最高裁判所 (日本)
日本の最高司法府 ウィキペディアから
日本の最高司法府 ウィキペディアから
最高裁判所(さいこうさいばんしょ、Supreme Court of Japan)は、東京都千代田区隼町4番2号にある、日本における司法府の最高機関。日本国憲法で存在が規定され、裁判所法に基づき構成される。略称は、最高裁(さいこうさい)。
最高裁判所 | |
---|---|
最高裁判所庁舎 | |
長官 | 今崎幸彦 |
組織 | |
管轄区域 | 日本 |
担当検察庁 | 最高検察庁 |
下位裁判所 |
札幌高等裁判所 仙台高等裁判所(本庁、秋田支部) 東京高等裁判所(本庁、知的財産高等裁判所[注釈 1]) 名古屋高等裁判所(本庁、金沢支部) 大阪高等裁判所 広島高等裁判所(本庁、岡山支部、松江支部) 高松高等裁判所 福岡高等裁判所(本庁、宮崎支部、那覇支部) |
概要 | |
所在地 |
〒102-0092(専用: 102-8651) 東京都千代田区隼町4-2 北緯35度40分49.2秒 東経139度44分37.0秒 |
法人番号 | 3000013000001 |
定員 | 15人 |
設置 | 1947年(昭和22年)5月3日 |
前身 | 大審院 |
最高裁判所 | |
小法廷の構成 |
最高裁判所は、日本国憲法が施行された1947年5月3日に、日本国憲法および同日に施行された裁判所法に基づき設置された、日本の司法機関における最高機関である[1]。
最高裁判所裁判官は、最高裁判所長官1人と最高裁判所判事14人の15人で構成される。
最高裁判所は、訴訟に関する手続、弁護士、裁判所の内部規律及び司法事務処理に関する事項について最高裁判所規則を制定する権限(憲法77条1項)、下級裁判所裁判官を指名する権限(憲法80条1項)、最高裁判所の職員ならびに下級裁判所およびその職員を監督する権限を持つ(裁判所法80条1号)。
最高裁判所における司法行政は、全員の裁判官で構成する裁判官会議により行われるとされている(裁判所法第20条)。
最高裁判所は、日本国内の裁判事件の、上告及び訴訟法が定めている抗告について、最終的な判断を下し、法令解釈の統一を図る権限を持つ。さらに、法令の憲法適合性について決定する終審裁判所となる(憲法81条)。このため、最高裁判所は「憲法の番人」と称されることもある。
「最高裁判所」の漢字表記は通例常用漢字を用いるが、最高裁判所庁舎に掲げられている銘板には、「最髙裁判所」と、はしご高で書かれている。
略称は、一般には「最高裁」が通用するが、法曹界ではさらに簡略化し「最高」とも呼ばれる。また、庁舎が三宅坂(みやけざか)に面していることから、所在地から「三宅坂」という通称もある。このほか、庁舎の特徴的で威圧的な外観や行政権力者側に片寄った裁判の運営方針などから、法曹関係者や法律学者からは揶揄的・否定的な意味合いを込めて「奇巌城」「奇岩城」などと呼ばれることもある[2]。
最高裁判所は、最高裁判所長官、大法廷・小法廷からなる裁判部門、また、司法行政部門で構成されている。司法行政部門は、最高裁判所事務総局、司法研修所、裁判所職員総合研修所、最高裁図書館、および委員会・検討会等で構成されている。
最高裁判所においては書面審理を中心とした法律審が基本のため、証言台が存在しない(ただし、人事官の弾劾裁判は最高裁判所の大法廷で一審制として開かれることになっており、大法廷が国家公務員法に定める弾劾事由があるかどうか証拠調べをする際に証人を呼ぶ必要が生じた場合は、理論上は最高裁判所の法廷で証言台が必要となる)[10][11]。
最高裁判所判事は内閣が任命し、天皇がその任免を認証する。最高裁判所裁判官の定年は70歳である(日本国憲法第79条第5項、裁判所法50条)。 裁判部門は、最高裁判所長官および最高裁判所判事全員で構成される大法廷と、最高裁判所の定める員数の最高裁判所裁判官で構成される小法廷があり、上告および訴訟法において特に定める抗告について裁判権を有する(裁判所法第7条)。
