988年刊行の小説『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン』。この小説は映画の初期プロットをベースにしており、作中にサザビーは存在しない。その代わりに、小説では本機にシャアが搭乗する[35]。一方、後に映画『逆襲のシャア』の内容に沿うよう「サザビーの強化発展機」として設定変更したうえで『CCA-MSV』(逆襲のシャア・モビルスーツ・バリエーション)の機体としても分類されている。
初出は、劇場アニメ「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」の初期プロットをもとに監督の富野由悠季自身がノベライズした小説「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア ベルトーチカ・チルドレン」[35]。初期の企画案をもとにしているため、ナナイ・ミゲルは「メスタ・メスア」、ギュネイ・ガスは「グラーブ・ガス」などと実際の映画版とは名称が異なっており、サザビーも同様に小説では「ナイチンゲール」となっている。この小説の口絵に出渕裕によるナイチンゲールのモノクロのイラストが描かれている[注 5]。出渕は「ナイチンゲール」という名前の響きから、劇場版のサザビーそのままでなくMA的にアレンジしたと語っている[36]。そのため、サザビーに似ているところがありながらも、より巨大で威圧的なフォルムとなっている[35]。その後、人気が出たためにガレージキット用に出渕裕が新しい全身図の設定画を描き起こし[34]、B-CLUB誌でカラー画稿が掲載された。その後、模型となったり、ゲームに登場したりすることでデザインもより細かく描かれるようになり、認知度が上がって公式化されていった。2014年にはガンダムエースにて小説のコミカライズである漫画版『ベルトーチカ・チルドレン』が連載開始となり、新たに柳瀬敬之による作画用にディテールが加えられたデザインが描かれた[35]。
本機はMSだが、そのシルエットはMAにも近く、サイコフレームの導入によってMSサイズでありながらニュータイプ専用MA並みのスペックを獲得[37]、各部に配置されたバーニアスラスターにより高い運動性と機動性を獲得した。計5基のプロペラント・タンク(後部アーマーに2基、背部に3基)が接続されており、稼働時間の延長と生存性の向上が図られている。サザビーよりも頭頂高がやや低く、体勢も前傾姿勢で、胴体部は前後に伸びるように大型化されているほか、四肢の関節もシーリングで覆われている。巨大な背部バーニアバインダーはファンネル・ポッドを兼ねており、α・アジールのものを小型・軽量化したファンネルを10基搭載している。また変形することで高速飛行モードに移行する。肩部アーマーにはバーニアが内蔵されており、サザビーの肩部側面の可動式スラスターを大型化したような形状である。スカートアーマー内には、グリプス戦役時代の重MSジ・Oにも装備された隠し腕(接近戦用マニピュレーター)が仕込まれており、MAクラスの巨躯でありながら近接戦闘能力も高い。シールドはサザビーとほぼ同一形状のものを携行。
当初はメガ・ビーム・ライフルとビーム・サーベルおよびファンネルのみとされ、ゲーム『第2次スーパーロボット大戦α』などで登場する際には独自設定として胸部にメガ粒子砲が存在し、シールドにサザビーと同様にミサイルが装備されている場合があった。しかし、その後はプラモデル「RE/100 1/100 ナイチンゲール」においてシールド裏にビーム・トマホークとミサイルが配置され、漫画版『ベルトーチカ・チルドレン』においてはさらに腹部のメガ粒子砲の存在が描かれるなど、サザビーと同様の豊富な武装とギミックをもつ機体としてあつかわれるようになっている。
小説『ベルトーチカ・チルドレン』では映画版のサザビー同様、シャア・アズナブルの専用機としてアムロ・レイの乗るリ・ガズィを圧倒する。ライバル機のνガンダム[注 6]とも互角以上の戦いを繰り広げたが、最終局面では頭部フロー・システムが作動してコクピット・カプセルが射出される。
永野護による「ナイチンゲール」は、映画『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の企画初期段階にシャアの搭乗機として設定されていたMSで、実際の映画版のサザビーにあたる機体[46][注 7]。のちに「ナハトガル」という名称で永野自身の手により新たにデザインし直された[47]。
