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地方政府が行政事務を取り扱う建物 ウィキペディアから
(やくしょ)または(やくば)とは、国(中央官庁)や地方公共団体(都道府県及び市町村(特別区を含む。以下同じ。))が、公の事務とりわけ行政事務を取り扱う組織、およびその組織が入居する建物をいう。後者の意味に限定して呼ぶ時には(ちょうしゃ)という。
単に「役所」という場合には行政機関の意味に限定して用いられるが、「官公庁」「官公署」という場合には司法機関・立法機関も含む。
日本では国家機関を官庁(かんちょう)[1]、または、官署(かんしょ)[2]、地方公共団体その他の公法人の組織を公署(こうしょ)[3]といい、総称して官公庁(かんこうちょう)[4]、または、官公署(かんこうしょ)[5]という。
地方公共団体の事務所をその種別によって以下のように区別する。
地方公共団体によっては「役所」の名称を用いず「市庁」などと称する場合もある(例:八戸市)。本土復帰前の沖縄の町村では町役所・村役所(ちょうやくしょ・そんやくしょ)の名称を使用しており、本土復帰後も豊見城村(現在の豊見城市)のみは村役所を名乗っていた。また、1878年から1926年までは郡にアメリカ合衆国同様の「郡役所」(ぐんやくしょ)が存在した(所在地は郡庁所在地)。また、東京都の特別区における区役所と、他の指定都市における区役所は、名称は同じであるが、前者は独立した地方公共団体であり(したがって選挙で選ばれた区長や議会の監督を受け、職員は他区役所へ転勤することはない)、後者は指定都市の区の事務所にすぎないため、まったく性格が異なる。
地方公共団体の事務所は、地方自治法4条1項の規定により、その所在地を位置条例で定めなければならないため、事務所の引越しには、議会における条例の改正等が必要となる。一般的な条例改正にあたっては、出席議員の過半数によって決するが、事務所の位置を変更する場合は、出席議員の3分の2以上の同意を得なければならない。
山口県旭村(現在:萩市)と高知県東洋町では、合併時の経緯から、定期的に役場本所と支所を入れ替えるという独特なシステムを取っていた。
また、地方自治法4条2項では、事務所の位置の決定・変更にあたっては、住民の利便性が最も高くなるように、交通事情や他の官公署との関係等を考慮しなければならないとされている。地方公共団体の事務所は、通常その地方公共団体の区域内に置かれるが、町村内の移動よりも隣接地方公共団体の市街地への移動の利便性が高い場合には、他の地方公共団体の区域内に事務所を置くことがある。2018年2月現在、以下の3町村がこれにあてはまる。
島嶼を除く地方公共団体では、青森県下北郡東通村が、村の設置から100年間、1988年までむつ市に事務所を置いていた[11]。
2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)による福島第一原子力発電所事故で帰還困難区域とされた福島県双葉町は、4月1日より事務所の機能を埼玉県加須市に移転し、2013年6月17日以降は事務所の機能を福島県いわき市に移転している[12]ただし、これは事務所の機能の移転であって、事務所を移転しているわけではない[13]。
市町村の事務所は、法律によって市町村が行うこととされている事務のほか、市町村独自に定めた住民サービスなどあらゆる行政事務を行うために種々の内部組織が設けられている。
広域行政を担う都道府県と住民により近い行政を担当する市町村では、設置する内部組織にもさまざまな相違がある。
なお、指定都市や中核市などでは、都道府県の事務の一部が移譲されており、これらの事務を担当する内部組織が設けられている。
次に市町村の内部組織について例を掲げる。これらの各内部組織は、地方公共団体によって名称や業務分掌が大きく異なる。各内部組織は議会、とりわけ管轄する委員会により監督されている。例外として、千葉県松戸市の「すぐやる課」を嚆矢(こうし)とする、長直轄の即応サービス部門を置く市町村もある(ただし現在、松戸市のすぐやる課は、市長直轄でなく、総務部長の下に置かれている)。
以下の委員会及び委員については、地方自治法で設置が義務付けられている。
事務所が置かれた都市・地域は経済的に発展する傾向がある。都道府県の事務所の所在地には都道府県の機関、国の出先機関、全国企業の支店などが集中し、都市の発展に有利な条件が形成される[16]。
香川県高松市でには国の出先機関が集中しており、1955年までは四国最多の人口を有していた。
また廃藩置県の後、愛媛県庁が置かれた松山市では、県庁舎の周辺に店舗や施設などが増え、江戸時代(伊予松山藩)には「外側」と呼ばれていた地域に中心市街地が形成された[17]。松山市と隣接する今治市は明治時代に工業都市として発展しており、県庁が置かれなければ松山の金融・流通機能が今治に移転していたとする見方もある[18]。2010年代には、安倍晋三政権によって、地方創生のために一部政府機関を移転することが検討された[19]。
2011年(平成23年)3月中旬に起こった東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)以降、防災意識の高まりから、新庁舎の建設が促進された。現在地の余地を生かして建て替える地方公共団体もあるが、条例を改正したうえで、他所に建設地を定めて建て替え、移転する例も多い。しかし、財政問題を始めとする諸問題が立ちはだかって建て替えを断念する例もある。また、新しくできる複合商業施設の建物を民営企業と共用する例も出てきた。この場合、役所の存在そのものが所在地域の価値を高めることになり、商業的経済的利点となる可能性がある[20]。商用施設などでのテナント的運用は行政庁の威厳を必ずや低下させるであろうが、日本の警察官が威厳以上に一般人への親しみやすさに重きを置いて交番業務などに力を入れる姿勢があるのと同様、日本の文化、とりわけ現代日本の価値観に照らして、問題視していない当局が少なくないことが分かる。インバウンド需要の急速な拡大で来日する機会が増えた2010年代後半の中国人観光客などから見れば、デパ地下を進んだ先にさり気なく役所の受付カウンターがあるなど考えられないことで[20]、威厳や面子に重きを置く中国の常識からすれば、極めて異質な光景と映っている[20]。
中華人民共和国では「〜人民政府」と称する(北京市人民政府、江蘇省人民政府、青島市人民政府、平遥県人民政府、八達嶺鎮人民政府など)。
中華民国では「〜政府」「〜公所」が使われる(台北市政府、台湾省政府、彰化県政府、鹿港鎮公所など。なお、省政府は機能を凍結している)。
アメリカ合衆国の地方政府については「〜政府」「〜庁」と表記されることが多く、州レベルのものはもっぱら「州政府」「州庁」と呼ばれる(「カリフォルニア州政府」「ハワイ州庁」など)。市以下の地方公共団体では日本の事務所の名称になぞらえ「役所」が用いられることもある(「サンフランシスコ市政府」「サンフランシスコ市庁」のほかに「サンフランシスコ市役所」など)。これは、庁舎を示すcity hall(市庁〈舎〉、市役所)等でも同様である。
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