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デジタルアバターを使用するYouTuberや配信者 ウィキペディアから
バーチャルYouTuber(バーチャルユーチューバー、英: Virtual YouTuber)は、2DCGや3DCGで描画されたキャラクター(アバター)[1][2][3]、もしくはそれらを用いて主にインターネットなどのメディアで活動する動画投稿・生放送を行う配信者の総称を指す語[4][5][6][7][8][9][10]。略語として「VTuber」「Vチューバー」(ブイチューバー)が使われる[1][9]。
2016年12月に活動を開始したキズナアイがYouTuber活動を行う際に自身を称した事に始まる語であり[4][11][12]、元々はキズナアイ自身を指す語だった[4][13][14]。
「バーチャルYouTuber」(VTuber)とは、2016年12月にキズナアイがYouTuber活動を行う際に名乗り、初めて使用された名称である[4][11][12][15]。知名度の拡大により一般的に使用されるまでは他のユーザー間でも広く使われていたというわけではなく、元々はキズナアイ自体を指す名称であった[4][13][14]。同時に、本人による「バーチャルYouTuber」というカテゴリーの中で[4][11][12][15]、自身を「世界初のバーチャルYouTuber」と位置付けてきた[16]。2017年末頃にバーチャルYouTuberという存在や文化が強い注目を受けたタイミングから、総称として使われるようになったとされ、キズナアイはこの時期を「なにかが弾けて一気に注目されたタイミング」と表現している[4]。もっとも、現在でも総称としての定義は人によって異なるなど一定しているわけではない[17][注釈 1]。
2017年は主にユーザーが拡大し始めた黎明期と言える時期であり、中でも複数の書籍でも取り上げられることの多いユーザーとして「電脳少女シロ」、「ミライアカリ」、「バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさん」、「輝夜月」があげられ、これを「バーチャルYouTuber四天王」(VTuber四天王)と呼ぶ場合がある[14]。ここにキズナアイを含め5名を四天王と呼ぶ場合もある[20][21]。『コミケplus』では四天王をバーチャルYouTuber黎明期の道標と表現している[14]。
2017年末から2018年はバーチャルYouTuberの文化が急激に拡大した時期である[20][22]。にじさんじやホロライブなどが演者の募集をかけると同様に、他の企業の参入、演者の募集も相次ぎ、前者以外にも有閑喫茶あにまーれやハニーストラップ(いずれも774株式会社が運営)、ゲーム部プロジェクトやあおぎり高校ゲーム部(いずれもBrave groupが運営)などの各グループやupd8(キズナアイを生み出したActiv8株式会社が立ち上げたVTuber支援プロジェクト)、ENTUM(当時ミライアカリプロジェクトを運営していた株式会社ZIZAIが運営するVTuber事務所)などのプロジェクトの発足もあり、2018年の一年を通してバーチャルYouTuberの人口は10倍前後に拡大した[14]。
また「MikuMikuDance」(MMD)と呼ばれる3Dアバターを制作していたモデラーや「Live2D」で使用可能なイラストを執筆できるクリエーターの参入等により、バーチャルYouTuberというカテゴリーはより活発なものとなっていった[14]。
バーチャルYouTuberの大きな特徴として、人間の全身の動きを読み取るモーションキャプチャの利用をあげることができる[11]。モーションキャプチャは日本においてエンターテイメント分野では3Dモーションの作成を始めとして1990年代からゲーム開発等において用いられてきたものであるが[23]、この技術を利用することで、リアルタイムでキャラクターにリアクションを取らせ、生放送やゲーム実況を行わせることを可能にしている[11][5]。同じ2次元、もしくは3次元のキャラクターであっても、アニメやゲームと異なり直接に生放送での視聴者とのやりとりが可能なことなどから、人気が高まったと言える[11][5]。
2021年10月の段階では、1万6000人を超えるバーチャルYouTuberが活動を行っており[24]、人気コンテンツと認知されている[25]。市場規模は800億円程度である[26]。
