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『恋する小惑星』(こいするアステロイド)は、Quroによる日本の4コマ漫画。『まんがタイムきららキャラット』(芳文社)にて2017年3月号から2024年8月号まで連載された[2][1]。略称は「恋アス」[3]。
テレビアニメが2020年1月から3月まで放送された[4]。
高校の地学部を舞台に、小惑星を見つけたいという夢を持った女子高生と、その周囲の地学系女子(ジオジョ)による青春物語。
元々『まんがタイムきららキャラット』2015年8月号から9月号にかけて全2話の読み切りとして掲載された著者の商業デビュー作『織姫ナンバー2』が好評を博し、その後別作品の掲載を経て同誌で連載を持つことが決まった際、『織姫』から「高校の地学部が舞台」という題材を引き継いでリメイクしたのが本作である[5][6]。前作『織姫』の登場人物の一部は、著者が高校時代にたまり場としていた地学部の部員をモデルにしていたが[5][6]、本作では『織姫』から登場人物や設定が一新され[5]、少女たちが明確な夢や目標を持ってそれを叶えようとする物語性が重視されている[5][7]。
全編を通して地球科学(地学)を題材にしているため、作中では天文学や地質学に関する雑学が多く見られる。地学や地理学に関連する実在の施設を訪れる場面もある。物語開始時点での劇中の年代は連載開始と同時期の2017年であると設定されており[8]、明確な日時の描写がない場面にも詳細な日付と時刻が設定され、月齢や星空の見え方などに現実に起こった天文現象が反映されている[9]。さらに劇中2年目は2018年であると設定されており[8]、現実の連載の執筆時期に関係なく、また同じ2017年を繰り返すわけでもなく、1年ずつ年月が進んでいくという体裁になっている。
著者のQuroは地学部に在籍していたという自分自身の部活動の経験について、放課後に遊んだりお菓子を食べたりする場所を確保するために、廃部になっていた地学部の部室を乗っ取るという友人の企てに乗っただけで[5][6]、遊んでばかりいた部活動の実体験が漫画へと反映されている部分は少ないと述懐している[5]。またQuro自身は地質学など天文学以外の地学分野には明るくなく、連載が始まって以降に調べながら描いていると語っているが[10][6]、天文学には元々興味を持っており[5][11]、またつくば市の高エネルギー加速器研究機構(KEK)で広報の仕事をしていた前歴から、資料を調べて多数の人々に正確な知識を伝えることを重視していると語っている[8]。Quroは本作を学習漫画として描いているつもりはないとしているが[5]、いろいろな分野の学問が繋がっていることを本作で描くことを目標にしているという[12]。
幼いころ、町のキャンプに参加していた木ノ幡みらはアオと名乗る同じ年頃の子に出会う。ボーイッシュな外見のアオを男の子だと勘違いしたみらは、二人で星空を見ているうちに、自分と同じ名前の星があること、アオという名前の星がないことを知り、いつか二人で新しい小惑星を発見し、その星にアオの名前をつけるという約束を交わして別れる。
時は流れて2017年[8]、星咲高校に入学したみら。大切な思い出となっていた幼いころの約束を果たすために天文部に入部しようとした彼女だったが、その年から天文部は地質研究会と合併して「地学部」となっていたことを知りショックを受ける。宇宙の側から見れば地球の地面も天体の星も同じだという解釈に納得し、仕方なく地学部の門戸を叩いたみらであったが、そこで一緒に小惑星を見つけるという約束を交わした真中あおと再会する。アオが女の子であることを知って二重の衝撃を受けたみらだが、アオもまたみらとの約束を大切に思っていたことを知る。こうして天文班の先輩である森野真理(モンロー)、地質班の先輩である猪瀬舞(イノ)、桜井美景(桜)らとともに、みらとあおが地学部での活動をスタートするところから物語は始まる。
当初は互いの活動に知識や関心がなく、気風も異なっていた天文班と地質班だが、学校外での実地調査や屋上での天体観測、合宿など、行動を共にしてそれぞれの専門分野を教え合うことで、互いの分野に詳しくなっていく。みらの幼馴染で料理に詳しい鈴矢萌(すず)や、みらの姉で生徒会長を務める木ノ幡みさといったみらの身の回りの人々も、部員とはならないものの、みらを通じて地学部の活動を支援する。小惑星を発見するという、みらやアオのような高校生にとっては雲を掴むような目標も、みらとアオの入部動機を聞きそびれていた顧問の遠藤幸が、学生の頃に高校生に向けた天体発見のワークショップ「きら星チャレンジ」に参加した経験があることを思い出したことがきっかけで、来年度のワークショップに参加するための選抜に合格するという具体的な目標を得る。
