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マスメディア集中排除原則(マスメディアしゅうちゅうはいじょげんそく、英語: the principle of excluding multiple ownership of the media)とは、放送法第93条第1項第4号および第2項に規定する総務省令基幹放送の業務に係る特定役員及び支配関係の定義並びに表現の自由享有基準の特例に関する省令の通称である。
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
基幹放送事業者に対する出資に関する規制であり、少数の者により複数の基幹放送事業者が支配されることを防ぎ、多くの者が表現の自由を享受できるようにするため、複数の基幹放送事業者に対する出資を制限している。
1988年(昭和63年) 電波法改正 [注 1] により、第7条第2項第4号に「前三号に掲げるもののほか、郵政省令で定める放送をする無線局の開設の根本的基準に合致すること」が追加された。 これを受け郵政省令放送局の開設の根本的基準(現総務省令基幹放送局の開設の根本的基準) に第9条「放送の普及」が追加 [注 2] された。 マスメディア集中排除原則が法令に明文化されたこととなる。
2008年(平成20年) 電波法改正 [注 3] により、第7条第2項第4号は「総務省令で定める放送による表現の自由享有基準(放送をすることができる機会をできるだけ多くの者に対し確保することにより、放送による表現の自由ができるだけ多くの者によつて享有されるようにするため、申請者に関し必要な事項を定める基準をいう。)に合致すること。」と改正された。 これを受け、放送局の開設の根本的基準から分離し、放送局に係る表現の自由享有基準として独立した総務省令となった。 なお放送法も改正[注 3] され、認定放送持株会社が認められた。 これを受け、放送局に係る表現の自由享有基準の認定放送持株会社の子会社に関する特例を定める省令も制定された。
2011年(平成23年) 放送法改正 [注 4] により、第93条が追加され、第1項が「基幹放送の業務を行おうとする者(電波法の規定により当該基幹放送の業務に用いられる特定地上基幹放送局の免許を受けようとする者又は受けた者を除く。)は、次に掲げる要件のいずれにも該当することについて、総務大臣の認定を受けなければならない。」となった。 同項第4号に「当該業務を行おうとする者が次のいずれにも該当しないこと。ただし、当該業務に係る放送の種類、放送対象地域その他の事項に照らして基幹放送による表現の自由ができるだけ多くの者によつて享有されることが妨げられないと認められる場合として総務省令で定める場合は、この限りでない。」と規定された。 この総務省令として基幹放送の業務に係る表現の自由享有基準に関する省令が、あわせて基幹放送の業務に係る表現の自由享有基準に関する省令の認定放送持株会社の子会社に関する特例を定める省令が制定された。
一方、電波法第7条第2項第4号からは当該規定は削除され、放送局に係る表現の自由享有基準に関する省令及び放送局に係る表現の自由享有基準の認定放送持株会社の子会社に関する特例を定める省令は廃止された。 マスメディア集中排除原則の根拠法が電波法から放送法に移行したこととなる。
同一の者が複数の基幹放送事業者に対し次に掲げる議決権を有することを「支配」とし(第3条第1項)、地上基幹放送の場合は複数波の使用、衛星基幹放送の場合は同一の者による一定の中継器(トランスポンダ)相当の伝送容量を超える使用を規制(第4条第1項)している。
次のいずれかの場合は、特例が適用される。
2006年1月20日から開催されている「通信・放送の在り方に関する懇談会」では、通信と放送の融合時代におけるマスメディア集中排除原則のあるべき姿について、議論が行われている。特に民放BSデジタル放送は各局共に赤字経営が続いている事や、地方では厳しい経済環境から地上民放テレビ局の新規開局が困難な状況であり、情報格差の縮小も狙って、次のようなことの解禁が検討されている。
また、近年のラジオ離れの影響で民放ラジオ局の経営が困難になりつつあるため、日本民間放送連盟(民放連)では2010年2月に総務省に対しラジオ局に対するマスメディア集中排除原則の大幅な緩和を求めた [1] 。実際に民放ラジオ局の経営悪化に伴い、2010年4月には関西の外国語放送FM局である関西インターメディア(FM COCOLO)が番組制作のほとんどを同じ大阪のFM802の関連会社に委託するという事案が発生しており、ラジオ局に関する同原則の見直しは急務とも言えた。
こうした事情を受け、2011年3月に総務省は「ラジオ局については、エリアの重複の有無を問わず4局まで100%株式保有を認める」「それ以外の放送局(テレビ局、5局目以降のラジオ局等)についても、エリアが重複しない場合1/3まで株式の保有を認める(従来は20%未満)」という緩和案を発表[2]。これにより、従来は不可能だった「AM・FMラジオ局の同時保有」「同一エリアのラジオ局同士の合併」などが可能になった。これを受けて2012年4月にはFM802がFM COCOLOの免許を継承し、1局2波体制での経営をスタートさせたほか、2020年9月には東京の外国語放送FM局であるInterFMがエフエム東京(TOKYO FM)の関連会社のジャパンエフエムネットワーク(JFNC)の完全子会社になり、JFNの特別加盟局[3]となっている。
なお、かつては総務省令により、認定放送持株会社に対しては、当初より子会社化できる局数が「最大12局」となっていた。ただし、局数の計算方法として「放送対象地域の都道府県1つにつき1局」と計算するため、例えば東京のキー局(1都6県で7局換算)と大阪の準キー局(2府4県で6局換算)を子会社にする場合、合計13局となってしまうため、両社を同時に保有することはできなかった[4][5]。その後、2023年3月にこの省令が改正され、この上限が撤廃されたことから、関東と関西の広域局を同時に保有することも可能になった[5][6][7]。
2004年11月、読売新聞の第三者名義による日本テレビ株の保有問題を受けて、他社も調査した結果、第三者名義によりマスメディア集中排除の制限を超えて出資を行なう行為は広く行なわれていたことが発覚した。2005年2月、総務省は調査結果を公表、71社に対して厳重に注意する旨の行政指導を行い[8] 、放送局に株主の報告を強化させるなど対策を行った[9]。この内、2社以上に出資し複数の違反事例があった東海テレビ放送と鹿児島テレビ放送、他社からの出資を受けながら自らも出資を行っていたテレビ大分の3社については総務大臣名による警告処分が言い渡された。
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