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ユキノシタ目ボタン科の植物 ウィキペディアから
ボタン(牡丹[2]、学名: Paeonia suffruticosa)は、ボタン科ボタン属の落葉低木。または、ボタン属(Paeonia)の総称。原産の中国名も牡丹[1]。 別名は「富貴草」「富貴花」「百花王」「花王」「花神」「花中の王」「百花の王」「天香国色」「名取草」「深見草」「二十日草(廿日草)」「忘れ草」「鎧草」「ぼうたん」「ぼうたんぐさ」など多数[3]。観賞用の花木で品種も多く、庭に植えられる。根の樹皮部分は薬効があり、漢方薬の原料になる。
以前はキンポウゲ科に分類されていたが、おしべ・花床の形状の違いからクロンキスト体系ではシャクヤクとともにビワモドキ目に編入され、独立のボタン科とされた。APG IIIではユキノシタ目とされる。
原産地は中国西北部[4][2]。花を観賞するために栽培されている[4]。落葉広葉樹の低木で、高さは50 - 180センチメートル (cm) [2]。幹は直立して枝分かれする[4]。枝は太くて無毛である[2]。樹皮は淡褐色から茶褐色で、浅く割れて剥がれる[2]。葉は1回3出羽状分裂し、小葉は卵形から披針形をしており、葉先は2 - 3裂するか全縁である[4]。
花期は初夏(5月ごろ)[2]。本年枝の上端に、大型の花を1個つける[4]。冬牡丹は、春咲きの品種を温度調節して冬に咲かせたものである[2]。
冬芽は鱗芽で、頂芽は互生する側芽よりも大きく、長さ2 - 3 cmもある[2]。芽鱗は6 - 8枚あり、内側の芽鱗は濃赤褐色をしている[2]。
元は薬用として利用されていたが、盛唐期以降、牡丹の花が「花の王」として他のどの花よりも愛好されるようになった。たとえば、『松窓雑録』によれば、玄宗の頃に初めて牡丹が愛でられるようになったものの、当時は「木芍薬」と呼ばれていたと記載される[5]。また、隋の煬帝や初唐の則天武后が牡丹を愛でたという故事がある。ただし郭紹林はこれらの故事を慎重に検討し、虚構であると結論づけている[6]。 清代以降、1929年までは中国の国花であったとされることもあるが、清政府が公的に制定した記録はみられない。1929年、当時の中華民国政府は国花を梅と定めた。中華民国政府が台湾に去った後、公式の国花は定められていなかった。中華人民共和国政府は近年、新しく国花を制定する協議を行い、牡丹、蓮、菊、梅、蘭などの候補が挙げられたが、決定に至らなかった。
シャクヤクとともにボタン属に分類され、英語ではどちらも「Peony」と呼ばれるが、木本性のものは以下の種。
樹高は原種で3メートル (m) 、接木で作られる園芸品種で1 - 1.5 m。
従来は種からの栽培しかできなくて正に「高嶺の花」であったが、戦後に芍薬を使用した接ぎ木が考案され、急速に普及した。
鉢植えや台木苗で市場に出回る。
品種改良が盛んに行われ、園芸品種が非常に多い。花色も豊富(原種は紫紅色)で、花形も多彩である。
なお、日本の正月に飾られるハボタンはアブラナ科で、葉の形が牡丹の花に似ているが、別種で、放置すればそのうちにアブラナに似た花が咲く。また、夏に咲く草丈10センチメートルほどのマツバボタンはスベリヒユ科の園芸品種で、これも別種である。
牡丹苗はシャクヤクを台木に接ぎ木した苗が作られ、販売もされて流通している[4]。春に花付の鉢植えが、秋に苗木が売られるので、それで育てる。
日当たり、排水が良く、膨軟土を好むため、深く耕して堆肥を施し、高畦にして植え付ける[4]。夏の西日は避けるほうがよい。花後は株の衰弱を防ぐために、首の部分から切り落とし、お礼肥を施す。植え付けや株をいじるのは、9月下旬から10月下旬が適している。
実生でも育てられるが、発芽しないリスクもあり開花まで時間もかかるので、一般的ではない。
秋の苗木は根を切っているので、植えた翌春に咲いても、その後は株が弱り、次に咲くまで時間がかかる。あるいは枯れてしまう。そのため、根が伸びた後で幹を切り二年後に期待するという方法がある。花付のものも花が終わると秋には鉢増しをする。土は腐植をたくさん含んだ肥沃なものを使用する。なお夏には休眠するので、葉は取る。
春に台木からシャクヤクの芽が伸びてくるが、これはすぐに摘み取る。放置すると接木されたボタンの生育の妨げとなり、最悪の場合、ボタンが枯死して完全にシャクヤクの株に戻ってしまう。
根の樹皮部分は牡丹皮(ぼたんぴ)と称される生薬で[4]、日本薬局方にも収録されている。シャクヤク台に接ぎ木したボタン苗から栽培を始めて、薬用にするときは自根を発生させ、蕾を見たら摘除して育て、根を掘り取るまでに5年以上はかかる[4]。9月下旬から10月上旬ごろに根を掘り取って水洗いし、竹べらなどで皮部を裂いて10 cmほどに切り、天日乾燥して調整される[4]。
薬効成分はペオノールで、消炎、解熱、止血・鎮痛、浄血、月経痛、子宮内膜炎などに効用があると言われている[4][7]。漢方では主に婦人病薬に配剤されていて[4]、大黄牡丹皮湯、六味地黄丸、八味丸、杞菊地黄丸など漢方薬の原料になる。民間療法では、産後の諸病に、根皮1日量6グラムを水600 ccで半量になるまで煎じて、3回に分けて服用する用法が知られている[4]。
中国文学では盛唐以後、詩歌に盛んに謳われるようになった。
ほか
着物を始め、陶磁器や漆器、家具などの文様に好んで描かれてきた。雛人形の調度にも牡丹をあしらった道具が並ぶことが多い。また、想像上の霊獣である「唐獅子」と組み合わせた「牡丹唐獅子」の意匠も好まれ、多く工芸や刺青などの題材に使われた。
牡丹紋(ぼたんもん)は日本の家紋の一種。牡丹の花や葉を図案化したものである。
日本の朝廷に於いて関白を務めた近衛家が車紋(牛車に描かれる紋)として使用したのが初めといわれる。京都東本願寺へ、近衛家の子女が幾度か嫁したことを縁に真宗大谷派の宗紋ともされている。
「杏葉牡丹」「落ち牡丹」「大割牡丹」「抱き牡丹」「向こう牡丹」「立ち牡丹」「鍋島牡丹」「島津牡丹」等がある。
平安貴族社会で決まっていた「襲(かさね)の色目」の取り合わせで、「表が白、裏が紅梅」のものは「牡丹」と呼ばれた。
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