やがて季節は巡り、地学部が発行している会報『KiRA KiRA』の出来を巡って対抗意識を持たれていた新聞部を味方へと引き込み、文化祭では前年度に羽目を外しすぎて怒られた天文部と真面目すぎて人が寄りつかなかった地質研究会の出展内容を折衷して取り入れることでまずまずの成功を収めるが、その後は部活動を引退する3年生たちの進学問題や、進級と同時に引っ越しすることが決まったあおの家庭の問題などが影を落とす。あおは引っ越しのことを誰にも打ち明けられずに悩むが、最終的には皆が知恵を出し合い協力し合った結果、大学進学のため実家を出て行くみさの部屋にあおが居候させてもらうことに決まり、みらとあおの同居生活と、地学部の2年目の活動が始まる。
2018年[8]、同居を始めたみらとあおが高校2年生に進級し、進学を危ぶまれながらも大学受験に合格した真理(モンロー)と美景(桜)が去った地学部では、舞(イノ)が2代目部長に就任し、気象学に関心を持つ七海悠(ナナ)と、美景(桜)の妹である桜井千景(チカ)を新入部員に迎える。やや危なっかしい様子を後輩から不安視されつつも、みらとあおは1年間で地学の知識を深めており、小惑星発見という夢の実現に向けて、沖縄県石垣島で行われる「きら星チャレンジ」の書類選抜の合格を目指す。
ふたりで努力を続けた結果、みらは「きら星チャレンジ」の選抜に合格するが、あおは選考漏れとなる。一緒に参加できないことで落ち込むふたりだが、諦められないあおは周囲に迷惑が掛かることを承知の上、旅費を工面して独断で石垣島に乗り込み、熱意に折れた主催から特例で見学者として認められる。3日間の日程で他の参加者とも親密になり、最終的には小惑星を発見してあおの名前をつけるという目標こそ叶わなかったものの、みらは自分たちの手が本物の小惑星に届いたという実感を得て、様々な分野の学問を内包する地学の可能性の広さと、小惑星を見つけるという目標を叶えた先にある自分自身の将来の夢に思いを巡らせる。
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物語は2017年春のできごとという設定で始まり[8]、その後第3巻第32話(テレビアニメ版第9話)以降で進級・進学が行われるなど年単位の時間が経過するが、学年は登場時のもの。「声」の項はテレビアニメ版の声優。
テレビアニメ版では出演声優が気持ち良く演じられるようにという配慮から、登場人物には可能な限り名前が設定されており[13]、原作では名前で呼ばれる場面がなかったゲストキャラクターにもフルネームが設定されている。テレビアニメ版では、各話アイキャッチが登場人物の誕生星座十二宮をモチーフにした黄道十二星座ものとなっており、原作では誕生月や誕生星座が明らかではなかった人物も登場する。テレビアニメ版では地学部部員の身長と誕生日が設定されている。
主要な登場人物にはイメージカラーが設定されており、テレビアニメ版では各登場人物の瞳のハイライトに、その人物と関係が深い登場人物[注 1]のイメージカラーが配されている[14]。
主要登場人物たちが所属する、高校のクラブ活動として地球科学全般の雑多な学問を扱う部。物語開始年に天文部の地質研究会の合併によって設立された。萌(すず)からは「ごちゃ混ぜは地学部の売り」と評されている[15]。先輩後輩分け隔てなくニックネームで呼び合う間柄で、劇中ではあまり本名で呼ばれない。物語のテーマ上、登場人物全員に将来の夢や目標が設定されており[5][7]、それぞれの夢に向き合うサブプロットが用意されている。
原作第2巻第17話(テレビアニメ版第5話)から登場。地学部の上の階の真上の部屋に部室を構える部。原作では姓で呼ばれており、単行本第2巻の人物紹介でも名が明かされていなかったが[105]、テレビアニメ版のエンドクレジットでフルネームが明かされた。
