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日本における国旗国歌問題について説明する。
現在、国旗国歌法(1999年8月13日法律第127号)の規定によって、日本国政府が公式に、日本国の国旗は「日章旗」(日の丸)であり、国歌は「君が代」であると指定している。
君が代は、国旗国歌法によって、公式に日本国の国歌となっている。法制定以前にも、1974年(昭和49年)12月に実施された内閣府・政府広報室の世論調査[注 1]において、対象者の76.6%が「君が代は日本の国歌(国の歌)としてふさわしい」と回答する一方で、「ふさわしくない」と回答したのは9.5%だった[1]。君が代が日本の国歌にふさわしいという世論調査の一方で、君が代の歌詞への反対意見はしばしば取り上げられる。
前掲のとおり、君が代が日本の国歌にふさわしいという世論調査の一方で、君が代の歌詞への反対意見はしばしば取り上げられる。主に日本教職員組合や傘下の教職員労働組合による、教育現場での「君が代伴奏」「君が代斉唱」反対運動も存在する。主な肯定的/否定的意見には以下のようなものがある。
この節の加筆が望まれています。 |
国際競技大会やオリンピックの表彰式・FIFAワールドカップの試合前などで、国旗掲揚・国歌斉唱が厳粛に行われている。しかし、国歌斉唱をしない選手への対処が問題になっている。
君が代に関しては、例えばサッカー日本代表の試合前の吹奏(または独唱・斉唱)時には、ユニフォームの胸に手を当てながら君が代を歌う選手の姿が見受けられる。その他の競技でも、国歌吹奏等の際に特段の混乱は生じていない。
ちなみに、テレビキャスターの鳥越俊太郎は2014年8月21~24日に開催された水泳のパンパシフィック大会の中継を見て、“前奏付き”の君が代に強い違和感を感じたという[5]。
2016年7月3日に開かれたリオデジャネイロ五輪の日本代表選手団の壮行会で2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(当時)が来賓挨拶の中で、直前の国歌独唱で日本人選手団が斉唱しなかったことに対して「国歌を歌えないような選手は日本の代表ではない」と発言し話題となった。[6]
1951年(昭和26年)9月に日本国との平和条約(サンフランシスコ講和条約)が成立し正式に日本が独立国に復帰して以降、日本放送協会(NHK)のラジオ放送で連日放送終了後にオーケストラによる「君が代」の演奏が始まった。テレビではNHKが開局した1953年(昭和28年)2月の時点ではなかったが、同年9月からやはり放送終了時に演奏されるようになった。
しかし、近年になりNHKが24時間放送を積極的に行うようになったため、現在は毎日の録音演奏はNHKラジオ第2放送とNHK教育テレビ(現NHK Eテレ)それぞれの終了時のみで流れる。ただしNHK Eテレは24時間放送を行っていた2000年(平成12年)から2006年(平成18年)4月までは放送休止を行う時(毎月第2・4・5週の日曜深夜の放送終了時とそれが明けた月曜5時前)に流れていた。NHK総合テレビでは各放送局の減力放送・放送休止明け(歌詞についてはテロップ表示される局とされない局がある)に流れる(放送局管内の一部地域での休止の場合は流れないこともある)。
また民放のニッポン放送でも以前は毎日演奏(ジャンクション)を放送していたが、1998年(平成10年)4月より毎週月曜日の放送開始時と土曜日の5時前に限って放送している。以前はAFNでも毎日0時のニュース明けに、FNN/FNS・NNN/NNS系列のテレビ大分とFNN/FNS系列のテレビ熊本でも放送開始・終了時に日章旗の映像と共に、それぞれ演奏されていた。なおAFNでは君が代に引き続いてアメリカ国歌も演奏されていた。
スカパー!767chや219chでの自主放送や、217chで間借り放送をしていた頃の日本文化チャンネル桜でも、1日の放送開始時と終了時に、日章旗の映像と共に「君が代」の演奏を放送していた[注 2]。
フジテレビで放送された世界フィギュア選手権の女子フリーで2007年(平成19年)・2008年(平成20年)・2010年(平成22年)と日本人選手が優勝したにもかかわらず、国旗(日章旗)掲揚及び国歌(君が代)演奏・斉唱がカットされた一方、2009年(平成21年)に韓国人の選手が優勝した際に韓国の国旗掲揚・国歌斉唱が放送され、放送局の姿勢と合わせて批判されたこともある。
「君が代」の教育現場での扱いについては一部で議論になることが多いテーマである。
1998年(平成10年)頃から教育現場において、文部省の指導で日章旗(日の丸)の掲揚と同時に「君が代」の斉唱の通達が強化される。日本教職員組合などの反対派は、日本国憲法が保障する思想・良心の自由に反するとして、旗の掲揚並びに「君が代」斉唱は行わないと主張した[要出典]。1999年(平成11年)には、広島県立世羅高等学校で卒業式当日に校長が自殺し、「君が代」斉唱や日章旗掲揚の文部省通達と、それに反対する現場の日教組教職員との板挟みになっていたことが一因であった。
