この項目では、プロレス技について説明しています。
ドロップキック (英語 : dropkick )は、プロレス における攻撃の技 である。蹴り技 および飛び技に分類される。メキシコ ではパターダ・ボラドーラ (patada voladora、意味は飛び蹴り)と呼ばれている。
ジャンピング・ジョー・サボルディ (オーストラリア、1937年)。
ジャンピング・ジョー・サボルディの宣伝記事(1933年)。
ジャンピング・ジョー・サボルディによるドロップキック(マディソンスクエアガーデン、1934年)。
レスラーが飛び上がり、両方の足の裏を使って相手を蹴る攻撃と定義される。飛ぶ時に体をひねって、相手に当たる時に横向きとなり、体の横側あるいは前側で着地するやり方と[1] 、体が仰向けになるように飛んで、相手を蹴った後に背中で受け身をとるやり方がある。
最も基本的なドロップキックは"ジャンピング・ジョー"・サボルディ (英語版 ) が初めて使用したスタンディングドロップキックである。レスラーは立った状態からのドロップキックを、立った状態あるいは走って向かってくる相手に当てる。ノートルダム大学でアメリカンフットボール のランニングバック として全米選抜にも選ばれたサボルディは、自身とアメリカンフットボールのつながりからこの技を「drop-kick 」と名付け[2] 、マスコミも「フライング・ドロップキック(flying dropkick)」と呼んだ[3] 。
現在の形のドロップキックの元祖はおそらく "ジャンピング・ジョー"・サボルディであると考えられていたが[4] 、プロレスラーのエイブ・コールマン も足から飛んで相手の胴体を蹴る技を行っていた。身長160センチメートルのコールマンはこの技を「カンガルーキック」と呼び[5] 、1930年のオーストラリア巡業で見たカンガルーから着想したものだと主張した[6] 。サボルディが1933年に「ドロップ」キックを行った時には、マスコミはコールマンの十八番である「カンガルー」キックの別名であると単に報道した[3] 。
両膝を折り畳むようにジャンプして鋭く突き出した両足の裏で相手の胸板を蹴り飛ばす。
技を出すタイミングの例
立っている相手に対して、その場で跳び上がって蹴る。
立っている相手に向かって走って、その勢いで蹴る。
走ってくる相手に対してカウンター で蹴る。
コーナー最上段から跳びかかってくる相手を蹴る。
コーナー最上段に登ろうとしている相手を蹴る。
エプロンサイドに立った相手をロープ越しに蹴る。
遠藤幸吉 によるドロップキック。
正面飛び式
仰向けに飛び上がり、ヒット後は、そのまま後ろ受け身をとる。ドロップキックの原型といえる形であり、吉村道明 が、このタイプを使用[7] 。力道山 の時代は、これが主流であった。
スクリュー式
正面飛び式を改良したもので捻り式とも言う。両足で相手を蹴り付けた後に空中でうつ伏せになるように体勢を変えて前受け身をとる。着地から素早く立ち上がり連発で放つことが可能。現在は、この形が主流になっている。
1回転式
相手にキックを当てた後、後方に1回転して前受け身を取る。跳躍力と身軽さをアピールするのに絶好の技。旋回式 とも呼ばれるダグ・ファーナス がバク宙するような縦回転式 を三沢光晴 が横回転式 を得意技としている[8] 。
低空式
立っている相手の下半身や四つんばいになっている相手の顔面を狙うドロップキック。元祖は渕正信 だが(横飛び式 )[8] 、この技を有名にしたのは武藤敬司 である(正面飛び式 )[8] 。彼の得意とする足殺しや、そこからの足4の字固め 、シャイニング・ウィザード に持っていくまでのつなぎ技となっている。
串刺し式
コーナーにもたれかかっている相手に走って勢いをつけて放つ。
32文人間ロケット砲
ジャイアント馬場 の繰り出すスクリュー式ドロップキック。全盛期でも1年に1度くらいしか披露しなかったが、1968年6月27日に日本プロレス の蔵前国技館大会で行われたインターナショナル・ヘビー級選手権 試合の対ボボ・ブラジル 戦では三連発で放ち、フォール勝ちで王座を奪回した(1つの試合で複数回放ったのは、この時と1970年12月3日の対ジン・キニスキー 戦で2回放ったのみ)。名称は馬場のカウンターキックを16文キック と呼ぶところから来ている。また、馬場は全日本プロレス中継 の解説時にドロップキックという言葉は使わず「飛び蹴り」と表現していた。馬場は体重があるため受け身が痛く、客受けはするがあまり出さなかったようである。
カンガルーキック
背後から羽交い締め を繰り出してきた相手などに対して体を前転させながらジャンプして両足を揃えて蹴る変型の正面飛びドロップキック。派生技にチャパリータASARI のコーナーに振った相手に対しロンダートで近づいた後にカンガルーキックを見舞うロンダート・カンガルーキック がある。また、アントニオ猪木 がアンドレ・ザ・ジャイアント にサーフボード・ストレッチ で捕えられた際に、この技で脱出する場面が度々見られた。
打ち上げ式
コーナートップの相手へのドロップキック。雪崩式 ドロップキック とも呼ばれるが正式名称はない。コーナートップに座らせた(登った)相手に対して、その場跳びでドロップキックを放って場外へ転落させる。
ジョン・ウー
正面飛び式低空ドロップキック 。主な使用者はSUWA (ジョン・ウー の名称で使用)[7] 。神田裕之 、フィン・ベイラー 、オカダ・カズチカ 。名称は喰らった相手が吹き飛ぶさまをジョン・ウー 監督作品のアクションシーンで見られる演出になぞらえたもの。
ミッキーブーメラン
トップロープとセカンドロープを掴み回転して反転。相手の顔面にドロップキックを放つ。主な使用者はMIKAMI (ロープ近くに長座した相手に放つ原型)、レイ・ミステリオ (セカンドロープに外向きでもたれた相手に放つタイプを619 の名称で使用)。
クレイモア
ランニングしながらジャンプと同時に片足で相手の顔面を打ち抜くシングル・ドロップ・キック。
シック・キック
