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手刀打ち(しゅとううち/てがたなうち)またはチョップ(Chop)、ナイフハンド・ストライク(Knifehand Strike)は柔術、柔道、空手、拳法、合気道、プロレスなどで使われる打撃技の一種である。指を握り込まない開掌の形を刀剣類に見立てて、手刀として相手に打ちつけ攻撃する技術である。特に、ボクシンググローブを使用しない徒手の格闘技で広く使われる打撃技法である。また、剣道などの武器を使用する武道・武術においても、裏の型や技の応用として用いられる。
手刀打ちは開掌の形で小指側の側面にて相手を打つ技であり、顎・頸部・こめかみなどの急所を正確に狙うのに適している。通常、小指の爪で自らの薬指を傷つけないよう、指を伸ばし指間は密着させる。
空手の基本では、上から打ち下ろす、横から打ちつける動作が一般的とされる。極真会館系では構えからカウンター気味にそのまま手刀を相手の鎖骨部に突き出すものを手刀の鎖骨打ち込みと呼ぶ。防具付き空手では少林寺流錬心舘初代宗家の保勇が編み出した、体を後ろ向きから前に回転させて打つ、螺旋(らせん)手刀打ち(羅旋手刀打ち)[1]」は、総合格闘技で使われるバックハンドブローの原形となった。
古流柔術における手刀は拇指を人差し指の側に強く付けた手の小指の方の側で打つことが一般的で、主に急所を打つために使われる場合が多い[要出典]。現存[いつ?]最古で1532年に成立した竹内流にも存在する非常に古い当身の方法である[要出典]。
ヨーロッパの古流柔術家たちや柔道家たちが柔道のシステムを参考に古流柔術や柔道から競技化した柔術ファイティングでは手刀打ちによる一本、技ありが認められる[3]。
手刀は空手の型の場合、打ち技としてより受け技として使われる場合が多い。お互いが向かい合って一対一で戦う近代格闘技の試合では使いにくいためあまり見られないが、伝統派空手の試合などではたまに見られることもある。拳を痛めないため、演武などに使われる場合が多い。また、とっさに使えるため、護身の場合は役に立つという空手師範も多い。
日本の柔道の形の演武や古流柔術、合気道では受けが手刀で打ちかかる場合、短刀を持っていることを表現している場合がある。どちらも釵や短刀、小太刀、居合の抜き打ちなど、武器を使う動きに通じる。
講道館柔道の形では、「講道館護身術」・徒手の部の「両手取」で取(とり)が右手刀を受(うけ)の右霞(右こめかみ)に当てる動作[4]、同・武器の部の「振下」(ふりおろし)では、取が杖をかわして左裏拳に続いて左手刀を受の烏兎(ふと、眉間のこと)に当てる動作[5]、「柔の形」・第二教・斜打で受が右手刀で取の烏兎を打つ動作等[6]がある。
柳生新陰流剣術では、柳生宗矩の『兵法家伝書』に言う無刀の極意に至る前に小太刀の稽古を経て、手刀による稽古へと間合いの感覚を錬磨して最後に無刀勢へと至る。この手刀の段階を手刀勢と呼ぶ。手刀勢では仕太刀は手を刀の様に用いて打太刀の太刀を握る小手を打ち落として相手を制する[7]。
少林寺拳法では手を閉じ、水平にして相手の左首を右手で切るようにして打ちかかり牽制する。
プロレスにおいては、戦前、アメリカに渡った柔術家、柔道家出身の日本人レスラーがプロレスのリングで使用した当身技が元とされている。当時アメリカでは柔道はポピュラーであり、空手は今日ほど認識されておらず、アメリカでは「柔道チョップ(Judo Chop)」の名称がプロレスのリングではポピュラーである[8]。 日本において力道山がその豪腕を振るう以前より「チョップ」と呼ばれ使用されていた。
もともと日本国内のプロレスにおいては、掌を広げた状態で首から胸元を張り手で叩く打撃が「チョップ」とされていた。
極真空手総裁の大山倍達は、著書『100万人の空手』の中で、極真会館創設以前にプロレスラーの力道山と親交があり、彼に手刀技を伝授したと述べている。 大相撲からプロレスに転向した力道山は、自身の張り手を空手の手刀のように振り下ろす形に改良して使い、特に掌を返して逆手の状態で相手の咽喉に打ち込む逆水平チョップや袈裟斬りチョップの威力から、ファンやテレビ中継視聴者にプロレス技「空手チョップ」の使い手として広く知られた。この技でプロレス界に確固たる地位を築いた力道山は、「体格に勝る外国人レスラーを空手チョップで倒す」というスタイルで日本全国にプロレスブームを巻き起こした。また、力道山は相手の首根っこ、肩口辺り(頸動脈付近)へ打ち下ろす袈裟斬りチョップも得意としていた。女子レスラーの大森ゆかり、晩年の橋本真也も袈裟斬りチョップを多用していた。
