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希少性が高く美しい外観を有する固形物 ウィキペディアから
宝石(ほうせき)とは、希少性が高く美しい外観を有する固形物のこと。
主に天然鉱物としての無機物結晶を指すが、ラピスラズリ、ガーネットのような数種の無機物の固溶体、オパール、黒曜石、モルダバイトのような非晶質、珊瑚や真珠、琥珀のような生物に起源するもの、キュービックジルコニアのような人工合成物質など様々である。
古の中華文明圏では、価値のある石を「玉(ぎょく)」と呼んだが、非透明、あるいは半透明のものだけが珍重され、その中でも翡翠が代表的だった(玉の本義である)。透明なものは「玉」として扱われず、石の扱いであった。例えばダイヤモンドを表す漢語は「金剛石」であり、玉ではない。一方で西欧を含む非中華文明圏では、ダイヤモンドに代表される透明な鉱物が宝石として特に珍重された。
宝石としての必須条件は何よりその外観が美しいこと、次に希にしか産しないこと(希少性)であるが、第三の重要な条件として、耐久性、とりわけ硬度が高いことが挙げられる。これは、硬度が低い鉱物の場合、時とともに砂埃(環境に遍在する石英など)による摩擦風化・劣化のために表面が傷ついたりファセットの稜が丸みを帯びたりして、観賞価値が失われてしまうためである。例としてダイヤモンドはモース硬度10、ルビー・サファイアはモース硬度9である。石英のモース硬度は7であり、これらの宝石の硬度は石英のそれより高いことに注意されたい。例外的に硬度が7以下であってもオパール、真珠、サンゴなどはその美しさと希少性から宝石として扱われる。
硬度以外の耐久性の条件としては、衝撃により破壊されないこと(じん性)、ある程度の耐火耐熱性があること、酸、アルカリといった化学薬品に侵されないこと、経年変化により変色、退色しないことなどが挙げられる。その他、大きさ、色彩、透明度などの鑑賞的価値、知名度などの財産的価値といった所有の欲求を満たす性質が重要である。
ただし、宝石と云う扱いを受けても、知名度があまり高くない石は、収集家やマニア向けの珍品逸品、いわゆるコレクターズアイテムの位置に留まり、見た目の美しさと希少性だけが取り上げられ、その他の条件についてはかなり緩くなっている場合が多い。この手の石にはモース硬度2~5などといった傷つき易い石、空気中の湿気を吸い取ったり、酸化が進んで変質する石、紫外線を吸収して自然と退色する石、1カラットに満たない小さなそれしか取れない石、はてはお湯をかけるだけで溶けてしまう石などがあり、当然取り扱いには注意を要する。
知名度が高い石であっても取り扱いに注意を要する石もある。例を挙げるとオパールやトルコ石は石内部に水を含んでいるため乾燥により割れたり、オパールの場合その一大特徴である遊色効果が消失することもある。サンゴや真珠は酸には極端に弱く、レモン汁や食酢が付着しただけで変色する。琥珀は高温に弱くすぐ溶ける。エメラルドは内部に無数の傷を抱えているので、とりわけ衝撃には弱くたいへん割れ易い。
鉱物の中で金属にあたり、希少性が高く化学反応や風化などによる経年変化が著しく低い鉱物を貴金属といい、金、銀、プラチナなどが該当する。したがって、材質のみから資産価値を定めた場合、換金性、実用用途に関しては貴金属の方が宝石よりおおよその場合優れている。貴金属、とりわけ金は価格算定の根拠となる世界的に通用する評価基準が決められており、相場や市場が整備され、さらに金本位制という経済制度によって各国通貨の貨幣価値を超国家規模で並列化している事に対し、宝石はダイヤモンドこそ国際的な評価基準ルールや市場、相場が定められているものの、それ以外はどの宝石もその評価基準は厳密ではなく、国や民族によっても大きく異なっている。具体的には、翡翠は東アジアの国々では高く評価されるが、欧米での評価はそれほどでもない(欧米で高く売買されるときは、最終的に中国に売り込むことが目論まれている)。逆に真珠のように日本国内よりも海外の方が高額で取引される宝石も存在する。誕生石が国によって異なるのもその辺りの事情を物語っている。一見貴金属並みの資産価値が確立されているように思えるダイヤモンドも、材質上の理由から火災などの高温環境にさらされると損傷を受け、資産価値が損なわれる可能性があるため、純資産として永続的に保有し続けるには難がある。
ただし、特定の宝石はホープダイヤモンドやコ・イ・ヌール、インドの星のように、その歴史的経緯や由来により動産や美術・博物収集品として品質以上の価値をもつことがままある。
上記のように資産性においては宝石は貴金属より安定しないものの、貴金属が宝飾向け以外にも、金属特有の優れた電気電導性、箔に代表されるように著しい展延性を活かした加工、耐酸化・還元性を生かした工業用途で多々用いられるように、宝石もまた人工生産により安定供給されるものを含め、工業用製品の材料として用いられている。例えばダイヤモンドは研磨材、ボーリングマシンのロッド、切削加工工具(バイト)などに使用され、サファイアはレコード針や高級腕時計の風防、クロマトグラフのプランジャー・精密機器基板、ルビーは機械式時計の軸受けやレーザー発振媒質、ガーネットはルビー同様のレーザー発振媒質および紙やすりの砥粒、水晶は水晶振動子や各種石英製品、真珠は漢方薬と個々の性質を生かして多様に用いられている。
宝石の名称は地名やギリシャ語から名付けられることが多い。特に古くから宝石として扱われてきたものには、ルビーとサファイア、エメラルドとアクアマリンのように無機物としての組成は同一だが、微量に混入する不純物(ドーパント)により色が変わると名称も変わるものがある。中でも水晶を代表とする二酸化ケイ素を組成とするものは、その結晶形や昌質、色や外観が異なるだけで石英(クォーツ)、水晶(クリスタル)、アメシスト(紫水晶)、シトリン(黄水晶)、玉髄(カルセドニー)、メノウ(アゲート)、ジャスパー、カーネリアン、クリソプレーズ、アベンチュリンなど様々な名称で呼ばれている。また近年宝石として評価されるようになった新発見の鉱物に関しては、ゾイサイトやスギライトなど発見者や研究者の名に由来するものが多い。
「宝石のはなし」(1989年刊)では「宝石は約70種ほどあるとされるが、よく知られた宝石は20種程度である」[1]と記述される。刊行後に発見された物も含め、Wikipedia日本語版では110種余の試料を宝石として取り扱っている。
フランスのシンガーソングライター ノルウェン・ルロワ は、2017年のアルバム「宝石 - Gemme」と同名の曲で宝石にインスピレーションを受けました。[2]
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