第45回トロント国際映画祭

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第45回トロント国際映画祭(だい45回トロントこくさいえいがさい : The 2020 Toronto International Film Festival)は2020年9月10日から21日[注釈 1]まで開催された。オープニング作品はスパイク・リー監督によるデヴィッド・バーンの同名ブロードウェイ・ミュージカルを映画化した『アメリカン・ユートピア英語版』である[1]。なお、今回はクロージング作品はない。

概要 オープニング, 会場 ...
第45回トロント国際映画祭
オープニングアメリカン・ユートピア英語版
会場 カナダ トロント
創設 1976年
賞名 ピープルズ・チョイス・アウォード - 『ノマドランド
期間 2020年9月10日 - 21日
ウェブサイト tiff.net
トロント国際映画祭開催史
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概要

要約
視点

第45回は新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、世界三大映画祭の一つであるカンヌ国際映画祭が開催中止となるなど本映画祭も開催も危ぶまれていた。映画祭のエグゼクティブ・ディレクターのジョアナ・ビセンテ英語版とアーティスティック・ディレクターのキャメロン・ベイリー英語版は映画祭の計画を語り、「We Are One: A Global Film Festival英語版」を立ち上げたビデオ会議や「IndieWire(英語)ポッドキャストにて、カンヌ国際映画祭など中止となった映画祭で公開するはずだった作品を上映する「一つのプラットフォーム」、あるいは上映会場にドライブインシアターを使いこの種の上映施設の復活につなげるなどとした[2][3]。また、ヴェネツィア国際映画祭テルライド映画祭ニューヨーク映画祭の主催者による共同声明の中で、トロントとともに秋のビッグ4映画祭として、「映画のエコシステムを繁栄させて続けている映画製作者、観客、ジャーナリスト、業界関係者にサービスを提供すること」を目的とした協力と団結の精神を約束した[4]

6月24日、主催者は会期を9月10日から19日とする開催を正式発表し、映画祭の最初の5日間は50作品をドライブインや屋外などソーシャル・ディスタンスを確保した既製の方法で上映すること、その後、映画祭の残りの期間は専用のストリーミング・プラットフォームを開設して配信すること、レッドカーペットや記者会見、トークイベントはバーチャルの開催を取り入れることを発表した[5][6]。そのプラットフォームは7月に「デジタルTIFFベルライトボックス」としてチケットを発売し、映画祭開催前の数週間にわたり、映画祭の過去出品作から厳選した作品を短期間のみ視聴できるデジタルレンタル向けに用意した[7]。同プラットフォームには国際的な批評家や業界向けの専門的な「プロフェッショナル・オプション」と現地の視聴者だけが利用できる「パブリック・オプション」の両方が含まれ、チケットの価格は現地でもオンラインでも同額とした。「プロフェッショナル・オプション」にはパンデミックに伴った海外渡航閉鎖に対策し、この映画祭が映画市場として機能するように公式プログラムにない30作品を追加した[8]

映画祭の実地会場はソーシャル・ディスタンスが施されたTIFFベルライトボックス英語版と、オンタリオ・プレイス英語版に2面、屋外スクリーン1面をポルソンピア英語版に設置した[9]。上映会場の1つとして発表されたイサベル・バーダー・シアター英語版は、トロント大学にソーシャル・ディスタンス措置が残ったため会場から外された[10]。主催者は当初、対面上映の「マスク着用は任意」と発表したが、映画祭の社会的性質に感染のリスクを高める可能性があること、潜在的なスーパー・スプレッダー・イベントをわざわざ作るのかと批判されたことを受け、マスク着用は義務であり任意ではないとルールを変更した[11][12][13]。またフェスティバル企画者や批評家には、例年よりもプログラムが小規模な点から、通例は見落とされがちなドキュメンタリーやディスカバリー・プログラムの若手監督の作品など、今回は受賞のチャンスが高まる可能性を指摘された[14]

アンバサダー

今回の開催には著名人や映画製作者が直接参加できないという前代未聞の事態が発生したため、映画祭のプロモーションに貢献する「TIFFアンバサダー」50名を指名した[15][16]

プログラム

要約
視点

スパイク・リー監督の『アメリカン・ユートピア英語版』が当映画祭のオープニング映画として発表されたが、この映画祭と秋の映画祭との連帯の一環として、クロエ・ジャオ監督の『ノマドランド』もヴェネツィア国際映画祭と同日に公開された[17][18]

映画祭の上映作品はまず2020年6月24日に[19]、7月30日に追加分を[20]、8月25日に短編映画と特別イベントの最終発表を行った[10]

