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水泳競技やレクリエーションのために人為的に水を溜めてある施設 ウィキペディアから
通称でプール、正式名称でスイミングプール(英: swimming pool)は、水泳をするための水槽[1]。
プールは、学校、スポーツ施設、スイミングクラブ、フィットネスクラブ、レジャー施設、一部のホテル、保養施設、一部の豪華客船、一部の住宅の庭[2]などに設置されている。
用途は、遊泳、教育、競泳、水球、アーティスティックスイミング、飛び込み、潜水などがある[3]。また水泳だけでなく、さらに水中ウォーキングのような運動にも使われ[4]、レクリエーションやリラクゼーション[5]のためにも使われる。
日本語では通常は略称でプールと呼ぶが、英語のpoolは単に「水たまり」や「たまり」(血や化学薬品など単に液体が溜まっている場所)を指すので、水泳用のプールは正式にはswimming poolという。
日本語におけるプールの数え方は「面」を使う。
遊泳用、水泳教育用、競泳用、飛び込み用などがある。
屋内に設置される屋内プール、屋外に設置される屋外プールという分類がある。
冬季や気温の低い地域でも利用できるように水温を高めに調節したプールを温水プールと分類する。
長い川のように水が流れるものや、水泳のトレーニング用に水が流れる小さなプールを流水プールと分類する。
子供1人~数人分の小さなプールで、ビニール製で空気を入れて膨らませるものはインフレータブルプール、棒材や板をフレームとしてビニールシートで水槽を組み立てるものをフレームプールと分類し、どちらもビニールプールや簡易プールと呼ばれることがある。
そのほか、スキューバダイビング専用プールと分類されるものもある(日本最大級で深さ8メートルほど、世界最大級はドバイのもので深さ60メートルほど[6][7])。
清流を一時的に堰き止めた水遊び場を「天然プール」と呼ぶ地域もある[8]。
遊泳用プールの水深は一般遊泳では1.2メートル程度、児童遊泳では0.6-0.8メートル程度が目安とされている[3]。
教育用プールは、水深が小学校では0.8-1.2メートル程度、中学校では0.9-1.4メートル程度が目安とされている[3]。飛び込みで頭を打たないように、飛び込み台の近くは深くなっている。
飛び込みに関しては危険が伴い、死亡などの事故も起きているため、2012年の学習指導要領で禁止になった。2019年現在のスタート時の指導は以下の通り[9]。
競技用プールは国際水泳連盟によって種目別に細かく規格が定められており、オリンピックなどの国際大会で使用するプールはこの規格を達成していなければならない[10][11]。
競泳用のプールでは、短水路と呼ばれる長さ25メートルのものと、長水路と呼ばれる長さ50メートルのものが定められており、競泳のタイムは水路によって別々に扱われる。これは、ターンの際に壁面を蹴ることによって加速が行われるため、特に長距離の種目ではターンの回数が多くなる短水路の方が長水路に比べてタイムが短くなる傾向があるためである[12][13]。長水路のプールは幅25メートル、水深2メートル以上のものも多く、長水路のプールを横方向に使って短水路の競技を行うこともある。
正確な長さについては、東京辰巳国際水泳場などの主要な国際水泳大会などが行われるような日本水泳連盟の公認プールは、長水路50.02メートル・短水路25.01メートルに設計されている。これは、タイムを測定するために厚さ1センチメートルのタッチ板を長水路ではプールの両端に1枚ずつ、短水路ではスタートサイドに1枚設置するためである。また、スタート台にはリアクションタイム(号砲が鳴ってから足が離れるまでの時間)を測定するための装置が付いており、台にかかる圧力によってそのタイムを測定する。これらの装置は、リレーのフライング判定にも組み合わせて使用される。
水温についても国際規格で、摂氏25℃から28℃までの範囲内に収まるよう調節しなければならないとされるが、2010年の改正以前は26℃を一つの目安、±1℃を許容範囲としていた。この範囲を逸脱した状態での記録は公認されない。
