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かつて存在した大阪市の地方公営企業 ウィキペディアから
大阪市交通局(おおさかしこうつうきょく、英: Osaka Municipal Transportation Bureau)は、大阪府大阪市内およびその周辺地域で公営交通事業を行うため、2018年(平成30年)3月まで存在した大阪市の地方公営企業の一つである[1]。
かつての大阪市交通局の本局 (現在は大阪市高速電気軌道本社) | |
種類 | 地方公営企業 |
---|---|
略称 |
大阪市営地下鉄 大阪市営バス |
本社所在地 |
日本 〒550-8552 大阪府大阪市西区九条南一丁目12番62号 北緯34度40分11秒 東経135度28分27.9秒 |
設立 | 1903年(明治36年)9月12日(大阪市工務課として)(※1) |
業種 | 陸運業 |
事業内容 |
都市高速鉄道事業 中量軌道(新交通システム)事業 自動車運送事業 |
代表者 | 塩谷智弘(交通事業管理者・交通局長) |
従業員数 | 5,272名(2017年3月現在) |
決算期 | 3月31日 |
関係する人物 | 山口利昭(社外監査役) |
外部リンク |
1998年 - 2013年(インターネット・アーカイブ) 2013年 - 2018年(インターネット・アーカイブ) |
特記事項:※1:1923年(大正12年)10月1日大阪市電気局として局制、1945年(昭和20年)9月11日大阪市交通局に改組。 |
地下鉄・中量軌道(新交通システム)・路線バスをはじめ、市電(路面電車)や無軌条電車(トロリーバス)も運営していた。1903年(明治36年)の大阪市電開業時に存在した大阪市工務課に起源を持ち、1945年(昭和20年)に名称が大阪市交通局となった。本局は大阪市西区九条南1丁目に所在していた。
2018年(平成30年)4月1日より、市営地下鉄事業(新交通システムを含む)は大阪市が全額出資する新会社・大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)による運営に移行された[2][3][4][5][6][7][8][注釈 1]。また同時に市営バス事業も、大阪市高速電気軌道の子会社である大阪シティバスに譲渡された[2][10][7]。
事業の民営化に伴い、大阪市交通局は廃止された[11]。
各事業の詳細は以下の項目を参照。
※以降の解説で「バス」とある場合は、特記なければ一時期設定されていた「赤バス」を含む。
大阪市では、地下鉄事業を「大阪市高速鉄道」、路線を「高速電気軌道第○号線」と呼んでいた。「高速鉄道」と称されてはいるが、意味は都市計画法に規定される都市高速鉄道の略であり、新幹線に代表される高速鉄道ではない。これら地下鉄建設は市電の代替とされ、野田阪神駅など市電時代の停留所名がそのまま地下鉄の駅名となっているケースが多い。
大阪市の地下鉄は法規上、大阪港トランスポートシステム(OTS)から移管された区間を除く全線が都市計画道路とセットで計画・建設されたという歴史的経緯から、日本の地下鉄では唯一、軌道法準拠の軌道として取り扱われている。路線名に用いられる「高速電気軌道」という呼称もこれによるものである。これに対し、新交通システムの南港ポートタウン線については、軌道法に基づく軌道と鉄道事業法に基づく鉄道の区間が混在している。
大阪市電開業当初は市章の澪標に唐草模様を加えたもの、あるいは市章をそのまま使用していた。やがて澪標に「電」の文字を組み合わせたマークが1908年(明治41年)頃より使われはじめ、そのマークが大阪市電気局発足日である1923年(大正12年)10月1日に正式に局章として制定された[12]。この局章は大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)へ継承されている[13]。
