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1973年公開のアメリカ映画 ウィキペディアから
『アメリカン・グラフィティ』(American Graffiti)は、1973年のアメリカ合衆国の青春映画。 監督はジョージ・ルーカス、出演はリチャード・ドレイファス、ロニー・ハワード、ポール・ル・マット、チャールズ・マーティン・スミスなど。1962年のカリフォルニアの田舎町を舞台に、高校を卒業した青年たちが共に過ごす最後の一夜を描いている。
アメリカン・グラフィティ | |
---|---|
American Graffiti | |
監督 | ジョージ・ルーカス |
脚本 |
ジョージ・ルーカス グロリア・カッツ ウィラード・ハイク |
製作 |
フランシス・フォード・コッポラ ゲイリー・カーツ |
出演者 |
リチャード・ドレイファス ロニー・ハワード ポール・ル・マット チャールズ・マーティン・スミス |
撮影 |
ロン・イヴスレイジ ジャン・ダルクイン ハスケル・ウェクスラー |
編集 |
ヴァーナ・フィールズ マーシア・ルーカス |
配給 | ユニバーサル映画/CIC |
公開 |
1973年8月11日 1974年12月21日 |
上映時間 | 110分 |
製作国 | アメリカ合衆国 |
言語 | 英語 |
製作費 | $777,000[1] |
興行収入 |
$115,000,000[1] $140,000,000 |
次作 | アメリカン・グラフィティ2 |
監督・脚本のジョージ・ルーカスは、処女作『THX 1138』の興行的失敗を受け、自身の高校生活をベースに大衆に受ける青春映画の制作に着手し大ヒットした。低予算で製作されたため「興行的に最も成功した映画」とも言われた。
初公開時のキャッチフレーズは「1962年の夏、あなたはどこにいましたか(Where were you in '62?)」。
ルーカスが青春時代を過ごした1960年代のカリフォルニア州モデストを舞台にしており、アメリカ人の誰もが持つ高校生時代の体験を映像化した作品。1962年の夏、多くの登場人物が旅立ちを翌日に控えた夕刻から翌朝までの出来事を追う「ワンナイトもの」である。青春時代の甘味なエピソードが、タイトル通り落書き(グラフィティ)のように綴られる。
また、ケネディ大統領暗殺やベトナム戦争に突入する前のアメリカの「最後の楽しい時代」を描いたことにより、戦争のトラウマを別の形で浮かび上がらせたという側面もある。
1995年にはアメリカ国立フィルム登録簿に永久保存登録された。
1962年9月初めのカリフォルニア州モデスト。ラジオから「ウルフマン・ジャック・ショウ」が流れ始める夕暮れ時、溜まり場となっている「メルズ・ドライブ・イン」の前に若者たちが集まってくる。カート(リチャード・ドレイファス)とスティーブ(ロン・ハワード)は高校を卒業し、翌朝にはこの街を去って東部の大学へと旅立つことになっているが、カートは街を去ることをためらっている。一方、スティーブはカートの妹のローリー(シンディ・ウィリアムズ)と付き合っているが、大学生になったら羽を伸ばそうと考えている。ジョン(ポール・ル・マット)は高校を出て2年、この街で気楽に過ごしている。フォード・デュース・クーペを駆ってのカー・レースでの速さは誰もが知っているが、今夜は彼に勝負を挑もうという55年型シボレーが彼を探している。スティーブより1学年下のテリー(チャールズ・マーティン・スミス)だけが自動車を持たず、ベスパでやって来るが、スティーブから当分使わない愛車を貸して貰えることになって大喜びし、早速、街に繰り出す。
カート、スティーブ、ローリーはローリーの車で母校の体育館で行われるダンスパーティーに向かう。その途中でカートは白いサンダーバードに乗ったブロンドの美女を見かけ、一目惚れするが彼女の素性は分からない。
ダンスパーティーでスティーブとローリーは2人の愛を確かめ合う。一方、カートはパーティー会場を抜け出して街をぶらつくが、不良グループ「ファラオ団」の3人組に因縁をつけられ、彼らと行動を共にせざるを得なくなってしまう。白いサンダーバードの美女を見かけるがどうすることも出来ない。
ジョンはいつものように車で街を流しながら女の子たちに声をかけるがなかなか上手くいかず、まだ13歳のキャロル(マッケンジー・フィリップス)を子守り代わりに押し付けられてしまう。キャロルの子供っぽい会話に辟易するジョンだが、見捨てることも出来ない。
テリーは運よくデビー(キャンディ・クラーク)という女の子を車に乗せることに成功し、自分は大金持ちだと偽ってデビーの気に入られる。2人は郊外で車を降り、少し離れたところでいちゃいちゃしている間に車を盗まれてしまう。