座り込んでいる相手に、走りこんで顔面へ放つ強力な片足ドロップキック。
ペドロ・モラレス 、パット・オコーナー 、アントニオ・ロッカ がドロップキック3人男として名手と呼ばれていた。
日本では遠藤幸吉 、吉村道明 が名手として名をあげて藤波辰爾 もジュニアヘビー級時代に連発式 で繰り出していた[7] 。木戸修 も、かつては名手として評価されていた1人である。
三沢光晴 は1回転ドロップキックをヘビー級選手で本格的に使用した第一人者である。現在では田口隆祐 がこだわりを持って使用していてドロップキックの空中姿勢に定評があったことから「ドロップキックマスター」という異名を付与されて、この技のみで獣神サンダー・ライガー を秒殺したことがある。また、オカダ・カズチカ も高い打点で繰り出す他、鈴木みのる は50歳を超えた2019年現在でも綺麗なフォームでこの技を繰り出す。チェンジ・オブ・ペースの1つとして用いられる。
女子レスラーでは豊田真奈美 が正面飛び式を得意技としており、相手が起き上がったところで間髪入れずに打ち込んで2度3度とぶっとばして2ndコーナー(ときにはトップコーナー)からのミサイルキックへと繋ぐムーブメントをみせていた。また、相手に組み付かれて上に投げられた反動を利用して至近距離からの一撃も披露している。豊田から、お墨付きを受けている藤本つかさ と、つくし のタッグチームは「ドロップ・キッカーズ」と呼ばれている[9] 。主な使用者はAJスタイルズ 、エッジ 、ランディ・オートン 、ハードコア・ホーリー 、マーク・ジンドラック 。
郡司歩 によるミサイルキック(正面飛び式)
BUSHI によるミサイルキック(スクリュー式)
ミサイルキック (Missilekick )は、コーナー最上段からジャンプして放つドロップキック。海外ではミサイル・ドロップキック (Missile Dropkick )と呼ばれる。
種類
スワンダイブ式
トップロープの反動を利用してロープの上に飛び上がった後に相手めがけて放つドロップキック。主な使用者は大谷晋二郎 [8] 。
急降下式
コーナーポストから膝などの下半身を狙って蹴る低空ミサイルキック 。主な使用者は武藤敬司 (セカンドロープから放つ場合もある)。
長滞空式
相手にヒットするまでの滞空時間が長いミサイルキック。主な使用者は吉野正人 、中嶋勝彦 [8] 。
派生技
ライダーキック
特撮テレビドラマ『仮面ライダー 』のライダーキック から着想された片足でのミサイルキック。主な使用者はスーパーライダー 。ザ・グレート・サスケ は、この技をリング外に向けて放っていたが受け身 に失敗して負傷して以来、封印している。他にもアキバプロレス で「仮面ライダーの主役オーディションを七回受けた」と語った美月凛音 など何人かの使用者がいる。
福岡晶 が使用していた同名の技は相手の後頭部へ放つ前方一回宙返り式ミサイルキックである。紫雷イオ が福岡から直接指導を受けて、この技を受け継いでいる。
コーナー・トゥー・コーナー・ドロップキック
相手をコーナーに宙づり状態にして固定して自分は反対側のコーナーに立ち、主に相手の頭部を狙って放つミサイルキック。元祖はロブ・ヴァン・ダム のヴァン・ターミネーター でCIMA はトカレフ の名称で使用。非レスラーであるシェイン・マクマホン はポスト下で座っている相手にブリキのゴミ箱を持たせてのコーナー・トゥ・コーナーをコースト・トゥ・コースト の名称で使用。丸藤正道 はスワンダイブ式 によるfrom コーナー to コーナー の名称ので使用[8] 。
“10,000 FANS SEE LEWIS WIN FIFTH WRESTLING TITLE” . St. Louis Star-Times : p. 14. (16 May 1933). https://www.newspapers.com/clip/10114553/the_st_louis_star_and_times/ . "Joe was unable to return to the ring after missing a flying dropkick. "Flying Dropkick." The 202-pound Savoldi appeared superior to his elderly 240-pound opponent during most of the match, but lay helpless on the floor after hurtling from the ring when he jumped into the air and tried to kick Lewis in the chest with a "flying dropkick." This is another name for the "kangaroo kick," the quaint specialty of Abe Coleman. Some 10,000 fans saw the former Notre Dame All-American fullback repeatedly bowl over the former champion and twice he used his "flying dropkick" before Lewis sidestepped and permitted the ex-collegian to hurtle through the ropes to the floor outside the ring."『週刊プロレス』2015-4-1 pp66 - 67
『全日本プロレス 来日外国人選手 PERFECTカタログ』P56(日本スポーツ出版社 、2002年)
『週刊プロレス 』2015年4月1日号(通刊1784号)pp63 - 70掲載「21世紀の技解説ワイド版 ドロップキック」
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