大阪市営地下鉄を表すマークは京都帝国大学教授の武田五一が開業時に考案したものである。大阪市の「O」と高速鉄道の「コ」を重ねたものを図案化したもので、「コ」が「O」からはみ出す様は路線網が郊外へ伸びていくことを表している[12]。正式名称は大阪市高速電気軌道標識と言うが、その形から親しみを込めてマルコマークと呼ばれていた[14]。
中量軌道事業のマークはニュートラムの頭文字「N」の字を図案化したものである。
バスについては独自のマークを使用せずに大阪市章(澪標)を使用していた。
数年ごとに組織体制の改組・変更が行われているが、基本的には本局関係と事業所(現業)関係のふたつに分類される。
2015年(平成27年)9月時点では、組織体制は以下のように定められていた。
なお、南港運輸事務所は難波駅務運輸に所属しているが、乗務組織でもある。
大阪市の他部局と同様、市採用職員の職階は局長級、部長級、課長級、課長代理級、係長級、係主査、主任、係員と明確に規定されており、事業所関係における教習センター所長、各運輸長、各管理事務所長にはそれぞれ課長級が補職されている(建築工事のみ、統括者を担当課長と呼称)。
ここで言う局長級とは、交通局長自身に加え、鉄道事業本部長と民営化推進室長の3名を指す(経営管理/事業管理の両本部長は職員部長による兼務)。
局採用、つまり現業部門の職員に対してはまた別の職階が適用されていた。こちらは民間の鉄道事業者とほぼ同じく、上位から順に運輸助役/技術助役、助役、助役補、事務員/技術員と定められている。
交通局では民営化直前には、その準備の意味もあり、内部におけるこのような市採用と局採用との間にある待遇の違いを無くしてゆく試みが、少しずつではあったが進められていた。
大阪市交通局は、地下鉄事業への投資の蓄積・市バス事業の業績悪化・公有地土地信託事業(フェスティバルゲート・住之江公園駅のオスカードリーム)の失敗で多額の負債を抱え(ただし、地下鉄事業に限れば2003年度より単年度黒字になり2010年度には累積欠損金を解消している)、業務効率化と収支状況の改善を図るため、大阪市の市政改革本部の打診を受けて大阪市交通局で2006年度中に公設民営化を前提とした経営形態のあり方を検討していた。
その間、2006年5月に独自に関西経済同友会が完全民営化の提言を行い、2006年6月9日には公設民営化ではなく将来的には「株式上場も視野に入れた完全民営化」を実施する方向で検討に入ると発表した[27][28]。
その後の協議の結果、2007年1月、大阪市交通局経営形態検討会により現状の経営のままでは、市バスは赤字額が大きいために民営化(株式会社化)は難しく、2,000人以上の職員のリストラを実施するなどの経営改善施策を採った場合には、地下鉄とバスの両方の民営化が可能との見解をホームページ上で公開した。
これを受けて市政改革室も公営交通事業の民営化の可能性を検討に入ったが、大阪市会の交通水道委員会の議員らが「福祉バス路線の縮小反対」や「大阪市交通局は市民の資産であって切り売りは許されない」などとして猛反発し、結局2007年3月に当時大阪市長の關淳一が「大阪市交通局の経営形態はあらゆる方向性を視野に入れて、もっと時間をかけて検討すべき」と従来の姿勢から一歩後退した姿勢を見せた。
この地下鉄民営化が争点の一つとなった、2007年11月18日投開票の大阪市長選挙では、民営化の検討を公約に掲げた關が落選した。他方、当選し大阪市長に就任した平松邦夫は、当面は公営のまま経営形態を維持して経営改善を図ることを主張していた。仮に民営化を検討するにしても、その是非は将来に制度化を目指す住民投票制度を通じて市民に問うものとしていた。
2010年8月になり、大阪市は再び民営化計画を見直し、市営地下鉄の運営部門を上下分離方式により民営化させる政策を打ち出した[29]。線路などの設備は従来どおり市が保有し、列車の運行に関する部門は新会社が担当する。これによって3400人ほどの職員を削減でき、経営の効率化が図れるという。