「ナイチンゲール」は、永野が映画のためにシャアの搭乗する最後のMSとしてデザインしたものだった。しかし、富野監督からの要望で考えた永野のMSのデザインライン[注 8]にクライアントからのOKが出ず、作品を途中降板したためにデザイン画は未公開のままだった[46][48]。その後、1998年にアニメ雑誌上で「ナイチンゲール・ジオン」という名前で頭部デザインだけが公開されていたが、全身像は不明のままだった[49]。しかし、2007年に「ナハトガル (Nahatgall)」という名称を与えられ、雑誌上で永野自身によって新たに描き直されたデザインと永野独自の設定が公開された後、2011年にはオリジナルのデザインと設定画の一部[注 9]も自身の著書の中で公開された[47][50]。
「ナハトガル」は、2007年に永野が「ナイチンゲール」をデザインし直したもの[47]。機体のカラーリングは初めて発表された『月刊ニュータイプ2007年1月号』のポスターではミントグリーンであったが、後に『機動戦士ガンダム30周年画集 天地創造』に掲載された際にはローズレッドに変更されている。
以下は、2007年版の永野による独自の設定である。
グリプス戦役終結後のハマーン・カーン率いるネオ・ジオン軍の重MSとしてアナハイム・ジュピターが開発をおこなっており、データが月のAE本社に流出した際に誤って英語で「ナイチンゲール」と呼ばれるようになったために生産が続行可能となる。対艦強襲・駆逐戦闘を主任務としたMAに近い運用を想定しており、その巨体に高い機動力を付与するプロトンドライブの放熱板が頭部から背部にかけて装備される。MAN-104の型式番号のほかに "MAN-104/MSae-39-20001-X-19D ( - 20006-X-19D)" というAE社内での統一コードをもつ(キュベレイは "MANae-103-10001-X-15B")[47]。
宇宙世紀0092年を舞台とする漫画『機動戦士ムーンガンダム』に登場するMS。主役機であるムーンガンダムの原型機で、サザビーへとつながる機体[53][54]。メカニックデザインは形部一平が担当。「バルギル」とは『ムーンガンダム』のストーリー担当である福井晴敏が考えた命名案のひとつで、ほかに挙げた候補のなかから形部一平の息子が選んだものが採用された。形部は「サザビーに繋がるような機体名にしっくり来るものがなかったため、意味をもたず語感のみを重視した名称に決めた」と語っている[55]。
ネオ・ジオン再蜂起に向けて作られた指揮官用次世代ニュータイプ専用機[53][54][56]。ムーンガンダムの原型機となった[53]。ヤクト・ドーガと同時期に開発され、のちのサザビーへとつながるプロトタイプと目されている[54][57]。パイロットは、偽装貨物船「アタラント3」に所属するニュータイプ研究所出身の強化人間「アゴス・ラガート」[51]。
機体色はパープルで、サザビーを細身かつ直線的にしたような外見[53]。
ギラ・ドーガの1.5倍に強化されたジェネレーターとガンダリウム合金装甲を採用し、多数の推進器を配置しつつ軽量化を施すことで、ほかの実験機を上回る運動性能を発揮する。一方で、サイコミュ・システムの性能はサイコ・フレーム搭載機であるヤクト・ドーガに劣っており、安定性を欠いた失敗作とされている[51]。アトランタ3所属機からは次世代サイコミュ技術が取り外され、操縦席とファンネルは従来のサイコミュ式に換装される[51][54][57]。
武装の形状や機能、配置もサザビーに似ており、グレネード・ランチャー内蔵型ビーム・ライフル、ビーム・トマホーク兼用ビーム・サーベル、背部上段左右のコンテナに内蔵されたファンネル計6基に加えて[58]、長銃身のロング・ライフルを装備する[51]。機体腕部には格闘用兵器バタフライ・エッジが備え付けられている[53]。
『ムーンガンダム』第2話で、ロンド・ベル所属ラー・ギルス隊を撃退すべく初出撃するが、アゴスはファンネルを起動させることができず[注 10]、敵機のシータプラスに苦戦を強いられる。そこで、みずから切り落とした右ファンネル・ラックを投擲して牽制し、頭部の左顔面を潰されつつもアタラント3の窮地を救う。戦闘後は充分な修理を受けられず、損傷部分も放置されたままで運用される[52][注 11]。第6話では、戦場で遭難したジオン皇女「ミネバ・ラオ・ザビ」の捜索中、同じく宇宙を漂流中だった光族の少年ユッタ・カーシムを回収。このとき機体のサイコミュがユッタの意思を感知し、左ラック側のファンネルが起動。次いでミネバの回収にも成功する。
第9話、第10話では、ムーン・ムーンに漂着したティターンズ残党のサイコミュ搭載型MS「G-ドアーズ」の頭部(ガンダム・ヘッド)を解析する目的で、同じサイコミュ搭載機である本機に頭部が移植され、「ガンダム・ヘッド搭載型」として応急修理される{R|ga18-07" />。その際、起動した頭部の干渉を受け、機体のサイコミュ・システムを乗っ取られたことから、アゴスは、もう自分には乗りこなせないだろうと述べている[60]。
ムーンガンダム MOON GUNDAM | |
