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トレミーの48星座の1つ ウィキペディアから
ケフェウス座(ケフェウスざ、ラテン語: Cepheus)は、現代の88星座の1つで、プトレマイオスの48星座の1つ[2]。古代ギリシアの伝承に登場するエチオピアの王ケーペウスをモチーフとしている[1][2]。地球の歳差運動により、γ星エライ、α星アルデラミンは今後数千年の間に順に北極星になるとされる。
Cepheus | |
---|---|
属格形 | Cephei |
略符 | Cep |
発音 | 英語発音: [ˈsiːfiəs]もしくは英語発音: [ˈsiːfjuːs]; 属格:/ˈsiːfiaɪ/ |
象徴 | ケーペウス[1][2] |
概略位置:赤経 | 20h 01m 56.4481s - 09h 03m 19.7931s[3] |
概略位置:赤緯 | +88.6638870° - +53.3532715°[3] |
20時正中 | 10月中旬[4] |
広さ | 587.787平方度[5] (27位) |
バイエル符号/ フラムスティード番号 を持つ恒星数 | 43 |
3.0等より明るい恒星数 | 1 |
最輝星 | α Cep(2.460等) |
メシエ天体数 | 0 |
確定流星群 | 0[6] |
隣接する星座 |
こぐま座 りゅう座 はくちょう座 とかげ座 カシオペヤ座 きりん座 |
東をカシオペヤ座ときりん座、北をこぐま座、西をりゅう座、南をはくちょう座ととかげ座に囲まれている[7]。20時正中は10月中旬頃[4]だが、領域の南端でも赤経+53.35°と天の北極の近くに位置しているため、北緯37°より北の北半球の中高緯度地域では星座全体が年中地平線に沈むことのない周極星となる[7]。
この星座のモチーフとされたケーペウスは、古代ギリシアの伝承に登場するエチオピア王で[注 1]、カッシオペイアの夫、アンドロメダーの父であるとされる[2]。紀元前3世紀前半のマケドニアの詩人アラートスの詩篇『ファイノメナ (古希: Φαινόμενα)』では、アルゴスの王でイーオーの父であるイーアソスの子孫であるとされた[8]。ケーペウスの父親については諸説あり、紀元前5世紀頃の古代ギリシアの歴史家ヘーロドトスの『歴史』や伝アポロドーロスの『ビブリオテーケー』ではポセイドーンとリビュエーの息子ベーロス[9][10]、ノンノスの『ディオニュソス譚』ではベーロスの双子の兄弟アゲーノール[11]、1世紀初頭の古代ローマの著作家ガイウス・ユリウス・ヒュギーヌスの『天文詩 (羅: De Astronomica)』では紀元前5世紀頃の古代ギリシアの劇作家エウリーピデースの伝える話としてアゲーノールの息子フェニックス[12]であるとしている。
ケフェウス座に属する星の数は、紀元前3世紀後半の天文学者エラトステネースの天文書『カタステリスモイ (古希: Καταστερισμοί)』、ヒュギーヌスの『天文詩』では19個、帝政ローマ期の2世紀頃のクラウディオス・プトレマイオスの天文書『ヘー・メガレー・スュンタクスィス・テース・アストロノミアース (古希: ἡ Μεγάλη Σύνταξις τῆς Ἀστρονομίας)』、いわゆる『アルマゲスト』では11個とされた[12]。
1922年5月にローマで開催されたIAUの設立総会で現行の88星座が定められた際にそのうちの1つとして選定され、星座名は Cepheus、略称は Cep と正式に定められた[13][14]。
正確な描像は明らかではないが、紀元前500年頃に製作された粘土板文書『ムル・アピン (MUL.APIN)』では、はくちょう座からケフェウス座に跨ってヒョウの星座が置かれていたと考えられている[15][16]。
ドイツ人宣教師イグナーツ・ケーグラー(戴進賢)らが編纂し、清朝乾隆帝治世の1752年に完成・奏進された星表『欽定儀象考成』では、ケフェウス座の星は、天の北極近くの区域である三垣の1つで天の北極を中心とする「紫微垣」と、二十八宿の北方玄武七宿の第五宿「危宿」、第六宿「室宿」に配されていたとされる[17]。
紫微垣では、HD 5848・HD 217382の2星が天帝の紫微宮を守る護衛軍を表す星官「勾陳」に、HD 212710が天帝を表す星官「天皇大帝」に、HD 30338が奇門遁甲を表す星官「六甲」に、HD 18438・HD 16458・HD 19978 の3星が五帝を祀る祭壇の順を表す星官「五帝内座」に、HD 223274が食客のための宿舎を表す星官「伝舎」に、それぞれ配された[17][18]。危宿では、δ・ζ・λ・μ・ν の5星が周の穆王に駿馬を献上した御者を表す「造父」に、4・θ・η・α・ξ・26・ι・οの8星が天のカギを表す星官「天鉤」に、それぞれ配された[17][18]。室宿では、HD 206267・13・ε の3星が空を飛ぶ蛇身の怪物を表す「螣蛇」に配された[17][18]。
