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都市交通として使用されている索道 ウィキペディアから
都市索道(としさくどう)は、索道のうち、都市における交通手段として用いられているものを指す。都市型索道や都市型ロープウェイとも呼ばれる。
索道は従来の交通機関と比較した場合、空中を通るため、都市空間を有効活用できること、急勾配や渡河など地形の障害対応が容易なこと、循環式の場合はエスカレーターのような連続輸送が可能で待ち時間が少ないこと、各搬器に運転士が不要なため、比較的少数の人員で運行可能なこと、バリアフリー対応が容易なこと、排気ガス、騒音が少なく環境への負担が少ないことが利点とされる[1][2][3]。
一方欠点としては、路線バスよりは輸送力が大きいものの、鉄道と比べると小さいこと、原則直線でしか軌道を敷設することができず、進路を曲げたい場合は中間駅を介さなければならないこと、びわ湖バレイロープウェイのように速度が最大でも40km/h程度までしか出せないこと、速度やロープの技術上の制限から長距離の移動には適さないことなどが挙げられる[4]。
ただ、曲線で建設出来ない索道の弱点を克服するため、3Sロープウェイの懸垂器を交換してランゲン式や上野式に類似した懸垂式モノレールへ乗り入れしたり、搬器の下部に台車を連結して路線バスやBRT、ULTraをはじめとする個人用高速輸送システムのように自動運転技術で道路を走行出来るようにする方法も構想されている[5][6][7]。また既に、索道技術をベースにしたIビーム式モノレールのスカイレールが実用化しているほか、別のアプローチとしてZipparと呼ばれる自走式搬器型の都市索道の開発も進められている[8]。
搬器は普通索道と呼ばれる閉鎖式のものを使用し、安全性の問題から特殊索道のようなイスのみの開放式搬器はまず採用されない。走行方式はゴンドラリフトと呼ばれる自動循環式か、ロープウェイと呼ばれる交走式を採用することが多いが、山口きらら博の「きらゴン」のように、パルスゴンドラと呼ばれる連接式搬器の固定循環式を採用した例もある[9]。
索道を都市交通として使用する場合、0.3km - 4.2km程度の移動に最も効果があるとされる[4]。だがスキー場など冬季寒冷地での使用と違い、冷房、夜間使用での照明、通信設備の電力需要が高まるため、電源確保が重要となる[10]。
例えば先述のきらゴンの場合、専用の搬器に小型発電機を搭載して冷房の搭載に対応した[9]。YOKOHAMA AIR CABINの場合、各ゴンドラに蓄電池を搭載して、エアコンの使用が可能になっている[11]。3Sロープウェイの場合、滑車式の発電装置を内蔵し、電力供給を行うシステムを搭載することが可能となっている[12]。
索道は長年、スキー場や山岳地帯の観光用の交通手段や貨物用途での建設が多く、都市向けの交通手段としてはあまり注目されていなかった。固定循環式は乗客の乗降を考慮しすぎると巡航速度が遅く、逆に速度を上げすぎると乗客の乗降が困難になるという特性があり、交走式は乗り降りは停止しながら行えるのでこれらの問題は無いものの、搬器数が1~2台と少ないため輸送力が小さいという欠点があったためである。そのためケルン・ザイルバーンやルーズベルト・アイランド・トラムウェイのように河川を渡る場合など、一部の用途に限られていた。
日本でも、1912年から1920年において大阪の初代通天閣と新世界ルナパークを結んでいた「ロープ・ウエィ」や[13]、1914年に東京大正博覧会の「ケーブルカー」、1928年の東北産業博覧会の「架空ケーブルカー」、1931年に開業した浅草松屋屋上の「航空艇」、1951年から1953年にかけて東京都渋谷区の渋谷駅前、東急百貨店東横店にあった「ひばり号」[14][15][16]等の事例があるにすぎず、これらの廃止後は先述の通り、スキー場や山岳地帯の観光用での使用が主となっていた。
しかし固定循環式を改良し、駅において搬器をロープから自動で切り離す自動循環式が普及し始めると、温室効果ガス排出の少なさなどから、都市向けの交通手段として検討され始めるようになった[17]。しかし、それまであまり重要視されていなかった空調や、様々な電子機器の搭載が自動車や鉄道では既に行われており、索道においても電力供給という課題が上がったが、索道は外部からの電力供給は難しく、すぐに都市交通としては普及しなかった[10]。例えば1999年に開業したよみうりランドのスカイシャトルは、搬器の換気は窓の開閉で行うのみで、冷房装置は搭載されていない。またスカイシャトルは常設で敷地外へもアクセス可能なものの、これ以外では大阪万博のレインボーロープウェイ、東京ディズニーランドのスカイウェイ、横浜博覧会の横浜博スカイウェイ、山口きらら博のきらゴン、愛知万博のモリゾーゴンドラとキッコロゴンドラのように、敷地内のみのアクセスだったり、博覧会の開催中など期間限定での運行しか行われていなかった。
そしてこれらの課題に一定の目途が立った2010年、ドイツのコブレンツで連邦園芸博覧会開催に合わせて3Sロープウェイ方式のザイルバーン・コブレンツが、そしてイギリスのロンドンではオリンピック開催に合わせて、自動循環式のエミレーツ・エア・ライン(現・ロンドン・ケーブルカー)が2012年に開業した。そしてロンドンオリンピックを機に注目された都市索道は広がりを見せ、2014年にはボリビアのラパスで大規模な都市索道の路線網で構成されたミ・テレフェリコが開業した。
日本においても2021年に横浜みなとみらい地区においてYOKOHAMA AIR CABINが開業した[11]。また他にも建設計画や構想が存在する(#建設予定・計画・構想の節を参照)。
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