水球競技では、水深2メートル以上のプールに、男子は縦30メートル×横20メートル、女子は縦25メートル×横17メートルのコートをフィールドロープで区画して作り、コートの両ゴールライン中央にはゴールが浮かべられるため、ゴールのスペースも含めた競技面積以上のプールが必要となる。一般には50メートル競泳プールが使用されるが、宮城県仙南総合プールは35メートル×25メートルの水球公認プールで、国内唯一の屋内温水水球専用プールとして知られる(非公開施設としては、秀明栄光高校の屋内温水水球専用プールや秀明大学の屋内女子水球専用プールも存在する)。
アーティスティックスイミング用のプールでは、定められた面積について3メートル以上の水深を持つことが必要であるが、フィギュアとルーティンによって要求される面積は異なる。競泳用プールと共用するため、東京辰巳国際水泳場などではプールの底が可動式になっており、水深を競技によって変更できる。
飛込競技用のプールでは、水深は5メートル以上が必要であり、高飛び込み用の10メートル、7.5メートル、5メートルの高さの台と、板飛び込み用の3メートルと1メートルの高さの台が設置される。各飛び込み台の端は、プールの上空に張り出した形状になっている。
潜水用のプールでは、水深は1.5メートル程度(初心者は1.35メートル程度)が目安とされている[3]。潜水用のプールには、5.5メートルという深さを持つものもある[3]。
ローマ皇帝は個人用のプールを持ち、水泳のためだけでなく魚を飼うためにも使われていたのでラテン語でpiscinaと呼ばれた。最初の温水プールはガイウス・キルニウス・マエケナスがローマの丘にあった自宅の庭園内に造らせたもので、紀元前38年から8年ころのものだという[14]。
初期のオリンピックにおいて水泳競技は河川や海で実施されていた[15]。近代オリンピック第1回のアテネオリンピック(1896年)の水泳競技はゼア湾で[15]、第2回のパリオリンピック(1900年)の水泳競技はセーヌ川の河畔で[15]、第3回のセントルイスオリンピック(1904年)の水泳競技は人工湖で開催された[15]。
オリンピックの水泳競技で初めてプールが使用されたのは、1908年のロンドンオリンピックで、陸上競技場のフィールド部分に全長100mのプールが設けられた[15]。しかし、初期のオリンピックプールにはコースロープがなく、1920年のアントワープオリンピックで進路妨害の問題が発生したことから、1924年のパリオリンピックで初めてコースロープが設置された[15]。
なお、2008年の北京オリンピックからプール外での水泳競技であるオープンウォータースイミングが正式採用されている[15]。
日本では、会津藩校の日新館に設けられた水練場あるいは水練水馬池が、最古のプールとされている。当時の藩校の中では、日新館と長州藩校の明倫館の2校を除いて施設が設けられていなかったとも言われている。また日本最古の温水プールは1917年に東京YMCAに開設された。
プールの材質にはRC製、アルミ製、ステンレス製、FRP製などがある。FRP製を除いて規格を満たせば水泳競技の公認プールとすることができる[3]とされてきたが、FRPについても仮設の50mプールが世界水泳連盟に認められた事例はある(第9回世界水泳大会福岡2001(マリンメッセ福岡))[16]。なお、FRP製プールを製造するヤマハ発動機は、2024年3月末で学校やレジャー施設など向けのプール事業から撤退すると発表しており[17]、徐々に数を減らす可能性がある。
プールの形状は、底面の形状により、フラット(底面が平面)、レギュラー(プール中央に向かって若干勾配。プールサイド側より中央の方が深い)、片寄せ(片側に勾配)、飛び込み兼用、シンクロ兼用、飛び込み用などがある[18]。
プールの排水口は、その膨大な水量を素早く排出するため、銭湯などと比べて非常に大きな物が取り付けられている。通常は金網などで安全対策が行われるが、死亡・負傷事故も起きている。金網や柵が外れて全身が吸い込まれたり、金網や柵があって排水口が小さく作られていても、足だけ嵌り込まれたり、身体の一部が強い水流で排水口に密着することが原因である[19]。こうした危険に対処するため、学校用FRP製プールで国内シェアトップのヤマハ発動機では、排水口を複数設置して(1つあたりの)流水圧の低減を図る、排水口部分の構造をL字型にしてその上から金網を張る、といった措置を取っている。同社製のプールでは2016年時点で一度も事故は発生していないという[20]。