ガラ・プレゼンテーション

スペシャル・プレゼンテーション

コンテンポラリー・ワールド・シネマ

マスターズ部門

TIFF ドキュメンタリー部門

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発見部門

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日本語題 原題 監督 製作国
180° RuleFarnoosh Samadi
Beans Tracey Deer
Beginning (Dasatskisi) Dea Kulumbegashvili
The Best Is Yet to Come (Bu Zhi Bu Xiu) Wang Jing
Gaza mon amour Tarzan Nasser[注釈 2]、Arab Nasser
Limbo Ben Sharrock
Memory House (: Casa de Antiguidades) ジョアン・パウロ・ミランダ・マリア(ポルトガル語)
Shiva Baby Emma Seligman
pring Blossom (Seize printemps) Suzanne Lindon
Wildfire Cathy Brady
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短編部門

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日本語題 原題 監督 製作国
4 North AJordan CanningHowie Shia
Aniksha Vincent Toi
The Archivists Igor Drljaca
As Spring Comes (: Comme la neige au printemps) Marie-Ève Juste
Benjamin, Benny, Ben Paul Shkordoff
Black Bodies Kelly Fyffe-Marshall
David Zach Woods
Drought Remi Itani
Dustin Naïla Guiguet
Every Day's Like This Lev Lewis
Found Me David Findlay
The Game Roman Hodel
History of Civilization Zhannat Alshanova
In Sudden Darkness Tayler Montague
Loose Fish Francisco Canton、Pato Martinez
Marlon Brando Vincent Tilanus
Mountain Cat Lkhagvadulam Purev-Ochir
Navozande, the Musician Reza Riahi
O, Black Hole! Renee Zhan
Our Hearts Beat Like War Elinor Nechemya
Pilar Yngwie Boley、Diana van Houten、J.J. Epping
Point and Line to Plane Sofia Bohdanowicz
The Price of Cheap Rent Amina Sutton、Maya Tanaka
RKLSS Tank Standing Buffalo
Rules for Werewolves Jeremy Schaulin-Rioux
Scars Alex Anna
Shooting Star (: Comme une comète) Ariane Louis-Seize
en:Sing Me a Lullaby Tiffany Hsiung
Sinking Ship (La Naufrage) Sasha Leigh Henry
Stephanie Leonardo van Dijl
Still Processing Sophy Romvari
Strong Son Ian Bawa
Succor Hannah Cheesman
Sër Bi Moly Kane
Tie Alexandra Ramires
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ミッドナイト・マッドネス部門

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日本語題 原題 監督 製作国
Tao Chu Li Fa YuanI-Fan Wang中華民国の旗 台湾
シャドウ・イン・クラウドShadow in the Cloudロザンヌ・リャン英語版アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
ニュージーランドの旗 ニュージーランド
ViolationMadeleine Sims-Fewer
ダスティ・マンチネッリ英語版
カナダの旗 カナダ
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プライムタイム

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日本語題 原題 監督 製作国
理想の花婿A Suitable Boyミーラー・ナーイルイギリスの旗 イギリス
インドの旗 インド
サード・デイ 〜祝祭の孤島〜The Third Dayフェリックス・バレット英語版
デニス・ケリー英語版
イギリスの旗 イギリス
Tricksterミシェル・ラティマー英語版カナダの旗 カナダ
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ウェイブレングス

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日本語題 原題 監督 製作国
Faunaニコラス・ペレーダ英語版メキシコの旗 メキシコ
カナダの旗 カナダ
The Inheritanceエフライム・アシリアメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
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特別上映

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日本語題 原題 監督 製作国
グレタ ひとりぼっちの挑戦I Am Gretaネイサン・グロスマン スウェーデン
J・バルヴィン〜メデジンから来た男〜The Boy from Medellínマシュー・ハイネマン英語版アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
白いトリュフの宿る森The Truffle Huntersミシェル・ドウェック英語版
グレゴリー・カーショウ
イタリアの旗 イタリア
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
ギリシャの旗 ギリシャ
ウォーターマンThe Water Manデヴィッド・オイェロウォアメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
The Water Walkerジェームス・バーンズカナダの旗 カナダ
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
Underplayedステイシー・リーカナダの旗 カナダ
ウルフウォーカーWolfwalkersトム・ムーア
ロス・スチュワート
アイルランドの旗 アイルランド
ルクセンブルクの旗 ルクセンブルク
フランスの旗 フランス
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プラネット・アフリカ

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日本語題 原題 監督 製作国
40 Years A Prisonerトミー・オリバーアメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
Akilla's Escapeチャールズ・オフィサー英語版カナダの旗 カナダ
En route pour le milliardディエウド・ハマディ コンゴ民主共和国
フランスの旗 フランス
ベルギーの旗 ベルギー
The Way I See Itドーン・ポーター英語版アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
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業界賞部門