スティーブとローリーも郊外で最後の夜を過ごしていたが、スティーブの不用意な発言に激怒したローリーはスティーブを車から叩き出すと1人で街に戻り、見知らぬ男の55年型シボレーに乗ってしまう。彼こそジョンに勝負を挑もうとしているボブ・ファルファ(ハリソン・フォード)だった。一方のスティーブはローリーと離れて街を出ることをためらうようになる。
テリーは盗まれた車が駐車場に停めてあるのを見つけ取り返そうとして、犯人の2人組に殴られるが、たまたま通りかかったジョンに助けられて車を取り戻す。
「ファラオ団」のメンバーに言われるままにパトカーの後輪を吹っ飛ばすという大技をやってのけたカートは、やっと解放されて1人になると、ウルフマン・ジャックにサンダーバードの美女へのメッセージを流して貰おうと考え、郊外のラジオ局に向かう。たった1人で機器を操作していたひげ面の男は、ウルフマン・ジャックはここにはいない、放送はすべて録音されたものだ、機会があれば彼に渡そうと答えてカートのメモを受け取り、外の世界は素晴らしいぞとアドバイスする。しかしカートと別れを告げた後、マイクに向かって叫んでいるひげ面の男の声は正にウルフマン・ジャックのものだった。
やっとのことでキャロルを家に帰し、1人になったジョンをボブが見つけ、レースを挑む。その噂はすぐに広まり、町外れの直線道路(パラダイス・ロード)にはレースを見ようとする若者たちが集まってくる。ボブの車にローリーが乗っているらしいと聞いたスティーブも、テリーに貸していた車を奪うように返して貰うと現場へと急ぐ。明け方、若者たちが見守る中でレースが行われ、ボブの車が横転・炎上して勝負がつく。命からがら逃げ出したローリーにかけよったスティーブは「私を置いて行かないで」というローリーの言葉に「行かないよ」と約束し、二人はかたく抱きあう。
テリーはデビーに対し、大金持ちだというのは嘘で本当は自動車も持っていないのだと告げるが、デビーは彼を優しく慰め、また会おうと約束して帰ってゆく。
カートはウルフマン・ジャックのメッセージを聞いたサンダーバードの美女と公衆電話で話をすることが出来たが、彼女が何者なのか分からないまま電話は切れてしまう。カートは街を離れて進学する決意を固める。
朝の空港でカートは家族や仲間たちと別れを告げ、飛行機に乗り込む。離陸した飛行機の窓の下に目をやると、飛行機を追いかけるように、あの白いサンダーバードが走っていた。
最後に、4人のその後の人生について言及される。
役名 | 俳優 | 日本語吹き替え | |||
---|---|---|---|---|---|
フジテレビ版 | テレビ朝日版 | TBS版 | ソフト版 | ||
カート | リチャード・ドレイファス | 野島昭生 | 堀勝之祐 | 野島昭生 | 堀内賢雄 |
スティーブ | ロン・ハワード | 古川登志夫 | 池田秀一 | 田中秀幸 | 森川智之 |
ジョン | ポール・ル・マット | ささきいさお | 青野武 | 鈴置洋孝 | 井上和彦 |
テリー | チャールズ・マーティン・スミス | 湯原昌幸 | 富山敬 | 三ツ矢雄二 | 石田彰 |
ローリー | シンディ・ウィリアムズ | 麻上洋子 | 榊原良子 | 戸田恵子 | 冬馬由美 |
デビー | キャンディ・クラーク | あべ静江 | 松金よね子 | 麻上洋子 | 井上喜久子 |
キャロル | マッケンジー・フィリップス | キャロライン洋子 | 山本嘉子 | 冨永みーな | 日笠陽子 |
DJ | ウルフマン・ジャック | 桑田佳祐 | 小林克也 | 大塚芳忠 | |
ジョー | ボー・ホプキンス | 日高晤郎 | 中田浩二 | 小野健一 | 飛田展男 |
カルロス | マヌエル・パディージャ・ジュニア | 結城比呂 | |||
アンツ | ボー・ジェントリー | 堀内賢雄 | たなかこころ | ||
ボブ・ファルファ | ハリソン・フォード | 石丸博也 | 仲木隆司 | 千葉繁 | 内田直哉 |
ホルスタイン | ジム・ボウハン | 広瀬正志 | 板取政明 | ||
ブダ | ジャナ・ベラン | 吉田理保子 | 吉田理保子 | 藏合紗恵子 | |
ウェンディ | デビー・セリズ | 小宮和枝 | 寺門真希 | ||
ボビー | リン・マリー・スチュワート | 吉田理保子 | 吉田理保子 | ||
ウルフ | テレンス・マクガヴァン | 高山春夫 | |||
ペグ | キャスリーン・クインラン | 土井美加 | 勝生真沙子 | 豊口めぐみ | |
エディ | ティム・クロウリー | ||||
ゴードン | スコット・ビーチ | 筈見純 | |||
ジェーン | ケイ・アン・ケンパー | 福圓美里 | |||
ヴィック | ジョー・スパーノ | 島田敏 | 牛山茂 | ||
ハンク | アルバート・ナルバンディアン | 城山堅 | 高山春夫 | ||
サンダーバードの女 | スザンヌ・ソマーズ | 小宮和枝 | 折笠富美子 | ||
ファルファの連れの女 | デブラリー・スコット | ||||