ケーペウス自身を中心とする話は伝えられていない。エラトステネースの『カタステリスモイ』やヒュギーヌスの『天文詩』では、エウリーピデースの伝える話として「娘のアンドロメダーを生贄に差し出したが、そのアンドロメダーがペルセウスに助けられたおかげで、アテーナーに意志により星座の1つとなった」とされている[2][12][19]。
世界で共通して使用されるラテン語の学名は Cepheus、日本語の学術用語としては ケフェウス とそれぞれ正式に定められている[20]。
明治初期の1874年(明治7年)に文部省より出版された関藤成緒の天文書『星学捷径』で セフュース という読みと「王」という解説が紹介された[21]。また、1879年(明治12年)にノーマン・ロッキャーの著書『Elements of Astronomy』を訳して刊行された『洛氏天文学』では セフェウス と紹介された[22]。それから30年ほど時代を下った明治後期には ケフェウス と呼ばれていたことが、1908年(明治41年)4月に創刊された日本天文学会の会報『天文月報』の第1巻1号に掲載された「四月の天」と題した記事で確認できる[23]。この訳名は、東京天文台の編集により1925年(大正14年)に初版が刊行された『理科年表』にもそのまま引き継がれ[24]、1944年(昭和19年)に天文学用語が見直しされた際も ケフェウス が継続して使用されることとされた[25]。
これに対して、天文同好会[注 2]の山本一清らは異なる読みを充てていた。天文同好会の編集により1928年(昭和3年)4月に刊行された『天文年鑑』第1号では、星座名 Cepheus に対して ケフェウス という読みを充てていた[26]が、翌1929年(昭和4年)刊行の第2号では セフェ[27]、さらに1931年(昭和6年)刊行の第4号からは セフェ王[28]と改め、以降の号でもこの表記を継続して用いた[29]。これについて山本は東亜天文学会の会誌『天界』で以下のような見解を開陳していた[30]。
Cepheus を「セフェウス」,Perseus を「ペルセウス」,Eridanusを「エリダヌス」と書くのは,ラテン語の發音を寫すのであつて,大して間違つたこととは思はないが,しかし筆者は必ずしも其の通りにしなければならぬとは思はない.日本語として,簡單に明瞭に,原語の意を寫せば好いのだから,「セフェ」,「ペルセ」,「エリダン」,(叉はエリダン河)でも好いと思ふ.之れが日本語だと決めて了へば宜いのだから.
(中略)因みに,CentaurusやCepheusやPerseusや,Taurusや,Pegasus等の語尾のは,ラテン語の男性名詞を表はす語尾なのだから,此等を日本語に譯する場合には必ずしも性に囚われる必要はない.(元々,日本語には性の區別は無いのだから.)只,「センタウル」,「セフェ」,「ペルセ」,「牛」,「ペガス」で好いのである. — 山本一清、「天文用語に關する私見と主張 (2)」『天界』1934年4月号[30]
この山本らの主張は受け容れられず、戦後も継続して「ケフェウス」が使われ続けた[31]。1952年(昭和27年)7月に日本天文学会が「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」[32]とした際も Cepheus の日本語名はケフェウスのまま維持され[33]、以降も継続して ケフェウス が用いられている。
香川県坂出市の櫃石島には、ケフェウス座の主要な星が形作る五角形を農具の箕に喩えた「ビゼンノミ(備前の箕)」という呼称が伝わっていた[36]。
1個の2等星と4個の3等星が五角形に並んでいる。地球の歳差運動により、今後数千年の間にγ星やα星が北極星となるものと考えられている[37]。
2023年10月現在、国際天文学連合 (IAU) によって4個の恒星に固有名が認証されている[38]。
このほか、以下の恒星が知られている。
いわゆる「メシエ天体」は1つもない[71]が、5つの天体がパトリック・ムーアがアマチュア天文家の観測対象に相応しい星団・星雲・銀河を選んだ「コールドウェルカタログ」に選ばれている[72]。
ケフェウス座の名前を冠した流星群で、IAUの流星データセンター (IAU Meteor Data Center) で確定された流星群 (Established meteor showers) とされているものは一つもない[6]。
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