原作第2巻第19話、第21話(テレビアニメ版第6話)に登場。新聞部の宇佐美に担がれて(伊部いわく「ハニートラップ」)[117][注 6]、文化祭の準備で天文部地学班のボーリング調査に労働力を提供する[118]。原作では部員たちの名前が明かされていなかったものの、テレビアニメ版のエンドクレジットではマネージャーと男子生徒2人の名前が設定されている。
幸の同僚。
原作では、登場人物の父母、祖父母などには名前が設定されていなかったものの[125]、テレビアニメ版では登場エピソードのエンドクレジットでフルネームを確認することができる。
後にあおの住み込み先にもなるみらの家族と、あおの家族。
萌(すず)の家族たち。
劇中2年目の原作第3巻第35話から第37話(テレビアニメ版第11話から最終話)にかけて登場。沖縄県石垣島で毎年開催されている設定の、小惑星発見のための体験企画「きら星チャレンジ」の関係者たち。みらが選抜に選ばれ、あおが飛び入り参加する。光学班のメンバーの2人、およびアイドルの天音ねおんには、原作での登場時からフルネームが設定されており、他の大人たちもテレビアニメ版でフルネームが設定された。
主要登場人物らが通う高校には星咲高校(ほしざきこうこう)という学校名がつけられている[167]。テレビアニメ版では、最寄り駅として星咲駅(ほしざきえき)という駅名の駅が登場している[137]。
劇中では登場人物が住んでいる具体的な地域のモデルは曖昧にされており、読み取れる形で街区表示板が描写されている場面でも、描かれているのは架空の地名である[38][137]。ただし、劇中における主要登場人物たちの日常的な行動範囲に登場する店や商店街は、埼玉県川越市や茨城県にある実在の店舗などをモチーフにしているといわれる[168][169]。
本作の主要な舞台となる星咲高校地学部の部室は、学校の裏手の奥にある、すきま風の入る古びた文化部棟の1階に所在し[80]、文化部棟の隣にはトイレの建物が立っている。2階の地学部の真上の位置には新聞部の部室がある[107]。なお文化部棟の外観は原作とテレビアニメ版で異なる。
前年度(2016年度)までは天文部と地質研究会であった部が合併し、物語開始年(2017年)の4月に設立された[170]。地学部が発足した当時は気風の違いやメンバー間の対立があり、ぎくしゃくしていた名残から、活動分野によって「天文班」「地質班」に班分けがされている[171]。これらの対立は共同活動を敢えて増やしていくことによって次第に解消され[172]、班分けは単なる部員の興味の対象を示すだけのものとなっていくが[172]、そうした発足当初からの共同活動の一環として、地学部では活動内容を紹介する会報『KiRA KiRA』(キラキラ)の発行を続けている。当初は活動内容が分かれていた天文斑と地質班が共同で何かをするというのは木ノ幡みらの提案で[49]、共同活動として会報を発行するという提案は猪瀬舞(イノ)からのもの[173]、会報の誌名は真中あおによる命名[174]。誌名には星も鉱物もキラキラしているという意味が込められている[174]。会報『KiRA KiRA』は妹の活動内容を気にしていた生徒会長の木ノ幡みさによる大々的な宣伝もあり[130]、劇中では充実した内容が生徒から好評を博しているとされ[175]、隣に置かれている校内新聞の読者数が落ち込んだ際には新聞部から対抗意識を持たれていた[110]。
地学部で使っている天体望遠鏡はビクセンのポルタII経緯台とA80Mf鏡筒のセットで[168]、原作ではメーカーロゴや製品名が消されて描かれているものの、テレビアニメ版では鏡筒と架台(鏡筒を支える台)に、判読可能なメーカーロゴや製品名が描き込まれている[57]。なおA80Mfとセットで販売されているポルタIIは、操作が簡単な入門機という位置づけの架台だが[176]、長時間の観測では地球の自転に合わせて縦軸・横軸を手動で微調整し続ける必要がある経緯台式架台のため[177]、劇中では追尾がより簡単な赤道儀式架台や、コンピューターとモーター駆動により自動導入・自動追尾を行う機能のついたものなど、より高価な架台をうらやむ場面もある[178]。
原作第1巻第11話から第13話(テレビアニメ版第4話)、およびテレビアニメ版第11話[注 8]では、地学部の合宿先として茨城県つくば市に実在する地質標本館(産総研)[179]、筑波宇宙センター(宇宙航空研究開発機構)[180]、地図と測量の科学館(国土地理院)[181]といった施設が実名で登場しており、テレビアニメ版ではこれらの施設が取材協力としてクレジットされている。原作単行本第1巻の巻末ではこれらの施設について、劇中で語りきれなかった内容が取材こぼれ話として掲載されている[182]。
