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大腸(盲腸、結腸、直腸)に発生する癌腫 ウィキペディアから
大腸癌(だいちょうがん、英語: Colorectal cancer[注釈 1]、ドイツ語: Kolorektales Karzinom)は、大腸(盲腸、結腸、直腸)に発生する癌腫である[1]。肛門管に発生するものを含めることもある。
正式には部位別に盲腸癌(もうちょうがん、Cecum cancer)、結腸癌(けっちょうがん、Colon cancer)、直腸癌(ちょくちょうがん、Rectum cancer)と称される。
徴候や症状には、血便、腸の動きの変化、体重の減少、常時の疲労感などがある[2]。
男女で症状に性差があり、男性は、比較的肛門に近い位置に出っ張った腫瘍が、女性は肛門から離れた大腸の奥に扁平な腫瘍ができる。このため女性は検査で発見しづらく悪性度が高く女性死亡要因1位につながっていることが指摘されている[3]。
ほとんどの結腸直腸癌は老年および生活習慣の要因によるもので、遺伝的疾患による症例はごくわずかである[4][5][6]。他のリスク因子には、食事、肥満、喫煙、運動不足などがある[4]。リスクを増大させる食事は赤身肉、加工肉、アルコールなどである[4][7][8]。他のリスク因子には炎症性腸疾患があり、クローン病および潰瘍性大腸炎を含む[4]。遺伝性疾患として原因となりえるものは家族性大腸腺腫症、遺伝性非ポリポーシス大腸癌であるが、これらは5%未満である[4][5]。典型的には当初はしばしば良性腫瘍であり、ポリープの形をとりえ、時を経てがんとなる[4]。
診断は大腸内視鏡検査によって行われ、サンプルを採取することで判別される[2]。転移進行を確認するために医用イメージングが行われる[1]。検査の一つであるスクリーニングは結腸直腸癌による死を予防および軽減するのに有効である[9]。スクリーニングは50歳から75歳から始めることが勧められる[9]。
世界的には、大腸癌はがんの中で3番目に多く、全症例の10%を占めている[10]。2012年には140万人の新たな症例が発生し、694,000人が死亡した[10]。先進国では一般的であり、全症例の65%以上を占める[4]。女性より男性のほうが多く発症する[4]。
世界では毎年100万人以上の人々が大腸癌を発症する[12]。死者数は1990年には49万人、2010年には約715,000人であった[13]。
日本では女性のがんの死亡率の1位、男性では3位を占め、2015年には男性でも2位に上昇すると予想されている[14][15]。アメリカ合衆国においては、3番目に多い癌で、癌死の原因として2番目に多く、生涯に大腸癌に罹患する確率は約7%である。日本でも胃癌を追い越し肺癌についで2番目に多くなっている。
一般に早期大腸癌であれば自覚症状はなく、健康診断や人間ドックで発見される。症状が全く現れない場合も少なくない。進行大腸癌でも環周度[17]が1/4以下ならば症状はほとんどない。1/2周を超えると腸内容の通過障害を起こす場合がある。
左側結腸に存在すると便通異常、腹痛、腹部膨満感などがあり、血便を伴うこともある。しかし、右側結腸ではこれらの症状は乏しく貧血、体重減少、腫瘤触知などの症状となる。これは上行結腸では内容物がまだ液体であるからであると説明されている。左側結腸の全周性病変になると排便困難、便秘、イレウスを起こすこともある。
以下のものが報告されている。
関連の強さ | リスクを下げるもの(部位) | リスクを上げるもの(部位) |
---|---|---|
確実 | 身体活動(結腸) | たばこ(口腔、咽頭、喉頭、食道、胃、肺、膵臓、肝臓、腎臓、尿路、膀胱、子宮頸部、骨髄性白血病) 他人のたばこの煙(肺) 過体重と肥満(食道<腺がん>、結腸、直腸、乳房<閉経後>、子宮体部、腎臓) 飲酒(口腔、咽頭、喉頭、食道、肝臓、乳房)、 アフラトキシン(肝臓)、 鹹魚|中国式塩蔵魚(鼻咽頭) |
可能性大 | 野菜・果物(口腔、食道、胃、結腸、直腸) 身体活動(乳房) | 貯蔵肉(結腸、直腸) 塩蔵品および食塩(胃) 熱い飲食物(口腔、咽頭、食道) |
可能性あり データ不十分 | 食物繊維、大豆、魚、ω-3脂肪酸、 カロテノイド、ビタミンB2、ビタミンB6、 葉酸、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンD、 ビタミンE、カルシウム、亜鉛、セレン、 非栄養性植物機能成分 (例:アリウム化合物、フラボノイド、イソフラボン、リグナン) | 動物性脂肪 複素環式アミン 多環芳香族炭化水素 ニトロソ化合物 |