力道山の愛弟子であるジャイアント馬場も空手チョップを受け継いだが、師匠のよく用いた袈裟切り形のチョップのほか、水平に構えて相手の胸板に横に打ち付ける「水平チョップ(水平打ち)」などのバリエーションを生み、特に高身長の馬場が相手の脳天に上から振り下ろすものは「脳天唐竹割り」と呼ばれオリジナルの技となった。
これらの技は技の出が早く、連発しやすく、見た目は単純だが、打った反動が自分の腕にそのまま返るため、腕を相当鍛え上げた人間しか満足な威力を得られない。力道山と馬場以降はラッシャー木村や天龍源一郎が使い手となり、天龍は「天龍チョップ」の通称でチョップ技に再び光を与えた。以降は小橋建太や佐々木健介などが好んで使用しており、小橋は水平チョップだけでなく、多種多様なチョップを開発した。
東洋をイメージさせることから、アメリカではミツ・アラカワ、プロフェッサー・タナカ、ミスター・フジなどの日系ヒールや韓国人選手のパク・ソンも使用していた[9]。海外遠征時の日本人選手も日本人らしさをアピールするために、普段は使用しないチョップ攻撃を見せることがあった。
北米のレスラーではリック・フレアー、ジミー・スヌーカ、リッキー・スティムボートらの「バックハンド・チョップ」、ワフー・マクダニエル、チーフ・ジェイ・ストロンボー、タタンカらインディアン系選手の「トマホーク・チョップ」などが知られる。 なお、アブドーラ・ザ・ブッチャーなどが使う地獄突きは、空手の貫手と同様の技である。
相手の頚動脈や鎖骨あたりを狙って放つチョップ。力道山の得意技で、その現役当時は「空手チョップ」と呼ばれていた。相撲時代に得意だった「張り手」を応用し、空手を習っていた経験から手刀の技法を取り入れて得意技にした。以後は橋本真也や小橋建太などが得意とした。頸動脈チョップともいう。
逆水平チョップのように、バックハンドで繰り出される袈裟斬りチョップもある。
自ら旋回する遠心力を利用し、相手の首筋に逆水平チョップを放つ。小橋建太のオリジナル技である。橋本真也が使用した「燕返し」も同じ技である。逆旋回式のローリング袈裟切りチョップも存在し、こちらは潮崎豪のオリジナル技。
両手を合掌するように合わせて相手の首筋に放つ袈裟斬りチョップ。小橋建太が放つものは「青春の一撃」という固有名称が付いている。女子では三田英津子が使う「ブレイジング・チョップ」が有名。桜庭和志は総合格闘技の試合でガードポジションから繰り出す「幸せチョップ」を使用したことがある。
身長を利用して脳天に上からチョップを放つ。ジャイアント馬場のオリジナル技で「馬場チョップ」とも呼ばれ、「脳天チョップ」「ブレーン・チョップ」「オーバーヘッド・チョップ」という呼称もある。生前の力道山は、頭を鴨居にぶつけて脳天チョップを思いついた馬場に「相手が死んでしまうぞ」と制止していたが、ディック・ザ・ブルーザーとのタイトルマッチに際して解禁に至った。
馬場の愛弟子である田上明も多用。ブルーザー・ブロディやグレート・ムタはトップロープからの飛び技として使用していた。全盛期の馬場は打ち下ろす際に大きくジャンプして繰り出すこともあった。
水平の軌道で腕を横に振るい叩きつけるチョップで、力道山の技が源流とされる。同じ技を言っている場合もあるが、特に「逆水平チョップ」と区別する時は、掌が下に向くものを指し、これを小指側から打ち付けるために腕を振る方向が逆になる。プロレス実況では「逆水平」と略して叫ばれることもある。米国では「バックハンド・チョップ」または「ナイフエッジ・チョップ」と呼もばれる。ジャイアント馬場が放つものは「ジャイアント・チョップ水平打ち」、天龍源一郎の場合は「テンリュー・チョップ」とも呼ばれた。小橋建太、リック・フレアー、佐々木健介、潮崎豪、丸藤正道、エディ・エドワーズなどが得意とする。
正面から相手の胸板に両腕で放つ逆水平チョップ。
高速でチョップを連発する技。コーナーにもたれかかった相手に対して放つことが多い。チョップの種類はさまざまで、水平チョップ、袈裟切りチョップ、チョップ・スマッシュなどがあり、同じ種類のものを連発する。小橋建太、佐々木健介、潮崎豪、小島聡らは、水平チョップのマシンガン・チョップを使用。また、小橋は相手の腕を掴んだ状態でバックハンド式袈裟斬りチョップのマシンガン・チョップも使用した。田上明は通常式の袈裟斬りとバックハンド式の袈裟斬りを交互に放つ、「乱れ打ちチョップ」を使用。さらに川田利明は、相手の腕を掴んだ状態で逆水平チョップを打って相手を倒し、そのまま相手の腕を引っ張り強引に立たせて再び逆水平チョップを打つ「起き上がり小坊師式」を使用。天龍源一郎はグー・パンチと逆水平チョップを交互に繰り返す応用技を披露したことがある。力道山の次男である百田光雄はチョップ・スマッシュでマシンガン・チョップを使用、それに合わせて観客が手拍子をすることから「手拍子付きマシンガン・チョップ」とも呼ばれる。
