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魚や鳥獣を野に放し、殺生を戒める宗教儀式 ウィキペディアから
放生会(ほうじょうえ)は、捕獲した魚や鳥獣を野に放し、殺生を戒める宗教儀式。放生会はインドに起源をもつ行事で、中国や日本にも伝えられたという[2]。また、インド由来の六道輪廻説と中国の孝が一体化したものであるともいう[3]。
東アジアの大乗仏教の不殺生原理は『梵網経』が根拠となっており、これはインド由来の六道輪廻説と中国の孝が一体化する形で形成された[3]。『梵網経』では、眼前の動物は六道を輪廻する衆生であり、代々の父母であり、我が身であるとする[4]。
放生については『金光明経』にもその思想がみられ、特に末尾の『金光明経懺悔滅罪伝』は放生信仰を示すものになっている[4]。この金光明経による放生会を最初に実行した人物が隋代の中国天台宗の開祖智顗であるといわれる[4]。智顗は漁民が雑魚を捨てている様子を見て憐れみ、自身の持ち物を売っては魚を買い取って放生池に放した。
明代末には万物一体[5]を説く「生生思想」と為善応報の思想をもとに活動する「善会善堂」と呼ばれる結社が流行し、中国仏教の放生会も善会運動の一環として行われた[3]。明代の放生会の隆盛には、雲棲祩宏の著書で人畜平等を説く『戒殺放生文』の影響も大きく、孝と輪廻に基づく東アジア仏教の生命観を背景にしている[3]。
清代以降の放生会については、現代まで寺院の日課テキストとして用いられている『禅門日誦』に雲棲祩宏の『放生儀』をもとにした放生儀礼が記されており、宝勝如来(宝生如来)の十号を唱える代わりに、施餓鬼会で唱える七如来が唱えられる[4]。
八幡宮の祭りである放生会も、本来殺生禁断の思想に基づいて生類を放つ仏教儀礼に由来する[6]。
養老4年(720年)の大隅、薩摩両国の隼人の反乱を契機として、同年に誅滅された隼人の慰霊と滅罪を欲した宇佐八幡宮の祝大神諸男と禰宜尼大神杜女による八幡神の託宣により、宇佐八幡宮で放生会を執り行い[6] [7]、石清水八幡宮では貞観4年(863年)に始まり、その後天暦2年(948年)に勅祭となった。
天武天皇5年(677年)8月17日に諸国へ詔を下し、放生を行わしめたのが初見であるが[8]、殺生を戒める風はそれ以前にも見られたようで、敏達天皇の7年(578年)に六斎日に殺生禁断を畿内に令したり、推古天皇19年(611年)5月5日に聖徳太子が天皇の遊猟を諫したとの伝えもある[9]。持統3年(689年)には近畿地方を中心とする数か所に殺生禁断の地が設けられ、定期的に放生会が開かれるようになった[2]。聖武天皇の時代には放生により病を免れ寿命を延ばすとの意義が明確にされた[10]。
律令体制の衰退とともに古代の国家制度としての放生会は衰滅していく一方、全国に八幡信仰が広まり、石清水八幡宮を中心に放生会が行われるようになった[4]。
応仁の乱の後、石清水八幡宮での放生会も文明15年(1483年)に中断し、戦乱の世となったが、江戸時代の延宝7年(1679年)に徳川幕府から放生会料百石が下され、再開した[4]。特に徳川綱吉による生類憐れみの令は、文治政治への転換期における殺生禁断令の集大成にあたる[3]。
明治元年(1868年)4月24日に神仏分離のため仏教的神号の八幡大菩薩が明治政府によって禁止され、7月19日には宇佐神宮や石清水八幡宮の放生会は仲秋祭や石清水祭に改めさせられた[11]。本祭開催日も、古来より1200年以上、旧暦8月15日の祭礼として行なわれてきたが、明治の廃仏毀釈により、10月10日(仲秋祭)への変更を余儀なくされた[12]。
現代では収穫祭・感謝祭の意味も含めて春または秋に全国の寺院や、宇佐神宮(大分県宇佐市)を初めとする全国の八幡宮(八幡神社)で催される。特に京都府の石清水八幡宮や福岡県の筥崎宮のもの(筥崎宮では「ほうじょうや」と呼ぶ)は、それぞれ三勅祭、博多三大祭の一つに数えられ、多くの観光客を集める祭儀としても知られている。また、これらの行事にはウナギの取扱業者やフグの調理師などが参加する姿が見られる[2]。
放生会には放ち亀や放ち鳥などの行事が行われる。放生会で亀や魚を逃がすために寺院等に設けられた池を放生池という[2]。
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