原作第2巻第25話(テレビアニメ版第8話)では、猪瀬舞(イノ)が地学オリンピックの予選を受ける場面があるが、著者のQuroは単行本第2巻あとがきの取材こぼれ話で、原作で予選会場となった大学[183]は各都道府県に複数ある会場のうち、秋田県秋田市にある会場を取材したと明かしている[184]。著者が取材した会場の参加者は5名であったが[184]、別会場の参加者は例年130名程度が参加しているといい[184]、劇中では大勢の参加者が会場にいる描写となっている[183]。なお原作とテレビアニメ版では会場の描写が異なる。
原作第3巻第35話から第37話(テレビアニメ版第11話から最終話)にかけての、小惑星発見の夢を叶えようとする主人公らが沖縄県石垣島を訪れるエピソードでは、実在する天文施設であるVERA石垣島観測局[185]、石垣島天文台[153]が実名で登場する。劇中でみら、あおが参加する「きら星チャレンジ」光学班のメンバーは石垣島天文台のむりかぶし望遠鏡を使用している[186]。続く第38話(『まんがタイムきららキャラット』2020年4月号掲載)では離島巡りとして、西表島、由布島、竹富島各島の観光名所や、石垣島鍾乳洞、川平湾を訪れるエピソードが描かれている。なお、主人公らは原作でも旅客機で石垣島に到着する描写になっているが[187]、テレビアニメ版第10話では南ぬ島石垣空港(新石垣空港)が実名で登場しており、取材協力としてクレジットされている。
単行本表紙カバー扉の目次には、雑誌連載時には書かれていなかった各話サブタイトルがつけられているが、原作サブタイトルはテレビアニメ版には反映されていない。
単行本表紙カバー下には鈴矢萌(すず)を主人公にした書き下ろしのおまけ漫画「Suzu'z Research」(スズズリサーチ)が連載されている。第1巻、第2巻にはあとがきとして、著者の取材こぼれ話を紹介するレポート漫画「旅する小惑星」が掲載されている。「旅する小惑星」はアニメ化されないとされていたが[189]、テレビアニメ版のBlu-ray / DVDには本編の主要登場人物を演じた声優が出演する実写版が収録される[190]。単行本第3巻には、本作の原点的作品である著者の商業デビュー作『織姫ナンバー2』が収録されている[191]。
原作 | Quro[16][4] |
---|---|
監督 | 平牧大輔[16][4] |
シリーズ構成 | 山田由香[16][4] |
キャラクターデザイン | 山崎淳[16][4] |
プロップデザイン | 宮原拓也[16] |
美術監督・美術設定 | 中村典史[16] |
色彩設計 | 伊藤裕香[16] |
撮影監督 | 杉浦誠一[16] |
編集 | 坪根健太郎[16] |
音響監督 | 高寺たけし[16] |
音楽 | 伊賀拓郎[16] |
音楽プロデューサー | 西辺誠 |
音楽制作 | フライングドッグ[16] |
プロデューサー | 山下愼平、小林宏之、 鎌田肇、伊藤将生、 池内矩史、有水宗治郎、 佐藤裕士、髙田優子 |
制作プロデューサー | 小林涼 |
アニメーション制作 | 動画工房[16][4] |
製作 | 星咲高校地学部[16][注 9] |
原作第1巻収録の第1話から第4巻収録の第38話までを描いたテレビアニメが、2020年1月から3月までAT-Xほかにて放送された[4]。また、同局にて各話放送後にミニアニメ『KiraKira増刊号!』が放送され[193][194]、YouTubeでも各話放送後に1週間限定で配信された[195][194]。
原作者のQuroによれば、『まんがタイムきららキャラット』2017年7月号掲載の第5話の時点で既にアニメ化の打診があったとされる[7]。第27話を掲載した2019年2月27日発売の『きららキャラット』2019年4月号でアニメ化が発表された際には、連載開始からアニメ化までの早さが意外性を持って受け止められた[196]。
