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大分県大分市にある自然公園 ウィキペディアから
高崎山には野生のニホンザルが生息しており、山麓に設けられたサル寄せ場で餌付けが行われ、観光客等が檻を隔てずにニホンザルの姿を見ることができる。ニホンザルはB群、C群の2つの群に分かれ、それぞれがα(アルファ)オス、いわゆるボス猿に率いられている。かつては1,000頭余を数えたA群も姿を現していたが、C群との争いに敗れて20頭ほどに激減し、2002年(平成14年)6月頃から姿を見せなくなった[5]。高崎山に生息しているニホンザルの個体数は、全体で1,039頭で、このうち、B群が677頭、C群が362頭(2020年11月調査)[6]。
高崎山には少なくとも戦国時代には野生のニホンザルが住んでいたとされる[9]。戸倉貞則が1698年(元禄11年)に著した『豊府紀聞』には、「この山には昔から猿が多く、この国では器量のよくない人の子を「高崎の息」という。顔形が猿に似ているからである。」(「此山多自古猿、国俗見人子少器量者、称高崎之息、以其形類猿」)と記されており[10][11]、また、『豊府紀聞』や『大友興廃記』には16世紀中頃の豊後国府内(現在の大分市)の豪商中屋乾通が、貧しかった頃に高崎山の海岸で蟹に挟まれて苦しむ猿を助けた礼に猿酒の在処を教えられ、それを売って財を成したとの伝承も収録されている[10]。
その後、明治時代末期には約600頭ほどにもなり、大正時代に山火事で一時頭数が激減したものの、1940年(昭和15年)には100頭以上を数えるようになった。終戦直後には200頭程度にまで増えて農作物への被害が深刻となったため、狩猟などによるニホンザルの駆除が試みられたが失敗。これを耳にした当時の大分市長上田保が、駆除に代えて餌付けし観光資源として利用しようとしたのが高崎山自然動物園の始まりである。
1952年(昭和27年)11月26日に上田が高崎山山麓の万寿寺別院の大西真応和尚とともに境内で餌付けを開始[12][13]。餌付けが軌道に乗った翌1953年(昭和28年)3月15日に正式に開園した。その際、上田の発案で、料金の表示を「小人十円、大人は小人並」としたことも話題を集めた[14]。同年のうちに、高崎山が阿蘇国立公園(現阿蘇くじゅう国立公園)に指定されるとともに、「高崎山のサル生息地」が国の天然記念物に指定された[15]。
1954年(昭和29年)には、万寿寺別院から本堂建設のためサル寄せ場移転の申し入れがあったが、協議の結果、サル寄せ場を継続する代わりに、損害補償として年間総売上の20%を万寿寺に支払うことで合意[16]。
1955年(昭和30年)には、上田をモデルに当園でのサルの餌付け等を描いた火野葦平の小説『ただいま零匹』が朝日新聞夕刊に連載され、1957年(昭和32年)後に映画化もされて、高崎山の知名度向上に一役買った[17][18][19]。
2004年(平成16年)3月26日、高崎山の入口からサル寄せ場までを4分で結ぶ2両編成、定員40名の小型モノレール(スロープカー)「さるっこレール」が運行を開始。坂道や階段を登らずにサルを観察できるようになった[20]。
毎年、11月の第3土曜日は、高崎山無料の日とされ、入園料が無料になる[31]。
高崎山では農作物を荒らす野生のニホンザルへの対策として餌付けが行われてきた[32]。
現存する2つの群れは時間をずらしてサル寄せ場に姿を現し、おおむね、勢力の強いC群が午前中(8時半頃[33])に現れ、午後(13時頃[33])にB群に交代する。このため、営業時間中であればいつ訪れてもサルがいることが多く、交代時間前後には両方の群れを見ることができる。餌は、毎時0分と30分に小麦が与えられるほか、各群に1日1回ずつ芋が与えられる[34]。
サル寄せ場への出現状況は、2つの群の力関係や餌の量によって変化する。
近年、B群の勢力が強まったため、C群からB群に交代する時間が早まったり[33]、C群がまったく姿を現さないことが頻繁にあった[35][36][37]。このため、C群から餌場に来る習慣自体が消滅したのではないかと危惧されたが[32]、職員が山中からサル寄せ場まで誘導を行う等の対策が功を奏して、2019年6月以降は比較的安定してサル寄せ場に出現するようになっている[38]。
また、一時2,000頭超まで増えたサルを800頭程度に抑制するために餌の量を減量してきたため[32]、山中に食物が豊富にある夏から秋にかけては2つの群がともにサル寄せ場に姿を現さないこともある[34][32]。2018年春以降は、C群がまったく姿を現さない日が多かったり、B群も短時間で山に帰るなど不安定な状況にある[32]ため、園ではイモを「紅はるか」に変更したり、山中にいるC群をピーナツやイモを撒きながらサル寄せ場まで誘導したりといった試みを続けている[39]