ワフー・マクダニエル、ダニー・リトルベア、チーフ・ジェイ・ストロンボー、ジュールズ・ストロンボー、ジェイ・ヤングブラッド、マーク・ヤングブラッド、クリス・ヤングブラッド、タタンカなど、インディアンのギミックを用いるレスラーが放つチョップ攻撃の総称。手刀をトマホークに見立てたネーミングであり、胸板へのバックハンド・チョップや脳天へのオーバーヘッド・チョップなど、打ち方は様々である。
両手を同時に振りかぶり、相手の鎖骨に左右からダブルで放つチョップ。かつて新日本プロレスやWWFで活躍したキラー・カーンのモンゴリアン・ギミックに合わせて呼称された。カーンの引退後は天山広吉、モンゴルマン、橋誠、グレート-O-カーン、桜庭和志が使用。また桜庭は総合格闘技のリングで使用したこともある。
両手を交差し、正面から打ちつけるチョップ。日本では1970年代、ラッシャー木村など国際プロレスの選手を中心に使われ始めた。ミル・マスカラスは自ら体を投げ出して放つフライング・クロス・チョップ(フライング・クロス・アタック)を得意技としていた。
正面から相手の胸板に上から下へ片腕を振り下ろすようにチョップを放つ。袈裟斬りチョップを胸板へ打ち込む形である。実際は掌を相手に打ち付ける場合が多いため、事実上胸板への張り手の様な格好になる。かつては力道山やジャイアント馬場が使用していたが、以後は百田光雄が数少ない使用者となった。百田はコーナーへもたれかかった相手へ連続して打ち込み、チョップに合わせて観客が手拍子を打つのが定番となっていた。
正面から両腕を同時に上から下へ振り下ろすように相手の胸板にチョップを放つ。
野球の投球フォーム風のモーションから繰り出されるチョップ・スマッシュ。野球やソフトボールをバックボーンに持つ選手(石井慧介、下村大樹、渡辺未詩、高鹿佑也など)やギミックとする選手(タイガースマスクなど)が使用。
マット上に倒れている相手の喉元や胸などに、立った状態からチョップを振り下ろす。自らが倒れこみながら打ち込む場合もある。小橋建太、天山広吉が使用。ワフー・マクダニエルは「トマホーク・ドロップ」の名称で使用した。
スコッティ・2・ホッティのオリジナル技。仰向けに倒れた相手に対して両手を広げて地団駄を踏んだ後、観客の「W・O・R・M」のチャントに合わせて片足飛びでリング内を半周、技名の通りミミズのように体を屈伸させて相手に向かって進み、最後は観客の「フー! フー! 」のチャントに合わせて両腕を大きく左右に振って相手の頭部にチョップを放つ。チョップ以外の動作はパフォーマンス要素であり、ダメージには関わらない。
小橋建太のオリジナル技。相手をバックブリーカーの体勢で抱え、そのまま喉元にチョップを叩き込む。大変危険な技であるためか、相手の力量に合わせて使用する。胸板に打ち込むバリエーションも存在。
小橋建太のオリジナル技。ブレーンバスターで担ぎ上げたあと、前方に背面から投げ落としてリングに落ちる寸前に相手の喉元にチョップを見舞う技。初公開が高知県大会であったため、高知ゆかりの坂本龍馬に因んで命名。
首の後ろを狙って振り下ろすチョップ。
ジ・アンダーテイカーのオリジナル技。相手の片腕をねじり上げつつ、自身はトップロープを歩き、飛び降りざまに相手の肩付近にチョップを放つ。師匠のドン・ジャーディンより伝授された[10]。ねじり上げられた腕がトップロープ綱渡りによる負荷でダメージを受け、チョップによってさらに追い討ちを受ける。ブル・ブキャナンも使用。新崎人生の拝み渡りも同系統の技。
コーナートップより飛びつき、相手の肩にまたがった状態で、大見得を切りつつ頭部に放つチョップのこと。狂言方和泉元彌がプロレスに進出した際に用いたオリジナル技。名前の由来は、もともと「フライング元彌チョップ」という名前だったものを、会見で緊張した和泉元彌が間違って言ってしまったことによる。
本人のインタビューによると、人間のつぼ」を刺激することでダメージを与え、技に入る前に「弓矢八幡討って捨て申す」と前説を入れることでエネルギーを蓄えることができ、威力がパワーアップするとのこと。
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