KADOKAWAプロデューサーの山下愼平は、天体写真を趣味にして「星ナビ」や「天文ガイド」に常連で投稿するほどの熱心な天文ファンでもあった[197]ことから、連載第1話の時点から天文・地学を題材にした本作に注目していたとしており、アニメ化したい願望を持ちながらヒットが出にくいジャンルであったことから及び腰で居たところ『きららキャラット』2018年2月号掲載の第13話で主要登場人物たちが将来の夢を語り合う場面で桜井美景(桜)が森野真理(モンロー)に対して発した「自分の夢を遠慮なんてしないで」という言葉に[198]背中を押され、企画を動画工房に持ち込んだと語っている[199]。
監督の平牧大輔、シリーズ構成の山田由香、アニメーション制作の動画工房など、2019年1月から3月まで放送されたテレビアニメ『私に天使が舞い降りた!』のスタッフが再集結している[200]。本作の第1話のエンドカードには、『私に天使が舞い降りた!』の原作者である椋木ななつがイラストを寄せている[201]。
制作協力としてアストロアーツ/星ナビ、ビクセン、国立天文台が参加しているほか、資料協力として原作にも登場した産業技術総合研究所地質調査総合センター・地質標本館、国土交通省国土地理院、誠文堂新光社、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が協力しており、原作ではぼかされていた製品名や書籍名の一部も実在の事物に置き換えられている。
テレビアニメ版は原作単行本が既刊2巻時点で放送開始され、最終話となる第12話において連載中の原作最新話であった『きららキャラット』2020年4月号掲載の第38話に追いつく形で終了し、テレビアニメ版最終話の放送日翌日に発売された『きららキャラット』2020年5月号で、テレビアニメ版最終話の続きに相当する内容が掲載された。テレビアニメ版では、原作者のQuroがシリーズ構成の段階から協力した上で全てのシナリオ会議に出席しており[199]、放送中に刊行された単行本第3巻以降の内容も原作をなぞったものとなっている。原作から時系列の若干の変更や省略、テレビアニメ版で付け足された内容の補完もあるものの、物語の開始は原作同様に2017年のできごとであると設定されており、劇中に登場する雑誌も2017年に出版された実在の雑誌の表紙が使われている[202]。
一方、テレビアニメ版は原作よりもコミカルさが抑えられ[203][199]、星を観ながら落ち着いた雰囲気で観るような[203]、子供や[204]、アニメファン以外の幅広い層でも観られ[12]、見返すたびに発見があり何度も見られるような[199]作風が意図されている。原作は難解な題材を扱いつつも4コマ漫画としてのオチと大袈裟なギャグで笑いを取る作風が持ち味となっているが[199]、それをそのままアニメで再現した場合、笑いを取る場面のたびに流れが中断されてしまうという判断から、テレビアニメ版では演出面の工夫によって見せ方を変え、しっとりとした成長ドラマとしての体裁へとアレンジすることを試みている[199]。具体的には、登場人物の想像が前触れもなく画面内に出現するような漫画的演出が避けられており、地学分野の説明などで図示が必要な場合は登場人物の手で紙に書かせるなど、その場に実存するもので説明させる演出が用いられている[199]。本編がリアル寄りになったのに対し、原作のコメディ要素はミニアニメ『KiraKira増刊号!』の作風へと反映された[199]。
テレビアニメ版ではエンディング映像の時点で原作の劇中2年目より登場する七海悠(ナナ)と桜井千景(チカ)が登場しており、第6話の文化祭では地学部の展示を見に来ていたという原作での言及[92]を反映し展示を見に来た客として登場している。第11話では、石垣島に旅立った主人公ふたりを見送った地学部員と卒業生たちが、合宿先のつくば市から石垣島の天候を案じるというオリジナルエピソードが挿入された[注 8]。
本作ではリアリティを重視して星空や天文機材に関する演出・作画をしており、原作と同様に場面ごとに細かく日時が設定され[205]、星空の表現には純国産の天文シミュレーションソフトウェア「ステラナビゲータ」のデータを使用している[206][207]。プロデューサーの山下は、劇中には天文ファンや地学ファンが見れば気付くような天文描写や小ネタを数多く込めていると語っている[205]。星空についてはリアリティを重視しつつも映像として美しいものにするために、色味をリアルな見え方に近づけながらもアニメーション特有の処理をしている[206][207]。望遠鏡の作画では制作協力のビクセンが提供する工業用CADモデルや実物の機材を参考に3Dモデリングや作画を行っている[208][207]。