サル寄せ場から国道10号を挟んで、大分マリーンパレス水族館「うみたまご」の隣に位置する。3階建ての建物で、初代αオス(ボスザル)ジュピターの骨格標本[40]をはじめ、高崎山のニホンザルに関する資料等を展示している。また、100名に対応できる研修室を備えているほか、喫茶店、レストラン、土産品店を併設している[41]。
大分マリーンパレス水族館「うみたまご」と共用。
高崎山のサルには1960年代からA群、B群、C群の個体群があったが、2002年頃にA群は姿を消し、以後はB群とC群の2つの個体群が存在する[42][43]。
高崎山に生息するニホンザルの個体数[46][42] | |||||
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年度 | A群 | B群 | C群 | 合計 | 備考 |
1953 | 250 | - | - | 250 | 開園 |
1960 | n/a | n/a | - | 557 | 群ごとのデータなし |
1970 | n/a | n/a | n/a | 1,241 | 群ごとのデータなし |
1980 | n/a | n/a | n/a | 1,704 | 群ごとのデータなし |
1990 | n/a | n/a | n/a | 1,894 | 群ごとのデータなし |
1996 | 1,042 | 557 | 529 | 2,128 | |
1997 | 1,089 | 413 | 497 | 1,999 | |
1998 | 834 | 297 | 556 | 1,687 | |
1999 | 838 | 360 | 563 | 1,761 | |
2000 | 758 | 400 | 617 | 1,775 | |
2001 | 773 | 449 | 660 | 1,882 | |
2002 | - | 503 | 732 | 1,235 | A群が姿を現さなくなる |
2003 | - | 481 | 715 | 1,196 | |
2004 | - | 445 | 763 | 1,208 | |
2005 | - | 484 | 778 | 1,262 | |
2006 | - | 487 | 781 | 1,268 | |
2007 | - | 516 | 774 | 1,290 | |
2008 | - | 491 | 836 | 1,327 | |
2009 | - | 526 | 696 | 1,222 | |
2010 | - | 549 | 816 | 1,365 | |
2011 | - | 540 | 713 | 1,253 | |
2012 | - | 614 | 754 | 1,368 | |
2013 | - | 643 | 712 | 1,355 | |
2014 | - | 701 | 815 | 1,516 | |
2015 | - | 732 | 790 | 1,522 | |
2016 | - | 706 | 659 | 1,365 | B群の個体数がC群を上回る |
2017 | - | 642 | 588 | 1,230 | |
2018 | - | 639 | 534 | 1,173 | [47][48] |
2019 | - | 672 | 534 | 1,206 | C群の分派(202頭)が確認される[45] |
2020 | - | 677 | 362 | 1,039 | C群から分派した群れが確認できず、頭数が大幅に減少[6] |
2022 | - | 669 | 322 | 991 |
カッコ内は在任期間。
高崎山では、1984年(昭和59年)から、その年最初に生まれたサルに、その年の出来事にちなんだ名前を付けている[65]。2009年以降の命名は以下の通り。
また、2012年5月2日には大分市出身で大分市の初代観光大使に選ばれた指原莉乃が、その初仕事として高崎山自然動物園を訪れ、子ザルを「さしこちゃん」と名付けた[79]。2010年6月生まれで、左手首に腕輪のような白い毛がある珍しいサルだったが[61]、同年12月13日に死んでいるのが見つかった[80]。なお、指原は、2018年からさるっこレール内で流れる園内の案内アナウンスを担当している[81]。
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