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『開化探偵帳』(かいかたんていちょう)は、1968年11月1日から1969年10月10日まで、NHK総合テレビで、金曜日の20時から21時に放送されたテレビドラマである。『金曜時代劇』としては珍しく、明治維新後の東京を舞台にしている。
明治7 - 8年の文明開化期に、チョンマゲを切り落とし「ざんぎり頭」となって、背広に身を包んだ元武士の新宮寺京介が、警視庁(内務省管轄)に奉職、浅草伝法院屯所の探索方(現在の刑事)として、上司や仲間、町の人たちとともに浅草を舞台に活躍する[1][2][3]。
原作者の島田一男は、このドラマのために警視庁に日を置かず通い、神田の古本屋で300冊以上の資料を購入した。浅草にも十数回訪れている。
また、「グラフNHK」1968年11月1日号で「明治時代は、史実はわかっているが、その史実の周辺は知られておらず、その知られていない部分を調べ、考証して、ドラマを作る。江戸時代が舞台の捕物帳にはこの苦労はない」と語り、その一方で、これは苦労であっても楽しい苦労であり、明治版の捕物帳ではない「探偵帳」を書き続けるとも話している[1]。
明治7年(1874年)ごろの浅草は、神社仏閣と繁華街とを抱えた街で人口が多く、事件もまた多かった。その浅草の浅草寺の本坊、癜風インに「浅草巡査屯所」が置かれるようになる。屯所というのは私服刑事の詰め所であり、30人ほどの巡査が交代で詰めていた。この伝法院の屯所がドラマの舞台である。
当時の東京府下には、捜査を担当する屯所が40あった。1871年(明治4年)、フランスの警察制度などを参考に編み出された邏卒制度が採用され、1875年(明治7年)に東京警視庁が設立された。警視庁設立後は、邏卒は巡査となった。巡査屯所は警察署の前身で、現場は屯所、そして事務は警視出張所が担当した。屯所にいつも詰めていたのは巡査長、巡査部長、警務員(刑事)3名、書記、30名の巡査だった[1]。
東京警視庁の管轄は府下全域で、これを六大区に分け、1つの大区は16の小区から構成されていた。屯所は小区に1つの割で設けられ、伝法院の浅草巡査屯所は、第五大区第八小区の屯所であった。ちなみに、伝法院にはかつて新徴組や、維新後の府兵の屯所も置かれていた。屯所の下には交番所が置かれた。警視庁の役職はまず警視総監に当たる大警視、そして権大警視、小警視、権小警視、大警部、権大警部、中警部、権中警部、小警部、権小警部がいた。彼らの下にいる巡査には一等から四等まであり、一等巡査は他の巡査の指揮監督に当たった[1]。
また、制服は、当初は邏卒とその下の番人のみに紺のラシャ製のものが与えられ、この制服に三尺棒で任務に就いた。それ以外の警察官が制服を着るようになったのは、1875年(明治7年)2月7日からで、これはルダンゴト服と呼ばれた。このドラマでは、屯所長の大木一郎太、庄司孫右衛門、難波竹丸が制服を着ている[1]。
主人公の京介を演じる緒形拳の台本には、赤や青のペンでメモがびっしり記入されており、同じプロダクションの先輩である川崎敬三に、かなりのライバル意識を燃やしていた。また、このドラマに出演して、警察官に親近感を持つようになったとも話している。役作りのため、警視庁から資料を借りて読むこともあった[5]。
一方で藤井弥太郎役の川崎敬三は、硬派や熱血漢の多いドラマの登場人物の中で、二枚目半という異色な存在だった。本人に言わせれば、薩摩や長州の天下となった明治時代の江戸っ子の悲しさが、弥太郎を演じるうえでの核心となっていた。一方で弥太郎にはややとぼけたところもあり、役作り、特に声の出し方には気を使い、この役作りのため、また、コマ割りと場面割りが似ていることなどから、漫画を読みまくった。このとぼけた役柄が視聴者には好意を持たれ、子供からファンレターが来たといわれる[5]。
捕物が主体であるため、殺陣も多かった。このころには殺陣にもテンポの速さが求められるようになり、また、主人公が警察官であるため、攻めより受け身の殺陣がメインであった。セットが狭いため、出演者がけがをしないように、殺陣師の高瀬将敏は気を使った。殺陣以外にも、ドラマの中で古武道の大会が登場したこともある[5]。
放送当時は、明治風のウエストを絞った四つボタンの背広やマントが流行っており、京介を演じる緒形拳や、勝之助を演じる郷鍈治の服装は、そのまま外に出て行っても、違和感がなかったのではないかと言われている[5]。また、明治維新にふさわしく、証拠品の中に、香水をしみこませたハンカチなども登場する[1]。
元々は京介とお金が結ばれるはずだったが、急遽予定が変わって、お金は幼馴染と結婚することになり、脚本の書き換えが行われた[7]。
放送回 | 放送日 |
---|---|
第1回 | 張り込み |
第2回 | 吾妻橋車夫通り |
第3回 | 二つの酉囃子 |
第4回 | ガス燈わらべ唄 |
第5回 | 伝法院屯所 |
第6回 | ざんぎり一刀流 |
第7回 | 旗本くずれ |
第8回 | 西洋柱ごよみ |
第9回 | 改暦師走の雪 |
第10回 | 六連発無情 |
第11回 | 東京闇飛脚 |
第12回 | 錦絵太政官紙幣 |
第13回 | 明治の兄弟 |
第14回 | 屯所裏袋小路 |
第15回 | 浅草流人控 |
第16回 | 人形市探索往来 |
第17回 | 明治人別帳異聞 |
第18回 | 残侠采女塚 |
第19回 | 西洋早付木[8][5] |
第20回 | 洋式外科女書生 |
第21回 | 文明座敷鉄砲 |
第22回 | 山谷堀非情 |
第23回 | 白狐花ぐもり |
第24回 | 卯月兎寺始末 |
第25回 | 義賊天誅連 |
第26回 | 奥山新聞茶屋 |
第27回 | 怪盗弗厘破り |
第28回 | 三社祭り浅草絵図 |
第29回 | 遠めがね五重塔 |
第30回 | 子の刻九点鐘 |
第31回 | 三味線猟奇談 |
第32回 | 市ヶ谷牢屋敷 |
第33回 | 浅草人別しのび歌 |
第34回 | 浅草恋女房 |
第35回 | 小塚忍び屋敷 |
第36回 | 駒形仁兵衛店 |
第37回 | 浅草溜精霊控 |
第38回 | 油照り、洋弓無頼 |
第39回 | 大川端花火山屋 |
第40回 | 霊送り隅田川 |
第41回 | 東京娘道成寺 |
第42回 | 処暑、御一新考 |
第43回 | 今は昔・官員節 |
第44回 | 持乳山丑三ツ刻 |
第45回 | 筒井師、浅草兄妹 |
第46回 | 雷門乗合馬車 |
第47回 | 秋風浅草歌 |
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