作品名のメインタイトルロゴは原作から配色が小改編されており、各所に主要登場人物のイメージカラーを配したものへと変更されている[14]。各話アイキャッチは主要登場人物が扮する黄道十二星座とその誕生石がモチーフになっており、星座のうち最も明るい星が登場人物の誕生石へと置き換えられている[14]。
話数 | サブタイトル | 脚本 | 絵コンテ | 演出 | 作画監督 | 総作画監督 | 初放送日 |
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01. | 二人の約束 | 山田由香 | 平牧大輔 |
| 山崎淳 | 2020年 1月3日 |
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02. | 河原の天の川 | 福田道生 | ふじいたかふみ |
| 松浦麻衣 | 1月10日 | |
03. | 思い出はたからもの | 坂井史世 | 関野関十 |
|
| 1月17日 | |
04. | わくわく!夏合宿! | 平牧大輔 | 由井翠 |
| 山崎淳 | 1月24日 | |
05. | それぞれの夏休み | 坂井史世 | 三越一生 |
|
| 1月31日 | |
06. | 星咲祭! | 山田由香 | しまづあきとし | 金成旻 |
|
| 2月7日 |
06.5. | 振り返り KiraKira特別号 | (第1話 - 第6話 総集編) | 2月14日 | ||||
07. | 星空はタイムマシン | 坂井史世 | 佐山聖子 | 由井翠 |
| 山崎淳 | 2月21日 |
08. | 冬のダイヤモンド | 山田由香 | 吉川博明 |
|
| 松浦麻衣 | 2月28日 |
09. | 本当の気持ち | 坂井史世 |
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| 3月6日 | |
10. | 雨ときどき占い | しまづあきとし | 直谷たかし |
| 山崎淳 | 3月13日 | |
11. | きら星チャレンジ! | 山田由香 | 佐山聖子 | 由井翠 |
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| 3月20日 |
12. | つながる宇宙 | 平牧大輔 |
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| 3月27日 |
販売元はKADOKAWA[214]。各巻には特典映像として、原作単行本第1巻あとがきのレポート漫画を実写化した「旅する小惑星」が収録される[190]。
巻 | 発売日[215] | 収録話 | 規格品番 | |
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BD | DVD | |||
1 | 2020年3月25日 | 第1話 - 第4話 | ZMXZ-13811 | ZMBZ-13821 |
2 | 2020年4月24日 | 第5話 - 第8話 | ZMXZ-13812 | ZMBZ-13822 |
3 | 2020年5月27日 | 第9話 - 第12話 | ZMXZ-13813 | ZMBZ-13823 |
木ノ幡みら役の高柳知葉と真中あお役の山口愛によるWebラジオ『「恋する小惑星」★みらとあおの KiRA KiRADIO◆』が、2020年1月9日から4月2日まで音泉にて隔週木曜に配信された[216]。全7回。
ゲスト
・第2回(2020年1月23日) - 指出毬亜
・第4回(2020年2月22日) - 東山奈央
・第5回(2020年3月5日) - 上坂すみれ
・第6回(2020年3月19日) - 上田麗奈
テレビアニメ化が発表される以前の原作とのコラボレーション企画としては、NPO法人地学オリンピック日本委員会の大会会報『Chiorin!』第19号(2018年5月発行)に掲載された著者のエッセイ漫画があり[10][5][7]、本作の登場人物が著者や漫画編集者の役で登場し、デビュー作や本作の執筆の経緯を披露するという内容のものがある。この企画は著者が、原作第11話に登場するつくば市の地質標本館を取材中に国際地学オリンピックの展示を見たことがきっかけで実現したもので[7]、原作第25話 劇中では登場人物の猪瀬舞(イノ)が、実際に地質標本館で見た展示をきっかけにして、地学オリンピックの日本予選に参加するというエピソードがある[218]。またテレビアニメ化発表後の2019年に開催された第12回日本地学オリンピック予選(国際大会国内一次選抜)では、予選参加特典として本作のグッズが配布されている[219]。地学オリンピックのエピソードであるテレビアニメ版第8話では、地学オリンピック日本委員会が取材協力としてクレジットされている。
