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メジャーリーグベースボール(MLB)におけるドラフト会議 ウィキペディアから
メジャーリーグベースボール(MLB)におけるドラフト会議(ドラフトかいぎ)には以下の2つがある。
本稿では両方について説明し、単に「ドラフト」と表記した場合はファースト・イヤーを指すものとする。
「ルール・フォー・ドラフト」(MLB規約の第4条に規定されていることに由来)、または「アマチュア・ドラフト」(プロ選手を指名する、後述のルール5ドラフトとの対比)とも呼ばれる。
MLBのドラフト制度は、各チームの戦力均衡を目的に1965年から導入された。豊富な資金力を背景に選手を集め、圧倒的な強さを誇っていたニューヨーク・ヤンキースにそれ以上戦力が偏りすぎるのを防ぐためでもあった。この結果、ヤンキースは1964年以降10年以上もリーグ優勝から遠ざかることとなり、この制度の成果は如実に現れた。さらに1969年からはプレーオフ(2地区制)が導入され、1972年からのオークランド・アスレチックスワールドシリーズ3連覇まで毎年違うチームがワールドチャンピオンとなっている。
だが、1960年代後半以降、代理人交渉制度が認められるとドラフト指名された有望選手にも代理人がつくようになり、契約金の高騰が起こった。結果、資金力に劣るチームは指名順位が高くても目玉選手を指名できず、指名順位が低いにもかかわらず資金力のあるチームがその選手を獲得できてしまう問題も発生した。そのため、選手に有利な契約を結ばせようと代理人が契約交渉を長引かせることを防ぐために交渉期限日を早めたり、契約金の推奨額を設定するといった対策を行なっている(後述)。
以下の条件を満たす選手が指名対象となる[1]。
指名対象国の学校の大半は6月に学年末を迎えるが、1986年までは1月と6月の年2回ドラフトが開催されていた[6]。1987年からは年1回(6月上旬)に変更され、同年にレギュラー・フェイズ(通常部門=ファースト・イヤー)とセカンダリー・フェイズ(第2部門=いわゆる二次ドラフト。前回のドラフトで指名されながら入団しなかった選手対象)の分割システムもなくなり、それまでのドラフトで指名された選手も全てレギュラー・フェイズに組み込まれることになった[7]。
2021年からは、7月の「MLBオールスターウィークエンド」期間中に開催されることとなった[8]。MLB機構はこれに伴い、ドラフト候補選手たちが一同に集まって6-8月にシーズン公式戦を行う「MLBドラフトリーグ」を創設すると発表した[9]。なお2023年現在、契約交渉権の有効期間は8月1日まで[10](4年制以上の大学卒業生、および独立リーグ所属選手は翌年ドラフト開催日まで)。
戦力均衡が目的であるため、導入年から完全ウェイバー方式を採用しており、指名重複(抽選)や自由獲得枠といった規定はない。2022年からは、タンキング(球団側が意図的に戦力補強をせず、その結果シーズン勝率が下がることで、翌年のドラフトでより上位の指名順を得ようとする戦略)行為抑制のため、NBAやNHLでも採用されているロッタリー方式を以下のとおり採用している[11][12]。
ラウンド | 指名順 | 指名順決定方法 | 補足 |
---|---|---|---|
1巡目 | 全体1~6位 | ポストシーズン非進出チームによる抽選 | ★1 |
全体7~18位 | ポストシーズン非進出、かつ上記抽選に当選しなかったチーム (前シーズンの勝率下位順に割り当て) | ||
全体19~22位 | ポストシーズンのワイルドカードシリーズ敗退チーム | ★2 | |
全体23~26位 | ディビジョンシリーズ敗退チーム | ||
全体27~28位 | リーグチャンピオンシップシリーズ敗退チーム | ||
全体29位 | ワールドシリーズ敗退チーム | ||
全体30位 | ワールドシリーズ制覇チーム | ||
2巡目 以降 |
1~18番目 | ポストシーズン非進出チーム (前シーズンの勝率下位順に割り当て) | |
19番目以降 | 1巡目の指名順と同じ |
また、指名権の補償などについて以下の特別規定がある[1]。
ドラフト ラウンド |
---|
1巡目 |
PPI指名 |
QO補完指名 |
戦力均衡ラウンドA |
2巡目 |
戦力均衡ラウンドB |
QO補完指名 |
3巡目 |
入団拒否補完指名(3巡目) |
4巡目 |
QO補完指名 |
5巡目 |
6巡目 |
・・・ |
アメリカ合衆国では学生の部活動の掛け持ちが一般的であり、野球以外のスポーツでも高い才能を発揮している学生選手は珍しくない。そのためNBAやNFLなど他競技のドラフトからも重複で指名されたり[22]、卒業年度でない学生は学校からスポーツ奨学金(スカラーシップ)の提供を受けて在学を続ける選択をし、指名されても入団しないケースがある。また、下位指名選手は契約金や自身への評価が低いなどの理由から、入団しないことがある[23]。
またチーム関係者の親族や、知人の息子を「記念」として下位で指名するなど、思わぬ人物が突然指名を受けたケースもある。あくまでお遊びとしての指名であり、基本的に戦力として期待されてはいないので、大抵このような指名を受けた者は入団しないが、マイク・ピアッツァ(1988年、62巡目指名、ピアッツアの父親と当時のロサンゼルス・ドジャースの監督だったトミー・ラソーダが友人だったことから指名された)のように入団し、チームの主力にまで成長する選手も稀にだが存在する。
