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少年合唱(しょうねんがっしょう)とは、混声合唱とは異なり、アルト声部やソプラノ声部に女性を置かず、声変わり前の少年を利用したものをいう。テノールやバリトン、バスなどの低い声域は、成人男性が担当することもあれば、声変わりを終えて声域の安定した青年男子が担当することもある。また、中にはこれらの声域をまったく置かない団体もある。現代では、とりわけ旧社会主義国において、特に世俗の合唱曲を歌うために育成された少年合唱団も少なくないが、ヨーロッパにおいてはそのような団体でも、歴史をさかのぼってゆくと、宮廷礼拝堂に源流を持つことがある。また現在でも、ヨーロッパ大陸やイギリス諸島のカトリック教会、ドイツのプロテスタント教会では、古い歴史的伝統を持つ聖歌隊が、同時に訓練された少年合唱団となっていることがしばしばである。
少年合唱団は非常に長い伝統を遡ることができる。中世・ルネサンスの聖歌隊や礼拝堂がその根源である。とりわけ教会においては、一部は19世紀になるまで女性が歌うことが許されなかったため、少年たちが音楽活動を引き受けてきた。それゆえこんにちの少年合唱団も伝統的に、典礼音楽や教会での演奏と深く結びついている。
むろん、混声合唱の抬頭によっても少年合唱は角逐されなかった。20世紀において、特に戦後に、数多くの少年合唱団が創設された。それらはもはや典礼の執行のために育成することが欠かせないというわけではないため、音楽教育のうちに賢明な余暇利用法を見出すための基礎となっている。
欧米に比べ、日本における少年合唱の歴史は浅い。男子単独による歌手活動や混声の児童合唱団に男子が所属する例は戦前からあるものの[1]、男子のみの合唱団が目立った活動を行うようになったのは戦後からである。小学校の部活動を起点とする上高田少年合唱団が男子のみの合唱団として活動を開始し評価を得たのは1950年。設立当初から男子のみで構成された合唱団では、東京少年合唱隊(現東京少年少女合唱隊)の誕生が1951年である。[2]
その後、1950年代後半から1960年代にかけて所謂「少年合唱ブーム」が起こった事によりウィーン少年合唱団など海外の少年合唱団の来日公演が相次ぎ、その演奏に感銘を受けた指導者によって西六郷少年合唱団(現西六郷少年少女合唱団)や桃太郎少年合唱団など合唱団が数多く生まれた。しかし、ブーム終息後も続いた合唱団は僅かで、多くは団員不足により混声へ転換するか解散している。
現在、男子のみによって構成される少年合唱団は僅かにしか存在しない。団体名に「少年合唱」を冠する合唱団は数多く存在するが、大半が「未成年者」という意味での少年であり、性別を問わず入団でき、団員の男女比は女子に偏りがちである。
少年合唱は、ウィーン少年合唱団のように、使用声部がソプラノやアルトのみに限られていることもあれば、高低すべての音域にメンバーが配置されることもある。しばしば少年は変声期を経て、男性の声になる。必要のある場合には、その声を鍛え上げなければならない。礼拝における出演のように伝統的な典礼の責務の反面、演奏会は、少年合唱団にとって、世俗的に課せられた任務に属しているといえる。非常に音楽的・芸術的な場面の一部として、それらはこんにち特殊な地位を占めている。
年齢(9 - 14歳)に基づいて、少年歌手は、芸術家としての成熟の「早期段階」にあると考えられる。その意味において、芸術家を育成する可能性は、いくつかの観点から制限が加えられている。その一方で、いたいけな、純粋で澄み切った声からなるがゆえに好まれる合唱の響きは、比べもののないほど格別な魅力をさらけ出している。だが少年合唱の意味は、その音楽的な役割にとどまってはいない。このような合唱団のメンバーにとって、音楽教育や共同の演奏活動は、様々な専門的能力の要求を見くびることにはならないからである。
こんにち少年合唱団が直面する大問題は、変声期の経過である。19世紀になるまで、若者は17歳までソプラノやアルトで歌うことができたのに対して、今日では12 - 13歳までに限界が来てしまう。その結果、一人の声変わりに合わせて歌手の配役に支障をきたしたり、歌手として長年にわたって熟練し、存分に訓練された児童を失うことになる。なるほど、その間の声変わりの限界の変化に歯止めがかかったかに見えるが、とりわけこのような見方からすると、少年合唱の未来がどのようなものになるかは、確信がもてない。
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