モーションキャプチャとは、動きのある物体に関するデータを取り込み、デジタル化するための手法のことを指す[27]。人が手や頭に専用の機器を装着し、例えば赤外線センサー等で動作を測定することによって取り込み、そのデータを利用することで、スポーツ分野、医療用のデータ、さらにゲームキャラクターや映画のコンピュータ・グラフィクスといったものに動きを付けてきた[27]。例えば、ゲーム開発では日本においては1990年代からその利用が見られ、1993年発売の『バーチャファイター』を一例としてあげることができる[23]。また、一般ユーザーがモーションキャプチャを手軽に使えるようになった初期のものとしては"Kinect"をあげることができる[28]。2010年末に"MikuMikuDance"が"Kinect"に対応したことにより、初音ミクを始めとした二次元キャラをモーションキャプチャで動かしての動画投稿が見られるようになった[28][29]。
一方で、バーチャルYouTuberはこのモーションキャプチャの技術を利用し、生放送においてリアルタイムでキャラクターにリアクションを取らせることによって、ゲーム実況や視聴者との直接的なコミュニケーションを実現させていることに大きな特徴がある[30][11][5]。キャラクターの動作や声を担当する人の事を「魂」と表現することもある[31]。
このようなモーションキャプチャを利用してのリアルタイムでの生放送という、現在のバーチャルYouTuberと同様の形式を取ったものとして、ウェザーニューズの"WEATHEROID TypeA Airi"をあげることができる[32]。2012年12月7日の「ソラトモパーティ」においてモーションキャプチャを利用した会場でのお披露目が行われ[33][34]、2013年2月4日から試験的な放送が行われ[33][35]、2014年4月10日にSOLiVEナイトから本格的な出演を開始[33][36]。2018年5月17日にYouTubeチャンネルを開設以降はバーチャルYouTuberとして活動している[37]。
近年では、FaceRig[38]など、ウェブカメラを使って手軽にモデルを動かすことのできるサービスなども開発されており、バーチャルYouTuberになる手段の簡便化が進んでいる[39]。
初期のバーチャルYouTuberにおいては、全身のトラッキングを用いた3Dモデルを使用したキャラクターが多かったものの、「にじさんじ」など後発のキャラクターの多くはiPhoneに搭載されたフェイストラッキング機能(ARKit)を用いた2Dモデルを採用しており、そのようなモデルを採用することによって演者の負担を軽減し、より簡易な動画制作や配信を可能にしている[40]。
2Dモデルを用いたバーチャルYouTuberはYouTube Liveにおける投げ銭(スーパーチャット)を主な収入源としていることから、「バーチャルライバー」と呼ばれることもある[41]。
バーチャルYouTuberは様々な実験や検証、対談、知識の伝達、ファンとのコミュニケーション、ゲーム実況、歌、ダンスなどを活動内容としている。音楽との親和性が高いともされ、オリジナル曲の楽曲提供やバーチャルYouTuberに特化した音楽レーベルの設立、VRライブの開催など音楽業界との交流も進んでいる[44]。2019年1月2日にはNHK総合でバーチャルYouTuberの歌に関する特別番組『NHKバーチャルのど自慢』が放送された[45]。また、ファンによる二次創作活動も多く見られる[46]。
バーチャルYouTuberの総数は1万人を超えており[47]、2018年7月10日時点で、登録者数の合計は1270万人、動画再生回数は7億2000万回に上っている[48]。「なりたい自分になれる」「制約を乗り越えることができる」ことが大きな魅力であるとされ、現実の性別(セックスやジェンダー)・外見(デミ・ヒューマン)にとらわれない活動をする者も数多くいる[49]。特に成年男性の演者が美少女のアバターを用いるケースは「バ美肉(バーチャル美少女受肉)おじさん」とも呼ばれている。企業がキャラクターを擁立することでその収益によって運営を行うケースや、個人が非営利的に趣味で配信行うなどその配信目的は非常に多岐にわたるとみられる。
2018年から特に流行した言葉・概念であり、「バーチャルYouTuber / VTuber」がネット流行語大賞2018の金賞を受賞[50]。今年の新語2018でも第5位になっている[51]。ジャストシステムが2019年3月1日までに行った調査によると、バーチャルYouTuberは10代の67%、20代の50%に認知されている[52]。VTuberの検索人気度は新型コロナウイルス感染症の世界的流行を機に上昇しており、現実のアイドルの「欅坂46」と同等の水準に迫っている[53]。