指名選手はマイナー契約(40人枠外での契約)しか締結できないため、ほぼ全ての選手は傘下のマイナーリーグ球団で数年間の育成を経たのち、有望選手がMLB昇格を果たしていく。また、FA権取得までは保留制度に縛られ、サービスタイム3年未満の間は年俸調停権もない。
導入後しばらくは指名人数に制限はなく、年度によっては100人前後を指名するチームもあった。その後、1998年以降は各チーム50巡目まで、2012年以降は40巡目までに縮小されたが、それでも1日で全選手を指名することは不可能なため、ドラフト会議は数日間に渡っての開催となる[23]。
2020年はCOVID-19感染拡大による契約コスト削減の一環として、例外的に5巡目指名をもって終了となった(指名されなかった選手とは、契約金2万ドルを上限として自由獲得することが可能)[24]。マイナーリーグのチーム数が削減された2021年以降は、20巡目までの指名に縮小された[25]。
各年のドラフト開催前に予め、10巡目までの全指名順位ごとに契約金の目安(Pick Value)が設定される。その合計金額が各球団の契約金推奨額(Bonus Pool)となる。各球団は、指名した全選手との契約金合計額をこのBonus Pool以下に抑えなければならない(どの指名選手にどう金額を割り振るかは球団側の自由。なお契約不成立選手のPick ValueはBonus Poolから差し引く。11巡目以降の指名選手については計算上、各人15万ドルを超えた分のみ合計額に加算される)。
合計額が超過した場合、5%未満の超過であれば球団に罰金が科され、5%を超過すれば超過割合により翌年ドラフトの1巡目指名権剥奪などのペナルティも加わる[1][26]。このルールは2012年より適用されている。
同じ1巡目指名順でも、全体1位と全体30位では例年、Pick Valueに3倍以上の開きがある。このため、1巡目で上位の指名権を持つ球団ほどBonus Poolに十分な余裕が生じ、1巡目以降でも高評価の(契約金が高くなりそうな)選手を躊躇なく指名できたり、契約金不足による入団拒否を回避しやすくなるといったメリットが得られる[27]。
アメリカ合衆国・カナダ・プエルトリコの学校でプレーする留学生なども指名対象となるため、当該国以外の国籍を有する選手も指名されることがある。日本国籍を有する歴代指名選手は以下のとおり。2022年、加藤豪将が当該選手として史上初のメジャー昇格(アクティブ・ロースター入り)を果たしている[28]。
MLBでは2023年現在、ドラフト指名対象外となるドミニカ共和国、ベネズエラ、メキシコ、日本、韓国、台湾などに在住する海外アマチュア選手については、若手プロ選手(25歳未満の選手、プロ経歴6年未満の選手)と同様に、球団毎に毎年定められる契約金総計(インターナショナル・ボーナス・プール)の範囲内で自由獲得できるルール(インターナショナルFA)となっている[1][31]。ただし、「他国プロ野球リーグにおいてドラフト指名対象となっているアマチュア選手については、契約や指名を見送る」という紳士協定がリーグ間で合意されており、獲得には様々な障壁がある。
2001年頃から「国際ドラフト(International Draft)構想」が進められている。MLBにおいて中南米や東アジアを中心に外国人選手も増加傾向にあり、一方でNHLなど他のメジャースポーツでは諸外国の選手もドラフトを経て入団しているため、MLBも同様に実施していくことを検討している。MLB機構とMLB選手会の間で協議は続いているが、他国プロ野球との絡み、契約金の損得などの問題から、2023年現在も実現には至っていない[5]。
「ルール・ファイブ・ドラフト / ルール5ドラフト」(Rule 5 draft)とは、有望選手が十分な活躍の場を与えられず、傘下マイナーリーグチームで半ば飼い殺し状態になってしまうことを防ぐため、他チーム所属の現役選手を指名し獲得できる制度である。名称の由来はMLB規約の第5条に規定されていることから。
例年、毎年12月のウインターミーティング最終日に行われる。その年の優先権のあるリーグでレギュラーシーズン勝率の低いチームから指名権が与えられる。優先リーグは毎年交互に入れ替わる。
MLB以外では2011年11月、韓国プロ野球で新球団・NCダイノスの設立に伴って、この制度を模した「2次ドラフト」が初めて開催され、以降2年おきに開催されたが2019年11月が最後となった。日本プロ野球においてもこの制度を参考にした「現役ドラフト」が2022年から実施されている。
指名は「メジャーリーグ・フェイズ[32]」「マイナーリーグ・フェイズ」に分けて行われる。制度の悪用による過剰な引き抜きを防止するため、以下の規定がある(2020年現在)[33]。
★★★印は野球殿堂入り、★印はMLBオールスター選出、(N)印はNPB在籍経験あり、▼印は指名から翌シーズン終了までの間にアクティブ・ロースターから外された選手[41]。
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