プールには屋外に設置され夏だけ使用されるプールと、屋内に設けられていて室温や水温が調節・管理された通年使用可能なタイプがある。またそのうち通常より水温が高めに設定された温水プールもある。防火用水や非常用水の水源として利用される場合は、使用時期以外にも貯水・管理されている(清掃などで水を抜く場合には消防本部への事前通知を要する)が、水質管理までは行われていない施設が大半である。
通常のプールは不特定多数の人間が利用するため、衛生上、水質管理が必要となる。一般的には殺菌・消毒のためにプールと付帯施設の足洗い場・腰洗い槽に塩素系消毒剤が加えられている。消毒剤は次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、塩素化イソシアヌール酸のいずれかであり、遊離残留塩素は0.4ppm~1.0ppmを保持しなくてはならない。水道水基準(0.1ppm~1.0ppm)に比較してわずかに高めだが、有機物(人体や汚れ)と接したり太陽光の紫外線を浴びることなどによって残留塩素濃度が低下するため、定期的な濃度維持が必要である。加える方法はプール・足洗い場・腰洗い槽に消毒剤を直接投入する方法と塩素供給機器に消毒剤を入れて水に溶かす方法がある[23]。
日本では厚生労働省が「遊泳用プールの衛生基準について」(平成19年5月28日健衛発第0528003号)を定めている[24][25]。この基準では、水素イオン濃度・濁度・過マンガン酸カリウム消費量・遊離残留塩素・大腸菌、一般細菌、総トリハロメタンの7項目について衛生基準が示されており、また循環ろ過方式等の浄化設備を備えることも必要とされる[24][25]。
また、いわゆる1条校のプールにあっては文部科学省が「学校環境衛生基準」を定めている[26]。なお、学校における水泳プールは学校保健法(昭和33年法律第56号)に基づく衛生管理が実施されているため「遊泳用プールの衛生基準について」(平成19年5月28日健衛発第0528003号)の適用対象外となっている[24]。
プールはプール熱などの感染症の媒介となりやすいため、病気に罹患している場合や回復した直後などはプールへの入場が禁止されている。
目が赤くなる原因がプール内の尿と塩素の化合物が原因であることがわかった[27]。
アメリカ合衆国では、感染源がプールや温浴施設等と判明している集団感染のうち、58%はクリプトスポリジウム症であったことが報告されている。アメリカ疾病対策センターの専門家は、消毒剤に対する耐性を持つ菌等の存在を踏まえてプールの水を飲まないことを勧めている[28]。
大量の水を蓄えた施設であるため、溺れたり、飛び込み時に頭などを打ったり[29] する事故が度々発生している。このため学校の水泳授業や部活動では教員らが安全に注意を払うほか、ライフガードや監視員を配置しているプールもある。また未就学児童や小学校低学年では声も物音も立てずに沈んで溺れる事もあるため注意が必要である。
6月から夏季にかけて広まる咽頭結膜熱(「プール熱」と通称される)、皮膚接触で感染する水疱性膿痂疹(とびひ)、伝染性軟属腫(水いぼ)、クリプトスポリジウム症[35] 等がプール利用時に感染する可能性がある。専門医による診療と治療、遊泳を控える事で感染を防ぐ事が可能。
サンバーン(火傷)や電気性眼炎、及び瞼裂斑、若年時から長期間に渡る屋外活動で加齢と共に紫外線曝露によって発症する白内障[36]、皮膚の色素沈着(しみ・くすみ)の他、皮膚癌のリスクが高まる報告がある。
一般向けのプールは様々なものがあり、レジャー施設用のプールの中には、流れるプール、子供用の水深の浅いプール等があり、附帯設備として滑り台(ウォータースライダー)などが併設されるものもある。
屋外のプールは昼間だけ使用されることが多いが、近年、ホテルやテーマパークでは、リゾート地のような非日常感を楽しんでもらうため夜も営業する「ナイトプール」も見られる[37]。
インフィニティ・プールは、近年、異国情緒あふれるリゾート、高級ホテル等宿泊施設の集客目的で作られることが多くなった。「インフィニティ」は「無限」を意味し、どこまでも限りないさまを現した表現で、水盤や外縁を水で覆い、あたかも外縁が存在しないかのように見えるよう設計されたプールで、外縁が海などのより大規模な水や空と混じり合い境目がわからないように見えるよう設計される。近年は日本でも少しずつ取り入れられるようになってきた。プールのほか、露天風呂に応用したケースもあり「インフィニティ風呂」などと呼称される[38][39][40]。
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