これを一つのきっかけとして「国旗及び国歌に関する法律」が成立、日本国政府は「国旗国歌の強制にはならない」としたが、日教組側は実際には法を根拠とした強制が教育現場でされていると指摘、斉唱・掲揚を推進する教育行政並びに、これを支持する保守派との対立は続いてきた。
教育委員会から職務命令[7]が発せられていること自体は事実で、職務命令の服従を拒否した結果懲戒処分を受け、懲戒処分の取消を求める行政訴訟も頻発している。しかし近年、国民の大多数に受け入れられている現実から、日教組の姿勢も軟化し、入学式や卒業式での国旗掲揚国歌斉唱の実施率は上昇している。
日教組は、「日の丸・君が代」を拒否している[要出典]が、「君が代」に代わる新しい国歌の制定を主張していない。ただし、独自に新たな「国民歌」を公募したことがある。
第二次世界大戦後の1950年代初頭、「君が代」に代わる新たな「国民歌」を作ろうと、日本教職員組合と壽屋(現:サントリー)がそれぞれ募集し、別々に「新国民歌」を選定し公表した。日本教職員組合が「緑の山河」、壽屋が「われら愛す」という楽曲をそれぞれ選出したが、その後、これらの曲は、いずれも定着までには至らなかった。
「新学習指導要領 第6章 第3の3[8]」を法的根拠として、国歌斉唱時に起立するよう指導するかしばしば問題になっている。ただし学習指導要領自体は法律ではなく「告示」という形式であり、どの程度の法的拘束力があるのかまでは判断されていない。
2007年(平成19年)2月27日の最高裁判決(日野「君が代」伴奏拒否訴訟)、2011年(平成23年)5月30日の最高裁第2小法廷判決(須藤正彦裁判長)[9]、2011年(平成23年)6月6日の最高裁第1小法廷判決(白木勇裁判長)[10] 、2011年(平成23年)6月14日の最高裁第3小法廷判決(田原睦夫裁判長)[11]、2011年(平成23年)6月21日の最高裁第3小法廷判決(大谷剛彦裁判長)[12] のいずれも「校長の職務命令は思想及び良心の自由を保障した憲法19条に違反しない」と合憲の判断を下し、最高裁の全小法廷が合憲で一致した。「思想・良心の自由の間接的な制約となる面がある」と認定する一方、命令が教育上の行事にふさわしい秩序を確保し、式典の円滑な進行を図るという目的から「制約には必要性、合理性がある」とし、起立・斉唱の職務命令の正当性を幅広く認めた。読売新聞は「教育現場における「憲法論争」は決着した」と報道した[13]。朝日新聞は一部裁判官の補足意見(少数意見)を紹介。「処分を伴う強制は教育現場を萎縮させるので、できる限り謙抑的であるべきだ」(須藤正彦裁判官)、「司法が決着させることが、必ずしもこの問題を解決に導くことになるとはいえない。国旗・国歌が強制的にではなく、自発的な敬愛の対象となるような環境を整えることが何よりも重要だ」(千葉勝美裁判官)など。朝日新聞は「(合憲で決着の)司法判断だけに頼らない議論が求められる」と報道した[14]。
橋下徹の地域政党『大阪維新の会』の主導により、大阪府と大阪市で公立小中高校の教職員を対象に斉唱時に起立することを義務付けする国旗国歌条例が成立した[17]。
国旗国歌を擁護する意見は、主に保守派から主張されることが多い。しかし、論者によってニュアンスの違う意見がいくつかある。例えば、明治以来の伝統を重視しているもので、戦後も広く国民の間に親しまれ定着しているという意見などがある。
一方で網野善彦は著書の中で、戦後神国思想を排除したはずの日本が神武天皇の即位の日という架空の日を「建国」の日と定めたことから、基本的に戦前の日の丸、君が代と変わらないと批判している。また、そうしたそもそも「日本」とはという議論がなされる前に政府与党が法案を押し通したことを批判している[18]。
サッカーのFIFAワールドカップやオリンピックなど、国際競技大会での『君が代』演奏の機会があるスポーツ分野では、日本を代表するスポーツ選手と自国への応援として自発的に日章旗(日の丸)が振られ、勝利の感慨の中で『君が代』が歌われる光景は古くから見られる。中日新聞は国旗・国歌への態度は、市民の基本的な権利や自由であり、ソビエト連邦も保障していた権利であるとして国旗・国歌は必要ないという考えに対する批判を行っている[19]。
国歌(君が代)の「起立・斉唱」に関連した最高裁判所判決すべて「校長の職務命令は思想及び良心の自由を保障した憲法19条に違反しない(合憲)」という判断を示した。また、「起立・斉唱」命令や「起立」命令は「思想及び良心の自由を間接的に制約したとしても合憲」という命令の正当性が幅広く認められた。最高裁の全小法廷が合憲で一致。職務命令違反による処分の基準に関しては、戒告処分は裁量権の範囲内で妥当とするものの、それより重い減給や停職に関しては慎重な扱いを求めた。