この部門は映画市場として、商業配給の対象をしぼりこむ目的で設けられた。北アメリカの映画関係者はパンデミックの影響で国外への渡航ができず国際映画祭の出席を見送っており、それを補うため下記の作品を業界関係者にのみ公開した。一般観客向けの有料プラットフォームでは上映していない[8]

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日本語題 原題 監督 製作国
A Good ManMarie-Castille Mention-Schaar
After LoveAleem Khan
And Tomorrow the Entire World (: Und morgen die ganze Welt)Julia Von Heinz
ApplesChristos Nikou
Baby DoneCurtis Vowell
Falling for FigaroBen Lewin
The GardenRagnar Bragason
Here We AreNir Bergman
HollerNicole Riegel
In Between DyingHilal Baydarov
KarnawalJuan Pablo Félix
The Kid DetectiveEvan Morgan
Kill It and Leave This TownMariusz Wilczynski
La VerónicaLeonardo Medel
Like a House on FireJesse Klein
LoversNicole Garcia
Magic MountainsUrszula Antoniak
MondayArgyris Papadimitropoulos
The Monopoly of ViolenceDavid Dufresne
My Best Part (: Garçon chiffon)Nicolas Maury
My Heart Goes Boom!Nacho Álvarez
My Name Is Francesco Tottien:Alex Infascelli
Saint-NarcisseBruce LaBruce
ShortaAnders Ølholm、Frederik Louis Hviid
Should the Wind DropNora Martirosyan
Simple Passion (: Passion simple)Danielle Arbid
SweatMagnus von Horn
The TiesDaniele Luchetti
ToveZaida Bergroth
The TranslatorRana Kazkaz、Anas Khalaf
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受賞者

要約
視点

恒例の賞

受賞者は9月20日に発表された。ドキュメンタリー部門とミッドナイト・マッドネス部門は上映作品が減ったため、次点ではなく受賞者のみが選ばれたが、観客賞は次点まで引き続き発表された[21]。 ただし、審査された賞の一部は今回は発表されなかったほか、通常とは異なる形式で発表された。プラットフォーム賞は名前の挙がった作品がないため、またカナダ第一回長編映画賞[訳語疑問点]は対象となる映画の数が限られておりそれぞれ発表がなかった。カナダのシンガーソングライターであるショーン・メンデスは映画祭との協賛による「ショーン・メンデス財団チェンジメーカー賞」(Shawn Mendes Foundation Changemaker Award)の創設を発表し、社会的メッセージ性のある作品を制作した映画作家を表彰すると述べた[22]

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作品 監督
観客賞 - 受賞 ノマドランド クロエ・ジャオ
観客賞 - 次点1位 あの夜、マイアミで レジーナ・キング
観客賞 - 次点2位 Beans トレイシー・ディアー英語版
観客賞(ドキュメンタリー部門) Inconvenient Indian ミシェル・ラティマー英語版
観客賞(ミッドナイト・マッドネス部門) シャドウ・イン・クラウド ロザンヌ・リャン英語版
カナダ長編映画賞 Inconvenient Indian ミシェル・ラティマー
カナダ長編映画賞 - 佳作 Fauna ニコラス・ペレーダ英語版
カナダ短編映画賞 Benjamin, Benny, Ben ポール・シュコルドフ英語版
国際短編映画賞 Dustin ナイラ・ギゲ英語版
FIPRESCI დასაწყისი デア・クルムベガシヴィリ英語版
ネットパック賞 Gaza mon amour ターザン・ナセル
アラブ・ナセル
アンプリファイ・ボイス 夢追い人 チャイタニヤ・タームハネー英語版
La Nuit des rois フィリップ・ラコート英語版
アンプリファイ・ボイス - 佳作 En route pour le milliard ディエウド・ハマディ
チェンジメーカー賞 Black Bodies ケリー・ファイフ・マーシャル英語版
シェア・ハー・ジャーニー Sing Me a Lullaby ティファニー・ハシュン英語版
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TIFFトリビュート・アワード

前回2019年に続き、俳優や映画製作者がそのキャリアにおいて映画世界に寄せた傑出した貢献を称えるため、功労賞のTIFFトリビュート・アワード(TIFF Tribute Award)を設けた。今回はアンソニー・ホプキンスクロエ・ジャオミーラー・ナーイルケイト・ウィンスレットが受賞者になると発表した[23]。授賞式は今回初めて生中継され、CTVの番組『eTalk(英語)タイロン・エドワーズ英語版とクロエ・ワイルドが司会を務めた[24][25]

カナダ作品トップ10部門

この映画祭のカナダ作品トップ10部門(Canada's Top Ten)は国内の映画評論家と映画祭主催関係者が投票し、当年の長編および短編の最優秀作品を選ぶ。発表日は2020年12月9日であった[26]

長編部門

短編部門

脚注

外部リンク

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