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型式番号 | AMS-123X-X[61] |
全高 | 21.7m[58] |
全備重量 | [58] |
装甲材質 | 不明[58] |
出力 | 不明[58] |
推力 | 不明[58] |
武装 | ビーム・ライフル ビーム・トマホーク 60mmバルカン バタフライ・エッジ×2 サイコプレート×8 |
搭乗者 | ユッタ・カーシム |
強化型ムーンガンダム ENHANCED MOON GUNDAM[62] | |
型式番号 | AMS-123X-XS[62] |
全高 | 21.7m[62] |
全備重量 | 55.8t[62] |
武装 | ビーム・ライフル(グレネードランチャー付き) ロング・ライフル ビーム・トマホーク兼用ビーム・サーベル 60mmバルカン サイコプレート×8 |
搭乗者 | ユッタ・カーシム |
『機動戦士ムーンガンダム』の主役機[54]。バルギルのボディにアムロ・レイが撃墜した謎のガンダムの頭部を組み合わせ、改修とカラー変更を行った機体[53][57]。肩形状などにバルギルとの類似点を見出せる[54][56]。バルギル側のサイコミュ兵器が従来型である一方で、ガンダムの頭部側には次世代サイコミュ兵器が搭載されていた[57]。
バルギル(ガンダム・ヘッド搭載型)に、ムーン・ムーンへ漂着したG-ドアーズの頭部とそのサイコミュ・ユニット「サイコプレート」を組み込んだ姿[61]。パイロットはムーン・ムーンに住む少年、ユッタ・カーシム。
最大の特徴は、機体の背面に装着された三日月型の装備、サイコプレート[63][64][65]。サイコプレートには研究段階にあったサイコフレームが組み込まれており、パイロットの感応波を機体の操縦に反映させる受信装置としての機能をもつほか[66]、それ自体をオールレンジ攻撃用の武器として自在に使用することができる。サイコプレートは16枚のうち8枚[66]が戦闘により欠損しており、残りの8枚が欠けた月を想起させるシルエットを形成する[64][注 12]。
当初の機体色はそれぞれの改修前と同じとなっており、設定資料などでは「バルギル(ガンダムヘッド&サイコ・プレート搭載型)」と呼称されるが[64]、地球連邦軍への心理的効果を意図したリュースの意向により、第23話でガンダムを想起させる赤白青のトリコロールへと塗り替えられる[注 13]。
後頭部にあたる箇所のアンテナらしきものも従来のガンダムとは異なっており、加えて縦に走る緑のラインも確認できる、独特なデザインの機体となっている[63]。
改修前と同じビーム・ライフルやビーム・トマホークに加え、バルギル用の武装であった[67]左右前腕後部に内蔵された折り畳み式格闘用ビーム刃発生器「バタフライ・エッジ」2基、G-ドアーズの頭部に内蔵された60ミリバルカン砲2門、G-ドアーズから移植されたムラサメ研究所由来の遠隔式サイコミュ兵器「サイコプレート」8基。ビーム式トライブレードの一種と位置づけられるバタフライ・エッジは短時間のみサイコミュによる遠隔操作が可能で、ブーメランのような使い方が可能[67]サイコプレートは、バックパック左側に連結状態の4基を二重に重ねた収納形態と、赤い発光部を露出させた三日月形態の二つの待機形態をもち、分離後はパイロットの脳波コントロールで攻防どちらにも使用可能となっている[58]。
ネオ・ジオン軍過激派シュランゲ隊の襲撃で身動きが取れなくなったアゴスに代わり、ムーン・ムーンに住む少年「ユッタ・カーシム」が搭乗する。身分を隠してユッタに接触したクランゲル隊の上官「リュース・クランゲル」が、「ムーン・ムーンで生まれ、ムーン・ムーンの民であるユッタが動かすガンダム」という意味を込めて「ムーンガンダム」と命名し[66]、機体名称と型式番号も正式に変更される[67]。
ヤーヒム隊のサイコ・バウやシャアが搭乗するサザビー初期試験型(重力下仕様)との連戦後に降伏しネオ・ジオン軍所属となったムーンガンダムを、ネオ・ジオン軍が占拠した南極の旧資源開発基地で改修した姿[62]。
パイロットであるユッタの才能とサイコプレート主体の戦法から大きな問題にはなっていなかったが、ムーンガンダム自体はバルギルにガンダムの頭部やサイコプレートを後付けした構造ゆえに、ムーバブル・フレームやジェネレーターが過負荷状態にあった。南極基地の設備の都合から全面改修は困難であったものの、サザビー世代の高出力ジェネレーターへの交換を軸とした上半身の刷新・強化が行われている。さらに、バックパックのメインバーニアを2基から4基に、肩部スラスターを片方1基から2基に増設することで、推力や機動性、旋回能力が向上している[62]。
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