最高裁判所判例 | |
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事件名 | 再雇用拒否処分取消等請求事件 |
事件番号 | 平成22年(行ツ)第54号 |
平成23年5月30日 | |
判例集 | 民集 第65巻4号1780頁 |
裁判要旨 | |
公立高等学校の校長が教諭に対し卒業式における国歌斉唱の際に国旗に向かって起立し国歌を斉唱することを命じた職務命令は、次の1. ~3. など判示の事情の下では、当該教諭の思想及び良心の自由を侵すものとして憲法19条に違反するということはできない。
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第二小法廷 | |
裁判長 | 須藤正彦 |
陪席裁判官 | 古田佑紀 竹内行夫 千葉勝美 |
意見 | |
多数意見 | 全員一致 |
意見 | 竹内行夫 須藤正彦 千葉勝美 |
反対意見 | なし |
参照法条 | |
憲法15条2項、憲法19条、地方公務員法30条、地方公務員法32条、学校教育法(平成19年法律第96号による改正前のもの)18条2号、学校教育法(平成19年法律第96号による改正前のもの)28条3項、学校教育法(平成19年法律第96号による改正前のもの)36条1号、学校教育法(平成19年法律第96号による改正前のもの)42条1号、学校教育法(平成19年法律第96号による改正前のもの)51条、国旗及び国歌に関する法律1条1項、国旗及び国歌に関する法律2条1項、高等学校学習指導要領(平成11年文部省告示第58号。平成21年文部科学省告示第38号による特例の適用前のもの)第4章第2C(1)、高等学校学習指導要領(平成11年文部省告示第58号。平成21年文部科学省告示第38号による特例の適用前のもの)第4章第3の3 |
東京都教育委員会(都教委)は平成15年10月、「卒業式での国旗掲揚及び国歌斉唱に関する職務命令」として、「国旗は壇上向かって左側に掲げる」「式次第に国歌斉唱の題目を入れる」「国歌はピアノ伴奏をし、教職員は起立して国旗に向かって起立し斉唱する」などという項目を作成し、違反した場合は服務上の責任を問われるという、「国旗掲揚・国歌斉唱の義務」を各都立高校に通達した。だが、職務命令に従わない教職員がいたことから、都教委は従わなかった教職員に対し処分を行った。
将棋棋士の米長邦雄は東京都教育委員会委員だった平成16年秋の園遊会に招待された際、天皇に対し「日本中の学校において国旗を掲げ国歌を斉唱させることが、私の仕事でございます。」と発言した。米長のこの発言に対し、天皇は「やはり、強制になるということでないことが望ましいですね。」と述べた[41][42][43]。
記者会見で「昨年の秋には天皇陛下ご自身が国歌斉唱と国旗掲揚についてご発言を述べられました。学校でこれらのことを強制的にさせることはどうお考えでしょうか」という質問に対し、「世界の国々が国旗、国歌を持っており、国旗、国歌を重んじることを学校で教えることは大切なことだと思います。国旗、国歌は国を象徴するものと考えられ、それらに対する国民の気持ちが大事にされなければなりません。オリンピックでは優勝選手が日章旗を持ってウィニングランをする姿が見られます。選手の喜びの表情の中には、強制された姿はありません。国旗、国歌については、国民一人一人の中で考えられていくことが望ましいと考えます」と応えている[44]。
平成18年9月21日の地裁判決について、原告側は「画期的な判決」と評価した。一方、東京都知事の石原慎太郎は「この裁判官は教育現場を何にも分かっていない」と批判した。また、東京都議会議員の土屋敬之(当時民主党)は、10月24日に判決を言い渡した裁判官の罷免を求める集会を主宰した。
平成19年2月20日、日本弁護士連合会は平成15年10月の都教委の通達に基づく処分取り消しと、“教職員に一定の思想を強制するもので憲法違反”としてその都教委の通達廃止を求める「警告」を教育委員会に対し行った[45]。
国旗・国歌法の制定時に内閣官房長官を務めていた野中広務は「「起立せなんだら処罰する」なんてやり方は権力者のおごり。教職員を処分してまで従わせようというのは、国旗・国歌法の制定に尽力した者として残念です」と述べている[46]。
オーストラリア国立大学名誉教授で北朝鮮の核開発を支持していることでも知られるガヴァン・マコーマックは、2007(平成19)年の著作の中で、近年の「日の丸・君が代」に関連する改正を、憲法の「思想及び良心の自由」「信教の自由」や、国連の子どもの権利条約第14条第1項の「締約国は、思想、良心及び宗教の自由についての児童の権利を尊重する」という規定などと相容れない、と批判している[47]。
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