多くの大腸癌の発生に関する機序については大きく以下の2つが論じられている。
大腸癌で最も多く見られるものは腺癌で、全体の95%も占める。他についても様々に存在する。
大腸癌は早期に発見できれば完全治癒の可能性が大きくなる。集団健診では費用対効果を考慮して通常は「便潜血反応」が行われる。反応が陽性であった場合、貧血などの異常がある場合、その他の大腸癌のハイリスクの場合は、癌をはじめとする大腸疾患の確定のため大腸内視鏡検査が行われる。
大腸癌の病期分類は主に局所浸潤の度合い、リンパ節浸潤の度合いあるいは遠隔転移の有無によって決定される。今日においては、日本では「大腸癌取り扱い規約」に基づく独自の病期分類を行っている。国際的にはTNM分類が病期分類に使用される。あるいは医者によっては以前から使用されていたデューク分類 (Duke's system) を使用する者もいる。
UICCのTNM分類の定義を次に示す。
例えば患者が癌に罹患していなければT0N0M0となる。
まずは肉眼的分類として以下がある。
という分類がある。これは胃癌の分類と全く同じである。大腸癌取り扱い規約によると壁深達度(いわゆるT)がTNM分類よりはるかに細かくなる。
上記以外の有名な分類をあげる。どの分類を用いるか悩むときはなぜ分類するのかを考える。結局、治療の選択をしたいことが多いので自分がベストと思う治療法を選択する根拠となる分類を用いればよい。なお腸壁とは固有筋層までのことである。
他の癌の治療と同様に、治療方針は癌の病期によって変わってくる。主に以下に挙げられる治療を集学的に行っていく。また、近年では臨床診断が進み、大腸ポリープ・大腸癌を含めて「大腸腫瘍」として一括に取り扱うことで評価・治療を行っていく。本稿では大腸癌(進行)について主に記述。
主に大腸ポリープ・早期大腸癌[注釈 2]に対し、内視鏡を用いてEMR・ESDによって病変切除による根治治療が施行される。内視鏡治療は原発巣の切除は可能であるが、リンパ節郭清は外科的手術でしか行えないため、リンパ節転移の無いと思われる病変に対し選択される。
旧来より、外科手術による癌病変切除・リンパ節郭清は根治術の根幹である。個々の術式に関しては「消化器外科学」参照。
他の悪性腫瘍と異なり、大腸や胃などの管腔臓器の癌は、癌による消化管閉塞(イレウス)・出血を生じることが多く、遠隔転移なども認める進行癌であっても、比較的全身状態良好なうちに食事摂取困難となる場合も多くあり、根治的ではなく対症療法的に原発巣切除・バイパス術施行などが行われることも多い。
術後病期Stage Ⅲ以上の症例には再発予防のために6か月間の術後補助化学療法が実施される。フルオロウラシルなどのフッ化ピリミジン系薬剤とオキサリプラチンの併用療法が推奨されているが、フッ化ピリミジン系薬剤単剤も選択肢となる。術後病期Stage IIの場合は、再発高リスク症例に対して同様の術後補助化学療法が検討される。
根治切除不能な進行再発大腸癌では、基本的に抗癌剤+分子標的治療薬という組み合わせの治療が適応とされている。大腸癌は「管腔臓器の腫瘍」であり、「出血」や「腸閉塞」と言った局所症状が強く出てくるため、原発巣切除治療が先行して行われる場合も多い。
血管新生阻害薬および抗EGFR抗体は上記の抗癌剤と併用して投与される。RASおよびBRAF変異の有無、一次治療か二次治療か、原発巣が左側か右側か、毒性プロファイルの違いなどからどちらの薬剤を併用するか検討される。併用薬剤としてベバシズマブとセツキシマブを比較した試験のサブグループ解析において、左側の場合はセツキシマブ、右側の場合はベバシズマブが優れた成績であった。
またBRAF変異陽性例の二次治療として、エンコラフェニブ(BRAF阻害薬)+MEK阻害薬(ビニメチニブ)+抗EGFR抗体(セツキシマブ)の併用療法の有効性が報告された。
免疫療法
大腸がんにはマイクロサテライト不安定性陽性症例(MSI-H)がおり、そのような症例には免疫療法が二次治療以降で行われる。
特に直腸癌においては、原発腫瘍巣の縮小効果が大きく、手術での肛門機能温存も期待出来るため、第一選択として術前照射が広く行われている。
(アイウエオ順。生還者と亡くなった人物の双方を含む)
「Category:大腸癌で亡くなった人物」も参照
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