その後、市長は2011年11月の選挙で当時現職の平松が落選し、翌12月に橋下徹に交代した。
2012年6月19日に開かれた大阪府市統合本部会議において、地下鉄事業は「上下一体での民営化」、バス事業は「地下鉄事業とは完全分離して運営、かつ民営化」という方針を打ち出し、この方針のもとに2012年12月に民営化基本方針(素案)、2013年2月に素案を改訂した民営化基本方針(案)を策定した[30]。
橋下は、大阪市会に、2013年2月15日に「大阪市高速鉄道事業及び中量軌道事業の廃止に関する条例案」、「大阪市自動車運送事業の廃止に関する条例案」をそれぞれ提出した。2014年9月9日には地下鉄運営の新会社設立のための出資金を計上した「平成26年度大阪市高速鉄道事業会計補正予算(第2回)」が提出された。
2014年11月21日に、大阪市会は「大阪市高速鉄道事業及び中量軌道事業の廃止に関する条例案」、「大阪市自動車運送事業の廃止に関する条例案」および「平成26年度大阪市高速鉄道事業会計補正予算(第2回)」を否決したが、その後2016年2月3日に、市バスの2016年度の営業成績が、31年ぶりの黒字となった2013年度以来3年ぶりの赤字になる見通しとなったため、大阪市が民営化案を提出した。
2017年に大阪市は市会に地下鉄事業の廃止議案を提出し、自由民主党など2/3以上の賛成が得られる見通しとなり、2017年3月28日の市会本会議で大阪維新の会・自由民主党・公明党などの賛成多数で地下鉄事業の廃止議案が可決された[31][3][10]。
これにより、2018年4月1日から市営地下鉄事業(新交通システムを含む)は大阪市が全額出資して設立される新会社・大阪市高速電気軌道株式会社が[32][4][7]、市営バス事業は大阪シティバス株式会社[10][7]がそれぞれ引き継ぐことになり、日本国内の地方自治体の公営地下鉄では初めてとなる民営化が実現することになった[注釈 2]。ただし、前述のとおり保有路線の大部分は法的には軌道扱いのため、大阪市高速電気軌道は「軌道経営者」かつ「鉄道事業者」となる。なお、地下鉄事業を継承する大阪市高速電気軌道株式会社は、民営化基本方針(案)では大阪地下鉄株式会社の仮称が使用されていた。
地下鉄は重要な交通インフラだとして地下鉄の新会社は民営化後も大阪市が全株を保有する株主となるため市に経営決定権がある。また、交通局保有の関西電力株(約1500万株)を譲渡する代わりとして安全対策・交通政策の維持のために交通政策基金を創設することが発表されている[33]。また大阪市は、大阪市交通局事業の廃止後も、「大阪市高速電気軌道株式会社および大阪シティバス株式会社の監理」、「大阪市域内における地域交通政策(BRT社会実験含む)」「交通政策基金の所管」を主な事務とする、大阪市長直轄の「都市交通局」を2017年7月1日付で新たに設置することも発表している[4][24][7]。
2018年1月25日、公式の愛称を英文表記で「Osaka Metro」とすることを決定した[34]。ただし大阪市は「大阪市高速電気軌道」のほか「大阪メトロ」「大阪地下鉄」を2017年に商標出願しており、いずれの表記も民営化後の活用を検討している[35]。また、大阪市高速電気軌道は運営開始と同日に、大阪市の第三セクターとなっている大阪地下街を純民間会社化した上で大阪シティバスとともに系列企業とすることとしている。
下記の乗車券を交通局の外郭団体である大阪メトロサービスが発行している。
大阪市交通局の地下鉄・ニュートラム・バスにOSAKA PiTaPaなどのPiTaPaカードで乗車すると、以下のような割引が適用される。ただし、相互利用可能なICOCAなどのIC乗車券には適用されない。また、大阪市営地下鉄から直通運転している阪急・北急・近鉄の各線に入った場合は、まったく別の割引制度になる。阪急では「利用回数割引」や「区間指定割引」「IC定期サービス」が、北急では「IC定期サービス」が、近鉄では「利用額割引」と「区間指定割引」が行われているが、これら各社の割引・IC定期サービスはすべて、大阪市交通局のものとは別であり、割引対象となる運賃の通算もされない。