不明 その他 | — | 芝田清子 三橋洋一 藤城裕士 千田光男 西口久美子 藤本譲 鈴置洋孝 二又一成 国坂伸 榊原良子 潘恵子 サザンオールスターズ | 田中亮一 村越伊知郎 田口昻 藤本譲 鈴木れい子 | 曽我部和恭 村松康雄 峰恵研 松岡文雄 大滝進矢 池田勝 屋良有作 山田栄子 鈴木三枝 芝夏美 亀山助清 | |
※日本語吹替は上記の他、野島昭生がリチャード・ドレイファスを吹き替えた機内上映版が2バージョン存在する[2]。
ユニバーサルはルーカスが付けた『アメリカン・グラフィティ』という題名を「分かりにくい」と気に入らず、「アナザー・スロー・ナイト・オブ・モデスト」という題名を提案した。ちなみにコッポラは「ロック・アラウンド・ザ・ブロック」を提案した。
夏の設定だが、撮影は冬に行われた。そのため、息が白くなっているシーンがある。役者たちは薄着で暑そうな演技をし、カットがかかると上着に飛びついたという。
脚本通りに演じることも望まず、俳優たちの好きなように演じさせた。
テリーのベスパ停車の失敗、強盗から投げられる酒のファンブル失敗、デビーの「Did you get it?」の失敗、キャロルの水風船顔面直撃などアクシデントが採用されることが多く、俳優たちは「ルーカスは失敗を望んでいた」と語っている。デビーの台詞の失敗は1テイク目だったので、そのテイクがOKとなり、撮り直しさせてもらえなかったとクラークは語っている。
ドレイファスは撮影時、終始踵を上げ、下げして、手をブラブラさせていたのでカメラ・オペレーターから「じっとしてろ」と注意された。その行動は劇中でも観ることができる。
チャールズ・マーティン・スミスは髪を切らされ、70年代には流行らない髪形にされた。そのためプライベートでは帽子を離さなかったという。ハリソン・フォードは髪を切るのを嫌がり、代わりにカウボーイ・ハットを被って出演した。
本作にはオリジナルの劇伴はなく、全編にわたり物語の設定年代である1950年代半ばから1960年代前半にかけての楽曲が引用されている。また、実在のDJ、ウルフマン・ジャックを本人役で登場させている。全曲が収録されたサウンドトラックも大ヒットし、現在も人気が高い。
しかし、楽曲の権利上の問題から、長らくビデオ化ができなかった。日本の地上波テレビ初放映は、1980年10月24日放送のフジテレビ『ゴールデン洋画劇場』で、サザンオールスターズの桑田佳祐が初の吹き替えを担当した。その後、放映権はTBS系に移り、1984年に深夜特番『ソニー名作洋画ノーカット劇場』で放送された。吹き替え版は、2008年12月19日にユニバーサルから「思い出の復刻版」と題した吹き替え名画の傑作選の第1弾として発売された。
サントラに収録された全41曲は、ルーカス自身の好みで選ばれたものである。なお、エンドロールで流れるザ・ビーチ・ボーイズの「オール・サマー・ロング」は舞台となった1962年ではなく、1964年の楽曲である。
試写を見たユニバーサルの重役ネッド・タネンは「こんな映画は観客に見せる物じゃない」と激怒した。その後、試写を繰り返しても本作への評価は上がらず、ファースト・ランはニューヨークの1館、ロサンゼルスの2館のわずか3館だけであった。更に、ユニバーサルは本作完成から上映までの間に、ルーカスから提示された『スター・ウォーズ』の企画を拒否してしまったが、ルーカスは自作に理解のない会社に企画が渡らないことに却って安堵した。
結果映画は世界的に大ヒットし、この後続篇も製作され、さらに『グリース』、テレビドラマ『ハッピーデイズ』、『グローイング・アップ』など多くの亜流作品を生んだ。現在も青春時代のエピソードを当時のヒット曲で綴る映画を「アメグラもの」と表現されることがある。
当時は無名だったリチャード・ドレイファス、ハリソン・フォード、ロン・ハワード、チャールズ・マーティン・スミスが、のちのアメリカ映画を代表する大スター・売れっ子監督になっていったのは、よく知られるところである[注釈 1]。公開当時はボクサー上がりのポール・ル・マットが一番人気が出るのでは、と言われたが、彼本人の名前よりも役名が浸透してしまい、あまり人気が上がらなかった(俳優としては現在も活動している)。当時プロの役者だったのはハワードだけである。
DVDに収録されているのは、劇場公開版より約2分長いディレクターズ・カット版である。また、オープニングの空にCG処理で夕焼けと雲が加えられている。
「思い出の復刻版DVD」のディスク2に収録されている吹き替えは、TBS「名作洋画ノーカット10週」で放送されたものが収録されている。発売直前まで、発売元のユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパンのサイトには、若干本編からカットがある「日曜洋画劇場」で放送されたもののキャストが記載されていた。
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