また、「当事者の主張に基いて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを判断するとき(意見が前に大法廷でした、その法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するとの裁判と同じであるときを除く)」は、「前号の場合を除いて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合しないと認めるとき」、「憲法その他の法令の解釈適用について、意見が前に最高裁判所のした裁判に反するとき」については、小法廷では裁判をすることができない(裁判所法10条)[12](つまり、最高裁判所の先例を変更する場合は最高裁判所判事全員の出席する大法廷で取り扱わねばならない)。
最高裁判所の裁判官は任命後初めて行われる衆議院議員総選挙の際に最高裁判所裁判官国民審査(国民審査)に付され、審査から10年を経過した後の衆議院議員総選挙の際に再審査に付され、その後も同様とすると定められている(日本国憲法第79条第2項)。
あらゆる事件を扱うために、民事、刑事、行政の各分野に分かれて法廷を補佐する最高裁判所調査官が配置されている。最高裁判所調査官は上告された裁判の記録を読み、最高裁判所判事に答申することを職務とする。最高裁判所は裁判官が15人と少ないため、最高裁判所調査官はその人的リソースを補う効果を有するが、法律によって最高裁判所への上告が制限され、最高裁判所において実質的に審理を行う必要性がないと判断される事件をスクリーニングしていることから、最高裁判所の裁判官ではなく調査官によって上告審の裁判がなされていると批判されることもある。
最高裁判所の司法行政権及び規則制定権は、法律上は、裁判官会議の議決により行使されるが、これを補佐し、最高裁判所の庶務を執行する機関として、最高裁判所事務総局が置かれている。
各委員会の審議に基づき、裁判所における訴訟手続や司法事務処理に関する事項等について、最高裁判所規則を定める権限も有している。ただし規則の公開は、一部分に限られている。
法令や最高裁判所規則に基づき、委員会・研究会・検討会・懇談会が設置されている。公開されている限りでは、2024年4月現在、次のとおりの委員会等が存在する。
裁判官・検事・弁護士の法曹三者を養成する機関である。
裁判官以外の裁判所職員の研修を行う機関である。
国立国会図書館の支部図書館であり、国内外の法律関係の書籍を蔵書している。最高裁判所庁舎の4階、5階、及び屋根裏階に位置する。特別利用者(弁護士、法律学を担当する大学教授、裁判所に設置された委員会の委員、司法修習生等)と一般利用者との区別があり、2022年12月現在、一般利用者に許可されているのは閲覧と謄写のみであり、貸出しはされない。利用するには前日までに予約が必要である。
最高裁判所は日本の法令解釈適用について統一をはかる最終審の裁判所として設置されている。裁判所法4条では「上級審の裁判所の裁判における判断は、その事件について下級審裁判所を拘束する」とされているのに、その判決に当該事件を離れて他の事件に対しても判例としての権威が認められるのは、他の事件に対してもその判決がもつ価値体系整合性によるとされる。最高裁判所の判例の拘束力の由来する根拠は、中央集権化された国家により独占されている司法機構には国家の国民に対して存する権威の反映として裁判所の権威が存在するからであり、司法権の独立を強固にするため司法の判断として最高裁判所に対して国民がそれに権威をあたえる(裁判所外の機関の干渉を遮断し三権分立をまもらせる)ためと説明される。最高裁判所の判決が判例としても強力な権威(最高裁の判決の強い「先例としての事実上の拘束性[注釈 6]」)を持つことは、判例違背が上告理由とされていたり、最高裁判所は憲法その他の法令解釈適用についての意見が前に最高裁判所のした裁判(先例)に反するときは、大審院当時の司法実務(大審院が以前の判決と異なる判断を下すときは民事総部もしくは刑事総部の連合部で取り扱う…裁判所構成法49条)を踏襲し、最高裁判所判事15人全員の大法廷で取り扱わねばならない(裁判所法10条3号)とするなど、法制上においても前提になっている。
最高裁判所の判決文には、判決となった多数意見と別に、裁判官それぞれの個別意見が表示されることがある(裁判所法第11条)。個別意見には一般に、補足意見、意見、反対意見がある。
日本では、判例集の編纂は、最高裁判所自身が判例委員会によって行っている。原則月1回出版されており、最高裁判所民事判例集、最高裁判所刑事判例集等がある。ただし、訴訟法に関する判例集や解説集・索引は、裁判所からも法学会からも殆ど出版されていない[注釈 7]。