原作には登場人物が部活動に使っている機器として、総合光学機器メーカーのビクセンの製品をモチーフにした天体望遠鏡や架台、ルーペなどが登場しているが[注 10]、テレビアニメ版では正式に同社が本作の制作に協力している[192][220][208]。地学部が使用しているビクセン・ポルタII A80Mfなど、原作ではロゴが消されて描かれていた機器[221]に同社のロゴや製品名が描き込まれているほか、Twitterコラボレーション企画が実施されている[222]。なお、テレビアニメ版のDVD/Blu-ray販売元としてIPライセンスを有するKADOKAWA[223][214]はテレビアニメ版放送後の2020年7月、ビクセンの本社が位置する埼玉県所沢市東所沢にほど近い場所に、文化複合施設「ところざわサクラタウン」を開業した[224]。
劇中で登場人物が読んでいた架空の雑誌『月刊天文ナビ』[225]は、テレビアニメ版ではアストロアーツが発行しKADOKAWAから発売されている実在の雑誌『月刊星ナビ』に置き換えられており、現実に発行された雑誌の表紙が、劇中の設定上の年月日に合わせて使われている[202]。『星ナビ』を発行するアストロアーツもテレビアニメ版の制作協力としてクレジットされており[192]、同誌でも何度か本作の紹介記事が組まれている[226][227]。原作者のQuroは、日付などの設定には2017年から定期購読している『月刊星ナビ』を参考にしているとされ、執筆中には原作単行本の場面ごとに日時が書かれた付箋を貼るなど、矛盾のないように詳細に設定しているという[8][207]。また、原作の執筆の際には参考としてアストロアーツの天文シミュレーションソフト「ステラナビゲーター」を使用しており[7][207]、テレビアニメ版でも、設定上の年月日時刻に合わせた正確な星空を描写するために「ステラナビゲーター」の天体データが提供されている[205]。
原作にも実在の書籍として、誠文堂新光社が発行する『天文年鑑』が登場する場面があるが[228]、テレビアニメ版では誠文堂新光社も資料協力としてクレジットされている[192]。
テレビアニメ版第3話では、真中あおの母親(真中詩織)がサイエンスイラストレーターの仕事で描いたキャラクターという設定で、先端加速器科学技術推進協議会のキャラクター「ゆるっと素粒子物理」[229][230]のグッズが登場しているが、本作の原作者であるQuroによると、この「ゆるっと素粒子物理」はQuro自身が前職(高エネルギー加速器研究機構の広報[6])の時にデザインしたものとされる[231]。第3話のエンドクレジットには先端加速器科学技術推進協議会が資料協力としてクレジットされている。
原作ではテレビアニメ放送開始直前となる『まんがタイムきららキャラット』2020年1月号掲載の第35話から4月号掲載の第38話にかけて、沖縄県石垣島を舞台にしたエピソードが展開されているが、テレビアニメ版の放送開始と同時期の2020年1月6日には宙ツーリズム推進協議会、アニメツーリズム協会とのコラボレーション企画として、本作の登場人物が石垣島の天体観測スポットを紹介するという体裁のブックレットが同島の各所や、その他協力施設で配布された[232]。劇中に登場した天文施設(VERA石垣島観測局[185]、石垣島天文台[153])も、ブックレットの中で紹介されている[232]。
叡山電鉄では、コミックス第5巻発売を記念して2023年1月28日から7月2日[注 11]まで、本作のヘッドマークを掲出したデオ720形電車の運行、コラボポスターの掲出などのイベントが実施された[234][233]。2024年7月15日から2025年3月16日[注 12]にはコミックス完結を記念して、第2弾イベントが開催されている[236][235]。
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