地下鉄・ニュートラム・バスの利用額に比例して引き落とし額が割り引かれる制度を用意している。利用額が多いほど得をするため、同局が発行している回数カードよりも得になるケースも存在する。例えば一般コース(大人・小児コースの2種類。いずれも事前の登録は不要)の大人料金の場合、2010年10月からの割引率の改定により、月1回でも地下鉄・ニュートラム・バスを利用すれば割引が適用されることになる。
加えて、地下鉄・ニュートラム←→バスの乗り継ぎ割引制度も自動で適用される(これはICOCAでの利用にも適用)。
一般コースのほかに、割引額がより大きくなる、学生・大人コース(大阪市交通局が指定する学校に在籍する利用者で、事前に年度単位での登録が必要)、シニアコース(事前に登録した65歳以上の利用者が対象)もある。
2008年2月末までは、前記のサービスを単に「利用額割引」と称していたが、同年3月1日より、次項に挙げる「利用額割引・マイスタイル」が設定されたことにより、本サービスは「利用額割引・フリースタイル」と名称変更した。
2008年3月1日より、地下鉄・ニュートラム・バスの利用区間を指定・登録することで、6か月定期券の1か月分相当を上限額として、利用額に比例して引き落とし額が割り引かれる、「利用額割引・マイスタイル」の制度を開始した。「地下鉄プラン」「バスプラン(市バス全路線の利用が対象)」「地下鉄・バスプラン(市バス分は全路線の利用が対象)」の3つのプランが設定され、主に従来定期券を利用していた顧客に対しての利用を促進している。
「地下鉄プラン」と「地下鉄・バスプラン」の地下鉄分については、2つの利用駅を登録すればその2駅(「登録駅」)相互間の利用、およびそれら2駅のどちらからも同じ区数になる駅(「対象駅」)と「登録駅」との相互間を利用する場合は、「特定の利用」分として計算され(「対象駅」相互間の利用は「特定の利用」にはならない)、その合計額が上限額より少ない場合は、利用額に応じて割り引かれた金額(上記「利用額割引・フリースタイル」相当)だけを払えばよい。上限額を超えた場合は超過分が全額割引額として扱われ徴収されない。
また他社線相互乗り入れ区間(御堂筋線江坂駅 - 北大阪急行/中央線長田駅 - 近鉄/堺筋線天神橋筋六丁目駅 - 阪急)を利用する場合は、それぞれの地下鉄・他社線の分岐駅(江坂・長田・天神橋筋六丁目)から利用する地下鉄の駅までを指定・登録することになる。
この割引は3つのプランとも、事前に指定・登録することで、OSAKA PiTaPaを始めとするすべてのPiTaPaカードで適用される。またいずれのプランとも、学生割引の場合はより大きな割引が設定されるが、「フリースタイル」と同様に、年度ごとの登録が必要となる。
定期券利用者に対して薦められている割引ではあるが、対象区間外の駅へまたがって乗車した場合は「乗り越し精算」として計算されないという点が、定期券での扱いと異なる。この場合では、「特定の利用」ではない乗車として乗車駅からの全額が別計算になる(「利用額割引・フリースタイル」に準じて別途集計される)。一方で大阪市内中心部の複雑な路線網のエリアが対象駅として事前に設定した場合は、定期券よりも広い範囲の利用が追加料金なしでできるのは大きなメリットである。また「地下鉄プラン」でも市バスとの乗り継ぎ割引も適用される。
また、定期券と異なり区間と有効期限の印字はカードに行われないため、交通費として申請する場合は別途区間証明の書類などが必要となる[注釈 4]。
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