裁判所公式サイトでは、最高裁判例集、高等裁判所判例集。下級裁判所判例集、行政事件裁判例集、労働事件裁判例集、知的裁判判例集を検索することができる[15]。
最高裁判所庁舎 | |
---|---|
最高裁判所南門付近より外観を望む | |
情報 | |
用途 | 裁判所 |
設計者 | 岡田新一(岡田新一設計事務所) |
施工 | 鹿島建設 |
構造形式 | 鉄筋コンクリート構造一部、鉄骨鉄筋コンクリートおよび鉄骨造 |
敷地面積 | 37,427 m² |
建築面積 | 9,690 m² |
延床面積 | 53,994 m² |
階数 | 地上 5階・地下 2階 |
竣工 | 1974年(昭和49年)3月 |
所在地 |
〒102-0092 東京都千代田区隼町4-2 |
座標 | 北緯35度40分49.2秒 東経139度44分37.0秒 |
文化財 | 東京の建築遺産50選 |
備考 |
|
裁判所法6条の「東京都にこれを置く」という条文により、所在地が規定されている。現在の立地は、元は米国駐留軍のパレス・ハイツ宿舎の敷地。
1965年(昭和40年)9月に最高裁判所規則により発足した庁舎新営審議会(川島正次郎会長、委員32人[注釈 8])は、欧米各国最高裁判所庁舎の視察調査を行い[17]、1968年4月には公開建築設計競技を開催した。
参加作品217件の中から建築家岡田新一の設計案が採用された。石材には花崗岩が使用され[18]、1974年(昭和49年)に竣工。総工費は約126億円[19]。建物は、日本建築学会賞を受賞している。
大法廷に続くホールには正義の女神ユースティティアのブロンズ像があるが、目隠しがされていないものである。最高裁判所に接する三宅坂交差点の区立三宅坂小公園の《平和の群像》は、日本電報通信社が建立したものである。
庁舎の地下にはコンビニエンスストアがある[20]。
最高裁の構内は厳重に警備されており、部外者の立ち入りは、最高裁に用務があり、かつ最高裁の許可を受けた者(検察官・弁護士・傍聴人など)に限定されている。
※ 最高裁を除く下級裁判所の構内立ち入りは、セキュリティチェックを受ければ原則として自由である。
戦後は日本国憲法により、裁判官の給与は在任中減額することができないと規定された(第80条2項)。裁判官はかつては公務員の中で最も給与が低い部類に属していたが、1947年の山口良忠判事の餓死を背景に引きあげられた[21]。
最高裁判所は、他国の裁判官や学者などとの交流を盛んに行っている。かねてから、アメリカ合衆国やヨーロッパ諸国に裁判官などを留学させて他国の法制度を調査・研究させたり、それら国の裁判官などの訪問を受け入れたりしてきたが、近年ではアジア諸国からの訪問も増えている[22]。これは、アジアで最初に近代的な司法制度を確立した日本に学びたいという各国の意向を反映してのことであり、日本による法整備支援活動への協力という枠組みで行われることも少なくない[23]。
また、法整備支援への協力の一環として、現役の裁判官を、法整備支援の長期専門家としてベトナム、カンボジアといった国に年単位で派遣することも行われている[24][25]。
2010年には、ロシア連邦最高仲裁裁判所の副長官ら6人が、知的財産高等裁判所を訪問した[26]。
なお、アジア太平洋地域の国や地域の最上級裁判所のトップが一堂に会し、司法に関する共通の諸問題を話し合うことを目的とするアジア太平洋最高裁判所長官会議が2年ごとに開催されており、日本の最高裁判所もこの会議に参加している[27]。
2015年には、アメリカ合衆国最高裁判所長官が34年ぶりに来日した[28]。
Seamless Wikipedia browsing. On steroids.
Every time you click a link to Wikipedia, Wiktionary or Wikiquote in your browser's search results, it will show the modern Wikiwand interface.
Wikiwand extension is a five stars, simple, with minimum permission required to keep your browsing private, safe and transparent.