バーチャルYouTuberは、活動の主たるプラットフォームとしているYouTubeから言及、及び特集される存在となっており、2018年12月13日に、YouTube Rewindにて「2018年のVチューバー動画ランキング」ページが開設された[54]。2020年12月、YouTubeはその年のカルチャー&トレンドレポートにて、バーチャルYouTuberの月間視聴回数が15億回を超えていることを明かした。また、ユーザーの47%は、キャラクターまたはバーチャルのクリエイターが作成したコンテンツを視聴することに積極的であるという調査結果を公表した[55]。
グリーは2018年4月5日に、バーチャルYouTuber事業に100億円規模の投資を行うことを発表した[56]。サンリオと花王は日本国内でバーチャルYouTuberを活用している[57]。また、日本の大手YouTuberはUUUM等のMCNに参加する者も多いが、この風潮を反映してかバーチャルYouTuber独自の事務所を設置する企業も現れている[58]。
茨城県が独自のインターネット動画メディア「いばキラTV」のアニメキャラクター「茨ひより」を2018年8月3日に公認。初の地方自治体公認バーチャルYouTuberとなる[59]。
日本プロサッカーリーグ正会員チームにおいては、2019年6月11日にJ2リーグに参戦しているFC岐阜が「蹴球夢」でデビューしている[60]。
また、民放連加盟局においては、2020年にチューリップテレビが「奥田ふたば」でデビューしている。
2020年時点において、エンタメ企業が子供向けバーチャルYouTuberを活用したサービスを行う動きが活発化している。例としてクマーバ(アカツキ→Kumarba)、DJマロンとMCズイミー(バンダイ)、わたこ(アイフリークモバイル)が挙げられる[61]。
BBCによると、バーチャルYouTuberは「個人的なことやアイデンティティの問題に拘束されないこと」に特徴があり、バーチャルYouTuberが世界的な人気を得たのは「日本国外に、日本の文化やアニメを愛好する大勢の顧客がいること」が影響しているという[62]。台湾の東南科技大学は、バーチャルYouTuberへの参入を希望する企業や人材を支援する取り組みを行うことを表明した[63]。2019年2月にはキズナアイとアカデミー助演男優賞受賞者のクリストフ・ヴァルツ、映画監督のロバート・ロドリゲスなどハリウッド映画業界の関係者が共演し称賛を受け、お互いの手を握るポーズを取った[64]。
「Vtuber」は#Twitterトレンド大賞ピックアップアワードに選出されている[65]。ネット流行語100 2018では「バーチャルYouTuber」が第2位になった他、10位以内にバーチャルYouTuberの「電脳少女シロ」、「月ノ美兎」やこれに関連する「にじさんじ」がランクインしている[66]。更に「バーチャルユーチューバー」がSMBCの2018年ヒット商品番付の東前頭5に[67]、「Vチューバー」が日経MJの2018年ヒット商品番付の東小結にも選出されている[68]。
稲見昌彦によれば、バーチャルYouTuberは「性別や障害といったハンディキャップを乗り越えて、誰もが活躍できる」デジタルサイボーグともいえる存在である[49]。有働由美子はバーチャルYouTuberは自由に好みの姿をカスタマイズできるが、それは誰でもできてしまうと述べ、だからこそバーチャルYouTuberとして他と差別化し、人気を集めるためには中身の素質や親しみやすさ、固有のスキルが重要になると指摘している[69]。落合陽一は近代が法人を作ったと仮定した上で、コンピュータ時代または21世紀に登場したバーチャルYouTuberは自然人らしいと指摘している[70]。マツコ・デラックスは、自身がバーチャルYouTuberになりたいとは思わないと前置きしつつも、「面白い」「VTuberというか、バーチャルのキャラを介すのは普通のことになってくるんじゃないかしら」とした[71]。
主権を自分ではなくキャラクターに奪われてしまい、キャラクターとしての自分を拒否する気持ちが大きくなり、生活に支障をきたすことを「喰われ」と言い、バーチャルYouTuberを活動休止に追いやるという問題が指摘されている[72]。
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